給与計算における年末調整とは?計算方法や注意点を詳しく解説
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- 年末調整とは、給与から源泉徴収で天引きされた所得税の過不足を調整するための手続き
- 年末調整では、従業員は給与所得者の扶養控除等(異動)申告書などの提出を求められる
- 複雑な年末調整の計算をミスなく行うためには、給与計算ソフトの導入がおすすめ
年末調整とは、給与から源泉徴収で天引きされた所得税の過不足を調整するための手続きです。企業は毎年行う必要がありますが、計算が複雑なため手順がわからない方も多いかもしれません。この記事では、給与計算における年末調整の計算方法や注意点を解説します。
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年末調整とは
年末調整とは、給与所得者に対する税務手続きで、1年間に支払った給与と源泉徴収された所得税額を精算する作業です。
企業は毎月、給与から所得税を天引きして納付しますが、年末にその年の正確な税額を計算し直します。この調整により、過剰に支払った税金は還付され、不足している場合は追加で徴収されます。
参考:Ⅱ年末調整とは|国税庁
年末調整とは?受けられる控除や必要書類などをわかりやすく解説
年末調整とは、所得税の過不足を調整する手続きのことを指します。年末調整を行うことで各種控除を受けることができますが、企業が適切に行えないと罰則を受けることもあり注意が必要です。本記事では、年末調整に必要な書類や年末調整を行わないとどうなるかなどを解説します。
年末調整の計算に必要な申告書
年末調整の手続きの際には、従業員からの申告書の提出が必要となります。具体的には、扶養控除申告書・保険料控除申告書・住宅ローン控除に関する申告書などがあります。ここでは、4つの申告書について解説します。
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年末調整の計算に必要な申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、従業員が扶養する親族に関する情報を記入することで、所得税および住民税の各種控除の適用が可能です。この申告書で確認される控除には、配偶者控除・扶養控除・障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除などがあります。
扶養控除等申告書を提出しないと、これらの控除が適用されず、税負担が増える可能性があります。したがって、申告漏れや誤記入がないように注意し、必要事項を正確に記入して期限内に提出しましょう。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書は、基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除の3つの申告書が一体となったものです。基礎控除では、年末調整時に合計所得金額が2,500万円以下の人が対象となります。
複数の勤務先からの収入や給与以外の所得を含めない限り、多くの給与所得者が対象となります。 配偶者控除および配偶者特別控除は、合計所得金額が1,000万円以下で、同一生計の配偶者の合計所得金額が133万円以下の人が対象です。
所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える人で、本人または扶養親族が特別障害者である場合や23歳未満の扶養親族がいる場合に適用されます。850万円を超えるか不明な場合でも申告書を提出します。
給与所得者の保険料控除申告書
給与所得者の保険料控除申告書は、年末調整で生命保険料や地震保険料などの保険料控除を受けるための手続きに必要な書類です。給与所得者がその年に支払った各種保険料の控除を申請するために、申告書を記入して勤務先に提出します。
この申告書には、生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料・地震保険料などに関する情報を記載します。保険料控除は、所得税および住民税の計算において、課税対象となる所得を減額でき、支払う税金が軽減される可能性があります。
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書
給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼(特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書は、年末調整において住宅ローン控除を適用するために必要な書類です。
住宅ローン控除は、住宅の新築や購入、特定の増改築などにかかった借入金の利子を所得税額から差し引くことができる制度です。この申告書には、住宅ローン控除の適用を受けるために必要な情報を記載します。
この書類を正確に提出することで、年末調整時に適用される控除額が確定し、適正な税額が計算されます。初年度には確定申告が必要ですが、2年目以降の年末調整でこの申告書を提出することで、税負担が軽減されます。
年末調整の計算方法
年末調整は、各種控除を反映させて最終的な税額を確定させるため、正確な申告と計算が求められます。以下では、年末調整の具体的な計算方法について詳しく解説していきます。
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年末調整の計算方法
年間の給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額を集計する
年末調整の計算方法の最初のステップは、年間の給与支給額・社会保険料・源泉徴収税額を正確に集計することです。まず、年間の給与支給額を確認します。次に、社会保険料の集計を行います。社会保険料には健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料が含まれます。
最後に、源泉徴収税額の集計です。これは毎月の給与から天引きされた所得税の総額を示します。源泉徴収票や給与明細を基に、年間の源泉徴収税額を正確に集計します。
給与所得額を求める
年末調整の計算方法の次のステップは、給与所得控除を差し引いて給与所得額を求めることです。まず、年間の給与支給額が確定したら、それに対する給与所得控除額を計算します。
給与所得控除は、所得税法で定められた控除額で、収入金額に応じて一定の割合や金額が控除されます。給与所得控除額は、収入が増えるにつれて段階的に増加し、具体的な金額は税法の規定に基づいて計算されます。
次に、年間の給与支給額から給与所得控除額を差し引いて、給与所得額を算出します。この計算で得られた給与所得額が、最終的な課税所得の基礎となります。
給与所得控除の金額
給与所得控除の金額は、給与収入に応じて変動します。具体的には、給与収入が増えるほど、給与所得控除の金額も増加しますが、一定の上限があります。以下の表では、給与所得控除の金額についてまとめているので確認しておきましょう。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001〜1,800,000円 | 収入×40%-100,000円 |
1,800,001〜3,600,000円 | 収入×30%+80,000円 |
3,600,001〜6,600,000円 | 収入×20%+440,000円 |
6,600,001〜8,500,000円 | 収入×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
課税給与所得額を求める
年末調整の計算方法の第3のステップでは、所得控除額を差し引いて課税給与所得額を求めます。まず、前のステップで算出した給与所得額を基に、各種所得控除を適用します。
例えば、基礎控除は全ての納税者に一律に適用される控除で、一定額が控除されます。配偶者控除や扶養控除は、扶養家族がいる場合に適用される控除です。 各控除の適用条件と金額を確認し、正確に計算しましょう。
主な所得控除
年末調整の所得控除には15種類あり、主なものは以下の表の通りです。所得控除が適用されるケースについて解説していますので確認しておきましょう。
控除の種類 | 適用されるケース |
---|---|
基礎控除 | 所得金額が2,400万円以下の場合、48万円の控除が適用 |
社会保険料控除 | 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を控除 |
配偶者控除・配偶者特別控除 | 配偶者が同一生計の場合、一定の所得金額以下で適用 |
扶養控除 | 扶養家族の数に応じて所得税からの控除を受けられる |
寡婦控除 | 配偶者を亡くした寡婦が特別な控除を受けられる制度 |
ひとり親控除 | 一人で子供を扶養する親が控除を受けられる制度 |
生命保険料控除 | 支払った生命保険料を所得税から差し引く制度 |
障害者控除 | 障害者手当などを受け取る障害者が控除を受けられる |
勤労学生控除 | 学生が所得税からの控除を受けられる制度 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済等への掛金を支払った場合に受けられる |
参考:年末調整のしかた|国税庁
所得税額を求める
次のステップでは、課税給与所得額に所得税率を掛け、控除額を差し引いて所得税額を算出します。課税給与所得額は、給与所得額から各種所得控除を差し引いた後の金額です。この課税給与所得額に、税法で定められた累進課税率を適用します。
次に、各所得税率に対して定められた控除額を差し引きます。この控除額は、累進課税の影響を調整するためのもので、税負担を公平にする役割を果たします。 注意点として、正確な税率と控除額を適用することが重要です。
所得税の税率
所得税の税率は、所得金額に応じて変動する累進課税制度が適用されています。これは、所得が高いほど高い税率が適用される仕組みです。具体的には、所得金額に対して以下のような段階的な税率が適用されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
住宅ローン控除額を差し引く
年末調整において、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の申告書が提出された場合は、所得税額から住宅ローン控除額を差し引く必要があります。
まず、課税給与所得額に所得税率を掛け、控除額を差し引いて所得税額を算出します。次に、住宅ローン控除額を適用します。
この控除は、一定の条件を満たした住宅ローンの年末残高に対して、決められた割合を掛けた金額が控除される仕組みです。注意点として、正確な控除額を確認し、必ず申告書や証明書類を提出することが重要です。
復興特別所得税を加えて年調年税額を求める
復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源を確保するために、2013年から2037年までの25年間、所得税に追加で課される税金です。この税金の目的は、震災からの復興に必要な財源を安定的に確保することです。
復興特別所得税の算出方法としては、確定した所得税額に対して2.1%の復興特別所得税率を適用します。
過不足金を調整する
年末調整の次のステップでは、源泉徴収税額と年調年税額(年間で納めるべき税額)を比較し、その過不足金を精算します。源泉徴収税額とは、毎月の給与支払い時に天引きされている所得税の合計額です。
一方、年調年税額は、年間の総所得から各種控除を差し引き、最終的に納めるべき税額を計算したものです。源泉徴収税額と年調年税額を比較し、源泉徴収税額が年調年税額より多ければ、その差額は過剰に徴収されたことになります。この過剰分は従業員に還付されます。
反対に、源泉徴収税額が年調年税額より少ない場合、その差額は追加で徴収する必要があります。このプロセスにより、1年間の税額が精算され、従業員が正確に納税することができます。
必要に応じて再計算を行う
年末調整の計算方法の最終ステップとして、必要に応じて再計算を行う必要があります。例えば、新たに扶養家族が増えたり、反対に扶養家族が減ったりした場合、その変更を反映して再計算する必要があります。
また、年の途中で昇給や降給、ボーナスの追加支給など、給与に大きな変動があった場合も再計算が必要です。給与の変動は源泉徴収額に直接影響するため、正確な税額計算が求められます。
再計算を通じて、正しい源泉徴収税額と年税額を確定し、過不足の精算を適切に行います。このように、正確な再計算が行われることで、従業員に対する公平な税負担が確保されます。
年末調整の計算に関する注意点
年末調整の計算にはいくつかの注意点があります。ここでは、企業が年末調整を行う際に注意すべき点を3つ解説します。これらの注意点を確認し、正確な年末調整を行うことで、従業員や企業の税務上のリスクが最小限に抑えられます。
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年末調整の計算に関する注意点
最新の法令を確認する
年末調整の計算を行う際は、最新の法令を必ず確認します。控除項目や税率、計算方法などが変更される場合があり、適切に対応しなければ誤った税額が計算されてしまうおそれがあります。また、必要な書類や提出期限が変更されることもあります。
年末調整業務を行う前に、税務署のホームページをチェックすることが重要です。最新の法令についての理解が難しい場合は、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。
従業員が正確に申告できるようフォローする
年末調整の計算において、従業員が正確な情報を提供できるよう、適切なフォローアップを行うことが重要です。具体的には、従業員に対して申告書の提出期限や必要事項について明確に伝え、提出前に不明な点や疑問点があれば解決するためのサポートを提供します。
また、従業員が新たな変更や追加情報を提供する際にも、その重要性を認識し、適切な手続きを案内します。正確な申告が行われることで、年末調整の計算を適切に遂行でき、従業員や企業の税務上のリスクが最小限に抑えられます。
また、正確な情報提供は、従業員の公平な税負担を確保し、税務上のトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。したがって、従業員が正確な情報を提供できるよう、適切なフォローアップ体制を整えましょう。
従業員が記載した控除額を検算する
従業員が控除金額を記載した申告書が提出された場合は、担当者はその控除額を検算する必要があります。従業員が自身の控除額を記載する際には、間違いや見落としが発生する可能性があります。
特に複雑な控除項目や最新の税制改正に関する情報を把握しきれていない場合、控除金額の算出が誤ってしまうことがあります。その結果、従業員や企業にとって不利益な状況が生じる可能性があります。
担当者は従業員が提出した申告書を詳細に確認して、各控除項目の算出方法や控除の適用条件を十分に理解した上で、控除額を再計算し、誤りがないかどうかを確認する必要があります。
このような検算作業によって、誤った控除額が源泉徴収税額の計算に反映されることを防ぎ、従業員と企業の双方にとって公平かつ正確な年末調整が実現されます。
給与計算ソフトを利用すれば年末調整もスムーズに
給与計算ソフトは、社員の勤怠情報を基に給与計算と給与明細書の作成を自動で行うソフトウェアです。税率や保険料の改定がある度に、手動で給与計算に反映させるのは労力がかかりますが、ソフトなら自動でデータを更新できるため、多くの企業が導入を進めています。
特に年末調整においては、所得税の再計算や過不足の精算が必要となり、手作業ではミスが発生しやすいです。しかし、給与計算ソフトを使用することでこれらの計算を自動化し、ミスを防ぐことができます。
これにより、最新の税法や規則に対応しながら、正確で効率的な業務運営が可能となります。
給与計算ソフトとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説
給与計算ソフトとは、給与計算の自動化や給与明細の発行などを行えるソフトです。業務の効率化や法改正にも対応できる利便性があります。本記事では、給与計算ソフトをよく知らない方のために、機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。
まとめ
年末調整は、給与所得者の年間の収入や控除を適正に計算し、源泉徴収税の調整を行うものです。これにより、年間の収入に応じた正確な税額が確定されます。
年末調整に必要な申告書には、給与所得者の扶養控除等申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書・住宅借入金等特別控除申告書などがあります。これらの申告書には、給与所得者の収入や家族の状況、支払った保険料、住宅ローンの情報などが記載されます。
注意点として、従業員が正確な情報を提供できるようにサポートすることが重要です。従業員が自身で記載した控除額についても、担当者が慎重に検算する必要があります。適切なサポートにより、誤った税額の計算や納税漏れを防ぎ、公平な年末調整が実現されます。
給与計算ソフトの導入は、手続きを効率化し、正確性を高めるために有効です。給与計算ソフトを導入することで、申告書の記入や計算作業を自動化し、ヒューマンエラーを最小限に抑えることができます。
給与計算ソフトの導入により、作業の効率化と精度の向上が実現し、組織の業務効率を向上させることが期待できます。
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