業務委託の勤怠管理での違法性とは?違法が発覚した場合のリスクも解説

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  • 業務委託契約者のタイムカードでの勤怠管理は、違法になる可能性がある
  • 業務委託や業務請負では、偽装請負にならないように細心の注意を払う必要がある
  • 偽装請負を防ぐポイントは、業務委託と雇用契約の違いを明確にすることである

業務委託契約や業務請負の勤怠管理は、雇用契約を結んでいる従業員とは異なります。業務委託契約者や業務請負をタイムカードで管理してしまうと、違法になる可能性があります。本記事では、業務請負の勤怠管理での違法性や業務委託契約と雇用契約の違いを分かりやすく解説します。

目次

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  1. 業務委託・業務請負の勤怠管理での違法性とは
  2. 違法が発覚した場合のリスク
  3. 業務委託契約と雇用契約の違いとは
  4. 偽装請負にならないための判断ポイント
  5. まとめ

業務委託・業務請負の勤怠管理での違法性とは

フリーランスの増加や副業の推進などで、業務委託・業務請負という契約での働き方も浸透してきました。しかし一方で、業務委託者や請負者の勤怠管理に関する問題が浮上しています。

特に、一般的な雇用形態でのタイムカードによる勤怠管理を適用すると、偽装請負と見なされ、違法性の問題が生じる可能性があります。業務委託・業務請負での契約と雇用契約との違いを理解し、トラブルを回避しましょう。

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業務委託・業務請負の勤怠管理での違法性とは

  1. タイムカードでの勤怠管理は避けるべき
  2. 偽装請負となるケース

タイムカードでの勤怠管理は避けるべき

業務委託や業務請負の契約では、週や月単位で作業時間を設定をするといった、量的な契約は可能です。しかし、曜日・時間帯を指定し、必ず作業するといった受託者への時間的な拘束性はありません。なぜなら、雇用契約に近い状態になるからです。

タイムカードでの勤怠管理は、勤務時間を正確に管理するものであり、受託者の自由な業務遂行を制約する可能性があります。これは、業務委託契約の本質である、委託者と受託者の対等な契約の原則に反するので、タイムカードを使用した勤怠管理は避けましょう。

偽装請負となるケース

実際は労働の提供である雇用契約になっているものの、仕事の完成での請負契約に偽装している場合を偽装請負と言います。大きな違いとしては、請負契約では委託者と受託した労働者との間に、指揮命令関係が生じない点です。

最も多いケースは、委託者がシフトの管理や業務の細かい指示を直接行う形です。他にも、委託者が受託者を責任者に置き、受託者を通して間接的に労働者を支配下におくパターンなどがあります。これらは、偽装請負と判断される可能性が高いので、避けましょう。

また、十分な理解や注意が払われていない場合、管理・指揮系統が不明瞭だと偽装するつもりがなくても、実態として偽装請負と見なされる可能性もあります。これは、十分な理解や注意を払い、違法行為を行わないよう気をつけましょう。

参考:あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?|厚生労働省 東京労働局

違法が発覚した場合のリスク

業務請負で勤怠管理における違法行為が発覚した場合、罰金の支払いや改善措置命令が下される可能性があります。また、社名の公表をされることもあり、単なる法的責任だけでなく、企業の信頼性や評価などにも影響を及ぼしかねません。

場合によっては、ビジネスの継続性に影響が出る可能性もあるので、リスクについて理解し、違法行為を行わないよう気をつけましょう。

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違法が発覚した場合のリスク

  1. 罰金の支払い
  2. 改善措置命令
  3. 社名の公表

罰金の支払い

業務請負を装った実質的な雇用関係である偽装請負は、法律により禁じられています。偽装請負は雇用者が労働者の権利を逸脱したり、雇用者としての義務を回避したりするために行われることが多く、その規制は労働者の保護が目的です。

業務請負に見せかけた雇用である偽装請負が発覚した場合は、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が企業側に科せられます。

改善措置命令

改善措置命令とは、違法行為が発覚した際に労働局から下される行政処分です。これは、違法な状態を是正するために、企業が具体的な改善措置を講じることを要求する命令です。この命令を受けた場合には、速やかに改善を講じなければなりません。

命令に従わない場合は、罰金の支払いや業務停止命令など、さらに重い制裁が下される可能性があります。

参考:第12 違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表|厚生労働省

社名の公表

違法行為を続けていると最悪の場合、社名の公表もありえます。これは、労働法違反が発覚した企業として名前が公になるため、企業の評判や信頼性に打撃を与えかねません。また、結果としてビジネスの継続性にも影響が出る可能性があります。

この社名の公表は、他の企業や顧客、一般の人々に対しての警告を意味するとともに、違法行為の抑止効果を期待して行われるものです。

業務委託契約と雇用契約の違いとは

雇用契約では、雇用主は労働者に対して、業務の指示や命令を出す指揮命令権を持ちます。また、労働法が適用されるので、労働時間や休暇、一方的な解雇の禁止などによって労働者は保護を受けられるのが特徴です。

一方で、業務委託契約は他社やフリーランスなど、外部へ業務を任せる契約です。そのため、委託者は受託者に対する指揮命令権を持ちません。また、雇用契約では適用される労働法は、原則として適用されません。

参考:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン|厚生労働省・公正取引委員会

業務委託契約の種類

法律上「業務委託契約」という契約種別は存在せず、業務委託契約には請負契約、委任契約、準委任契約の3種類があります。それぞれ契約の目的や内容、業務の性質や結果に対する責任の所在、関係性などによって異なります。

どのような場合に、どの契約が適用されるのか理解し、最適な契約形態を選択することで、適切な業務遂行と契約管理が可能になります。

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請負契約とは

請負契約とは、一定の結果を達成することを約束する契約です。この契約では、委託者は結果の達成を求め、請負人はその結果を達成するために必要な行為を自己の責任で行います。委託者は請負人に対して、具体的な作業手順などを指示することはできません。

例えば、委託者が家屋の建築や、被服やパンフレットなどのデザインの作成を委託し、受託者が完成品を成果物として納品する場合などが該当します。

委任契約とは

委任契約とは、特定の業務を委託者の名義で行うことを約束し、法律行為を委託する契約です。この契約は受託者が、委託者から委託された業務を自己の裁量で行い、その結果を報告します。また、受託者は、委託者の利益を尊重しなければなりません。

例えば、不動産売買での代理人契約や、弁護士や税理士などに役所への書類提出を依頼する際など、法的な代理・代行の場合に該当します。

準委任契約とは

準委任契約とは、特定の事実行為となる業務を行うことを約束する契約です。この契約においては、受託者にとって業務の遂行自体が目的になります。また、委託者は受託者に対して、結果や成果の完成に関して責任を求められません。

例えば、講師によるセミナーや研究・調査などの業務、ミュージシャンによる音楽の演奏など、業務の有形・無形を問わず幅広く該当します。

偽装請負にならないための判断ポイント

偽装請負は、実質的には雇用契約に近い状態を指し、法律に抵触する可能性があります。業務委託契約と雇用契約は、労働基準法や指揮命令権の違いの他にも、再委託の有無や、報酬が歩合制なのか時給制なのかなどの違いもあります。

さらに、業務委託契約では器具・機器の負担など、一般的に雇用契約では生じない負担が労働者に生じる場合があります。それぞれの契約の性質をしっかりと理解し、特性に適した管理や運用を行いましょう。

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業務委託契約雇用契約
労働基準法の適用適用されない適用する
指揮命令権命令権がない命令権ある
業務依頼の諾否諾否できる諾否できない
報酬歩合制時給制
代替性再委託できる再委託できない
器具・機械の負担契約者が所有する雇用主が用意する
自社への専従不可

労働基準法の適用

労働基準法は、労働者の労働条件や労働環境を保護するための法律です。具体的には、1日8時間、週40時間の法定労働時間の制限、毎週1日の休日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日、有給休暇の権利などが規定されています。

また、雇用主は健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を一部負担する義務があります。これらは雇用契約に適用されるもので、業務委託契約では適用されません。これらの特徴が業務委託契約に見られた場合、偽装請負と判断される可能性があります。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

参考:労働時間・休日 |厚生労働省

指揮命令権

雇用契約においては、雇用主と労働者との間に主従関係が成立します。そのため、業務の実施時間や場所を具体的に指定したり、細かな業務遂行のための指示や命令を出すことが可能です。この命令を発する権限を指揮命令権と呼びます。

業務委託契約の場合は、事業者間の対等な契約となります。そのため、委託者側は受託者側に対して、具体的な業務遂行の指示など、指揮命令権を行使することはできません。受託者は自己の裁量に基づき、時間や場所、業務の遂行方法を決定します。

業務依頼の諾否

業務委託契約では、受託者は事業者同士の対応な契約に基づき業務を行います。そのため、委託者側からの業務依頼や命令に対して、承諾せずに拒否することも可能です。これは、受託者側が自身の判断で業務を遂行する自由を保持することを意味しています。

これに対して、雇用契約の場合は、労働者は雇用主からの指示や命令に従わなければならないという主従関係が存在するため、基本的に拒否できません。

報酬

雇用契約では、報酬は成果に関係なく労働時間に対して支払われます。これは雇用契約において、曜日・時間帯を指定して契約できるため、時間的な拘束力が発生するからです。そのため、雇用主側は労働者に対して、労働時間を管理する権限を行使することができます。

一方で、業務委託契約の場合、報酬は成果物や業務遂行に対して支払われるので、業務の質や結果が報酬に直結します。そのため、時間の拘束力はないので、雇用契約とは異なり労働時間を管理できません。

代替性

業務委託契約では、発注者側が受託者側に依存せず、契約内容を満たす業務の遂行を求めるものであり、受託者側の独立性を保証します。従って、受託者側が業務を他者に代行させることも可能です。ただし、代替が可能な範囲や条件は、契約内容により異なります。

雇用契約の場合、労働者が自信の労働力を雇用者に提供し、対価としての報酬を得る契約です。そのため、労働者は自分の業務を自分で遂行する責任があるため、他者へ自身の業務を委ねることは、基本的にできません。

器具・機械の負担

一般的に雇用契約では、雇用主が労働者に対して、業務遂行に必要な器具や機械を提供します。これは、雇用主が労働者に対して、指揮命令権があるため、その業務の遂行方法や環境を、コントロールする権限を持つからです。

一方、業務委託契約の場合、受託者が独立した事業者として行動します。そのため、業務を遂行するのに必要な器具や機械は、受託者が自己負担する場合がほとんどです。これは、受託者が業務を遂行する自由度を持ち、業務の成果に対し責任が発生することを意味します。

自社への専従

業務委託契約での委託先に対し、自社の専従かのような働き方を求めることは違法です。受注者は取引先や労働時間を自由に裁量でき、それに対し発注者が口出しすることはできません。

もし口頭で伝えていなかったとしても、一社による拘束時間が長く、他社の業務を受けられない状況下であったり、固定給や高報酬で経済的に従属しているなどの場合は、雇用契約とみなされる可能性も高くなります。

まとめ

業務委託契約では、受託する企業やフリーランスが業務の遂行方法や時間について、一定の自由を持っています。しかし、雇用契約では、雇用者が労働者の業務時間や場所などを指定し、管理が可能です。

それぞれの違いを理解しないと、業務委託契約が実質的に雇用契約とみなされ、偽装請負になる可能性があります。これは労働法に違反し、罰金が発生する場合もあるので、法的問題を避けるためにも違いを把握し、法的な問題に直面しないように気をつけましょう。

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