IPアドレスだけでは住所は特定できない【発信者情報開示請求の方法も解説】
「IPアドレスを知られると住所がバレる!」「IPアドレスから個人情報を調査できる」と勘違いしている人は少なくないようです。
しかし、IPアドレスから個人情報や住所は特定できません。
IPアドレスから発信者情報を知るには、発信者情報開示請求という手続きが必要で、発信者情報開示請求は裁判所に対して行うため、多くの費用と時間がかかります。
今回の記事では、IPアドレスから住所がわからない仕組みや、発信者情報開示請求について解説します。
IPアドレスの種類
IPアドレスとは、インターネットに接続するための住所のようなものです。
インターネットに接続しているすべてのデバイスには、IPアドレスが割り当てられています。
インターネットに接続してウェブページを閲覧したり、メールを送受信したりするためにはIPアドレスが必要です。
IPアドレスにはローカルIPアドレス、グローバルIPアドレス、静的IPアドレス、動的IPアドレスなどの種類があります。
IPアドレスと住所の関係性を理解するためにも、これらのIPアドレスについての理解が必要です。
それぞれのIPアドレスについて、わかりやすく解説します。
静的IPアドレス
静的IPアドレスは、固定IPアドレスとも呼びます。
常に一定で変化しないIPアドレスのことを、静的IPアドレスと表現します。
静的IPアドレスは、ウェブサーバーやFTPサーバーなどに利用されることが多く、ISPに追加で費用を払えばオフィスや家庭でも利用できます。
ただし、静的IPアドレスは、動的IPアドレスよりも一般的には高額で、静的IPアドレスを提供していないISPもあります。
静的IPアドレスが利用できるかどうかは、インターネット接続を提供しているISPに確認してください。
静的IPアドレスを割り当てられたら、手動でネットワークを設定する必要があります。
設定方法は、ルーターによって変わるので、メーカーやISPに問い合わせてチェックしましょう。
動的IPアドレス
インターネット接続する度に変化するIPアドレスのことを、動的IPアドレス、あるいは可変IPアドレスとも呼びます。
動的IPアドレスは、一般的なインターネット接続で利用されることが多く、ISPから自動的に割り当てられ、ルーターの電源を落としてインターネットに再接続する度にIPアドレスが変化します。
動的IPアドレスはあらかじめデバイスに設定する必要がないため、設定作業が簡単で手軽に利用できます。
さらに、必要なときにIPアドレスを割り当てるため、数に限りのあるIPアドレスを有効に利用することが可能です。
家庭でインターネットに接続する場合、特別なオプションがなければ一般的には動的IPアドレスが割り当てられます。
動的IPアドレスで現在のIPアドレスを確認したい場合、以下のようなサービスを利用しましょう。
ローカルIPアドレス
ローカルIPアドレスとは、ネットワーク内で割り当てられるIPアドレスです。
ローカルIPアドレスは、プライベートIPアドレスと呼ばれることもあります。
ローカルIPアドレスは、ネットワーク内では重複してはいけません。
一般的にはDHCPという仕組みによって、ネットワーク内のローカルIPアドレスは自動で割り当てられますが、パソコンやスマートフォン側で設定することで、IPアドレスを固定することも可能です。
ローカルIPアドレスを固定するには、ある程度の知識やスキル、ルーターの設定が必要になります。
自宅サーバーやファイルサーバー、その他の特別な使い方をするのではない限り、固定にするのはおすすめできません。
なお、ローカルIPアドレスではインターネットに接続できません。
ローカルIPアドレスをNATやIPマスカレードなどでグローバルIPアドレスに変換する必要があり、その変換の役割をルーターが担っています。
グローバルIPアドレス
グローバルIPアドレスは、インターネットに接続するためのIPアドレスです。
グローバルIPアドレスは、パブリックIPアドレスと呼ばれることもあり、インターネットの住所のようなものです。
世界中のどこからデータの送受信をしても間違わないよう、重複なく割り当てられています。
グローバルIPアドレスを管理団体か厳重に管理し、ISPなどに割り当てを行っているのです。
家庭からインターネット接続する場合、ISPから一時的に貸し出されたグローバルIPアドレスを利用します。
そのため、一般的なインターネット接続サービスでは、ルーターの電源を切ったり、インターネットへの切断・再接続を行なう度にIPアドレスが変わります。
グローバルIPアドレスは、IPv4と呼ばれる仕組みで普及してきました。
しかし、IPv4は43億個のIPアドレスしか存在せず、インターネットの普及とともにIPアドレスの枯渇が問題化しました。
そこで、現在では128ビットのデータを用いるIPv6の普及が急がれています。
IPアドレスだけで住所は特定できない
「IPアドレスから住所がわかる」と勘違いしている人は少なくないようです。
しかし通常の利用の範囲においては、IPアドレスから住所は特定できません。
ユーザーにIPアドレスを割り当てているISPには、個人情報保護法が適用されているためで、IPアドレスから住所を割り出すには、発信者情報開示請求という法的な手続きが必要になります。
発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法第4条に基づく情報開示請求で、誹謗中傷や名誉毀損を受けた場合に手続きできます。
その手続に則ってIPアドレスをISPに問い合わせれば、その時間帯にそのIPアドレスを利用していたユーザーの情報が開示されますが、発信者情報開示請求には約3ヶ月もの期間がかかりとても大変です。
IPアドレスから得られる情報
グローバルIPアドレスから得られる情報について解説します。
国単位の位置情報
グローバルIPアドレスは国ごとに割り当てられているため、国単位の位置情報がわかります。
世界的にIPアドレスを管理しているICANNから、各地域のインターネットレジストリにグローバルIPアドレスが割り当てられます。
日本の場合はJPNICにグローバルIPアドレスが割り当てられ、そこからさらに各ISPやデータセンター、サーバー事業者に割り当てられるという仕組みです。
JPNICはさらに、都道府県ごとにIPアドレスを管理しています。
IPアドレスは利用者の数に比例して東京がもっとも多く、その次が大阪となっています。
IPアドレス保有組織
IPアドレスの保有組織も、IPアドレスから調査可能です。
たとえば、CMANのIP検索ページからIPアドレスを調査すると、どの組織がIPアドレスの保有者か明らかになります。
保有組織が判明すれば、どこに発信者情報開示請求をすればよいのかもわかります。
ISPや回線情報
ユーザーが利用しているISPや回線情報、OS、端末情報などもIPアドレスからわかります。
たとえば、端末が「パソコン」「スマートフォン」「タブレット」のどれかもわかりますし、インターネットに接続しているブラウザの種類、利用OS、リンク元のURL、モニタの解像度まで判明します。
契約しているプロバイダ、回線情報もIPアドレスから調査可能です。
IPアドレスでは住所こそわかりませんが、それ以外のいろいろな情報が調査できます。
IPアドレスから個人の住所を特定する発信者情報開示請求
通常はIPアドレスからユーザーの住所を特定することはできません。
ISPが情報を開示していないからです。
しかし、発信者情報開示請求という手続きを行うことによって、そのグローバルIPアドレスの住所をつきとめることが可能です。
発信者情報開示請求について解説します。
発信者情報開示請求の7つの要件
発信者情報開示請求を行うためには、以下の7つの要件を満たす必要があります。
- インターネット上の通信であること
- 誹謗中傷や名誉毀損などの被害者であること
- 権利侵害が明らかであること
- 発信者情報開示請求に正当な理由があること
- 被害に関係した事業者やサーバーに行われること
- 発信者情報に該当すること
- ISPや事業者、サーバーが発信者情報を保有していること
これらの条件を簡単にまとめれば、インターネット上の通信で誹謗中傷・名誉毀損などを受けた場合、ISPや事業者、サーバーに対してのみ発信者情報開示請求が行えるということです。
なお、発信者情報とは以下に該当する情報です。
- 氏名
- 住所
- メールアドレス
- 発信者のIPアドレスやIPアドレスと組み合わされたポート番号
- 携帯端末のインターネット接続サービス利用者識別番号
- SIMカード識別番号
- 発信時間(タイムスタンプ)
手続きの流れ
発信者情報開示請求の手続きの流れは以下のようになります。
- 誹謗中傷・名誉毀損の証拠を保管
- サイト運営元にIPアドレス、タイムスタンプの開示請求
- IPアドレスから発信者のISPを特定
- ISPに情報開示請求およびアクセスログの保存を申請
- ISPから発信者の個人情報を開示
まず、誹謗中傷の証拠を保存しておくことが重要です。
ウェブサービスの中には、一定期間を経過すると消去されるものもあるので、スクリーンショットとともにURLを保存しておきましょう。
また、4番目のISPにアクセスログを保存してもらうことも非常に重要となります。
アクセスログは通常、3ヶ月程度で消去されます。
そのため、しっかりとアクセスログの保存を申請してください。
費用
発信者情報開示請求を行うためには、裁判所に仮処分申し立てをすることが必要です。
裁判所から仮処分命令を出してもらうためには、担保金が求められます。
担保金の金額は裁判所が事案によって判断しますが、一般的には20万円程度です。
担保金は、正当な請求であれば後で還付されます。
しかし、それでも一時的に数十万円のお金が求められるので注意が必要です。
加えて発信者情報開示請求の手続きを弁護士に依頼した場合、弁護士費用もかかります。
弁護士費用は事務所によって異なりますが、おおよそ20万円~50万円ほどが必要です。
所要期間
発信者情報開示請求は非常に時間のかかる手続きです。
2021年4月に法制度が改正され、従来は2段階で行う必要があった手続きが1段階になりました。
以前は発信者情報開示請求に9ヶ月ほどかかっていましたが、現在では3ヶ月ほどに短縮されました。
それでも、数ヶ月単位で時間がかかります。
IPアドレスから住所を確認することは、かなり大がかりな手続きを必要とするのです。
IPアドレスがバレた場合のリスクや影響
通常、IPアドレスから住所が判明することはありません。
住所や氏名を調査するには、発信者情報開示請求を行う必要があります。
しかし、IPアドレスが判明することのリスクがゼロというわけではありません。
IPアドレスがバレた場合のリスクや影響について解説します。
架空請求
ワンクリック詐欺などで、「IPアドレスから個人情報を特定した」などと記載し、架空請求を行う手口が見受けられます。
しかし、IPアドレスはインターネットにアクセスしている限り簡単に判明するもので、IPアドレスから個人情報や氏名、住所がバレることは絶対にありません。
ワンクリック詐欺や架空請求に騙されないようにしましょう。
クラッキング
IPアドレスが判明した場合、クラッキングをしかけられる恐れがあります。
たとえば、開放されているポートに対してのDDoS攻撃が考えられます。
DDoS攻撃とはサイバー攻撃の一種で、攻撃者は複数のデバイスを踏み台にして一斉に攻撃します。
攻撃されたデバイスは過剰な負荷を受けて、ネットにアクセスできなくなったり通信が遅くなったりします。
ほかにも、開放されているポートからデバイスの乗っ取りやクラッキングが行われる可能性も。
これらの被害を防ぐためには、むやみにポートを開放しないことが必要です。
まとめ
今回は、IPアドレスと住所や個人情報の関係について解説しました。
発信者情報開示請求をしない限り、IPアドレスから住所はわかりません。
IPアドレスとはインターネットの住所のようなもので、インターネットに接続しているデバイスは、すべてIPアドレスが割り振られています。
しかし、このグローバルIPアドレスと住所を紐付ける情報を持っているのはISPだけ。
ISPは個人情報保護法で、ユーザーの住所や氏名を保護する義務があります。
したがって、発信者情報開示請求をされた場合のみISPはユーザーの発信者情報を開示します。
よって、IPアドレスから住所を探るには発信者情報開示請求が必要です。
それ以外の方法で、住所を知ることはできません。
IPアドレスに関する正しい知識を身に付け、インターネットを利用しましょう。
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