※2024年5月自社調査。調査方法はこちら
昨年末に公開された松本大洋原作のアニメ映画「鉄コン筋クリート」。映画の公式サイトでは、劇場用に制作されたビジュアル素材をふんだんに活用し、映画の世界観を表現。至る所に仕掛けられた隠しコンテンツが見る人の好奇心をくすぐる、遊び心満載のサイトになっている。
「鉄コン筋クリート」公式サイト 公式サイトでは、映画の舞台となっている「宝町」の住民登録ができる。また、応援メッセージ、監督、スタッフ、宣伝担当者などによる公式ブログなどもあり、サイトのリピートアクセス率も高い。
原作は、13年前に漫画週刊誌『ビックコミックスピリッツ』(小学館)に連載され、全3巻で100万部を突破した松本大洋氏の伝説的な同名漫画。再開発に揺れる「宝町」という架空の町を舞台に、暴力と崩壊の世界に住む二人の少年の友情を描いている。 「松本先生の作品にはコアなファンが存在する一方で、先生のクールな世界観のアニメは一般の人にとってハードルが高いと思われがち。公式サイトでは、訪れる人のアクションを引き起こすような仕掛けを散りばめ、参加してもらうことでより広い層に映画を訴求質したいと考えました」(アスミック・エース エンタテインメント映画宣伝グループ・関谷奈美氏)。 参加型コンテンツとして、宝町へ“住民登録”すれば主人公たちと一緒に町を探索できるバーチャルタウンを用意。登場人物たちの案内に従って進んでいくと、町の所々に隠された壁紙などのコンテンツを見つけることができる。 また、主人公がりんごの種を埋めるという劇中のエピソードになぞらえ、サイトへのアクセス数が増えるに従ってりんごの芽が伸び、花が咲くという仕掛けも作った。こうした遊び心満載のコンテンツで、閲覧者の回遊性やリピート率を高めている。 このサイトの魅力は何といっても、緻密に作られた劇場用ビジュアル素材を数多く用いて、映画の世界観を存分に表現していること。メニューから各コンテンツへの導入部には、それぞれ異なる動画が挿入され、まるで映画のワンシーンを観ているかのようだ。他にも、18ページにも及ぶプロダクションノートや、監督が「宝町」を作り上げる参考資料として撮りためていた世界各地のロケ写真を掲載するなど、映画を楽しむための情報が盛り沢山だ。
映画宣伝グループ 関谷奈美氏
「これまでに制作にかかわった公式サイトの中でも、最も凝ったサイトの一つになった」と関谷氏。アクセス数もさることながら、掲示板への書き込みをはじめ、何度もサイトを訪れるファンが多いという。 公式サイトへのアクセス増加策としては、ツタヤオンライン(TOL)上に公式ブログを開設し、TOLからの誘導を図ったほか、アニメーションを担当したSTUDIO 4℃やコミックを発行している小学館や、各出資会社のウェブサイトでも告知した。口コミ効果を期待して配布された、STUDIO 4℃制作のブログパーツやブログテンプレートの人気も高かったという。 映画関連イベントはひとまず終了したが、今後はDVDなど関連商品の発売を予定している。「今後も情報提供を随時行って、ファンの思いを受け止める場としてサイトを継続していきたい」と関谷氏は話している。