ファクタリングの会計処理の方法とは|仕訳・勘定科目、注意点を解説

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  • ファクタリングには買取型と保証型があり、それぞれ会計処理の方法が異なる
  • ファクタリングの手数料は損失であるため、「売上債権売却損」として処理する
  • ファクタリングに消費税はかからないが、決算期末をまたいだ売掛金は課税対象になる

ファクタリングを利用する際は、適切な会計処理が必要となります。しかし、やりとりが複雑な部分もあり、どのように仕訳を行うかわからない方も多いかもしれません。この記事では、ファクタリングの仕訳・勘定科目や会計処理における注意点などを解説します。

目次

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  1. ファクタリングの会計処理の方法とは
  2. ファクタリングの仕訳・勘定科目
  3. ファクタリングの会計処理に関する注意点
  4. ファクタリングの会計処理に困ったら専門家に相談しよう
  5. まとめ

ファクタリングの会計処理の方法とは

ファクタリングは、未回収の売掛金をファクタリング会社に売り渡して、資金調達をする方法です。これにより、取引先からの支払いを待たずに現金を手に入れることができます。ただし、この取引をする際には会計処理が必要です。

ファクタリングを利用すると、会社の売掛金が減る代わりに現金が増えるので、会計帳簿にも変化が生じます。しかし、やりとりが複雑な部分もあり、どのように仕訳を行うかわからない方も多いかもしれません。

この記事では、ファクタリングの仕訳・勘定科目や会計処理における注意点などを解説します。まずは、以下でファクタリングの種類から解説します。

ファクタリングとは|意味やメリットデメリットをわかりやすく解説

ファクタリングは「債権買取り」のことで、経済産業省が中小企業に向けて推奨している資金調達方法です。スピーディーに資金調達できる点が魅力です。本記事では、ファクタリングの仕組みや種類、メリット・デメリットの他、ファクタリングが役立つシーンなどについて解説します。

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ファクタリングの会計処理の方法とは

  1. 買取型ファクタリング
  2. 保証型ファクタリング

買取型ファクタリング

買取型ファクタリングは、未回収の売掛金を現金化するためのサービスです。買取型では、ファクタリング会社が売掛債権を直接買取ります。これによって、企業は未回収の売掛金をすぐに現金化することができます。

買取型ファクタリングを利用すると、担保や保証人が不要で、手続きも比較的簡単です。企業は売掛債権をファクタリング会社に売却することで、取引先からの支払いを待つ必要がなくなり、すぐに資金を手に入れることができます。

買取ファクタリングには、以下のような取引形態があります。

2者間ファクタリング

2者間ファクタリングは、企業とファクタリング会社の間で行われる取引の形式です。この取引形式では、取引先企業の承諾を得る必要がないため、売掛先とのビジネス関係に悪影響を及ぼす心配がありません。

さらに、手続きが簡略化されており、迅速に現金を手に入れることができます。例えば、売掛金の回収期間を短縮したい場合や、資金を急いで必要とする場合などに、2者間ファクタリングが選択されることがあります。

3者間ファクタリング

3者間ファクタリングは、依頼企業、ファクタリング会社、そして売掛先の3者が関与する取引形態です。この取引形態では、依頼企業が売掛先との契約を必要とするため、売掛先の承諾が不可欠です。

この手続きのため、3者間ファクタリングでは現金化までに時間がかかることがありますが、手数料が比較的安価で審査も通りやすいという利点があります。さらに、信用力調査は取引先に対して行われるため、依頼企業の経営状況などは考慮されません。

そのため、審査を通過する可能性が高くなります。3者間ファクタリングは、取引先からファクタリング会社へ直接支払うため、依頼企業にとって売掛金回収の手間が省けます。

保証型ファクタリング

保証型ファクタリングは、ファクタリング会社に保証料を支払うことで、一定の範囲内で売掛金の回収が保証される仕組みです。このサービスでは、取引先が支払いを滞らせたり倒産したりした場合に、ファクタリング会社が一定の金額を保証してくれます。

具体的には、取引先が倒産してしまったり、支払いを滞らせてしまったりしたなどで債権を回収できなくなった際に、ファクタリング会社から保証金額を受け取ることができます。これにより、企業は売掛金の回収不能リスクを軽減し、安心して現金化することができます。

ファクタリングの仕訳・勘定科目

ファクタリング取引は、売掛金を現金化する際に発生するため、正確な仕訳と適切な勘定科目が必要です。以下では、様々なケースにおけるファクタリング取引の仕訳と対応する勘定科目について詳しく解説していきます。

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買取型ファクタリング(2者間)の場合

買取型ファクタリング(2者間)の場合の仕訳と勘定科目について理解することは、企業の財務管理において重要です。以下では、買取型ファクタリング(2者間)の場合における仕訳と対応する勘定科目について詳しく解説していきます。

売掛金が発生した時

売掛金が発生した時の処理方法は、通常の会計処理と同じです。売上が発生した段階で、取引先に対して請求書を作成し、売掛金と売上の仕訳を行います。具体的には、売掛金の勘定に対して金額を借方に記入し、売上の勘定に対して同額を貸方に記入します。

例えば、100万円のファクタリング取引があった場合、以下のように仕訳を行います。

借方貸方
売掛金100万円売上100万円

ファクタリング契約を結んだ時

ファクタリング契約を結んだ時は、まだ売掛金の代金を受け取っていない段階です。この時点では、売掛金はファクタリング会社に譲渡したものの、実際の入金がまだ行われていないため、未収入金として処理します。

未収入金は、まだ回収されていない金銭を記録する勘定科目です。つまり、まだ現金を受け取っていない状態で、ファクタリング業者からの入金を待つための勘定科目です。例えば、100万円のファクタリング契約を結んだ場合、以下のように仕訳を行います。

借方貸方
未収入金100万円売掛金100万円

ファクタリング会社から入金された時

ファクタリング会社から譲渡代金が入金された時の処理方法では、まず入金された譲渡代金を企業の普通預金として記録します。つまり、ファクタリング会社からの入金額を企業の口座に普通預金として受け入れた金額として記録します。

次に、手数料として差し引かれた額を「売上債権売却損」として記録します。ファクタリング契約において手数料が発生した場合、その金額を売上債権売却損として勘定科目に記録します。

例えば、100万円のファクタリングで手数料が5万円引かれた場合、以下のように仕訳を行います。

借方貸方
普通預金95万円未収入金100万円
売上債権売却損5万円

取引先から売掛金が入金された時

取引先から売掛金が入金された場合、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは異なる処理が行われます。2社間ファクタリングでは、売掛先にはファクタリングを利用していることは伝わりません。

そのため、売掛先からの入金期日に売掛金を回収するのは利用者です。ファクタリング会社の代行として、売掛金を回収することになります。一方、3社間ファクタリングでは、売掛金の支払いが取引先から直接ファクタリング会社へ行われます。

つまり、取引先がファクタリングを利用していることが売掛先に伝わります。そのため、企業側では売掛金の回収に関する経理処理は行われません。

2社間ファクタリングでは企業が売掛金の回収業務を行う一方、3社間ファクタリングではファクタリング会社が代行して回収するため、経理処理の負担が異なります。2者間ファクタリングで売掛金の入金があった場合、以下のような仕訳を行います。

借方貸方
普通預金100万円預り金100万円

ファクタリング会社に売掛金を支払った時

売掛金が入金された際、2者間ファクタリングでは、企業はファクタリング会社に支払いを行います。この支払い工程は、2社間ファクタリングのみで発生します。その際の経理処理は、以下のようになります。

借方貸方
預り金100万円普通預金100万円

買取型ファクタリング(3者間)の場合

3社間ファクタリングは、基本的に2者間ファクタリングと同じですが、売掛先から売掛金が入金された時やファクタリング会社に売掛金を支払った時の仕訳が不要です。

通常の2者間ファクタリングでは、企業が売掛金の回収や支払いに関与しますが、3社間ファクタリングでは、売掛先から直接ファクタリング会社に売掛金が振り込まれます。この直接的な支払いや入金の仕組みにより、企業側での経理処理は不要です。

保証型ファクタリングの場合

保証型ファクタリングの場合、仕訳は通常のファクタリングとは異なる場合があります。企業が債権回収リスクをファクタリング会社に委託するため、会計処理においてもその特性を反映させる必要があります。

以下では、保証型ファクタリングの仕訳とそれに関連する勘定科目について詳細に解説していきます。

売掛金が発生した時

保証型ファクタリングの場合、売掛金が発生する際の処理は通常の会計処理と同様に行われます。たとえば、100万円の売掛金が発生した場合、以下のように仕訳を行います。

借方貸方
売掛金100万円売上100万円

ファクタリング契約を結んだ時

保証型ファクタリングでは、ファクタリング契約を結ぶ際に支払う金額は保証料のみです。買取型ファクタリングとの大きな違いは、支払いが保証料のみである点です。

保証料は万一の場合に備えるためのものであり、売掛金が問題なく回収できた場合でも支払った保証料は返金されません。ただし、ファクタリング契約を結ぶことで売掛金の未回収リスクを軽減できるため、その安心感は企業にとって重要です。

ファクタリング会社に対して1万円の保証料を支払った場合、その処理方法は以下の通りです。

借方貸方
支払手数料1万円普通預金1万円

取引先から売掛金を回収できなくなった時

取引先から売掛金を回収できなくなった場合、保証型ファクタリングではファクタリング会社がその金額を保証します。つまり、企業が売掛金を回収できなくなった場合でも、ファクタリング会社が一定の金額を保証してくれるので、企業はその損失を回避できます。

このような状況では、まず売掛債権が回収不能となり、貸し倒れとして処理されます。そして、この貸し倒れの金額に対応する仕訳処理が行われます。例えば、100万円の売掛債権が回収不能となった場合、次のような仕訳を行います。

借方貸方
貸倒損失100万円売掛債権100万円

ファクタリング会社から保証金が支払われた時

保証型ファクタリングでは、ファクタリング会社が売掛金の回収を保証するため、保証料が支払われることがあります。この保証金がファクタリング会社から支払われた場合、会計処理を行います。

ファクタリング会社から支払われた保証金は、現金や預金といった資産として受け取ります。そして、この受け取った保証金を「雑収入」として記録します。

雑収入とは、通常の営業活動とは異なる収益に関する科目であり、保証金の受領は会社の通常の業務活動ではないため、このような科目に計上されます。

その後、ファクタリング会社が保証を行った場合、売掛債権の権利はファクタリング会社に移ります。そして、ファクタリング会社が売掛金の回収を担当します。例えば、100万円の保証金がファクタリング会社から支払われた場合、次のような仕訳を行います。

借方貸方
普通預金100万円雑収入100万円

ファクタリングの会計処理に関する注意点

ファクタリングの会計処理を行う際にはいくつかの注意点があります。これらの注意点を確認することは、正確な会計情報の記録と企業の財務状況の把握に重要です。以下では、ファクタリングの会計処理に関する重要な注意点を解説していきます。

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手数料の勘定科目は「売上債権売却損」

ファクタリングの手数料は、売掛金を現金化する際に発生する損失です。そのため、会計処理上では、この手数料を損失として処理する必要があります。具体的には、「売上債権売却損」という勘定科目にこの手数料を記録します。

これは、売掛金を売却する際に発生する損失を表す科目です。売上債権を売却することで得られる収益とは対照的に、手数料は企業にとっての損失となります。ただし、会計ソフトによっては、このような項目が用意されていない場合もあります。

その場合は、手数料を「支払手数料」や「雑損失」など他の適切な費用勘定科目に記録することになります。いずれにせよ手数料がファクタリングによる売掛金の売却に関連する損失であることを認識して、処理することが重要です。

消費税はかからない

ファクタリング取引では、調達資金や手数料には消費税がかかりません。これは、ファクタリングによる資金調達は、国税庁によって定められている非課税取引に該当するためです。

基本的に売掛金をファクタリング会社に売却することは、金銭債権を譲渡する行為であるため、消費税は課税されません。しかし、債権譲渡登記が必要な契約の場合、司法書士に支払う報酬には消費税が発生します。

これは例外的なケースであり、通常のファクタリング取引では消費税の課税対象となりません。

参考:No.6201 非課税となる取引|国税庁

決算期末をまたいだ売掛金は課税対象

ファクタリング契約を結んでから、資金が未入金の状態で決算期末をまたぐと、現金化されていない売掛金は課税対象になります。通常はファクタリングを利用すると、売掛金が発生した時点で売掛先との取引を計上します。

しかし、決算期末に未入金の状態が残ると、税金はすでに計上した売上に基づいて課税されます。つまり、資金がまだ入金されていないにも関わらず、税金が課されることになります。

このような状況では、法人税や消費税の支払い額が予想以上に高くなる可能性があります。そのため、決算期をまたぐ場合は、ファクタリングの契約も決算期末に合わせるなどの対策が必要です。

ファクタリングの会計処理に困ったら専門家に相談しよう

ファクタリングの会計処理は複雑で、誤った仕訳を行うと税務上の問題を引き起こす可能性があります。そのため、会計処理に迷った場合は、専門家に相談することがおすすめです。税理士は専門知識を持ち、会計処理や税務に関するアドバイスを提供してくれます。

特にファクタリングのような複雑な取引に関する相談にも対応しています。また、税務署もファクタリングの会計処理に関する相談に乗っています。税務署では、記帳指導担当が無料で記帳に関する説明会や具体的な記帳方法の指導を行っています。

このようなイベントに参加することで、実務に役立つ知識を得ることができます。専門家に相談することで、ファクタリングの会計処理に関する疑問や不明点を解決し、スムーズな業務運営を支援してもらうことができます。

まとめ

ファクタリングは、企業が未回収の売掛金をファクタリング会社に売却することで、迅速な資金調達を行う方法です。これにより、取引先からの支払いを待たずに現金を手に入れることができます。しかし、この取引をする際には会計処理が必要です。

ファクタリング取引は売掛金の現金化に伴うものであり、正確な仕訳と適切な勘定科目が必要です。また、注意点もあります。ファクタリングの会計処理には専門知識が必要であり、不明点や疑問があれば専門家に相談することが重要です。

このように、ファクタリングは財務戦略の一環として利用されることが多いですが、会計処理には慎重さが求められます。ファクタリングを利用する際は、本記事で紹介したポイントに注意して会計処理を行いましょう。

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