※2024年5月自社調査。調査方法はこちら
東芝は今年2月、ブランドステートメントである「Leading Innovation」を訴求するための企業ブランディングサイト「One hour」を開設した。心安らぐBGMをバックに、「命」や「食」など暮らしにかかわるテーマのフラッシュ映像が展開されている。サイトを訪れた人が、まるで異空間に迷い込んだかのような感覚を楽しめるのが特徴。イノベーションへの新たな挑戦を続ける東芝グループの姿勢を、訪れた人に「体感」し、「共感」してもらうという、新しい企業サイトの試みとして注目を集めている。
「One hour」 東芝の高い技術、幅広い分野での技術革新に取り組む姿勢の理解を促すためのブランディングサイト。「命」や「食」、「自然」などをキーワードとした、5つの映像へは、らせん状のメニューからたどり着ける。
「人と、地球の、明日のために。」のスローガンのもと、家電から医療機器、更には社会インフラまで幅広い分野での技術革新に取り組んできた東芝グループ。その優れた技術力を社内外により正しく伝えることを目的に作られたのが、東芝の企業ブランディングサイト「One hour」である。ブランドサイトをあえて企業内に置かず、“onehour.jp”という独自のドメインで展開した理由について、「企業色を全面に出した企業サイトではなく、サイトを訪れた人が自然に東芝というブランドに共感できるサイトを目指しました。人や暮らしに密接にかかわる“時間”を切り口に、1時間の価値を感じながら東芝の技術に触れてもらえる作りにしました」と同社イノベーション推進本部の藤原千悦子氏は話す。 サイトに入るとまず、東芝の創造するイノベーションが広がりのあるDNAのらせんで表現されている。ユーザーはそのらせんに導かれるように、「命」や「食」、「自然」などをキーワードとした、東芝の活動を紹介する5つの映像にたどり着くようになっている。異空間を探索する感覚にも似ており、必要な情報にすぐにたどりつける“分かりやすさ”が求められてきた従来の情報検索型の企業サイトとは異なるコンセプトで理解と共感を生み出していく。「ユーザーには、『不思議だな』と感じて、サイトの中に迷い込んで欲しいですね。マウスの動きによって動きや色を変えるなど、ウェブサイトならではの動きを随所に取り入れることで、訪れるたびに驚きや発見のあるサイトにしています。Web2.0型のサイトとしてユーザーが投稿できるのが特徴です」と藤原氏。
イノベーション推進本部 イノベーション開発部 参事 藤原千悦子氏
時間をテーマにしているだけに、1秒を刻む音楽をBGMに採用したり、画面にサイトの滞在時間を表示するなど、ユーザーが無意識のうちに時間を感じる仕掛けにも気を配っている。ユーザーの平均滞在時間は10〜15分。「企業サイトの滞在時間としては非常に長い」と藤原氏。ユーザーからのコメントには時間について語られたものが多く、時間の価値について考えるという体験を通して東芝の活動に触れてもらうという、狙い通りの反応が得られているという。 あえて企業色を抑え、高いクリエイティビティを追求した「One hour」は、企業サイトの新たな試みとして広告業界やウェブクリエーターの間でも話題となった。去る6月末には第54回「カンヌ国際広告祭」で入賞し、再び注目を集めている。