RPAのシナリオの作り方|作成時のポイント・簡単に作る方法も解説
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- RPAの導入・運用にはシナリオ作成が必要であり、シナリオには簡易型と開発型がある
- RPAシナリオの作成には、目的の明確化・設計書の作成・実装・テストなどの手順がある
- RPAシナリオを簡単に作るには、専門知識不要で容易に操作できる簡易型がおすすめ
RPAの導入・運用には、シナリオ作成が必要となります。しかし、作成の仕方がわからずRPAの導入を迷っている方も多いかもしれません。この記事では、RPAのシナリオの作り方や作成時のポイント、簡単に作る方法などを解説します。
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RPAのシナリオとは
RPA(Robotic Process Automation)は、ソフトウェアロボットを使用してビジネスプロセスを自動化する技術です。これにより、人間が手動で行っていた繰り返し作業やルーチンタスクを効率的に実行でき、生産性や精度の向上、コストや労力削減などを実現します。
RPAにおけるシナリオとは、業務を自動化するための手順や筋書きのようなものです。具体的には、RPAツールによって実行される一連のアクションや操作を指し、ロボットにシナリオをプログラムすることで作業を学習させ、業務を自動的に実行させます。
本記事では、RPAのシナリオの種類・作り方や作成時のポイント・簡単に作る方法などについて、分かりやすく解説します。
RPAとは?メリットや向いている業務、ツールの選び方などを解説
RPAとは、定型業務をロボットを活用して自動化・効率化するシステムのことを言います。RPAを導入することで、業務処理の迅速化などに繋がりますが、対応が難しい業務もあるため注意が必要です。本記事では、RPAのメリット・デメリットや導入手順などを解説しています。
RPAのシナリオの種類
RPAのシナリオには簡易型と開発型の2種類があり、それぞれ目的や特徴、メリット・デメリットなどが違っています。ここからは、簡易型と開発型の詳細について解説します。
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簡易型
簡易型では、パソコンの画面から操作をして、記録させることでシナリオの作成が可能です。通常の作業をロボットにやって見せることによって、再現性の高い業務のシナリオが簡単に作れます。
簡易型のメリットは、専門的なプログラミングスキルがなくても、比較的短期間でシナリオ作成ができる点です。またプロセスが単純なので、人的エラーの可能性が低くなり、処理の正確性が向上し、開発コストも低減されます。
デメリットとしては、複雑なプロセスや変動が大きいプロセスには不向きな点です。また、変更が頻繁に発生するような業務には、柔軟に対応できない場合があります。さらに、大規模で複雑な処理には向かず、拡張性には制限があります。
開発型
開発型RPAは、より複雑な業務プロセスを自動化するために、専門的なプログラミングやスクリプト作成が必要となります。これには、特定のビジネスルールや条件に基づいて動作するカスタムスクリプトやアルゴリズムの開発が含まれます。
開発型RPAのメリットは、特定のビジネスニーズや要件に合わせて高度なカスタムスクリプトやプログラムを作成できる点です。また、新しい機能や要件に対応するためにシステムを拡張しやすく、柔軟性も高いです。
デメリットとしては、プログラミングやスクリプト作成のスキルが必要となる点です。また、より複雑なプロセスを自動化するためには、開発とテストに多くの時間がかかる場合があり、保守や更新がより複雑になる可能性があります。
RPAのシナリオの作り方
RPAはビジネスプロセスの自動化を可能にする強力なツールですが、効果的なRPAシナリオを作成するには、適切な計画と準備が必要です。ここでは、RPAのシナリオを作成する方法について解説します。
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RPAのシナリオの作り方
目的を明確にする
RPAのシナリオを作成する際に、まずはどのような効果を求めているのか、導入の明確な目的を設定することが重要です。目的としては、コスト削減・生産性向上・エラーの削減・顧客満足度の向上などが挙げられ、ビジネスのニーズや課題に応じて様々です。
また、RPAの導入にかかるコストに対してどれだけの効果が期待できるか、投資対効果(ROI)の見積りも必要です。ROIを評価することで、導入のメリットや効果をより明確に把握することができます。
自動化すべきタスク・プロセスの優先順位や、導入の順番も決めます。業務のRPA化は、最も効果的な結果を期待できる領域から始めることが重要です。また、対象となる業務フローを理解し、含まれているタスクや手順の把握が必要です。
シナリオの設計書を作成する
目的を明確にしたら、設計書を作成しましょう。設計書は、開発チームや関係者が共有し、自動化プロジェクトの方向性を明確にするための重要な文書です。設計書には、自動化するプロセスを詳細にマッピングします。
プロセスマッピングを基に、自動化の可否を判断します。自動化に適しているタスクや手順を特定し、その他のタスクについては、人手による処理が適切かどうかを検討します。次に、設計書の記述を行います。設計書には、以下の情報が含まれます。
- 自動化の目的と目標
- プロセスのマッピングとフロー
- 自動化するタスクや手順の詳細
- RPAツールやプラットフォームの選択理由
- 実装計画やスケジュール
- テストおよびデバッグ計画
設計書の内容をチェックする
設計書を作成した後には、その内容をチェックすることも大事です。ここからは、主にチェックの対象となる、以下の項目について詳しく解説します。
不要な手順を含んでいないか
RPAの設計書を作成する際に、不要な手順が含まれていないかをチェックしましょう。不要な手順が含まれている場合、RPAの実装や運用において無駄なリソースを消費することになります。
RPAが自動化しようとしているプロセスを詳細に分析し、各手順が実際に目的を達成するのに必要かどうかを確認しましょう。不要な手順は、プロセスの効率を低下させることにも繋がります。
不要な手順を見つけた場合には、そのプロセスを省く、もしくは最適化するための代替手法を検討します。
誰でも同じ作業が可能か
RPAの目的は、人間の手作業を自動化し、効率的かつ正確にタスクを実行することです。そのため、誰でも同じ手順でRPAを実行できるかどうかを確認することは重要なステップです。
設計書に含まれる手順は明確か、具体的に記述されているかを確認しましょう。不明確な手順や抜け漏れがある場合には、誰でも同じ作業を実行することが困難になります。
また、誰でも理解できるかどうかも重要です。特に、技術的な専門用語や業界用語については適切に説明されている必要があります。加えて、記述されている手順が一貫しているか、誰でもフォローが可能かどうかもチェックしましょう。
イレギュラーな事態への対応ができるか
設計書をチェックする際には、イレギュラーな事態に対応ができているかも確認します。実際の業務では、エラーや一時的な停止など、不測の事態が発生する可能性があります。そのような状況にも対応できるよう、例外シナリオを用意しておくことが重要です。
例えば、エラー発生時に適切なエラーメッセージを表示する、アラートメールを送る、などの分岐処理ができると良いでしょう。
RPAでは、複数の例外シナリオを設定することもできます。様々なパターンに備えておけば、予期せぬトラブルが発生した際も稼働を停止せずに済みます。
シナリオを実装する
RPAツールにシナリオを実装するステップには、簡易型と開発型があります。簡易型RPAの場合は、実装したいタスクやプロセスを通常通り行い、ロボットに直接的に覚えさせます。
開発型RPAでは、シナリオに合わせてプログラミングを行います。上述のように、一定の専門的な知識が必要となるため、基本的にエンジニアが担当することになるでしょう。
簡易型 | ツール内の録画を利用して、シナリオ通りに作業すると ロボットが作業を自動的に学習・シナリオを実装 |
開発型 | RPAツール内の開発画面で、シナリオ通りにプログラミングして開発 |
正常に稼働するかテストする
RPAにシナリオが実装できた後は、ロボットがシナリオ通りに正常に稼働するかテストが必要です。RPAツール(開発型)におけるテストは、主に単体データテスト・結合テスト・本番データテスト・耐久テストの4つのステップに分けられます。
各ステップでのテストを通じて、システムの信頼性や効率性を確認できます。ここからは、以下の4つのテストについて解説します。
単体データテスト
単体データテストは、シナリオが正常に稼働するかどうかを、手順1つひとつを実行しながら確認するものです。指示した通りにデータを入力するか、指定したフォルダにファイルを保存するか、といった動きをチェックします。
単体データテストによりエラーを早期発見できれば、本格稼働した際に稼働を停止してしまうリスクを低減できます。また単体テストは、繰り返し行うことでロボットの処理品質を向上させる効果もあります。
結合テスト
単体データテストで特に問題が検出されなければ、次は結合テストを行います。結合テストでは、シナリオ通り正常に最初から最後まで動作するかを検証します。
単体テストにより1つひとつの動作が正常であることは確認済みなので、それらが上手く組み合わさるか、最終的に求めている結果を返してくるかをチェックするものです。多くのRPAツールでは、チュートリアルを実行すれば、全体の流れに問題がないか確認できます。
本番データテスト
本番データテストは、実際の業務と同じ環境でRPAを稼働させてみる、というテストです。これにより、システムが実際の業務シナリオ通りに適切に機能するかどうかや、実際の稼動環境でのパフォーマンス・処理能力が評価できます。
ただし、本番データテストで万が一エラーを起こすと、業務に支障が出てしまいます。そのため、業務で使っているファイルやフォルダをあらかじめコピーしておき、その環境で正常に動作するかをチェックしてみましょう。
耐久テスト
耐久テストとは、RPAツールが耐久できる作業負荷や時間の長さを確認するものです。通常は、数時間から数日にわたる長時間に渡って行われます。このテストにより、RPAツールが長期間安定して動作するかどうかが確認できます。
また耐久テストでは、実際の2〜3倍のデータ量に増やして負荷をかけるテストも行います。これにより、将来データ量が増えた場合も耐えられるかどうかをチェックします。
RPAの品質によっては、データ量が増えることで処理スピードが落ちたり、エラーが発生したりといったトラブルが起こります。長期的に利用するためには、耐久テストも欠かさずに行いましょう。
定期的なメンテナンスを実施する
RPAツールの実装後も定期的な監視とモニタリングを行い、RPAの動作やパフォーマンスを評価することが必要です。これには、処理の成功率・処理時間・エラーの発生などの指標が含まれます。問題が発生した場合は、早期に検知して対処することが求められます。
ログの定期的な分析も必要です。ログから得られる情報を元に、システムの改善や調整を行います。また、運用上の問題やパターンを把握し、将来の問題を予防するための対策を立てましょう。
業務の変更や事業の拡大に伴い、RPAツールの処理量や負荷が限界に達することもあります。定期的なメンテナンスを実施し、将来的な拡張にも備えることが重要です。
RPAのシナリオ作成時のポイント
RPAのシナリオ作成を成功させるには、まずは簡単な業務から自動化するなど、いくつかの注意したいポイントがあります。ここでは、RPAをスムーズに導入・稼働し、業務効率化に繋げるための、シナリオ作成時のポイントを解説します。
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RPAのシナリオ作成時のポイント
簡単な業務のシナリオ作成から始める
RPAのシナリオ作成時には、最初から大規模な自動化を目指すのではなく、簡単な業務のシナリオを作成し、スモールスタートすることがおすすめです。RPAツールに慣れるまでは、小規模な業務から始めることで、失敗した場合のリスクを最小限に抑えられます。
RPAを初めて導入する場合、シナリオ作成やツールの操作に関する学習と経験を積むことが重要です。スモールスタートを行うことで、段階的に成功体験を積み、スキルを磨くことができます。
また、小規模な業務から始めると、システムやプロセスの拡張性を把握することができます。問題なく稼動したシステムから得た体験や知識を活かし、徐々にシステムの規模を拡大していくことができます。
ショートカットキーを活用する
RPAのシナリオ作成時には、ショートカットキーを使用することで、作業効率が向上し、タスクの作成や編集がよりスムーズに行えます。
シナリオ作成時には、テキストやデータのコピー&ペーストが頻繁に行われます。例えば、「Ctrl+C」を使用してコピーし、「Ctrl+ V」を使用して目的の場所に貼り付けることができます。これにより、マウスを使って選択してコピーする手間が省けます。
また、RPAツールでは、シナリオにアクションを追加したり、不要なアクションを削除したりすることが頻繁にあります。この場合には、「Ctrl+N」を使用して新しいアクションを追加し、「Delete」キーを使用して不要なアクションを削除することができます。
実行環境を整える
RPAのシナリオ作成時には、RPAツールが既存のシステムと連携できるかどうかを検証することが大事です。社内の業務システム・データベース・Webアプリケーションなど、連携する必要があるシステムが、対応可能かどうかを確認しましょう。
また、RPAツールが連携の対象となるシステムにアクセスする際には、セキュリティとアクセス権限の確認が必要です。適切なアクセス権を持ち、セキュリティポリシーに準拠している場合には、連携がスムーズに行われ、セキュリティリスクが最小限に抑えられます。
簡単にRPAのシナリオを作るには
シナリオの作成や実装が難しいと感じられる場合には、サポートが充実したRPAツールや、簡単に操作できるRPAツールを選ぶのがおすすめです。ここからは、簡単にRPAのシナリオを作るためのポイントについて解説します。
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簡単にRPAのシナリオを作るには
サポートが充実したRPAツールを選ぶ
RPAにおけるシナリオ作成には一定の知識が必要です。そのため、技術者がいない場合にはサポートが充実したベンダーを選ぶのがおすすめです。
システムの障害や不具合が発生した場合も、専門知識を持つスタッフのサポートがあれば、
プロジェクトの停滞を最小限に抑えることができます。
またRPAシステムにおいては、データのセキュリティとコンプライアンスへの適合が重要です。サポートが充実しているベンダーは、セキュリティ上のアドバイスや規制要件を満たすための適切な支援も行います。
容易に操作できるRPAツールを選ぶ
RPAのシナリオを簡単に作成するためには、直感的に操作できるツールや、プログラミングの知識が不要な簡易型のRPAツールがおすすめです。
直感的な操作ができるRPAツールは、ユーザーが簡単にシナリオを作成できるように設計されています。複雑なコーディングやプログラミングが不要なため、ユーザーはドラッグ&ドロップやクリック操作など、視覚的な手法でタスクや処理の自動化を行うことができます。
また簡易型のRPAツールは、わかりやすいインターフェースを使用してシナリオを構築できます。そのため、専門的な知識やスキルを持たないユーザーでも素早く自動化を実現することができます。
外注も検討する
複雑な業務をRPAで自動化させる場合には、外注を検討することもおすすめです。社内に技術者がいない、あるいは社内のエンジニアでは対応できない場合は、専門家の知識と豊富な経験を活用しましょう。
RPAシナリオの実装を外部に委託すれば、自社で専門的なスキルを持つ従業員を雇う必要もなくなります。これにより、労働コストやトレーニングコストなどが低減できます。また、従業員が別のコア業務に集中できるメリットもあります。
RPAのシナリオ作成の勉強方法
前述のように、RPAのシナリオ作成にはプログラミングの専門知識が必要です。外部の専門家に依頼もできますが、コストを抑えるためには、自社社員に勉強してもらうことも有効です。ここでは、RPAのシナリオ作成スキルを身につけるための勉強方法を2つ紹介します。
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RPAのシナリオ作成の勉強方法
実際にRPAツールを触ってみる
RPAは、書籍や動画などで基礎知識を学ぶことも可能です。しかし、実際に操作してみることが何よりも重要です。実は、RPAツールには無料でダウンロードできるものもあります。これらを利用し、RPAとはどういうものかを、体験してみましょう。
実際に操作してみる中で、わからないことが出てきた場合に、また書籍やWebサイトなどで調べながら解決していく、といった勉強方法が効果的です。
資格を取得する
RPAには「UiPath (UiPath Certified Professional)」や「WinActor(RPA技術者検定)」といった資格があります。これらの資格を取得することでも、実務で使えるスキルを身につけることができます。
資格を取得すれば、RPAに関する知識を体系的に学べるだけでなく、転職やキャリアアップにも役立ちます。無料ツールで実際の操作を体験しながら資格取得に向けて勉強し、知識と技術の両方を同時に高めていくのがおすすめです。
まとめ
RPAにおけるシナリオとは、自動化される業務プロセスを具体的に定義したものです。RPAの導入にあたっては、シナリオ作成は必要不可欠です。またシナリオの作成には、簡易型や開発型などの方法があります。
シナリオを作成した後には、システム環境で実行して稼動状況をテストし、必要に応じて修正や調整を行い、またテストを繰り返します。テスト完了後は、本番環境でシナリオを実行して運用を開始します。
より簡単にシナリオを作成するには、サポートが充実したベンダーを選ぶことや、外注を検討することがおすすめです。自社のリソースやニーズに合わせて実装方法を選び、業務のスムーズな自動化を目指しましょう。
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