RPAの導入方法・手順とは?失敗しないためのポイントも解説

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  • RPAの導入により、人件費削減・サービス品質向上・従業員満足度向上などの効果がある
  • RPA導入時は、目的の明確化・適切なRPAツール選定・テスト導入などのステップが必要
  • RPA導入に失敗しないためには、業務停止リスクへの備えや運用体制の整備が重要

RPAは、定型的な作業をロボットにより自動化できるツールです。多くの企業で導入が進んでいますが、効果的に運用するには適切な導入手順を踏む必要があります。この記事では、RPAの導入方法や導入効果、また失敗しないためのポイントを解説します。

目次

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  1. RPAの導入で業務効率化・生産性向上
  2. RPAの導入効果
  3. RPAの導入方法・手順
  4. RPAの導入費用
  5. RPAの導入に失敗しないためのポイント
  6. まとめ

RPAの導入で業務効率化・生産性向上

PRAは「Robotic Process Automation」の略で、定型的な作業を自動化するツールです。PRAは、決められた手順やタイミングで、24時間365日稼働するため、導入することで業務の効率化や生産性の向上などが期待できます。

中には、Microsoft ExcelのVBAを利用して、Excel内の処理を自動化している企業もあります。しかしRPAは、ERPやSFA・CRMなどのシステムと連携することで、幅広い業務の自動化が図れるため、近年多くの企業への導入が進んでいます。

RPAの導入で、業務の効率化や生産性向上などの成果を上げるためには、適切な導入手順を踏む必要があります。そこで本記事では、これからRPAの導入を予定している企業向けに、RPAの導入方法や導入効果、また失敗しないためのポイントを解説します。

RPAとは?メリットや向いている業務、ツールの選び方などを解説

RPAとは、定型業務をロボットを活用して自動化・効率化するシステムのことを言います。RPAを導入することで、業務処理の迅速化などに繋がりますが、対応が難しい業務もあるため注意が必要です。本記事では、RPAのメリット・デメリットや導入手順などを解説しています。

RPAの導入効果

PRAは、業務の自動化を図るツールです。導入して上手く運用することで、さまざまな効果が期待できます。ここでは、RPAの導入で得られる効果を、下の5点に絞って解説します。

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人件費削減・人員不足解消

データ入力や転記・データの突合・転記・ファイル作成や変換などの作業を人の手で行うと、時間も手間もかかります。これらの定形作業はRPAの得意分野で、人の手を借りることなく、一瞬で作業を完了してくれます

このように、従来人の手で行ってきた作業をRPAで自動化することで、その作業を担当していた部署の人数を減らし、人件費の削減が図れます。また、人員不足で悩んでいる企業では、減らした人員を不足している部署に回すことで、人員不足の解消にもつなげられます。

サービス品質の向上

RPAでは、企業内のデータベースに蓄積された情報から、必要な情報を抽出・分析した結果を表示・出力させる自動化も可能です。人が行うよりも早く正確に処理ができるため、顧客からの要求に対して、スピード感のある対応が可能になります。

これにより、顧客に対するサービス品質の向上が図れるとともに、顧客満足度の向上につながります。また、今まで必要だった作業時間をより丁寧な顧客の対応に使えば、さらなるサービス品質の向上に役立てられます。

生産性の向上

RPAは、24時間365日の稼働が可能です。また、今まで対応しきれなかった膨大な量の作業も簡単にこなしてくれます。これにより、それぞれの業務に深みが増すとともに、自動化で生まれた人材と時間をコア業務に使うことで、生産性の向上も見込まれます

たとえば、RPAの導入で生まれた人材や時間を、自動化できない企業戦略の立案や業務改善など、よりクリエイティブな業務に活用できるようになります。また、業務の自動化で、作業手順や成果物の品質が統一できることでも生産性の向上が見込まれます。

従業員の満足度向上

単純作業の長時間の継続は、従業員のストレスが溜まる原因となります。そして、自分の仕事にやりがいが感じられなくなり、離職につながることも少なくありません。特に働き手不足が常態化しつつある現代では、離職の防止は企業にとって大きな課題です。

離職の防止には、従業員の業務に対する満足度を向上させ、従業員エンゲージメントを高めることが重要です。そのため、RPAの導入でできる限り単純作業を自動化し、従業員によりやりがいのある業務を任せ、活躍させることが重要になります。

人的ミスによる損失の防止

人の手作業による業務には、常に人的ミスの危険性があり、そのミスが企業に大きな損失を与える場合もあります。しかしRPAでは、あらかじめ定められたシナリオで作業が進められるため、シナリオに間違いがない限り作業ミスは起こりません

RPAの導入方法・手順

RPAの導入方法や手順は、企業規模や業務内容・組織体制などによって異なります。しかし、初めての導入では、基本的な導入方法や手順を基に、自社に適合するように変更していくのがおすすめです。ここでは、基本の流れについて解説します。

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現状の課題・目的を明確にする

RPAを導入する際には、まず自社の現状課題を把握し、RPA導入の目的を明確にすることが重要です。現状課題の把握では、人件費・残業時間・人的ミスの発生率など、自社の現在のデータを幅広く収集して課題を洗い出します。

そして、洗い出された課題の中で、RPAの導入で解決できる課題を選出し、RPA導入の目的を明確にします。RPA導入の目的には、人件費の削減・業務効率化・人的ミスの防止・離職防止・働き方改革の推進などが挙げられます。

対象作業を選定する

自社の課題とRPA導入の目的が明確化できたら、その目的を達成するためにRPAで自動化する作業を選定します。RPAが得意とする作業は、業務フローがパターン化していて定期的に繰り返す作業です。自社の業務の中で該当する作業を洗い出しましょう。

対象作業の選定は、RPA導入において費用対効果を左右する大変重要な作業で、慎重に行う必要があります。さまざまな要因で対応が変化する作業の自動化は、自動化のシナリオづくりが複雑化し、最悪の場合自動化を断念する結果となる恐れもあります。

自社に合ったRPAツールを導入する

対象作業の選定ができたら、自社に合ったRPAツールを選んで導入します。選定作業は「対象作業自動化の適合性」「操作性の良さ」「セキュリティ対策」「サポート体制」などを基に行います。以下で、この4つの選定ポイントについて解説します。

自動化したい作業に適しているか

導入目的に沿ったRPAの導入を行うには、洗い出した対象作業の自動化が可能なRPAの選択が重要です。RPAは、さまざまなベンダーから得意分野の異なる製品が数多く提供されています。製品ごとに対象作業の自動化がどのように実現できるかをチェックします。

また、導入の際には、費用対効果の高い製品の導入が不可欠です。そのため、対象作業の自動化で可能となるコストダウンを算出して、RPA導入や運用のために必要な経費と比較する必要があります。その際、生産性の向上も考慮することが大切です。

簡単に操作できるか

従来のRPAでは、自動化のシナリオを作るには高度なプログラミング技術が必要になり、誰でも簡単に操作できるものではありませんでした。しかし、近年プログラミング技術を必要としないRPAも増えています

ただし、プログラミング技術が必要でないと謳っている製品でも、シナリオを作るための操作性には差があります。また、シナリオを作るのは簡単であっても、シナリオの修正時にはプログラミングの知識が必要になる場合もあります。

特にプログラミング技術を持った人材がいない企業では、操作性の高さが重要になるため、現場の担当者が簡単に操作できる製品を選びましょう。

セキュリティ対策は十分か

RPAは、さまざまなシステムと連携して作業の自動化を図ります。RPAが取り扱う情報の中には、顧客や従業員の個人情報から企業の機密情報まで含まれ、これらの情報を外部に漏らさない強力なセキュリティ対策が必要です。

企業の情報漏えいは、企業の信用失墜を招くだけでなく、企業に大きな損失を与えます。自社サーバーや自社パソコンで運用する場合は、自社独自で強力なセキュリティ対策を施すことが可能です。

しかし、クラウドサーバー上のRPAにアクセスして利用するクラウド型のセキュリティ対策は、ベンダーに一任するため自社での対策はできません。クラウド型を導入する場合は、ベンダーのセキュリティ対策の確認は必須です。

サポート体制は充実しているか

初めてRPAを導入する場合、導入時や運用初期に疑問点やトラブルが頻発します。そのようなときに、気軽に問い合わせができると安心して導入・運用ができます。特に自動化のためのシナリオ作成は、慣れるまで苦労する場合が多いです。

サポート体制は、ベンダーによって大きく異なる部分です。問題発生時に、できる限り短時間で解決できるサポート体制があるベンダーがおすすめです。サポート時間や曜日・サポートの方法などと無料サポートの範囲を確認しましょう。

テスト導入する

多くのRPAでは、本格運用の前にテスト導入や無料トライアルで動作確認を行うことが可能です。ベンダーのサポートを受けながら、自動化のシナリオ作りを体験して使用感や操作性の確認をするとともに、RPAの導入効果を体感することができます

本格導入・効果測定

テスト導入により、上手く運用できるか確認したら、本格導入に進みます。しかし、初めから対象作業すべてを自動化するのでなく、自動化しやすい部分から始め、少しずつ範囲を増やしていくのがおすすめです。

一つの自動化された作業の正確性を確認してから、次の自動化に取り掛かることで、社内の混乱を最小限に抑えた自動化推進が可能になります。運用に慣れない内に複数の業務を自動化して複数の不具合が発生すると、対応しきれなくなり自社全体の混乱を招きます。

また、ある程度運用が軌道に乗ったところで効果測定を行い、必要に応じて軌道修正を図ることも重要です。RPA導入後にどの程度業務の効率化が図れたか、効率化で生まれた人材や時間がどのような業務に使われたかなどを、定性・定量の両面から評価しましょう。

RPAの導入費用

RPAツールは大きく分けて、サーバー型・デスクトップ型・クラウド型の3種類に分類され、導入にかかる費用やランニングコストが異なっています。

サーバー型は、自社サーバーにツールをインストールして利用するタイプで、比較的大きな企業でよく導入されています。デスクトップ型は、各パソコンにツールをインストールして利用するタイプで、小規模企業に適しています。

クラウド型は、ベンダーが所有するクラウドサーバー上のツールにアクセスして利用するタイプであり、規模を問わず導入する企業が増えています。以下に、3つのタイプの導入費用とランニングコストの相場を紹介します。

種類費用相場
サーバー型導入費:20万円~数千万円
ランニングコスト:月額30~120万円程
デスクトップ型導入費:0~50万円
ランニングコスト:月額5万円~(買い切り型もある)
クラウド型導入費:20~50万円
ランニングコスト:月額10~40万円

国・自治体による補助金制度

RPAツールの導入には費用がかかり、それが中小企業の大きなハードルとなっている場合も多いです。国や各自治体では、そのような中小企業を支援するための補助金制度が設けられているので、積極的に活用するのがおすすめです。

中小企業や小規模事業者がRPAツール導入に使える補助金には、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」の3つがあります。以下にそれぞれの補助金の概要を紹介します。年によって変更点があるので、必ず要綱などで確認しましょう。

ものづくり補助金・経済産業省 中小企業庁が所管する補助金制度
・3つの補助金枠
①省力化(オーダーメイド)枠(人手不足解消のための設備投資)
②製品・サービス高付加価値化枠(革新的な製品・サービス開発のための設備投資) 
③グローバル枠(海外事業を対象とした国内生産性向上のための設備投資)
・大幅な賃上げを行った場合の補助額の上乗せがある
・補助率:原則1/2(条件を満たすと2/3)
・補助額:100万~1,000万円
IT導入補助金・経済産業省が所管する補助金制度
・「IT導入支援事業者」が提供するツールが対象
・RPAツールは通常枠の汎用プロセスに該当(他のITツールと共に申請)
・補助率:1/2
・補助額は:5万~450万円
小規模事業者持続化補助金・中小企業庁が所管し、商工会議所や商工会が仲介する補助金制度
・常時使用する従業員が20人以下の企業が対象(商業・宿泊や娯楽業を除くサービス業は5人以下)
・通常枠・賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠の5種類
・補助率:2/3(賃金引上げ枠の赤字事業者は3/4)
・補助上限:50万円(通常枠)

参考:ものづくり補助金総合サイト|ものづくり補助事業公式ホームページ

参考:IT導入補助金とは|IT導入補助金2024

参考: 小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会

RPAの導入に失敗しないためのポイント

RPAの導入で大きな成果を出している企業が多い中で、思ったほどの効果が出ず導入に失敗している企業もあります。ここでは、RPAの導入に失敗しないためのポイントを下の5つのポイントに絞って解説します。

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業務停止のリスクに備える

RPAには、システム障害やシステムの画面変更などによりRPAが停止してしまう場合や、業務フローの変更にともなうシナリオの設定がされず、間違った作業を行ってしまう場合があります。そのような場合には、最悪業務停止に陥ることも考えられます

また、サーバーへの負荷が過大になりダウンすると、データの破損につながる場合もあります。RPAを上手く運用するためには、あらゆるリスクを想定して、サーバーメンテナンスを行うとともに、RPAが停止しても業務停止に陥らない仕組み作りが大切です。

運用体制を整える

RPAは、作成されたシナリオにしたがって作業を行います。そのため、シナリオが間違っていれば、修正されるまで間違った作業を続けます。したがって、RPAの行った作業を100%信じるのでなく、間違っていないか定期的に点検する運用体制を整える必要があります

また、業務フローに変更があった際には、シナリオ変更の必要性を判断する組織が必要です。変更の必要性が生じれば、業務フローの変更と同時に新しいシナリオが適用されるようにしなくてはなりません。

知識を持つ人材を確保する

プログラミング技術などの専門知識の必要がないと言われているRPAでも、トラブル発生時には専門知識が必要となる製品もあります。また、専門知識があれば、よりよいシナリオ作成ができるケースも多いです。

そのため、RPAを導入する企業には、プログラミングなどの専門知識を持った人材の確保をおすすめします。人材確保ができない場合は、RPAを提供するベンダーのセミナーなどに積極的に従業員を参加させ、自社で育成するのも一つの方法です。

ブラックボックス化・属人化に注意する

RPA導入の失敗する原因として、シナリオのブラックボックス化や属人化が多いです。シナリオがブラックボックス化や属人化すると、シナリオを作成した人しか修正ができなくなり、その人がいなくなるとそのシナリオが放置されることになります。

シナリオは放置されてもそのまま実行され、業務に支障が出る場合もあります。シナリオのブラックボックス化や属人化を防ぐには、RPAが行っている作業内容や手順を共有して、誰でも修正できる体制を構築しておくことが大切です。

野良ロボット対策をする

野良ロボットとは、管理されずに放置されているRPAロボットのことで、陰で動いて業務上に支障をきたす恐れがあります。導入しても成果が出ず放置されたロボットや、管理者が不明で修正も削除も行われていないロボットが野良ロボットになります。

野良ロボット対策で一番大事なのは、RPAの管理部門を明確にし、各シナリオの管理者を明確にすることです。そして、必要のなくなったロボットは即座に削除し、修正の必要なロボットはすぐに修正を行いましょう。

まとめ

RPAは、定型的な作業をロボットにより自動化できるツールであり、業種に関わらず多くの企業で導入が進んでいます。RPAを導入することで、人件費削減・サービス品質向上・従業員満足度向上などのさまざまな効果が期待されます。

自社に適合したRPAを導入し、運用するためには、目的の明確化・適切なRPAツール選定・テスト導入などの適切な導入手順を踏むことが重要です。また、RPA導入を成功に導くためには、業務停止リスクへの備えや運用体制の整備に心掛けましょう。

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