ファクタリングにおける未収入金とは?利用時の仕訳・勘定科目を解説

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  • ファクタリングの未収入金とは営業活動以外での未回収の現金を指し、売掛金とは異なる
  • 債権がファクタリング会社に譲渡されると「売掛金」が「未収入金」に変わる
  • 未収入金と似た勘定科目に「未収収益」があるが、別物であり会計上の意味は異なる

ファクタリングの利用時には、「未収入金」という勘定科目を用いて仕訳する過程があります。未収入金とは営業活動以外での未回収の現金を指し、売掛金とは異なるものです。この記事では、ファクタリングにおける未収入金の処理方法や仕訳の流れ、注意点などを解説します。

目次

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  1. ファクタリングにおける未収入金とは
  2. ファクタリング利用時の仕訳の流れ
  3. ファクタリング利用時の仕訳に関する注意点
  4. まとめ

ファクタリングにおける未収入金とは

ファクタリングとは、売掛金を利用した資金調達方法で、自社の持つ売掛債権をファクタリング会社に譲渡して資金調達を行います。したがって、譲渡後に売掛金が回収不能になっても利用者には支払義務はなく、売掛金の入金を待たず資金運用ができます。

ファクタリングは、融資の利息に比べて高い手数料がかかりますが、融資よりも審査通過のハードルが低く、売掛金を即座に現金化できるというメリットがあります。そのため、各企業はさまざまな目的でファクタリングの利用を進めています。

しかし、ファクタリング利用時には「未収入金」という勘定科目を使って仕訳する過程があります。そのため、ファクタリングを行う際には、未収入金と売掛金の仕訳を明確に行わないと、税務調査などで指摘され、思わぬトラブルに発展する可能性があります

ファクタリングとは|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説

ファクタリングは「債権買取り」のことで、経済産業省が中小企業に向けて推奨している資金調達方法です。スピーディーに資金調達できる点が魅力です。本記事では、ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットの他、ファクタリングが役立つシーンなどについて解説します。

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ファクタリングにおける未収入金とは

  1. 未収入金とは
  2. 売掛金とは

未収入金とは

未収入金とは「未収金」とも呼ばれ、営業活動以外の取引で得た未回収金を指す勘定科目です。たとえば、固定資産や有価証券を譲渡したり、不動産を売却したりした場合の未回収金が未収入金に該当します。

ファクタリングで譲渡する売掛債権は、有価証券に該当します。したがって、売掛債権をファクタリング会社に譲渡した際の未回収金は、「未収入金」として取り扱う必要があります。

売掛金とは

売掛金とは、営業取引で発生した売上代金のうち、未回収のものを指す勘定科目です。売掛金と未収入金は、営業で発生したものか、営業以外で発生したものかで異なります。売掛債権の譲渡で得られる資金は、営業で発生したものではないため、未収入金に該当します。

したがって、ファクタリングでは売掛債権を譲渡した時点で、「売掛金」から「未収入金」に勘定項目が変わることになります。​

売掛金発生日の基準は企業によって異なり、自社倉庫から出荷した日・取引先が検収した日・請求書を発行した日などが指定されています。売掛金発生日の基準をルール化しておくと、各帳簿の整理がしやすくなりミスも減らせます

ファクタリング利用時の仕訳の流れ

ファクタリングには、3者間ファクタリングと2者間ファクタリングの2種類の取引形態があります。3者間と2者間では仕訳方法が異なる部分があるので、記録する際には注意を要します

事業者は複式簿記で記録する必要があり、資産や費用の増加を意味する「借方」と負債・純資産・収益の増加を意味する「貸方」の両方の記録をしなくてはなりません。ここでは、借方と貸方の仕訳も含めて、3者間と2者間にわけて仕訳の流れを解説します。

ファクタリングの会計処理の方法とは|仕訳・勘定科目、注意点を解説

ファクタリングを利用する際は、適切な会計処理が必要となります。しかし、やりとりが複雑な部分もあり、どのように仕訳を行うかわからない方も多いかもしれません。この記事では、ファクタリングの仕訳・勘定科目や会計処理における注意点などを解説します。

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ファクタリング利用時の仕訳の流れ

  1. 3者間ファクタリングの場合
  2. 2者間ファクタリングの場合

3者間ファクタリングの場合

3者間ファクタリングは、ファクタリングを利用する企業(利用者)とファクタリン会社(会社)に加えて、売掛が発生した取引先(売掛先)の3者が関わって進められるファクタリング取引です。

ファクタリング会社は、利用者から売掛債権の譲渡を依頼されると、売掛債権が回収可能かを審査します。審査に通過すると3者間ファクタリングの場合は、利用者が売掛先に債権譲渡の通知を送付し、承諾されると契約が成立します。

3者間ファクタリングの売掛金は、利用者を通さず売掛先から直接ファクタリング会社に支払われます。以下で3者間ファクタリングの仕訳の流れを解説します。

1. 「売掛金」が発生する

取引先に後払いで製品やサービスを販売すると「売掛金」が発生します。売掛金は勘定項目の1つで、勘定項目とその金額は以下のように計上します。

  1. 借方:「売掛金」として売掛債権の金額 
  2. 貸方:「売上」として売掛債権の金額

2. ファクタリング契約により「売掛金」が「未収入金」に変わる

ファクタリング契約が締結されると、売掛債権がファクタリング会社に譲渡されます。しかし、売掛債権の譲渡と同時に資金が手に入るわけではなく、ファクタリング会社からの入金には、ある程度の期間がかかります

そして、売掛債権の譲渡で得る資金は営業活動で得たものでないので、「売掛金」が「未収入金」に変わります。したがって、ファクタリング契約を締結した時点での、勘定項目と金額は以下のようになります。

  1. 借方:「未収入金」として売掛債権の金額 
  2. 貸方:「売掛金」として売掛債権の金額

3. 手数料を処理し「未収入金」が消える

3者間ファクタリングには、売掛金額の1~9%程度の手数料がかかります。手数料は、ファクタリング会社から未収入金が支払われる際に、未収入金から差し引かれます。そのため、利用者が手にできるのは、未収納金と手数料の差額です。

ファクタリングの手数料の​勘定科目は、売上債権の売却を起因とする損失として「売上債権売却損」で計上します。ファクタリング会社から支払われた未収入金は消え、「普通預金」として処理します。

「売上債権売却損」はファクタリング独自の勘定項目で、ツールなどで勘定項目として入ってないときは「支払手数料」の勘定項目を使うことも可能です。ファクタリング会社から資金提供された時点での勘定項目と金額は、以下のようになります。

  1. 借方:「普通預金」として未収納金と手数料の差額
  2. 借方:「売上債権売却損」もしくは「支払手数料」として手数料の金額
  3. 貸方:「未収入金」として売掛債権の金額

2者間ファクタリングの場合

2者間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社の2者の関わりだけで進められるファクタリング取引です。したがって、売掛先に売掛債権譲渡の事実を知られることなく、取引が進められます。

2者間ファクタリングの場合の売掛金は、売掛先が利用者に支払い、その後に利用者がファクタリング会社に支払います。ここが、3者間と違い仕訳方法も異なる点です。以下で2者間ファクタリングの仕訳の流れを解説します。

1. 「売掛金」が発生する

2者間ファクタリングでは、売掛金の発生・ファクタリング契約・ファクタリング会社からの資金提供までは、3者間ファクタリングと同様です。それぞれの時点での勘定科目と金額は、以下のようになります。

<売掛金発生時>

  1. 借方:「売掛金」として売掛債権の金額 
  2. 貸方:「売上」として売掛債権の金額

<ファクタリング契約時>

  1. 借方:「未収入金」として売掛債権の金額 
  2. 貸方:「売掛金」として売掛債権の金額

<ファクタリング会社からの資金提供時>

  1. 借方:「普通預金」として未収納金と手数料の差額
  2. 借方:「売上債権売却損」もしくは「支払手数料」として手数料の金額
  3. 貸方:「未収入金」として売掛債権の金額

2者間ファクタリングでは、契約と資金提供が同日に行われることがあります。その場合は、契約時の仕訳を省略して計上することも可能です。なお、2者間ファクタリングの手数料は10~20%と高めに設定されています。

2. 売掛先から回収した売掛金を「預り金」として処理する

2者間ファクタリングでは、利用者が売掛先から売掛金を回収し、ファクタリング会社へ支払うという手順を踏みます。したがって、3者間ファクタリングとは異なり、売掛先から利用者に売掛金が支払われた際の仕訳が必要です。

この場合、利用者は売掛金の回収をファクタリング会社に代わって行うため、支払われた金額の勘定項目は「預り金」となります。売掛先から売掛金が支払われた時点での勘定項目と金額は、以下のようになります。

  1. 借方:「普通預金」として売掛債権の金額
  2. 貸方:「預り金」として売掛債権の金額

3. ファクタリング会社へ支払い後「普通預金」と相殺する

利用者が回収した売掛金は、利用者がファクタリング会社に速やかに支払わなくてはなりません。その際は、「預り金」を普通預金と相殺して計上します。したがって、ファクタリング会社へ売掛金を支払い後の勘定項目と金額は、以下のように行います。

  1. 借方:「預り金」として売掛債権の金額
  2. 貸方:「普通預金」として売掛債権の金額

ファクタリング利用時の仕訳に関する注意点

ファクタリング利用時の仕訳には、勘定項目以外にも注意を要する点があります。ここでは、以下の3点の注意事項について解説します。

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ファクタリングの手数料は非課税

ファクタリングで行う売掛債権の譲渡は、有価証券の譲渡に該当します。国税庁は、有価証券の譲渡は非課税取引であると定めています。そのため、ファクタリングで得られた資金には、消費税はかかりません

また、ファクタリングを行う際に発生する手数料も消費税法においては、非課税であることが定められています。ファクタリング会社の中には、消費税を上乗せして請求してくる悪質な業者も存在するため、契約前に確認しておきましょう

ただし、ファクタリングを行うための諸経費にあたる債権譲渡登記費用や事務手数料などを別途請求される場合は、消費税がかかります。

振込手数料は課税対象

2者間ファクタリングでは、利用者は売掛先から受け取った売掛金をファクタリング会社に支払います。

その際に発生する振込手数料は課税対象となり、仕訳項目は「支払手数料」です。また、ファクタリング会社から振込手数料を請求される場合もあります。

決算期末をまたいだ売掛金も課税対象

ファクタリングの申し込みから入金までの間に決算期末をまたぐ場合も、税金がかかるため注意が必要です。売掛金が発生した時点で売上を計上しますが、決算期末までに支払いがない場合、資金を受け取っていないまま法人税や消費税が課されてしまいます。

特に金額の大きい売掛金を利用する場合は、税金も高くなります。また、会計処理も複雑になってしまうため、できれば決算期末近くのファクタリング利用は避けた方が無難です。

「未収入金」と「未収収益」は別物

「未収入金」とよく似た勘定項目に「未収収益」がありますが、使用するケースや意味は異なるため使い方に注意しましょう。「未収入金」は、金銭債権譲渡した際の未払い分に用いる勘定項目です。

一方で未収収益は、継続的なサービス提供などを行う場合に使用する経過勘定であり、すでに発生した分の債権のうち、支払期日がまだ来ていない場合に用います。例えば、債権の年間利息などが該当します。

まとめ

売掛債権を譲渡して迅速に資金調達ができるファクタリングですが、仕訳する際には「未収入金」という勘定科目を用いる過程があり、注意しなくてはなりません。未収入金とは、営業活動以外での未回収金を指し、売掛金とは異なるものです。

ファクタリングにおける売掛債権の譲渡による未回収金は、営業活動で得られたものではないため、「未収入金」に該当します。ファクタリングでも、2者間と3者間では仕訳の流れが異なる部分があるため、間違いのない会計処理を行うことが大切です。

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