RPAが「意味ない」と言われる理由とは?導入時のポイントも解説

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- RPAは、効果を実感できない・使いこなせないなどの理由で「意味がない」と言われる
- RPA導入で失敗しないためには、目的・指標の明確化や運用体制の整備が重要である
- RPAは何でも自動化できるわけではなく、業務によってはプログラミング言語が必要
RPAは定型的な業務を自動化できるツールですが、意味がない・役に立たないと言われることもあるようです。本記事では、RPAが意味がないと言われてしまう理由や、失敗しないためのポイント、導入前に知っておきたい注意点などを解説します。
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RPAが「意味ない」「役に立たない」と言われる理由

RPA(Robotic Process Automation)とは、ソフトウェアを用いてビジネスプロセスを自動化する技術です。具体的には、製造工程におけるロボットのように、主に人間が行うルーチンとなっている業務タスクやプロセスを、ソフトウェアロボットが自動的に実行します。
その結果、手作業にかかる時間や労力を削減し、業務の効率性や正確性を向上させることができます。しかし、一部の専門家や企業では、「RPAは意味がない」または「役に立たない」と指摘する意見もあります。
ここでは、RPAが「意味ない」「役に立たない」と言われる理由について解説します。

RPAとは?メリットや向いている業務、ツールの選び方などを解説
RPAとは、定型業務をロボットを活用して自動化・効率化するシステムのことを言います。RPAを導入することで、業務処理の迅速化などに繋がりますが、対応が難しい業務もあるため注意が必要です。本記事では、RPAのメリット・デメリットや導入手順などを解説しています。
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RPAが「意味ない」「役に立たない」と言われる理由
効果を実感できない
RPAによって業務を自動化しても、業務の効率改善や品質向上などの効果を数値で可視化するのは難しい場合があります。例えば、業務処理時間の削減やエラー率の低下は1つの指標ですが、これらを正確に測定し、RPAの貢献度として示すのは困難です。
RPAの導入に伴う初期投資やコスト、導入にかかる時間、運用上の課題などが想定以上の負担となり、期待通りの成果が得られないことが考えられます。また、RPAの導入が業務プロセスの改善につながらず、本質的な問題を解決する効果が実感できないこともあります。
このように、RPAの効果を数値化することの難しさや期待通りの成果が得られないといった感覚により、RPAは意味がないと言われています。そのため、RPAの導入にあたっては、事前の目標設定や計画、適切な評価手法の選定、持続的な改善などが重要です。
業務がRPAに合っていない
RPAは、すべての業務の自動化に向いているわけではありません。業務内容によっては適していないものも存在するため、RPAを導入したにもかかわらず、適用した業務が効果を発揮しないケースも十分に考えられます。
RPAは、主に同じ作業を繰り返すような定型業務に適しています。一方、人間の判断や意思決定、洞察力が必要とされる業務には不向きといえます。例えば、顧客対応や戦略的な意思決定を必要とする業務には、RPAの適用は難しいです。
また、RPAは特定のタスクや業務プロセスの自動化が得意ですが、高度な専門知識やスキルが必要とされる業務は不得意です。例えば、医療診断や法律的なアドバイスなど、専門的な知識が必要とされる業務には適さないため注意しましょう。
野良ロボット化してしまう
RPAが「意味ない」「役に立たない」と感じられるのは、RPAが野良ロボット化しやすいためです。野良ロボットとは、組織内で許可や管理がされていない状態で開発・導入が行われた、RPAプロセスやボットのことを指します。
この状態になる理由として、組織内の特定の部門や個人が、自らの業務処理の効率化のみを目的にRPAを導入したケースが挙げられます。組織全体の戦略やポリシーと合致していない場合、適切に管理されずに野良ロボット化しやすくなります。
野良ロボット化すると、組織全体の効率性やセキュリティの低下につながります。そのため、組織はRPAの導入に際して適切な管理体制やガバナンスを確立し、個別部門や個人の裁量によるRPAの導入を防止するなどの対応が必要です。
操作が難しく使いこなせない
RPAを使いこなすためには、ある程度のIT知識や技術が必要です。しかし、現場担当者にITに関する深い知識や経験がないことがあります。その場合、RPAの設定や運用するための技術的な理解やスキルが不足し、効果的に使いこなせません。
また、RPAの実装には自動化するプロセスの十分な理解が求められます。現場担当者がプロセスに関する深い理解を持っていない場合、RPAの実装が不適切になる可能性が高く、RPAが正しく機能せず求めた効果が得られません。
RPAツールは、特定のプロセスを自動化するための複雑なプログラミング・設定・操作が必要であり、教育やトレーニングにおけるリソースが不足している場合、RPAの効果的な活用が困難になります。
メンテナンスに手間がかかる
RPAツールは、業務フローの変更や業務で利用する画面のUIが変更された場合、その都度メンテナンスが必要になり、手間がかかります。メンテナンスを怠ると、シナリオに則ってそのまま作業を進めてしまったり、エラーが発生したりして業務が滞るリスクがあります。
上述したように、RPAツールを使いこなすには知識が必要になり、適切にメンテナンスを行うにもスキルの習得が不可欠です。したがって、スムーズにメンテナンスを行い、RPAツールを効果的に活用するためには、知識や人材が必要になる点に注意しましょう。
RPA導入で失敗しないためのポイント

RPAを導入する際には、自動化するプロセスの適切な選択、目標や期待される成果を明確に定義し、それに基づいて計画を策定するなど、失敗を防ぐためのポイントがあります。ここでは、RPAの導入で失敗を防ぐポイントについて詳しく解説します。
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RPA導入で失敗しないためのポイント
目的・指標を定める
RPAを導入する前に、自動化したいプロセスやタスクを明確に定義することが重要です。それにより、自動化の対象が明確化され、無駄な労力や時間を省けます。また、自動化対象プロセスの優先順位付けを行い、効率的なアプローチをすることも大事です。
さらに、目的や期待される効果を明確に定めることで、導入の成功度合を測定し、評価するための基準が確立されます。効果が見込める範囲の明確化により、目標達成の方向性を示し、導入プロセスの効果的な管理が可能です。
例えば、成功を評価するための指標として、自動化による作業時間の削減率やエラーの発生率の低下などが挙げられます。指標の設定で導入の効果を把握し、必要に応じて調整が可能です。
RPAに適した業務に活用する
RPA導入で失敗を防ぐためには、RPAに向いている業務と向いていない業務を理解し、適切な業務を選択して自動化を図りましょう。RPAは、ルーチン業務のように繰り返し行われるタスクに向いています。
また、大量の作業を迅速かつ効率的に処理できるため、高い取引量を必要とする業務に適しています。定型化されたプロセスとして、特定の手順や条件が明確に定義されている業務にも効果的です。
一方、RPAは戦略的な意思決定やクリエイティブな作業など、人間の複雑な判断や創造性を必要とする業務には不向きといえます。
RPAが得意なこと
RPAは大量のデータを自動的に入力して処理できるため、人間の手作業によるエラーや遅延を削減し、高い精度と迅速な処理を実現します。例えば、顧客からの注文情報をデータベースに入力する作業や、顧客情報の抽出処理などに適しています。
さらに、RPAは請求書の読み取りやデータのマッチング、支払い処理の自動化など、請求書処理や支払い処理を効率的に行うことができます。特に、受注から請求書の発行、請求書の確認と処理、支払いの自動化などの処理に向いています。
その他、複数のシステムやソースからデータを抽出し、必要な形式に整形して処理する業務にも向いています。Webサイトから情報を抽出してデータベースに保存する作業や、複数のデータソースからの情報を統合して整形する作業などの効率化におすすめです。
RPAができないこと
RPAは、人間のような判断力や推論力を持っておらず、複雑な意思決定を行うことができません。例えば、企業の戦略的な方針や投資判断などの意思決定は、RPAでは適切な処理が難しいです。
また、自然言語処理などの非構造化データの処理も向いておらず、文書の意味を理解したり、文章から情報を抽出したりするタスクや、画像処理・画像認識などは困難です。
さらに、対話的なコミュニケーションや顧客対応など、人間とのインタラクションが必要なタスクの処理にも不向きです。具体的には、顧客からの質問・要望への対応や、瞬時の判断が必要な対話には適していません。
運用体制を整える
RPAを導入する際に失敗を防ぐためには、運用体制を整えることが非常に重要です。適切なトレーニングを受けたRPAの知識を持つ人材や専門家を運用チームに割り当てることで、RPAの導入や運用がスムーズに行えます。
また、現行の業務フローを見直しましょう。自動化すべきプロセスやタスクを明確にし、効率的な業務フローを設計することで、RPAの導入効果を最大化できます。
業務変更時にはRPAも対象に含める
RPAの導入で業務フロー・プロセスが変更された場合、そのままでは動かなくなることがあります。特に、入力画面の項目が1つ増えたり、ボタンの位置や名前が変更されたりなど、わずかな変更でも止まってしまうことがあり、RPAでは柔軟な判断ができません。
そのため、業務手順の変更時には必ずRPAへの影響を確認するようなルールを社内に周知しましょう。変更管理プロセスを確立し、必要な更新や調整を適切に行うことで、RPAプロセスを円滑に運用できます。
導入前に操作性を確認する
RPAツールの導入前には無料トライアルを利用し、現場担当者が実際のRPAツールの操作性や使いやすさを確認することが大事です。ツールの操作性を事前に確認することで、導入後のトレーニングやサポートの必要性を把握できます。
また、無料トライアルの利用により、RPAツールが自社のニーズや業務に適しているか否かを確かめられます。特定の業務プロセスやタスクを試し、RPAツールが期待通りの結果を出せるかどうかを確認することが重要です。
さらに、現場担当者からツールの操作性などに関するフィードバックを収集しましょう。データを分析し、ツールへの意見や要望を反映させることで、導入後の成功確率を高められます。
ベンダーのサポートも併せて確認
RPAツールを導入する際は、ベンダーの導入支援も確認しておきましょう。ベンダーによっては、スムーズにツールを導入するための初期設定やシナリオ作成のサポートを提供していることがあります。
その他、RPAツールの運用時に発生した疑問やトラブルに対して、迅速にサポートしてもらえるかも確認しましょう。サポートの受付時間や曜日、問い合わせ方法などをチェックしておくと、RPAツールの効果的な運用につながります。
RPA導入前に知っておきたい注意点

RPAを導入する際には、プログラミングの知識が必要とされるケースがあり、何でも自動化できるわけではないなど、いくつかの注意すべきポイントがあります。ここでは、RPA導入前に知っておきたい注意点について解説します。
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RPA導入前に知っておきたい注意点
プログラミングの知識が必要なケースもある
RPAツールは、一般的にプログラミングの知識がなくても使用できるように設計されています。しかし、特定の業務やタスクを自動化する際には、プログラミングの知識が必要となる場合があります。
複雑な業務やプロセスを自動化する場合、特定の条件に応じて異なる処理を行ったり、同じ処理を繰り返したりする必要があります。例えば、特定の条件下での分岐処理や、一連の処理を複数回実行するループ処理などのプログラミングが求められます。
また、他のシステムと連携してデータの受け渡しを行うことがあり、APIを使用したデータ送受信の処理が必要となります。このように、特定のタスクを自動化するためには、APIの利用方法を理解し、適切に実行するためのプログラミング知識が必要です。
何でも自動化できるわけではない
RPAは、特定のプロセスやタスクを自動化するのに適していますが、人間の判断や創造性が必要な作業には向いていません。戦略的な意思決定や創造的なアイデアの生成などは、人間の考えや経験に基づいて行われるため、RPAによる自動化が難しいです。
また、特定のルールや条件に基づいて自動的にタスクを実行できますが、人間との対話が必要な業務には適していません。例えば、顧客対応や折衝業務など、対話的なコミュニケーションが必要な業務は、RPAによる自動化が難しいです。
RPAは主に、構造化されたデータやパターンに基づくタスクの処理に適しています。しかし、自然言語処理や画像処理などの非構造化データを扱う場合、RPAでは適切に処理できません。
小規模の業務から始める
RPAの導入においては、いきなり大規模な業務の自動化を試みると、失敗するリスクが大きくなりやすいです。そのため、小規模な業務から始めるのがおすすめです。
導入プロセス全体のリスクを最小限に抑えつつ、小規模な業務での実践を通じてRPAツールやプロセスの適合性を確認し、問題や課題を特定しやすくなります。さらに、効果の確認と結果の可視化が容易になります。
その結果、導入の成功事例を示すことができ、組織内でのRPAの認知度や信頼度の向上につながります。成功した導入事例を基に、より大規模な自動化プロジェクトへの適用性を高めることも可能です。
RPAの導入がおすすめなケース

RPAが本領を発揮するのは、決まった手順で実施される定型的な業務、短時間で処理したい業務のサポートなどです。RPAの導入がおすすめなケースとしては、以下のような業務が挙げられます。
- 特定のファイルからデータを取得して別のシステムに転記する作業
- 数百件の処理が必要な作業量の多いデータ入力作業
- ヒューマンエラーが起こりやすい確認作業
- システム同士の連携が困難で自動化が可能な業務
- 休日や深夜など業務時間外で処理が必要な業務
RPAはルールに則った処理が得意なツールです。人の力を使うことなく、24時間稼働させたい業務にも対応できるため、定型的かつ負担の大きい業務を任せる際に最適です。対して、手順や処理内容が頻繁に変更されるような業務には適していません。
RPAの将来性

一部では、「RPAには将来性がない」「時代遅れの終わったコンテンツ(オワコン)」などという意見もあります。しかし、実際には、労働人口の減少や働き方改革の推進などの背景から、RPA市場は拡大すると予測されています。
近年、働き方改革が推進されており、柔軟な働き方やワークライフバランスの重視など、従業員の働きやすさを向上させる取り組みが進んでいます。RPAでルーチン作業や繰り返し業務を自動化することで、従業員の負担を軽減し、生産性を高める一助となります。
労働人口の減少や働き方改革の推進、デジタルトランスフォーメーションの加速などの背景から、RPA市場は拡大していくと予測されます。企業や組織には、効率化や生産性向上のためにRPAを積極的に活用し、競争力の維持・強化への取り組みが求められます。
AIとの組み合わせが注目されている
RPAとAIを組み合わせることで、RPAが対応できない複雑な作業や意思決定が必要な業務の自動化が可能です。AI技術の活用により、自然言語処理や画像認識などの高度なタスクを処理し、RPAと連携して自動化できます。
さらに、業務プロセス全体の最適化も図れます。AIがデータを解析し、優先順位付けや推論を行い、RPAがそれに基づいて自動化されたアクションを実行することで、業務の効率性や品質が向上します。
RPAとAIの統合によって、より高度な作業の自動化や業務の効率化が可能です。その結果、企業や組織の競争力が強化され、より価値のある製品・サービスを提供できるでしょう。

RPAとAI(人工知能)は、どちらも企業の業務効率化をサポートするテクノロジーですが、得意なことや動作の基準が異なります。この記事ではRPAとAIの違いを解説し、より業務を効率化させるための連携・組み合わせ事例を紹介します。
まとめ

RPAは、単純かつ反復的な業務の自動化に特化したテクノロジーであり、人間の労働力を解放し、業務の効率化や生産性向上を実現します。また、ヒューマンエラーの削減や処理時間の短縮など、多くの利点があります。
労働人口の減少や働き方改革の推進などの背景から、RPA市場は拡大すると予測されており、企業や組織は競争力を維持・強化するために、RPAを積極的に活用する必要があります。
「RPAは役に立たない」「意味がない」といった意見もありますが、ルーチン業務の自働化による効率アップ、AIとの組み合わせによる将来性などに注目して、RPAを大いに活用しましょう。
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