ファクタリングと下請法の関係とは?禁止事項・適用条件も解説
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- 下請法とは、親事業者による下請け業者に対する濫用行為を取り締まるための法律
- 下請法では、下請代金の支払遅延や減額、不当な取り消し・内容変更などを禁止している
- 下請け業者は、親事業者の売掛金をファクタリングすることも可能である
下請法とは、親事業者による下請け業者に対する濫用行為を取り締まるための法律です。下請法では、下請け業者が親事業者の売掛金をファクタリングすることも可能となっています。この記事では、ファクタリングと下請法の関係や禁止事項などを解説します。
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ファクタリングと下請法の関係とは
ファクタリングとは、企業が未払いの売掛金の権利をファクタリング会社に譲渡して、早期に現金を手に入れる資金調達方法です。この手法では、通常、ファクタリング会社が売掛金の金額を前払いし、支払期日に売掛先から代金を回収します。
ファクタリングの利用に関しては、企業が主に資金調達のための手段として自由に選択できます。しかし、下請け業者の場合、「下請法」などの関係からその自由は許されるのか疑問に思っている方もいるでしょう。
そこで本記事では、ファクタリングと下請法の関係や禁止事項、下請法の適用条件などについて分かりやすく解説します。
ファクタリングとは|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説
ファクタリングは「債権買取り」のことで、経済産業省が中小企業に向けて推奨している資金調達方法です。スピーディーに資金調達できる点が魅力です。本記事では、ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットの他、ファクタリングが役立つシーンなどについて解説します。
親事業者の売掛金もファクタリングできる
ファクタリングに関しては、多くの企業や会社がさまざまな状況のもとで利用しています。その中の一形態として、下請け業者が親事業者の未回収の売掛金をファクタリングすることも可能です。これにより、下請け業者は支払期日よりも前に資金調達することができます。
この場合、下請法によって、親事業者が売掛金の額や条件などを変更することが禁止されています。そのため、下請け業者は安心してファクタリング会社に親事業者の売掛金の債権を譲渡することができます。
また、ファクタリング会社にとっても下請法で守られる売掛金の債権なので、不安なく買い取りができ、手数料などの買い取り条件もよくなります。このように下請法は、下請け業者の利益を保護し、公正な取引条件を確保することを目的としています。
下請け業者がファクタリングを利用できる理由
下請法は、正式には「下請代金支払遅延等防止法」という名称であり、下請け業者と親事業者との取引において、下請け業者の利益を保護して、公正な取引条件を確保することを目的としている法律です。
この下請法の保護のもとで、下請け業者は親事業者の売掛金の債権をファクタリング会社に譲渡して、不安なくファクタリングを利用できます。ここからは、下請法で制定されている主な項目や内容について詳しく解説します。
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下請け業者がファクタリングを利用できる理由
下請代金の支払遅延禁止
下請法では、下請代金の支払遅延禁止が規定されています。そのため、親事業者は製品やサービスを受けた日から起算し、60日以内に双方で決定した支払期日までに下請代金全額の支払いをしなければ、下請法違反となります。
この規定の目的は、下請業者が業務を遂行するための経費や労働賃金に充当するために、親事業者に対して決められた時期までに下請代金を支払うよう義務付けていることです。
そのため、下請業者がファクタリングを利用する場合でも、親事業者は条件や内容に不満があったとしても不当に支払いを遅らせることはできません。
手形やファクタリングの支払いサイトも60日に
これまで、手形やファクタリングなどの一括決済方式による下請代金の支払においては、支払いサイトが120日(繊維業の場合は90日)を超えるものが「割引困難手形」として指導の対象とされていました。
しかし、令和6年11月1日以降は、支払いサイトは「60日以内」が妥当とする内容に見直されます。これを超えてしまうと、支払期日を定める義務に違反することになります。
参考:(令和6年10月1日)手形等のサイトの短縮について|公正取引委員会
参考:手形が下請代金の支払手段として用いられる場合の指導基準の変更について|公正取引委員会
下請代金の減額禁止
下請法では、発注時に決定した代金を親事業者が不当に減額することを禁止しています。これにより、下請業者に明確な責任や理由がない限り、親事業者は売掛金などの債権の減額はできないことになります。
この規定の目的は、下請業者に対して公正な取引を保障することです。もし親事業者が契約金額を勝手に減額することができれば、下請業者は資金調達の予定や目処がたたず、業務を継続することが難しくなるためです。
このように下請法では、契約金額を親事業者が減額することを禁止しているため、売掛金の金額も確定されます。よって、下請業者はファクタリングを安心して利用することができます。
返品の禁止
下請法では、明確な理由なく下請業者から納品された製品などを返品できないことが規定されています。もし、親事業者が正当な理由なしに下請業者から納品された製品などを返品できると、下請業者は予期せぬ損失を被ることになります。
そのため、親事業者は下請事業者から納入された製品などの品質や規格について、明確に下請業者に責任があると判断できる不良品の場合を除き、親事業者の都合で返品することはできません。
また、下請け業者がファクタリングを利用して、売掛金の債権を現金化したことが返品の理由になっている場合には、下請法に違反することになります。
有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
下請法においては、親事業者が下請け業者に対して有償支給した原材料などの費用を支払期日より前に支払わせることを禁止しています。もし、下請け業者が支払期日よりも前に原材料の費用を支払うと、不当に利益が減少してしまいます。
また、下請業者が有償支給原材料などの対価を支払い期日以前に支払うと、下請代金の額が相殺され、売掛金が減ることになります。したがって、ファクタリングにより調達できる現金も少なくなってしまいます。
この規定の目的は、下請業者の利益を保護し、公正な取引を促進することです。支払期日より前に原材料などの費用の支払いを禁止することで、下請業者が適切な利益を得られるようになり、取引の公平性と信頼性が確保されます。
不当な取消・内容変更の禁止
下請法により、下請け業者に責任がない場合には、発注の取消ややり直しをさせることが禁止されています。これは、親事業者が発注内容や契約内容に関して下請業者に責任がない場合に、一方的に発注の取消ややり直しを要求することを防止するためです。
具体的には、下請け業者が契約や発注に従って適切に製品の製造や業務を実行し、その結果品質やスケジュールに問題がない場合には、親事業者は下請業者に対して不当な発注の取消ややり直しを要求することはできません。
この規定の目的は、下請け業者の利益を保護し、公正な取引を促進することです。もし、親事業者が下請け業者に対して不当な発注の取消ややり直しを要求できると、下請業者は無理な負担を強いられ、業務の遂行や経済的負担が増大してしまいます。
下請法の適用条件
下請法が適用されるのは、原則として資本金が1,000万円を超える会社です。このような会社は、下請け業者との取引において下請法の規定に従う必要があります。一方、資本金が1,000万円以下の会社は、下請法の適用対象外となります。
そのため、一部の会社は意図的に資本金を1,000万円ちょうど、あるいは1,000万円以下に設定することによって、下請法の規制や義務の適用を回避しようとする場合があります。
ただし、資本金の額だけでなく、実際の業務内容や取引の規模、契約条件などによっても下請法の適用の対象となることがあります。そのため、資本金が1,000万円以下であっても実際の業務が下請法の適用範囲に該当する場合は、規定に従う必要があります。
資本金1,000万1円以上の親事業者の売掛金を使うのがおすすめ
下請法は、資本金1,000万1円以上の会社に適用されます。下請法の対象となる親事業者からの売掛金は、一般的に信頼性が高く、支払い遅延や減額の可能性が低いと見なされます。
また、ファクタリング会社は、下請法が適用される親事業者の売掛金を買い取る場合のリスクを低く見積もることができます。
そのため、ファクタリングを利用する場合には、下請法の対象となる親事業者からの売掛金をファクタリングすることにより、売掛金の回収リスクを回避し、確実に資金を調達する可能性が高まります。
まとめ
ファクタリングは、企業が売掛金をファクタリング会社に売却し、代わりに早い段階で現金を受け取る方法です。これにより、企業は資金を早期に調達し、売掛金の回収リスクを回避できます。
一方で下請法は下請業者を保護し、主契約業者の不当な取引行為を防止するための法律です。下請法が適用される親事業者の売掛金は、支払い遅延や減額のリスクが低いため、ファクタリング会社も買い取りやすくなります。
ファクタリングを利用する場合には、下請法が適用される親事業者かどうかを判断して、リスクを回避し、確実性のあるファクタリングを行いましょう。
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