2024年問題とは?物流業界への影響や対処法をわかりやすく解説
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- 2024年問題とは、2024年4月からドライバーの時間外労働が制限されたことで生じる問題
- 2023年3月までは1ヶ月の拘束時間は293時間以内だったが、現在は274時間以内になった
- 2024年問題により、物流の停滞や物流業界の売上減少、人件費増大などの影響がある
2024年問題とは、働き方改革法案により、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が課されたことで生じる問題を指します。この記事では、2024年問題の概要や、2024年問題によって何が起きるのか、また諸問題への対処方法などについて解説します。
目次
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2024年問題とは
2024年問題とは、働き方改革法案により、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が課されることで生じる問題を指します。
ドライバーの労働時間が制限されるため、一日に運ぶことができる荷物の量が減少し、結果としてトラック事業者の売上や利益が減少する可能性があります。また、ドライバー自身の収入が減ることで離職者が増え、ドライバー不足が深刻化することも懸念されています。
これらの影響が物流業界全体に及ぶため、経済や消費者生活にも広がる問題です。この記事では、2024年問題の概要や、2024年問題によって何が起きるのか、また諸問題への対処方法などについて解説します。
ドライバーの拘束時間が1ヶ月274時間に
2023年3月までは、ドライバーの1ヶ月の拘束時間は原則293時間以内とされていました。しかし、働き方改革法案の施行により、2024年4月1日からはこの拘束時間が「1ヶ月274時間以内」に制限されることとなりました。
この新しい規制によって、ドライバーはこれまでよりも短い時間で業務を行わなければならず、結果として輸送量が減少する可能性があります。拘束時間が減って、長時間労働の負担が軽減される一方で、業務の効率化や配車の見直しが求められます。
参考:トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン|公益社団法人全日本トラック協会
働き方改革とは
働き方改革とは、「働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会」を実現するための改革です。これは、「一億総活躍社会」に向けた取り組みの一環であり、日本における労働力不足と労働者のニーズへの対応策全般を指します。
働き方改革の目的は、長時間労働を減らし、働く人々が育児や介護などと仕事を両立できる環境を作ることです。これにより、労働生産性の向上や企業の競争力強化を図ることを目指しています。
2024年問題がもたらす影響
2024年問題がもたらす影響は多岐にわたります。ドライバーの労働時間が短縮されることで、物流の効率が低下し、様々な分野に影響を及ぼす可能性があります。
具体的には、物流が滞る可能性や、運送業界の売上・ドライバーの収入の減少、人件費の増大、そして消費者への影響などが考えられます。以下では、それぞれの影響について詳しく解説します。
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2024年問題がもたらす影響
物流が滞る可能性がある
働き方改革によって、ドライバーの労働時間が短くなることで、物流が滞る可能性があります。特にECサイトの利用者が増える中で、注文が急増する繁忙期には、配送遅延が顕著になる可能性があります。
消費者にとっては商品が届くまでの待ち時間が長くなるため、特に生鮮食品などの鮮度が重要な商品では、品質低下のリスクが増加します。
また、物流が滞ると、ECサイト運営者や小売業者も顧客満足度の低下に直面し、返品やクレームの対応が増えるなど、追加のコストや手間がかかることが予想されます。
物流・運送業界の売上が減少する
ドライバーの労働時間が短縮されることで、運搬できる荷物の量が減り、結果として物流業界の企業の売上が減少する問題があります。労働時間の制限によって、同じ量の荷物を運ぶためにより多くのドライバーやトラックが必要となりますが、それにはコストが伴います。
物流業界全体の効率が低下するため、収益の減少が懸念されます。例えば、運搬量が減ることで売上が減少するだけでなく、業務を維持するための追加コストがかかるため、利益率も圧迫されます。
このように、ドライバーの労働時間短縮がもたらす影響は、物流業界全体の収益性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
ドライバーの収入が減少する
2024年問題によって、ドライバーがこれまで受け取れていた残業代が減るという問題があります。ドライバーの多くは、時間外労働によって得られる残業代を収入の一部として依存しています。
しかし、労働時間の上限が設定されることで残業代が減少し、結果として収入が減ってしまいます。また、収入減少を避けるために、他の職種に転職するドライバーが増える可能性もあります。
人件費が増大する
ドライバーの収入減少による離職防止や人員不足を補うためには、賃金アップが必要となる問題があります。企業は優秀なドライバーを確保するために、賃金を引き上げる必要があり、結果として人件費が増大します。
また、労働時間の短縮に伴い、複数のドライバーを雇用する必要があるため、人件費全体が増加します。この増加したコストは最終的に消費者に転嫁される可能性があり、商品やサービスの価格が上昇することが予想されます。
割増賃金率の引き上げも
2023年4月からは、中小企業でも月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率が50%に引き上げられました。それまでの25%からの大幅な引き上げとなり、これによって中小企業の人件費負担が増大しています。
また、深夜労働の場合はさらに割増率が加算されるため、企業は従業員の労働時間管理を一層厳密に行う必要があります。これにより、企業は労働時間の短縮とともに、賃金コストの増加にも対応しなければならなくなります。
参考:月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省
物流コストが高くなる
2024年問題がもたらす影響として、物流コストの高騰が挙げられます。ドライバーの労働時間制限によって人件費が増大し、運賃を値上げせざるを得ない状況になることで、消費者の負担も増える問題があります。
物流コストが増加すると、企業はそのコストを商品の価格に転嫁します。これにより、商品の価格が上昇し、消費者の購買意欲が低下する可能性があります。特に、日常的に使用する生活必需品の価格上昇は、家計に直接影響を与えます。
加えて、物流コストが高騰すると、企業はサービスの見直しや削減を余儀なくされることがあります。無料配送サービスの中止や配送日数の延長など、消費者にとって不便な状況が発生する場合もあります。
消費者は必要なものが受け取れなくなる
ドライバーの減少や物流が滞ることで、消費者が購入した商品をなかなか受け取れなくなる、食品などは鮮度が落ちてしまうなどの問題が発生し得ます。特に、生鮮食品などの鮮度や期限が重要な商品は品質の低下が避けられず、消費者の信頼を損なってしまいます。
このような問題は、消費者の信頼を損ねるだけでなく、企業の評判にも悪影響を及ぼします。消費者が商品の遅延や品質の低下を経験すると、企業への信頼が失われ、再度の購入をためらってしまう場合があります。
2024年問題への対処方法
2024年問題に対処するためには、企業や業界全体で様々な対策を講じる必要があります。物流業界が直面する課題に対して、どのように対応すれば良いのかを考えることは、持続可能な運営を続けるために重要です。
以下では、具体的な対処方法について詳しく解説していきます。
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2024年問題への対処方法
ドライバーの基本給を底上げする
ドライバーの基本給を上げることで、求人に多くの人が応募してくれる可能性が高まり、人員を確保しやすくなるでしょう。また、基本給の引き上げは、従業員のモチベーション向上にもつながります。
安定した収入が得られるため、ドライバーは仕事に対して前向きに取り組む意欲が高まり、業務の質も向上します。さらに、離職率の低下も期待できます。給与面での不満が解消されれば、長期的に勤務する従業員が増え、企業としての安定性も向上するでしょう。
定期的な昇給・ボーナスの支給
人材を長期にわたって定着させるためには、定期的な昇給やボーナスの支給が有効です。定期的な昇給で、従業員が自身の成長や貢献を実感し、仕事へのモチベーションを維持できるでしょう。
また、適切な評価を基にしたボーナスの支給も重要です。適正なボーナスは従業員に対して、会社がその努力を正当に評価していることを示すもので、働き甲斐を感じさせます。
従業員が自分の仕事に対して満足感を持つことで、長く働き続ける意欲が高まり、企業の人材の定着率が向上するでしょう。
輸送の効率化を図る
輸送の効率化を図ることは、物流業界が直面している課題を解決するために重要です。例えば、高速道路の利用や中継輸送の採用などがあります。中継輸送は、長距離の運行を複数のドライバーで分担し、個々の労働時間を短縮しつつ効率的に輸送を行う方法です。
これにより、ドライバーの負担を軽減しながら、輸送のスピードと効率を向上できます。また、高速道路の積極的な利用によって移動時間を短縮し、より多くの荷物を迅速に運ぶことが可能になります。
DXで生産性を向上させる
ITツールやシステムの導入などによってDXを推進することで、業務の効率化や生産性の向上に期待できます。例えば、運行管理システムの導入が挙げられます。このシステムは、トラックの配車やルートの最適化が自動で行われます。
これによって、より効率的に荷物を運べるため、無駄な時間やコストを削減できます。また、データ分析ツールを利用して、輸送データや運行データを分析すると、問題点を把握して改善策を講じることが可能です。
勤務間インターバル制度を導入する
勤務間インターバル制度を導入することも有効な対策です。この制度は、勤務終了時間から翌日の始業時間までの間に一定の休息時間を確保するもので、労働者の健康と安全を守るために重要です。
終業から次の始業までの間にインターバルを設けると、従業員への負荷を軽減し、十分な休息を取ることができます。結果として、ドライバーの確保や定着率の向上につながります。必ずしも導入が義務付けられているわけではありませんが、労働環境の改善に効果的です。
まとめ
2024年問題とは、働き方改革法案によって、2024年4月1日からドライバーの時間外労働に上限が設けられることから生じる問題です。この新しい規制により、物流の遅延やドライバーの収入減少など、物流業界ではいくつかの課題が浮上しています。
しかし、これに対処するための方法もいくつかあります。ドライバーの基本給を引き上げたり、定期的な昇給やボーナスの支給したりすることによって、従業員の長期雇用を促進し、モチベーションを維持できます。
さらに、輸送の効率化を図るために、高速道路の利用や中継輸送の導入、ITツールを活用した業務のデジタル化やDXの推進も重要です。これらの対策を通じて、物流業界の企業は2024年問題に適切に対応し、持続可能な運営を続けることができるでしょう。