ファクタリングと取引信用保険の違いとは?どちらを選ぶべきかも解説

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  • ファクタリングと取引信用保険は、目的や資金受け取りのタイミングなどが異なる
  • 保証型ファクタリングと取引信用保険は非常に似ているが、履行事由などが異なる
  • スピーディーな資金調達を目的とする場合は買取型ファクタリングがおすすめ

ファクタリングと似た資金繰りに役立つサービスに、取引信用保険があります。どちらも売掛金を対象としていて似た部分が多く、違いが分からない方も多いかもしれません。この記事では、ファクタリングと取引信用保険の違いやそれぞれにおすすめなケースなどを解説します。

目次

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  1. ファクタリングと取引信用保険の違いとは
  2. ファクタリングと取引信用保険の比較
  3. 保証型ファクタリングと取引信用保険の違い
  4. ファクタリングと取引信用保険それぞれに向いているケース
  5. まとめ

ファクタリングと取引信用保険の違いとは

ファクタリングも取引信用保険も、売掛債権を利用した企業の資金繰りに役立つサービスです。ファクタリングと取引信用保険は、似ている部分が多いため混同されやすいですが、さまざまな点で異なるため、それぞれの特徴を活かして利用することが大切です。

そこで本記事では、ファクタリングと取引信用保険の違いや、それぞれにおすすめのケースなどを解説します。2つの違いを把握し、自社に一番適切なサービスを利用しましょう

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ファクタリングと取引信用保険の違いとは

  1. ファクタリングとは
  2. 取引信用保険とは

ファクタリングとは

ファクタリングとは、企業が所有する売掛金(売掛債権)を早期に現金化するサービスです。日本では比較的新しいサービスですが、近年ファクタリングを利用する企業が多くなったことにより、サービスを提供するファクタリング会社も増えています。

ファクタリングには買取型と保証型と呼ばれる2つの種類があります。以下で、各ファクタリングの特徴や仕組みなどについて解説します。

ファクタリングとは|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説

ファクタリングは「債権買取り」のことで、経済産業省が中小企業に向けて推奨している資金調達方法です。スピーディーに資金調達できる点が魅力です。本記事では、ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットの他、ファクタリングが役立つシーンなどについて解説します。

買取型ファクタリング

買取型ファクタリングは、企業の持つ売掛債権をファクタリング会社に売却することで、資金を調達する方法です。資金調達に担保や保証人の必要がなく、売掛金の支払期限前に資金調達ができるので、近年多くの企業が利用するようになりました。

ただし、買取型ファクタリングの利用には手数料がかかり、利用者が実際に受け取ることができる金額は、売掛金額から手数料を差し引いた額となります。

買取型ファクタリングには、利用者とファクタリング会社の間で行う2者間ファクタリングと、利用者とファクタリング会社に加えて売掛先も関わって取引を行う3者間ファクタリングの2種類の取引形態があります。

2者間ファクタリングでは、売掛先に売掛債権を売却することを知られずに取引が進められますが、3者間ファクタリングでは、売掛先に売掛債権の売却を連絡して進めます。手数料は、3者間ファクタリングの方が安く抑えられるため、より多くの資金調達が可能です。

保証型ファクタリング

保証型ファクタリングは、売掛先の支払いをファクタリング会社に保証してもらうことで、確実な現金の回収が行えます。ファクタリング会社に保証料を支払うことで、売掛先の倒産などで売掛金回収ができなくなった場合でも、自社へのダメージを最低限に抑えられます。

企業同士の取引では売掛が一般的で、常に売掛金が回収不能になるリスクを抱えています。そのため、初めて取引する企業に対して、売掛金の回収ができるかの審査を行うことが一般的です。よって、審査軽減のために、保証型ファクタリングを利用する企業も多いです

取引信用保険とは

取引信用保険とは、取引先の倒産や破産などに備える保険のことです。利用者は保険料を保険会社に支払うことで、売掛債権などが回収できなくなった場合に保険金を受け取ることができ、自社への大きなダメージを防げます。

取引信用保険を利用している会社は、取引先の倒産や破産などでの影響を受けることなく、安定した経営ができるのが大きなメリットです。また、取引信用保険への加入は、安定した経営が行われていることが評価され、金融機関などからの信用向上にもつながります。

ファクタリングと取引信用保険の比較

ここでは、買取型ファクタリング・保証型ファクタリング・取引信用保険の違いを、下記の5つの観点で比較しながら解説します。

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目的

ファクタリングと取引信用保険の目的は、大きく分けて資金調達と売掛債権が回収不能となるリスク回避の2つです。買取型は、売掛期日前の資金調達が主な目的で、仮に売却後に売掛債権が回収不能になっても、利用者が責任を負うことはありません。

保証型ファクタリングと取引信用保険はどちらも、売掛債権が回収不能となり自社の経営に影響することを回避するために利用します。ほかにも、取引する企業の与信審査の軽減に利用される場合もあります。

目的
買取型ファクタリング早期の資金調達
保証型ファクタリング売掛債権が回収不能に陥るリスクの回避・軽減
取引信用保険売掛債権が回収不能に陥るリスクの回避・軽減

資金受け取りのタイミング

買取型では、売掛債権の支払期日前に資金調達ができます。2者間ファクタリングの場合は、契約から平均2~4日、早ければ即日での資金受け取りができるケースもあります。3者間ファクタリングの場合は、契約から平均10~20日程度で入金されます。

保証型ファクタリングと取引信用保険は損害保険であるため、売掛金の回収ができなくなる事由が発生した際に、資金受け取りが可能になります。

資金受け取りのタイミング
買取型ファクタリング売掛債権支払期限前買取契約が締結された日に入金される場合もある
保証型ファクタリング売掛金の回収ができなくなったとき
取引信用保険売掛金の回収ができなくなったとき

手数料・保証料・保険料

買取型での手数料は、2者間と3者間で異なります。ファクタリング会社が売掛金回収不能になるリスクが高い2者間では、高い手数料が設定されています。支払いのタイミングはどちらも資金提供時で、利用者は売掛金額から手数料を差し引いた金額を受け取ります。

保証型ファクタリングでは、取引先を個別に選択して契約を行い、保証料は契約時に支払います。一方、取引信用保険では複数の取引先が対象となり、保険料(年率)を月ごとに分割して支払うことが多いです。

相場支払いのタイミング
買取型ファクタリング
(手数料)
・2者間:売掛金額の10〜30%
・3者間:売掛金額の2~9%
資金受取時に、売掛金額から引かれる
保証型ファクタリング
(保証料)
売掛金額の1~8%契約締結時
取引信用保険
(保険料)
支払限度額の1〜4%月ごとの分割支払が多い

審査の難易度

3者間ファクタリングは審査の難易度が低く、掛売先の信用度審査が重視されます。保証型ファクタリングも掛売先の信用力を審査しますが、3者間に比べて厳しく審査されます。また、2者間ファクタリングでは、利用者の信用力も審査の対象となります。

取引信用保険の審査は、一般的に多数の売掛債権が保証の対象となるため、買取型や保証型に比べて審査はさらに厳しくなります。審査の結果によっては、補償限度額が抑えられたり、保険料が割高になったりする場合があります。

審査の難易度
買取型ファクタリング・2者間:高い
・3者間:2者間より低い
保証型ファクタリング高い
取引信用保険非常に高い

売掛先への通知の有無

買取型ファクタリングでは、売掛先にファクタリングの利用が知られるケースがあります。特に3者間ファクタリングでは、売掛先も含めた3者で契約するため、確実に相手に通知されることになります。

また、2者間ファクタリングであっても、債権譲渡登記を行った場合には、売掛先に知られる可能性はゼロではありません。一方で、保証型ファクタリングや取引信用保険では、売掛先への通知はありません。

売掛先への通知
買取型ファクタリング2者間:原則なし
3者間:あり
保証型ファクタリングなし
取引信用保険なし

サービス提供の事業者

買取型や保証型のファクタリングを提供しているのは、ファクタリングを専門とするファクタリング会社が中心でした。しかし、近年の需要拡大に伴い、銀行を始めとする金融機関での提供も増えています。一方、取引信用保険の取り扱いは損害保険会社のみです。

サービス提供の事業者
買取型ファクタリングファクタリング会社・銀行・金融機関
保証型ファクタリングファクタリング会社・銀行・金融機関
取引信用保険損害保険会社

保証型ファクタリングと取引信用保険の違い

保証型ファクタリングと取引信用保険は、どちらも売掛債権が回収不能になった場合の備えとして利用するものであるため、類似する部分が多く線引きするのが難しいです。しかし、下記に示した履行事由と売掛先選択の自由度では、大きな違いがあります

ここではこの2点について、保証型ファクタリングと取引信用保険を比較しながら詳しく解説します。

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保証型ファクタリングと取引信用保険の違い

  1. 履行事由
  2. 売掛先選択の自由度

履行事由

保証型ファクタリングで売掛債権が保証されるのは、売掛先が倒産した場合に限られます。しかし、取引信用保険では売掛先の倒産に加え、売掛先の支払遅延も保険金支払いの事由となり得ます

ただし、支払遅延で保険金が受け取れるのは、支払見込みがない場合に限られます。たとえば、1か月待てば支払いが可能である場合や、分割払いにすれば支払いができる場合には保険金の受け取りはできません。

売掛先選択の自由度

保証型ファクタリングでは、売掛先を自由に選択して保険をかけることができます。したがって、特定の取引先だけを対象に保険をかけることも可能です。しかし、取引信用保険では、複数の売掛先が対象となり、売掛先選択の自由度は制限されています。

取引保険では、保険の対象とする取引を「全取引」「10社以上」「売上上位10社」のいずれかを選択するのが基本となっています。そのため、信頼関係が構築されている信用できる取引先を除外したいなどの要望に応えることはできません。

ファクタリングと取引信用保険それぞれに向いているケース

買取型ファクタリング・保証型ファクタリング・取引信用保険は、それぞれに特徴があり、その特徴を活かした利用をすれば、より大きな効果が得られます。ここでは、それぞれに向いているケースについて解説します。

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買取型ファクタリングがおすすめなケース

買取型ファクタリングは、今すぐに資金調達をして新しいプロジェクトをスタートさせたり、設備投資をしたりしたいケースに利用すると、高い効果を発揮します。買取型ファクタリングでは、審査も比較的緩く融資のような担保や保証人を用意する必要もありません。

また、売掛債権の回収ができなくなった場合でも利用者はそれを補填しなくていいため、入金された直後から安心して資金運用ができます。売掛先に売掛債権を売却することを知られても問題がない場合は、手数料の安い3者間ファクタリングがおすすめです。

保証型ファクタリングがおすすめなケース

取引信用保険では、利用者が取引先を選ぶことはできませんが、保証型ファクタリングなら利用者で保証してもらいたい取引先を選べます。したがって、保証型ファクタリングは、特定の取引先の売掛債権だけを保証してもらいたいケースに利用すると効果的です。

また、販路拡大や新規事業展開のために、新たな取引先を開拓したいシーンでの利用もおすすめです。新たな取引先の信用調査を簡略化しても、その取引先を保証型ファクタリングしておけば、安心して取引ができます。

取引信用保険がおすすめなケース

取引信用保険は、複数の取引先を保証するのが特徴の保険です。そのため、取引先が多く、与信管理が十分にできないケースに利用すると効果的です。取引信用保険では、すべての取引先を保険対象にすることもできます。

また、取引先ごとに与信限度額が設定されており、取引先に与信上の問題が起こると、与信限度額の減額や、保証が撤回される場合があります。これによって利用者は、取引先の経営状況などを把握できるため、早期の段階で次の取引先の検討に入れます

まとめ

ファクタリングと似た資金繰りに役立つサービスに、取引信用保険があります。ファクタリングには、買取型と保証型の2種類があり、買取型は自社が保有する売掛債権を売却して、資金調達を行います。スピーディーな資金調達をしたい場合に非常に便利に利用できます。

保証型ファクタリングと取引信用保険は、どちらも売掛債権が回収不能になった場合に備えるための保険です。両者は似ていますが、履行事由や売掛先選択の自由度などに違いがあります。各サービスの特徴を活かした利用をすれば、自社の企業活動活性化が図れます。

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