カスタマーサクセスのNPSとは?算出方法や活用のポイントを解説

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  • カスタマーサクセスにおいて、NPSは収益拡大につながる重要な指標である
  • NPSで顧客ロイヤルティの全体像は把握できるが、具体的な課題までは読み取れない
  • NPS調査実施時は多数の回答を集め、顧客をセグメントごとに分析するのがポイント

カスタマーサクセスで重要となる顧客ロイヤルティの把握には、NPS(ネットプロモータースコア)という指標が用いられます。本記事では、カスタマーサクセスにおけるNPS調査のメリットや注意点、活用する際のポイントなどを解説します。

目次

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  1. カスタマーサクセスのNPSとは
  2. カスタマーサクセスにおけるNPSの重要性・メリット
  3. カスタマーサクセスにおけるNPSの注意点
  4. NPSをカスタマーサクセスで活用する際のポイント
  5. NPS調査の実施手順
  6. まとめ

カスタマーサクセスのNPSとは

カスタマーサクセスは、商品やサービスを提供する企業が、顧客が成功を収めるためのサポートを指します。

具体的には、企業が顧客と積極的にコミュニケーションを取り、商品やサービスの最適な活用方法を提案することで、顧客への価値提供を最大化させるサポートです。カスタマーサクセスの成功を測る指標として、NPS(ネットプロモータースコア)が使われます。

本記事では、カスタマーサクセスにおけるNPS調査のメリットや注意点、活用する際のポイントなどを解説します。

カスタマーサクセスとは?メリットや施策例、成功のポイントも解説

カスタマーサクセスとは、すでに商品やサービスを購入している顧客に能動的に働きかけ、顧客を成功へ導くことです。解約率の減少やLTVの最大化といった効果が期待できます。この記事ではカスタマーサクセスの概要やメリット、成功のためのポイントなどを解説します。

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カスタマーサクセスのNPSとは

  1. NPSとは
  2. NPSのスコア算出方法
  3. CSATとの違い

NPSとは

NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客が企業の提供する価値やサポートの品質にどれだけ満足しているかを示す指標であり、結果を数値で表現します。

このスコアは、カスタマーサクセス分野で重要なKPIとして活用され、顧客の忠誠心や満足度を測定します。高いNPSはリピート購入や積極的な口コミの提供を示し、企業にとっては顧客満足度向上とビジネスの成長に役立ちます。

顧客の意見や感情を数値に変換することで、企業は客観的な視点からサービスの改善や戦略の調整を行い、顧客との信頼関係の構築が可能です。

NPSのスコア算出方法

NPSのスコア算出方法は簡単です。顧客に対して「この商品・サービスをどのくらい家族や友人に勧めたいですか?」という質問をして、顧客は0から10の11段階で評価します。得られた回答から、以下の3つのタイプに分類します。

  1. 0~6点をつけた人:批判者
  2. 7、8点をつけた人:中立者
  3. 9、10点をつけた人:推奨者

推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSとなります。正の値であれば良い評価を受けていることを示し、負の値であれば改善の余地があることを示します。

CSATとの違い

CSATは、顧客が商品・サービス・お店に対してどれだけ満足しているかを評価する指標です。CSATとNPSの違いは、CSATが具体的な取引や体験に焦点を当て、評価を点数で表すのに対して、NPSは総合的な顧客ロイヤルティを測定する点です。

CSATは特定の面での満足度を把握しやすく、改善が必要な領域を特定するのに役立ちます。一方、NPSは企業や製品に対する顧客の忠誠心や愛着度を示す傾向を捉え、より広範な視点で顧客の全体的な関与度合いを評価します。

なお、CSATとNPSは組み合わせて利用すれば、詳細な改善ポイントと総合的な顧客ロイヤルティの向上を両立させることが可能です。

カスタマーサクセスにおけるNPSの重要性・メリット

カスタマーサクセスにおいて、NPSは至るところで注目を集め、企業にとっての重要な測定指標となっています。ここでは、なぜNPSがカスタマーサクセスにおいて重要なのか、メリットについても解説します。

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収益拡大との相関性がある

カスタマーサクセスにおけるNPSの重要性は、ビジネスの成長に関係します。NPSは顧客の忠誠心や満足度を数値化する手段であり、高いスコアを維持することが企業に利益をもたらします

顧客が高いNPSを評価すると、それは企業の製品やサービスへの満足度が高いことを表しています。満足度が高い顧客は、リピート購入やアップセルに加え、他の顧客を紹介する可能性が高いです。これらの積極的な行動が、収益を拡大させる要因となります。

PMFを測る指標になる

PMFは、製品やサービスが市場にどれだけ適合しているかを測定する指標です。顧客が提供された価値を理解し、製品やサービスに満足しているかどうかを示します。PMFが高いと市場での競争力が強まり、ビジネスが成長する可能性が大きくなります。

NPSは、PMFを測る際の重要な手がかりです。高いNPSは顧客が製品やサービスに非常に満足しており、製品やサービスが市場に受け入れられていると判断できます。

NPSがPMFを測る手段となれば、企業は製品やサービスの市場適合性を客観的に評価し、改善点を見つけて進化させることが可能です。

集計・比較をしやすい

NPSのメリットの1つは、そのシンプルな質問形式にあります。簡単な質問で測定ができるため、顧客の回答率が高まります。また、質問に対する回答の集計も簡易で複雑な処理が不要です。

このシンプルな性質により、NPSは手軽かつ迅速に実施でき、継続的な分析が容易な指標です。また、同じ質問が広く利用されているため、業界全体や他社との比較がしやすく、サービスの評価や位置付けを理解するために役立ちます。

NPSは統一的な基準で測定されるため、業界ベンチマークや他社との比較が明快に行え、自社の立ち位置を客観的に把握することが可能です。

顧客との有用な接点になる

NPSは、顧客と直接対話する貴重な機会を提供します。顧客のフィードバックを通じて、企業は製品やサービスに関する現状を把握し、顧客のニーズや期待を深く理解できます。

その結果、企業はサービスの質を向上させるための具体的な方向性を見出すことが可能です。企業のイメージ向上につながるため、顧客の離反防止としても役立ちます。

企業がフィードバックに対応して真摯に改善を行うことで、顧客満足度の向上と持続的なビジネス成功につなげられます。

カスタマーサクセスにおけるNPSの注意点

カスタマーサクセスにおけるNPSには、顧客の具体的な課題までは把握できない、スコアに基づいたアクションが必要などの注意点があります。ここでは、各注意点について詳しく解説します。

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顧客の具体的な課題までは把握できない

NPSは主に推奨度を尋ねる質問を中心に構成されています。そのため、顧客が低いスコアをつけた場合、背後にある具体的な問題点を直接把握することが困難です。

NPS調査は質問数が比較的少なく設定されており、一回の調査で得られる情報が限られています。シンプルな構造が回答率を向上させる反面、個別の顧客が抱える具体的な課題や不満にまで踏み込むことが難しいといえます。

より詳細な情報が必要な場合には、他の調査手法やフィードバック収集の仕組みを併用するのがおすすめです。

スコアに基づいたアクションが必要である

NPSを導入する際、単に調査を行うだけでは問題の解決や改善につながらないのが注意点です。NPS調査の真価は、得られたスコアを基に具体的なアクションプランを策定し、実行することにあります。

例えば、顧客が抱える問題や不満を明確に理解し、それに対処するための具体的な取り組みが必要です。スコアに基づいたアクションがない場合、カスタマーサクセスの向上や企業の成長には期待できません。

NPSを導入する企業は、調査結果をただ収集するのではなく、積極的かつ効果的な改善策の実施が重要です。

サイレントカスタマーが存在する

思うように回答数が集まらない場合は、サイレントカスタマーの存在を考慮する必要があります。サイレントカスタマーとは、製品やサービスに不満や悩みがあっても、それらを伝えずに利用をやめてしまう顧客を指します。

サイレントカスタマーを放置してしまうと、解約率の上昇に発展するだけでなく、SNSや口コミサイトで、製品やサービスに対するネガティブな話題が広められる恐れもあります。その結果、見込み客を一気に失うことも考えられるため、適切な対策が求められます。

アンケートを実施する際は形式的に行うのではなく、顧客の声を受け止めてしっかりと改善につなげる姿勢をアピールしましょう。また、問い合わせ先がわかりづらくなっていないか、サポート体制が整っているかを見直すことも大切です。

NPSをカスタマーサクセスで活用する際のポイント

NPSをカスタマーサクセスで活用する際には、多数の回答を集めることや顧客をセグメントに分けて分析することなど、いくつかのポイントがあります。ここでは、それぞれのポイントに注目して詳しく解説します。

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多数の回答を集める

NPSのスコアを信頼性のあるものにするためには、多くの回答を集めることが重要です。多くの回答を集めるためには、オンラインアンケートや電子メールを活用するなど、効果的な収集方法が存在します。

オンラインアンケートは、顧客が手軽に回答できるため、広範な参加につなげることが可能です。また、電子メールを利用する場合は、既存の顧客データベースからアプローチすれば、特定の顧客セグメントに対して重要なフィードバックを得られます。

これらの方法を活用することで、大量の回答を得られるため、NPSスコアがより正確なものとなります。多様な意見を取り入れることで、企業は顧客の本音をより詳細に理解し、効果的な改善策を講じることが可能です。

回答率を高めるために重要な設問設計

多数の回答を集めるためには、適切な収集方法を選択することはもちろん、内容を回答しやすいものにすることも重要です。また、設問数は多くしすぎず、回答者の負担にならないよう5分以内で終えられる量を目指します。

アンケートの1問目では、必ずNPS測定に最も必要な推奨度を質問しましょう。その上で「なぜそのような点数をつけたのか」という追加の質問を設定すると、製品やサービスの具体的な強みや改善点を見つけ出すヒントを得られます。

顧客をセグメントに分けて分析する

NPSをカスタマーサクセスで有効に活用するためのポイントは、顧客を異なるセグメントに分けて分析することです。顧客を異なるグループに分類して、各セグメントごとにNPSスコアを分析すれば、より詳細で具体的な情報を得ることが可能です。

具体的な分類方法としては、契約規模や担当者の役職、サービスの活用状況などの属性を考えることが挙げられます。

例えば、契約規模に基づいて大規模な企業と中小企業を分け、それぞれのグループごとにNPSを比較することで、異なるニーズや課題への理解が深まります。

NPS以外の指標を組み合わせる

カスタマーサクセスの精度の高い分析には、NPSだけでなく、他の指標も組み合わせることが重要です。NPSは顧客の忠誠心を示す優れた指標ですが、ビジネス全体の健全性を把握するには他の要素も考慮する必要があります。

NPS以外の指標には、具体的に以下のような指標が挙げられます。

チャーンレート(解約率)顧客が契約中のサービスを解約した割合の指標
リテンションレート(維持率)一定期間中に契約し続けている顧客の割合を示す指標
NRR(売上継続率)現在の既存顧客の売上と前年度との比較から売上の増減を示す指標

ネガティブな情報も積極的に共有する

NPSスコアの結果は企業にとって非常に有益な情報ですが、その価値を最大限に引き出すには、ネガティブな情報も積極的に共有することが重要です。サービス開発部や経営層は、常に製品やサービスに対する改善の余地を把握しておく必要があります。

ネガティブなフィードバックがなければ、問題点や課題が見逃され、本質的な改善を行うのが困難です。ネガティブなコメントや低い評価がある場合、それらを率直に報告することで、経営層や開発チームは問題の本質を理解しやすくなります。

調査は1人あたり年2回程度に抑える

NPSの調査は、1人あたり年2回程度に抑えるべきです。顧客にとって定期的な調査が重要である一方、過度に高い頻度は顧客にストレスを与えかねません。何度も同じ質問に回答することにより、疲れやストレスを生じさせる可能性があります。

顧客の負担を最小限にするには、年2回の調査頻度がバランスの良い選択です。顧客は自身の意見を積極的に表明し、継続的な改善に向けた有益な情報提供に期待できます。

そのため、効果的なNPS調査を実施するには、顧客の利便性とストレスの調整が重要なポイントです。

改善を繰り返す

NPSスコアを活用する際の重要なポイントは、スコアを基にサービスやサポートの改善サイクルを繰り返すことです。

NPS調査で得られたスコアや顧客のフィードバックを根拠に、顧客が商品・サービスに対する価値を向上させる努力を行うことが大事です。この改善サイクルにより、顧客の満足度と忠誠度が向上し、売上や顧客の生涯価値が増加します。

そして、改善策を実施した後は効果を検証し、問題点があれば素早く改善を行いましょう。

NPS調査の実施手順

NPS調査は、主に以下のような流れで実施します。

  1. 目的の明確化
  2. ターゲットの選定
  3. 設問の設計
  4. 配信方法の決定
  5. 調査の実施(配信)
  6. 回答の収集とNPSスコアの算出
  7. 分析と課題の特定
  8. 社内共有・PDCA
  9. 定期的な実施と比較

これらの手順により、企業は適切な改善策を実施し、顧客満足度の向上に期待できます。また、実施においていくつかの点に注意しましょう。

匿名性を担保する

NPS調査では、本音を引き出すために匿名性を担保することが重要です。例えば、回答者が名前やIDと紐づいていると、企業に対する不満と批判を誘発する可能性があります。

特に、低評価の批判者ほど、匿名性の有無で回答内容が変わることが多いため注意が必要です。フォーム上に匿名での回答であることを明記し、ユーザーIDや氏名などを自動取得しないような設計にしましょう。

データ保護と透明性

顧客からの信頼喪失につながらないよう、個人情報保護法を含めた法令遵守が必須です。NPS調査ではプライバシーポリシーへのリンクをアンケート画面に明記し、収集したデータはスコア改善のみに利用することなど、目的を明示しましょう。

さらに、利用ツールはSSL対応やアクセス制限、IP制限機能などを搭載したセキュリティの高いものを選定し、データの保存期間・取り扱い範囲についても社内でルール化しておくことが大切です。

まとめ

カスタマーサクセスでは、顧客のロイヤルティを測るための重要な指標としてNPSが活用されます。NPSは企業が提供する商品やサービスに対する顧客の忠誠心や満足度を評価し、その結果を数値化したもので、カスタマーサクセスに不可欠です。

NPSを活用する際は、多数の回答を集めて正確な結果を得ることをはじめ、顧客をセグメントに分けて分析を行い、より具体的な傾向を把握することなどのポイントがあります。

本記事で紹介した重要性やメリット、注意点などを確認し、カスタマーサクセスのパフォーマンスを向上させましょう。

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