経費精算には法人カードがおすすめ|メリットや注意点・選び方を解説

Check!

  • 法人カードの利用で、経費精算業務の効率化や従業員の支払いの立て替えが不要になる
  • 法人カードを利用する際は、年会費や分割払い・キャッシングに非対応の場合などに注意
  • 法人カードを導入する前に、従業員ごとに利用可能上限額の設定や利用ルールを策定する

経費精算を効率化する方法として、法人カードの活用がおすすめです。小口現金精算がなくなってキャッシュフローにゆとりができ、人的ミス・不正の軽減にも役立ちます。本記事では、経費精算業務に法人カードを利用するメリットと注意点、導入前の準備や選び方などを解説します。

目次

開く

閉じる

  1. 経費精算には法人カードがおすすめ
  2. 法人カードを用いて経費精算を行う手順
  3. 法人カードの経費精算における領収書の扱い
  4. 法人カードの選び方と注目ポイント
  5. 法人カード導入前に準備しておくこと
  6. 法人カードを導入する際の注意点
  7. 法人カードはシステムとの連携がおすすめ
  8. まとめ

経費精算には法人カードがおすすめ

経費精算は、費用を立て替える従業員の金銭的負担、経理担当者の業務負担が大きく、人為的ミスや不正の発生といった多くの問題を抱えています。

このような問題を解決するためには、法人カードの導入がおすすめです。法人カードとは、企業や法人・個人事業主向けに発行される、仕事にまつわる経費精算などを行うための専用のクレジットカードのことです。

法人カードで支払った経費は、法人名義の口座から引き落とされるため、従業員の立て替えや小口精算を行う必要がなく、プライベートの支払いと経費を分けて管理することができます。

法人カードの利用により、キャッシュフローにゆとりができるほか、ポイントや付帯保険などの特典を受けることができます。ここでは、法人カードを利用するメリットについて、詳しく解説していきます。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

経費精算業務を効率化

法人カードの導入により、社員が持つカードを一元管理することができます。カードの利用明細を確認すれば、いつ・どこで・誰が・いくら使ったかが分かり、経理から従業員へ確認する手間が省けます。

さらに、法人カードと経費精算システム・会計ソフトを連携すれば、利用明細が自動入力されるため、手入力が不要になります。経理担当者による仕訳・支払い手続きも不要になり、経費精算業務の効率化が実現できます。

法人カードの利用明細を一元管理することにより、経費の使い方が可視化され、無用な支払いが見えてくることもあります。こういった経費の無駄遣いがなくなれば、会社全体のコスト削減にも繋がります。

個人の立て替えが不要

法人カードを導入していない場合、営業担当者の出張や外回りの際は、個人が経費を立て替えることになります。そういった経費精算が追いつかず、立て替えが度重なると、従業員個人の経済的負担が大きくなり、生活に悪影響を及ぼし兼ねません。

立替精算の流れは、立て替えた従業員が立替精算書を作成し、上司の承認を経て、経理が支払い手続きを行います。このような立替精算業務は、従業員・上司・経理担当者ともに負担が大きく、本来の業務の妨げになることも少なくありません。

しかし、法人カードを利用すれば、従業員の立て替えが不要になるため、立替精算業務そのものが不要になります。立て替え金を従業員に振り込む必要もないため、精算ごとにかかる振込手数料などのコスト削減にも繋がります。

入力ミス・不正の防止

法人カードと経費精算システム・会計ソフトを連携すれば、カードの利用明細が自動で取り込まれるため、手入力の必要がなく、入力ミスを防ぐことができます。

例えば、法人カードを使わずに立替精算した場合、従業員が領収書を悪用することで、カラ出張や水増し請求といった不正が起こる可能性があります。

その点、法人カードと経費精算システムなどを連携すれば、取り込んだデータを誰かが改ざんしようとした場合、アラート表示や履歴で確認できるため、不正が起こりにくい環境を作ることができます。

このように、法人カードで経費精算を行えば、経費の使用状況が一目で分かるため、金額の誤魔化しや、日付の改ざんができなくなり、不正の防止に繋がります。

小口現金精算がなくなる

小口現金精算とは、少額の現金を用いて、従業員の立て替えた経費を精算する方法です。立替精算は、振込で処理することがほとんどですが、少額の立て替え・急な仮払い申請に備えて、小口現金を用意している会社もあります。

立替経費を小口精算する場合、経理担当者が銀行から現金を出金し、保管しておく必要があります。さらに、終業時にその日精算があった場合は残高の確認が必要なため、小口現金精算は、経理担当者にとって、負担が大きい業務と言えます。

それが、法人カードの導入により、立替精算がなくなれば、小口現金の出納業務もなくなるため、担当者の業務効率が大幅に改善されます。立て替えた従業員にとっても、現金を受け取りに来る手間が省け、紛失・盗難といったトラブルを回避することができます。

プライベートの支払いと経費の支払いを区別できる

経費の立て替えが必要になった際、手持ちに余裕がなければ、従業員が自分のクレジットカードを利用することも考えられます。その場合、プライベートかビジネス用途かの判断が難しくなり、経費精算の担当者が適切に処理できない可能性があります。

しかし、法人カードを利用すれば、プライベートの支払いと経費の支払いが混在することがないため、精算業務が複雑になることもありません。

また、個人事業主の場合、個人名義のカードではなく、法人カードで経費を支払うことにより、プライベートと経費の支払いを明確に区別することができます。

キャッシュフローにゆとりができる

立替経費の精算方法は、会社ごとに異なります。例えば、振込精算の場合、振込手数料の節約のため、毎月の指定日・給料日にまとめて支払う会社もありますが、従業員の経済的負担を考慮して、その都度精算する会社も少なくありません。

しかし、都度精算の場合、会社側は常に支払いの可能性がある状態になるため、キャッシュフローにゆとりがなくなります。

その点、法人カードを導入すれば、支払い日は月1回に固定されるため、次の支払日までに猶予が生まれ、キャッシュフローにゆとりができます。その結果、経営が安定し、資金不足による倒産リスクを避けることができます。

ポイントや付帯保険などの特典を受けられる

法人カードには、ポイントや付帯保険などの特典が受けられるカードがあります。

法人カードで受けられる主な特典は、次の通りです。

  1. 海外旅行傷害保険
  2. ショッピング保険
  3. ETCカードの複数枚発行
  4. レストラン・レジャーの優待サービス
  5. 空港ラウンジ利用
  6. 会員専用旅行予約サイト(コンシェルジュ付き)
  7. 公共交通機関の予約サービス
  8. ビジネスカード会員限定イベント

海外・国内出張の多い企業では、「海外旅行傷害保険」「空港ラウンジ利用」「会員専用旅行予約サイト」「公共交通機関の予約サービス」の特典があると便利です。なお、営業車を多く所有する企業には、ETCカードを複数枚持てる特典がおすすめです。

このほか、ポイントやマイルの付与が受けられるカードもあります。特典の利用により、経費削減や業務効率の向上が期待できるため、カード選びの際は、特典内容も確認しておくといいでしょう。

法人カードを用いて経費精算を行う手順

ここからは、法人カードを用いて経費精算を行う手順を解説していきます。手順を辿ってみると、立替精算と比べて、申請書の作成・振込手続きがないことが分かります。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

経費精算書を上司に提出・承認を得る

法人カードで経費の支払いを行った従業員は、経費精算書を作成し、上司に提出します。上司は、精算書の内容を確認し、金額・支払い内容に問題がないかをチェックし、問題がなければ承認されます。

経費精算書を経理担当者に提出

上司の承認を得たら、経費精算書にクレジットカード売上票を添えて、経理担当者に提出します。社内ルールで領収書が必要な場合は、領収書も添えて提出します。

経理担当者が確認・引き落とし

経理担当者は、経費精算書とクレジットカードの利用明細に相違がないかを確認します。その後、経理内部で承認されたら、クレジットカード売上票と利用明細を一緒に保管し、仕訳を行います。

なお、法人カードと経費精算システム・会計ソフトを連携している場合は、仕訳・入力作業は必要ありません。法人カードで支払った経費は、会社の指定日に一括して引き落とされます。

法人カードの経費精算における領収書の扱い

法人カードの経費精算においては、領収書の扱いが分からないといった声も多く聞かれます。ここでは、法人カードの経費精算における、領収書の扱いを解説していきます。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

領収書は基本的に不要

法人カードによる経費精算においては、領収書は基本的に不要です。国税庁の見解によると、領収書とは「金銭又は有価証券の受領事実を証明する目的で作成されるもの」です。

クレジットカード決済の場合、カード利用者と販売者の間で現金のやり取りが完結していないため、税法上の「領収書」の発行は不可能と言えます。

クレジット決済後に、購入者からの要望により交付される「領収書」の名がつく書類は、税法上の受領書・領収書には該当しないため、不要と判断されます。ただし、仕入税額控除の適用には一定の条件があるため注意してください。

参考:クレジットカード会社からの請求明細書|国税庁

領収書が必要な場合、領収書として認められる書類を準備

税務調査などにおいて、法人カードによる経費精算に領収書が必要な場合、領収書として認められる書類を準備する必要があります。

クレジットカード決済の場合、次の5つの項目が記載されている「ご利用明細」や「レシート」が、領収書として認められます。

  1. 発行者名(書類の作成者の氏名又は名称)
  2. クレジット決済時の日時(課税資産の譲渡等を行った年月日)
  3. 購入内容(課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容)
  4. 金額(税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額)
  5. 購入者名(その書類の交付を受ける者の氏名又は名称)

これら5つの項目がしっかり確認できる書類は、税法上、領収書の代わりとして認められるため、破棄せずに保管しておきましょう。

法人カードの選び方と注目ポイント

法人カードの導入を検討する際、企業によってカードの機能に求めるものが違いますが、年会費や利用上限額に注目するなど、おすすめの選び方があります。ここでは、法人カードの基本的な選び方と注目ポイントを解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

年会費にかかる費用

まずは、法人カードの導入において一番気になるであろう費用面です。特に、年会費は発行する法人カードの枚数に応じてかかるため、発行しようとしている枚数が多い場合は、その枚数分の年会費を算出してから検討するようにしましょう。

年会費は、無料のものもあれば10万円を超えるものもあり、個人で発行するカードよりも高く設定されているものが多いです。

もちろん、年会費が高いものほど高機能を搭載していますが、自社の法人カードの導入目的と合わせて、使わない要素は排除して考えることをおすすめします。そうすることで、なるべく低コストで法人カードの運用を行うことができます。

利用上限額はいくらか

法人カードを実際に使うことをシミュレーションしながら、どのような商品やサービスに使う経費精算用のカードなのか、月額・年額がどのくらいになりそうなのか、しっかりと計算した上で法人カードの利用上限額を確認するようにしましょう。

利用上限額を把握せずに利用を開始すると、すぐに利用上限額に達してしまい、法人カードの利用ができなくなってしまいます。また、法人カードの利用実績・精算実績に合わせて利用上限額を引き上げられるかの確認も行うと、企業拡大に合わせた対応も可能になります。

傷害保険などの特典サービス

利用する法人カードによって、海外旅行傷害保険を完備していたり、カードの利用上限額に合わせて高額な精算を決済前に止めてくれたり、メリットの多いさまざまな特典サービスを用意しています。

営業担当者などの出張回数が多い、出張の距離が遠い場合、それらに合わせてポイントやマイルの付与額も大きくなります。そのため、費用面と合わせて、あると業務が効率化する・必要な特典サービスなどの点にも注目して、法人カードを比較検討してみましょう。

法人カード導入前に準備しておくこと

法人カードを導入する際は、不正やトラブルを防止するためにも、社内ルールを明確にしておく必要があります。ここでは、法人カードの導入前に準備しておくことを解説していきます。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

カードの利用範囲を決める

法人カードは、利用範囲を決めておかなければ、従業員個人の判断で加減なく使用されてしまう可能性があります。法人カードの不適切な使用を防ぎ、経費の無駄遣いを減らすためには、予めカードの利用範囲を決めておかなければなりません。

そのためには、どこからどこまでが経費として認められるのかを社内ルールで明確にし、従業員に周知徹底しておく必要があります。

個別に利用上限額を設定

法人カードは、個別に利用上限額を設定することができます。法人カードを複数の社員に渡している場合、利用限度額の設定がないと、1ヵ月分だけでも想定外の高額な経費が計上される恐れがあり、会社の経営に影響を及ぼすことも考えられます。

こういった事態を避けるためにも、個別に利用上限額を設定しておくことで、毎月の支払いの上限額が予想できるため、キャッシュフローが把握しやすくなります。利用上限額は、役職・部署・担当業務を考慮して、設定するといいでしょう。

利用ルールを策定

法人カードの利用で最も気をつけるべきことは、個人利用とビジネス利用を明確に分けることです。そのためには、私的利用は一切認められないことをルール化しておく必要があります。

一度でも私的利用を認めると、個人利用と経費の区別が必要となり、担当者の業務負担が大きくなってしまいます。その結果、せっかく法人カードを導入しても、業務効率の改善が見込めなくなる恐れがあります。

ポイント付与がある法人カードの場合、原則、ポイントは会社に帰属します。貯まったポイントを私的に利用すると、横領罪として罰せられる可能性があるため、ポイントの使い方についても、社内ルールで明確にしておく必要があります。

法人カードを導入する際の注意点

法人カードにはさまざまなメリットがありますが、注意点があることも覚えておきましょう。法人カードを導入する際は、下記のような事項も確認しなければなりません。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

年会費が発生する

法人カードの中には年会費が無料のものもありますが、一般的には、年会費が発生すると考えておいた方がよいでしょう。

基本的に、年会費はカードの発行枚数分かかりますが、種類によっては1枚ごとの場合もあれば、まとまった単位ごとにかかる場合もあります。さらに、付随して追加するETCカードについても、年会費が発生します。

個人向けカードと比較して、法人カードの年会費は高額なことが多く、利用の有無に関わらず、毎年支払う必要があります。

なお、利用限度額やステータスが高いカードほど、年会費が高くなりますが、年会費が割安なカードは発行できる枚数が少ない場合があるため、導入前に確認が必要です。

法人カードの年会費は経費として計上できますが、年会費と利用頻度・メリットを比較して、導入するかどうかを検討しましょう。

分割・リボ払いに対応していないカードもある

個人向けカードは大抵の場合、分割・リボ払いができますが、法人カードは一括払いが基本です。最近では、分割・リボ払いに対応する法人カードもありますが、個人向けカードに比べて、金利が高い傾向にあります。

法人カードを導入する際には、過去の経費精算における費用を算出しましょう。その費用の一括払いが難しい場合、分割・リボ払いの利用が想定される場合は、コストに対する支払い金利も確認してからカードを選ぶようにしましょう。

キャッシングに対応していないカードもある

個人向けカードでは、条件に応じてキャッシングも可能ですが、法人カードでは、基本的にキャッシングはできないと考えておきましょう。

中には、キャッシングに対応している法人カードもありますが、高額な貸し倒れのリスクを避けるために、キャッシングは不可とするカード会社がほとんどです。もし、事業資金が必要な際は、法人カードローン・ビジネスカードローンの利用を検討してみましょう。

個人向けカードと比べてポイント還元率が低い

法人カードは、個人向けカードと比べて、ポイント還元率が低い傾向にあります。しかし、法人カードは支払いの額が大きくなるため、付与されるポイントの総数は個人と比べて多くなります。

貯まったポイントは、オフィス用品や出張旅費の一部に充てることができます。ポイントのほかに、マイルが付与されるカードもあるため、飛行機の利用が多い会社は、マイル特典を活用するのもいいでしょう。

なお、法人カードの中には、ポイント付与のないカードもあります。ポイントを上手く活用すれば、会社の経費削減に繋がるため、同じような条件のカードであれば、ポイント付与のあるカードを選ぶ方がお得です。こういった点も考慮して導入を検討しましょう。

法人カードはシステムとの連携がおすすめ

法人カードは、経費精算システムや会計ソフトなどのシステムと連携することで、よりメリットを享受できます。最後に、法人カードと経費精算システム・会計ソフトとの自動連携について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

法人カードはシステムとの連携がおすすめ

  1. 利用明細を経費精算システムと自動連携
  2. 会計ソフトと自動連携

利用明細を経費精算システムと自動連携

法人カードは、種類によって経費精算システムとの自動連携が可能です。法人カードと経費精算システムを連携すると、カードの利用明細が自動でシステムに取り込まれます。

そのため、入力ミス・計算ミスといったヒューマンエラーを回避することができ、水増し請求などの不正防止にも役立ちます。経費精算をExcel(エクセル)などで管理する場合と比べて、担当者の業務効率が大幅に改善されるため、人件費の削減にも繋がります。

法人カードの多くは、Suica・PASMOなどのICカードのオートチャージには利用できません。一方、経費精算システムは、交通系ICカードとの自動連携が可能である場合が多く、経費精算の完全キャッシュレス化が実現に期待できます。

会計ソフトと自動連携

法人カードは、会計ソフトとの自動連携も可能である場合がほとんどです。法人カードと会計ソフトを連携することにより、仕訳作業が不要になり、会計処理の業務効率が向上します。

会計ソフトを導入済みの企業にとっては、既存のソフトと連携することにより、コストを節約することができます。法人カードを導入する際は、既存の会計ソフトと連携できるかどうか、互換性・相性も含めて確認しておきましょう。

まとめ

経費精算の効率化には、法人カードの活用がおすすめです。法人カードを利用すれば、経費精算業務が効率化されるだけでなく、人為的ミスや不正の軽減にも繋がります。

さらに、法人カードのポイントや特典を利用して、経費の削減ができるほか、支払日が限定されることにより、キャッシュフローにゆとりができるといったメリットもあります。

カードの導入にあたっては、従業員ごとに利用上限額を設定し、利用ルールを策定しておきましょう。また、年会費の支払いや、分割払い・キャッシングの可否についても、考えておく必要があります。

法人カードは単独で使用するよりも、経費精算システム・会計ソフトと連携することにより、より一層業務を効率的に進めることができます。導入を検討する際は、システム・ソフトとの連携も視野に入れて、メリットを最大限に活かす環境作りを行いましょう。

Share

top