アルバイト・パートの給与計算方法とは?割増賃金に関する注意点も解説

Check!

  • アルバイト・パートの給与を計算する際は、就業規則・給与規定・勤怠データを確認する
  • アルバイトの給与計算では、まず労働時間を集計し、それに時給をかけて支給額を出す
  • アルバイトに時間外労働・休日労働・深夜労働をさせた場合は割増賃金の計算も必要

アルバイト・パートは労働時間や時給が従業員によって異なるため、給与計算が複雑になりがちです。また、時間外労働や休日労働における割増賃金の計算もあるため、細心の注意が必要となります。この記事では、アルバイトの給与計算方法や注意点などを解説します。

目次

開く

閉じる

  1. アルバイト・パートの給与を正確に計算するために
  2. アルバイト・パートの給与計算における確認事項
  3. アルバイト・パートの給与計算方法
  4. アルバイト・パートの給与計算における注意点
  5. アルバイト・パートの給与計算には給与計算ソフトが便利
  6. まとめ

弥生株式会社

【PR】弥生給与 Next

弥生株式会社

【PR】弥生給与 Next

【1年間無料】毎月の給与業務から年末調整を効率化したい方におすすめ

出典:弥生給与Next

GOOD
ここがおすすめ!

  • すべての機能が初年度無償で使える
  • 勤怠情報を入力すれば、給与計算は自動でラクラク
  • 年末調整業務のペーパーレス化でコストを削減

MORE
ここが少し気になる…

  • 勤怠管理や労務管理は他サービスで対応する必要がある

アルバイト・パートの給与を正確に計算するために

アルバイトやパートの多くは時間給のため、原則として「労働時間×時間給」の計算で給与を算出できます。しかし実際には、従業員によって労働時間・時給・給与形態が異なるため、単純にこのように計算すれば良いというものではありません。

例えば、22時から翌5時の間で働く深夜アルバイトには、深夜手当の支給が義務づけられており、割り増しで給与計算を行う必要があります。このように、アルバイトやパートの給与計算には複雑な部分が多く、計算ミスなどが起こりやすいのが課題です。

本記事では、複雑なアルバイト・パートの給与計算を正確に行うための方法や注意点を解説します。給与計算上のミスを避けるためにも、アルバイトやパート従業員を雇用している場合は、ぜひ参考にしてください。

アルバイト・パートの給与計算における確認事項

アルバイトやパートの給与計算は、就業規則・給与規程・勤怠データの3つの事項を確認しながら行う必要があります。各事項について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

アルバイト・パートの給与計算における確認事項

  1. 就業規則
  2. 給与規定
  3. 勤怠データ

就業規則

就業規則とは、労働時間・賃金・職場内の規律などをまとめたルールで、企業ごとに内容が異なります。常時10人以上の従業員がいる企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が法律で義務づけられています。

就業規則には、アルバイト・パートの賃金に関しても明記するため、給与計算の際に内容を確認する必要があります。

具体的に参照すべき項目は企業によって異なりますが、一般的には次のような事項がアルバイト・パートの給与計算と関わりがあります。アルバイト・パートの給与計算は、これらの事項を基に正確に行いましょう。

  1. 労働時間・休日に関する規程
  2. 賃金の取り扱いに関する規程
  3. 減給・賞罰に関する規程

アルバイト・パートの給与計算は、これらの事項を基に正確に行いましょう。

参考:就業規則の作成・変更・届出|厚生労働省

給与規定

給与規程とは、給与のルールについてまとめたもので就業規則の一部に当たります。給与に関するルールが膨大化・複雑化した場合に、就業規則から切り離して規定し、「給与規程」と呼び分けるのが通例です。給与規程では、主に次のような内容が定められます。

  1. 給料計算の方法
  2. 割増賃金
  3. 支払方法
  4. 締切日
  5. 支払時期
  6. 昇給
  7. 休業手当

給与の計算・支給に必要な事柄は給与規程で定められており、アルバイトやパートの給与も給与規程の内容に基づいて支給する必要があります。したがって、給与計算を行う際は、改めて内容を確認するべきでしょう。

勤怠データ

アルバイト・パートの給与は「労働時間×時間休」で計算するため、実労働時間を正確に把握しなければなりません。したがって、アルバイトの労働状況を記録した勤怠データを参照する必要があります。

なお、勤怠データとは、従業員の勤務日数や労働時間を記録したものです。具体的には、タイムカード・シフト表・出勤記録簿などが勤怠データに該当します。

アルバイト・パートの給与計算方法

アルバイトやパートの給与計算は、労働時間の集計・支給額の算出・保険料や税金の控除という3段階で行います。各段階の進め方や注意点を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

労働時間を集計する

アルバイト・パートの給与は、実際に働いた時間に時間給をかけて算出します。そのため、まずは従業員ごとに労働時間を集計する必要があります。なお、給与計算期間内の労働時間は、労働した時間帯などによって次の4種に大別されます。

  1. 通常労働
  2. 時間外労働
  3. 深夜労働
  4. 休日労働

タイムカードや出金記録簿などで勤怠管理を行っている場合、担当者は締め日にこれらの書類を回収して、手動で従業員ごとの労働時間を計算する必要があります。

従業員の人数が多いほど作業が煩雑化しやすく、計算ミスのリスクも高まるため、労働時間の集計は慎重に行いましょう。

支給額を算出する

支給額の算出は、集計した労働時間に時間給をかけ算して行います。残業・深夜労働・休日労働をしたアルバイト・パートに対しては、基準の時間給に加えて割増賃金の計算も必要です。例えば、時給1,000円・通常労働70時間の場合では、支給額は次のように計算します。

通常労働の支給額:1,000(円)×70(時間)=70,000(円)

つまり給与支給額は70,000円となります。

保険料や税金を控除する

アルバイトやパートであっても、勤務実態・給与額が一定の基準を満たす場合には、各種保険への加入義務や所得税の納付義務があります。これに伴って雇用主は、保険料や税金の控除およびその計算を行う必要があります。代表的な控除を以下の表にまとめました。

概要算出方法
雇用保険料失業者に対する給付などを行う雇用保険の保険料一般の事業は賃金×0.3%
農林水産・清酒製造および建設の事業は賃金×0.4%
健康保険料医療機関にかかる際の費用負担軽減などを行う健康保険の保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
(残りの1/2は会社が負担)
厚生年金保険料老齢になった際の厚生年金の保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
(残りの1/2は会社が負担)
介護保険料介護保険サービスが軽減負担で利用できる介護保険の保険料標準報酬月額×保険料率×1/2
(残りの1/2は会社が負担)
※40歳以上65歳未満の場合のみ負担
源泉所得税給与所得に課せられる所得税源泉所得税額表によって定められている金額
住民税給与所得に課せられる住民税会社に届く納付書に記載されている金額

参考:令和6年度の雇用保険料率について|厚生労働省

参考:令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)|全国健康保険協会

参考:保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)|日本年金機構

アルバイト・パートが雇用保険に加入するケース

前述のように、アルバイトやパートでも雇用保険に加入しなければならないケースがあります。具体的には、以下のようなケースで加入が必要となります。

  1. 所定労働時間が週20時間以上ある場合
  2. 31日以上の雇用見込みがある場合

なお、雇用期間が31日に満たない場合でも、31日を過ぎて雇用が継続されれば、その時点で雇用保険の加入対象となります。

参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省

アルバイト・パートが健康保険・厚生年金保険に加入するケース

雇用保険と同様に、アルバイト・パートが健康保険・厚生年金保険に加入しなければならないケースもあります。特定適用事業所に勤務しており、以下の全ての条件を満たす場合、加入対象となります。

  1. 所定労働時間が週20時間以上ある
  2. 年収が106万円以上ある(月額賃金8.8万円以上)
  3. 雇用の見込みが2ヶ月を超える
  4. 学生ではない

なお、これらの適用範囲は、拡大や変更が行われる場合もあります。労務の担当者は日頃から法改正に注意しましょう。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

アルバイト・パートの給与計算における注意点

アルバイトやパートの給与計算は複雑な部分が多いため、計算方法を正しく理解しておく必要があります。ここからは、アルバイトの給与計算で特に注意すべき点を解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

割増賃金を正しく計算する

アルバイト・パートの給与計算では、時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金に注意する必要があります。それぞれの割増賃金の概要や割増賃金率について解説します。

参考:しっかりマスター 割増賃金編|厚生労働省

参考:よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)|厚生労働省

時間外労働

時間外労働とは、労働基準法によって定められた「法定労働時間」を超えて労働すること、またはその労働時間を指します。労働基準法が定めた法定労働時間とは、1日につき8時間、週につき40時間です。

法定労働時間を超過してアルバイトやパートが労働した場合、その超過した時間には時間外労働として割増賃金を支払う必要があります。時間外労働に対する割増賃金の割増率は2割5分であり、次のように計算します。

基準の時間給×1.25

なお、勤務時間帯は企業やアルバイトによって規程が異なるため、残業すれば必ずしも時間外労働にあたるとは限りません。例えば、1日4時間×週5で勤務するアルバイトが1週間のうち3時間残業した場合は、1週間の総労働時間は23時間となります。

つまり、労働基準法によって定められた「1週間につき40時間」の法定労働時間を超えないため、割増賃金を必ず支払う必要はありません。

休日労働

休日労働とは、法定休日に労働することです。法定休日は、労働基準法によって1週間に1回、あるいは4週間を通じて4日以上付与することが義務付けられています。必ずしも日曜日が法定休日とは限らず、サービス業などは平日が法定休日になることもあります。

法定休日に労働した場合は、休日労働として割増賃金を支払う必要があります。割増賃金率は3割5分で、次のように計算します。

基準の時間給×1.35

休日労働と時間外労働の割増賃金の合算はできません。

深夜労働

深夜労働とは、午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に労働することです。深夜労働に対する割増賃金率は2割5分で、次のように計算します。

通常の賃金×1.25

なお、アルバイト・パートが深夜の時間帯に残業した場合は、深夜労働と時間外労働の割増賃金が重複することになり、合算が必要です。

割増賃金が重複した場合は合算する

前述の通り、割増賃金が重複した場合は合算して支給額を求める必要があります。例えば、アルバイトが深夜に残業した場合は、時間外労働の割増賃金2割5分+深夜労働の割増賃金2割5分=5割と考えるため、「基本の時間給×1.5」で給与計算を行う必要があります。

【時給1,000円・通常労働70時間・時間外労働10時間(このうち深夜労働が3時間)の計算例】

  1. 通常労働の支給額:1,000(円)×70(時間)=70,000(円)
  2. 時間外労働の支給額:1,000(円)×1.25×7(時間)=8,750(円)
  3. 深夜時間外労働の支給額:1,000(円)×1.5×3(時間)=4,500(円)
  4. 合計支給額:83,250円

また、休日労働と深夜労働の割増賃金の合算は、休日労働の割増賃金3割5分+深夜労働の割増賃金2割5分=6割となり、「通常の賃金×1.6」で計算します。なお、休日労働の割増賃金と時間外労働の割増賃金については合算できません。

その理由は、法定休日にはそもそも法定労働時間が存在しないためです。よって、休日労働に対する割増賃金と時間外労働に対する割増賃金は重複しません。

参考:法定労働時間と割増賃金について教えてください。|厚生労働省

労働時間は1分単位で計算する

アルバイトやパートの給与計算に用いる労働時間は、1分が基本単位です。つまり、給与計算は1分単位で行う必要があり、10分単位・15分単位のような時間の切り捨てはできません。例えば、9時から17時2分まで働いた場合、労働時間は7時間2分となります。

雇用主には、アルバイトが働いた時間すべての給与を支給する義務があります。1分や2分の労働時間も切り捨てせず、すべて給与計算に反映させましょう。

参考:働き方のルール|厚生労働省

アルバイト・パート従業員にも給与明細は必要

雇用主は所得税法によって、正社員と同様にアルバイト・パート従業員に対しても給与明細を発行することが義務付けられています。アルバイトの給与明細に記載すべき事項を以下に挙げます。

  1. 勤怠:出勤日数・勤務時間・有給日数など
  2. 支給:基本給・通勤手当・残業手当・家族手当など
  3. 控除:所得税・住民税・健康保険・厚生年金保険・雇用保険など

給与明細は、給与の支払日までに従業員に交付する必要があります。給与明細を発行しなかった場合は、所得税法違反と見なされ、雇用主は1年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります。

参考:第3章 働くときのルール|厚生労働省

アルバイト・パートにも有給が付与される

アルバイトやパートであっても、2つの条件を満たせば正社員と同様に有給休暇が発生します。1つ目は入社から半年以上経つこと、2つ目は所定労働日の8割以上出勤していることです。

また有給を年10日以上持っている従業員には、最低5日以上取得させる義務もあります。雇用期間や勤務時間の長いアルバイト・パートがいる場合は、有給のルールに違反していないかどうかも注意しなければなりません。

アルバイト・パートの給与計算には給与計算ソフトが便利

アルバイト・パートの給与計算には、タイムカードや出勤簿の回収・労働時間の集計・割増賃金の計算・控除など、複雑な工程が数多くあります。これらの煩雑な作業が担当者の大きな負担となり、計算ミスや支給の遅延といった重大なトラブルにつながりかねません。

このようなリスクを回避するには、給与計算ソフトの活用がおすすめです。給与計算ソフトでは、あらかじめ設定したルールに基づいて給与計算や控除が行われるため、従来のような手動での給与計算は必要ありません。

また、給与計算ソフトによっては、勤怠管理システムやタイムカードとの連携により、労働時間の集計作業を自動化することもできます。

給与計算ソフトによって、人的ミスのリスクが高い作業を自動化することで、担当者の業務負担を減らしつつ、アルバイトやパートの給与計算業務の効率化につながるでしょう。そして、正確な給与の支給を実現できます。

給与計算ソフトとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説

給与計算ソフトとは、給与計算の自動化や給与明細の発行などを行えるソフトです。業務の効率化や法改正にも対応できる利便性があります。本記事では、給与計算ソフトをよく知らない方のために、機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。

給与計算ソフトを導入するメリット

給与計算ソフトは、税金・保険料の控除を含め、複雑な給与計算を自動化できるため、経理担当者の負担を大幅に軽減できます。

また、クラウド型なら法改正があった際も自動でアップデートされ、常に最新の法令に基づいた給与計算が可能です。アルバイトは時給が毎年変更されるなど、法改正が頻繁に行われるため、その対応が楽になるのは大きなメリットです。

さらに、給与計算ソフトによってペーパーレス化を推進できます。Web給与明細の発行が可能なため、大量のアルバイト従業員を抱えている場合も1人ずつ紙で渡す必要がなく、コスト削減に繋がります。

まとめ

アルバイトやパートは従業員によって時給や労働時間が異なることが多く、給与計算が複雑化しやすい傾向があります。

また、アルバイトの給与計算には労働時間の集計や支給額の算出・割増賃金の計算・控除などの煩雑な工程が多く、支給ミスや担当者の負担増大の原因となりかねません。

アルバイト・パートの給与計算を正確に行うには、給与計算ソフトの導入がおすすめです。企業ごとに異なる給与ルールを適用した給与計算や、割増賃金・控除の計算も一定程度自動化できるため、担当者の業務負担を減らしつつ、正確な支給額の算出を実現できます。

Share

top