カスタマーサクセスのリテンションとは?高めるための施策も解説

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  • リテンションとは、既存顧客の流出を防ぎ、継続的な関係を維持するための施策を指す
  • サービスの継続利用やアップセル・クロスセルのために、リテンションは重要である
  • リテンションレートを高めるには、オンボーディングに注力し、ヘルススコアを管理する

リテンションとは顧客と継続的な関係を維持するための施策を指し、カスタマーサクセスにおいて大変重要です。適切なリテンション施策は、顧客のアップセル・クロスセルにも繋がります。この記事では、カスタマーサクセスにおけるリテンションレートを高める方法などを解説します。

目次

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  1. カスタマーサクセスのリテンションとは
  2. カスタマーサクセスにおけるリテンションの重要性
  3. リテンションレートとは
  4. リテンションレートが下がる理由
  5. リテンションレートを高めるための施策
  6. リテンション施策に関する注意点
  7. まとめ

カスタマーサクセスのリテンションとは

カスタマーサクセスとは、企業や組織が提供する製品やサービスを購入した顧客が、その製品やサービスの価値を最大限に引き出して活用し、満足感を得ることを目指すビジネス戦略およびアプローチを指します。

カスタマーサクセスの実施にあたっては「リテンション」について理解しておくことが必要です。リテンションとは、企業や組織が既存の顧客を引き続きサービスや製品の利用者として位置付け、親密な関係を維持していくための有効なサポートやアプローチを指します。

本記事では、カスタマーサクセスにおけるリテンションの重要性、リテンションレートを高める施策などについて、分かりやすく解説します。

カスタマーサクセスとは?メリットや施策例、成功のポイントも解説

カスタマーサクセスとは、すでに商品やサービスを購入している顧客に能動的に働きかけ、顧客を成功へ導くことです。解約率の減少やLTVの最大化といった効果が期待できます。この記事ではカスタマーサクセスの概要やメリット、成功のためのポイントなどを解説します。

「リテンション」とは

リテンション(Retention)とは、一般的に「保持」や「維持」といった意味を持ちます。マーケティングにおいては、主に顧客維持や顧客保持といった意味として使われ、既存の顧客に対して、製品やサービスを購入を続けてもらうための戦略や取り組みを指します。

成功するリテンション戦略とは、顧客が自社製品を使うことによって満足感を得ることや、効果的なコミュニケーション、特典やリワードの提供などを含みます。これによって、企業は長期にわたって良好な顧客関係を築き、売上を増大させることができます。

カスタマーサクセスにおけるリテンションの重要性

カスタマーサクセスは、現在のビジネスにおいて不可欠な概念となりつつあります。顧客との継続的で良好な関係が求められる状況において、リテンションの考え方はその根幹をなす重要な要素となります。

ここからは、カスタマーサクセスにおけるリテンションの重要性として、以下の項目に分けて詳しく解説します。

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顧客にサービスを継続利用してもらうため

顧客が自社製品やサービスに満足している場合、競合他社に流れる可能性が低くなります。良好な顧客体験や顧客サポートを提供することで、顧客は満足度を高めて、他の選択肢を検討することが少なくなり、自社製品やサービスを選び続ける可能性が高まります。

また、既存顧客と長期的で良好な関係を維持することは、口コミや推薦などを通じて新規顧客の獲得にも繋がります。製品に満足した顧客は、自然と他の人にその良い経験を共有しやすくなり、信頼性のある広告を広めることにもなります。

新規顧客獲得より低コストなため

既存顧客を維持して継続してもらうことは、新規顧客の獲得よりも低コストの場合があります。既存顧客は、すでに企業の製品やサービスに関心を持って利用しているため、コストをかけて新たな広告やマーケティングキャンペーンなどを展開する必要がなくなります。

また、既存顧客は自社製品やサービスについてある程度の知識があり、購入へのプロセスが円滑に行われる傾向があります。そのため、新規顧客に比べて営業活動にかかるコストが低くなる可能性があります。

既存顧客との関係を重視することで、長期的なパートナーシップを築くことができます。顧客との長期的で親密な関係は、企業にとって持続的な収益をもたらし、新規顧客獲得に比べても安定したビジネスの利益が見込めます。

アップセル・クロスセルに繋がるため

既存顧客の適切な維持によって、アップセルやクロスセルに繋がる可能性が高まります。アップセルとは、既に購入している製品・サービスのアップグレードや追加機能が搭載された製品を提案して、販売することを指します。

一方でクロスセルとは、別の関連性のある製品やサービスを提案し、追加の購入を促すことを意味します。これらの戦略を活用することで、既存の顧客から追加の収益を生み出す可能性が高まります。

リテンション施策を通じて、顧客が既に自社製品の価値を理解・満足している場合、既存の製品やサービスに対して信頼していることが多いです。この信頼によって、アップセルやクロスセルの提案が受け入れやすくなります。

ネガティブチャーンを達成するため

ネガティブチャーン(Negative Churn)とは、自社サービスの解約によって減少した収益の額と、既存顧客から得た新規の収益額を比較して、既存顧客から得た新規の収益額が上回った状態のことを指します。

例えば、100社の顧客があり、それぞれ平均10,000円の収益があるとします。先月2社が解約し、収益が20,000円減りました。一方で、既存顧客5社に5,000円分のアップセルが成功しました。

この場合、収益ベースのチャーンレートは「(20,000ー5×5,000)/(10,000×100)×100=ー0.5%」とマイナスの数値になり、ネガティブチャーンの状態となります。

既存顧客へのリテンションによってアップセルが成功し、減少した顧客分を上回る収益が達成されたことになります。

リテンションレートとは

リテンションレート(Retention Rate)は、特定の期間内に既存の顧客やユーザーを維持し続ける能力を示す指標です。通常、リテンションレートは、1か月や1年など一定の期間において、前期に利用していた顧客の何パーセントが引き続き利用しているかを表します。

企業がこの指標を用いることで、特定の期間において顧客をどれだけ保持できたかが把握でき、製品やサービスの継続的な改善やリテンション戦略の検討を行うことが可能となります。

高いリテンションレートは、企業が顧客を獲得し続けて、顧客満足度を高めていることを示し、持続的なビジネス成長の可能性を表します。

リテンションレートの算出方法

リテンションレートは、ある特定の期間において、企業が獲得した顧客やユーザーをその期間終了時までにどれだけ保持できたかを示す指標です。

リテンションレートは、「リテンションレート(%)=継続顧客数÷新規顧客数×100」の計算式で算出できます。

この計算式では、継続利用している顧客やユーザーの数を新規顧客数で割り、その結果を100倍してパーセンテージで表します。この割合が高いほど、顧客獲得率が高くなります。

リテンションレートを把握するメリット

リテンションレートを把握することによって、企業は既存顧客が将来的にどのくらいの期間継続利用するかを予測できます。企業は将来の収益や需要を見積もり、長期的なビジョンの構築や事業計画、ビジネス戦略などの策定が可能です。

また、リテンションレートの数値を分析することで、顧客離れが起きやすい課題やポイントを特定できます。これに基づいて、企業は効果的なリテンション施策を導入し、顧客の満足度をアップさせて、長期的な収益の確保や業績向上も達成できます。

リテンションレートが下がる理由

顧客は製品やサービスを利用する際に、価格に見合う価値を期待します。そのため、価格に対して提供される価値が、顧客の期待にマッチしないと不満が生じます。単に価格の問題ではなく、提供される価値の不足がリテンションレートの低下に繋がります。

また、企業が価格に見合った価値を提供しておらず、競合他社が同等またはそれ以上の価値を提供している場合、顧客はそちらを購入することになります。これによって、企業は顧客を失うことになり、リテンションレートの低下につながる要因となります。

リテンションレートを高めるための施策

現代の競争激しいビジネス環境において、企業が成功するためには新規顧客獲得だけでなく、既存顧客を維持することが不可欠です。そのため、リテンションレートを高めることは、企業の持続的な成長や安定した収益の確保に直結します。

ここからは、リテンションレートを高めるための施策として、下記の項目について解説します。

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オンボーディングに注力する

オンボーディングは、顧客が初めて製品に接触してから価値を理解し、満足度を感じるまでのプロセスを指します。適切なオンボーディングは、初期の顧客のエンゲージメントを向上させ、製品やサービスに興味を持って積極的に利用を続けるきっかけとなります。

オンボーディングによって、製品やサービスの使い方をわかりやすく伝えるだけでなく、その背後にある価値や利点も明確に提示します。これによって、顧客は提供される製品の価値を理解しやすくなり、継続的に利用しようとする動機づけにもなります。

カスタマーサクセスのオンボーディングとは?重要性や流れを解説

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ヘルススコアを管理する

ヘルススコアは、顧客の健全度を数値で示し、企業はリアルタイムで顧客の状態を確認できます。これによって、顧客がどれだけ製品やサービスに満足しているか、どれだけ利用しているかなどを把握しやすくなります。

ヘルススコアが低下している場合には、解約の予兆となる可能性があります。早期にヘルススコアの変化を検知し、問題がある場合は改善策を提示するなど迅速に対応することで、解約を未然に防ぐことができます。

ヘルススコアを基にしたデータ分析は、顧客ごとに異なるアプローチをする際の参考となります。顧客の満足度や不満な点を理解し、その情報を元に個別に対応したサービスや特典を提供することで、顧客の満足度を向上させて、解約リスクを低減できます。

カスタマーサクセスのヘルススコアとは?メリット・必要な指標を解説

ヘルススコアとは顧客が自社のサービス利用を継続するかどうか示す指標で、カスタマーサクセスにおいて重要とされています。この記事では、カスタマーサクセスにおけるヘルススコア活用のメリットや必要な指標、導入手順などを解説します。

顧客ロイヤルティを向上させる

顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して強い忠誠心を抱き、継続的にその製品やサービスを選択する状態を指します。ロイヤリティのある顧客は安定した収益をもたらし、口コミや推薦も行なってくれることで、新規顧客を獲得する際にも効果があります。

既存顧客に対してパーソナライズされたサービスを提供することで、特別で重要な存在であると感じさせることができます。例えば、ポイントや割引、特別なイベントへの招待などによって、顧客のロイヤルティの強化にも繋がります。

また、顧客への優れたサービスはロイヤルティ向上の鍵となります。迅速で親切かつ丁寧なサービスは、顧客が企業や特定のブランドに対してポジティブな感情を抱き、継続的なロイヤルティの要因にもなります。

アプローチの手法を使い分ける

顧客の状況に合わせて、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチのアプローチを使い分けることがおすすめです。製品やサービスに対する良好な体験の提供によって、顧客満足度の向上に繋がります。

ハイタッチは、個別かつパーソナライズされたサービスを提供するアプローチです。個々の

顧客に焦点を当て、親密な関係の構築や直接的な対話を強調します。それぞれの顧客毎に深い関係構築が要求される場合に適しています。

ロータッチは、複数の顧客に対してセミナーや勉強会などのサービスを提供します。多くの顧客に同時にアプローチができ、大規模な需要に対応するケースに適しています。

テックタッチは、チャットボットや自動応答システムなどのテクノロジーを活用して、効率的かつ自動的に広範囲の顧客と対話するアプローチです。定期的な情報提供や一般的な質問の回答など、標準的な情報の提供やサポートが求められるケースに適しています。

ハイタッチ・個々の顧客に焦点を当てたサービスを提供
・顧客との深い関係構築が要求される場合に最適
ロータッチ・複数の顧客に対し、セミナーや勉強会を実施
・大規模な需要に対応する場合に最適
テックタッチ・メールなど活用して効率的に広範囲の顧客と対話
・定期的な情報提供、質問への回答などの場合に最適

顧客が自発的に学習できる環境を整備する

製品やサービスの使用やトラブルシューティングに関する情報が整備されている場合、顧客自ら問題を解決できるようになります。これによって、問題発生時のサポート依頼が減少し、顧客はよりスムーズに問題解決ができます。

具体的には、FAQページやチュートリアル動画などの学習ツールの提供がおすすめです。顧客は製品やサービスの機能や使い方を理解し、最大限の価値を引き出すことができます。これによって、顧客の満足度が向上して、自社製品の継続的な利用に繋がります。

ユーザーコミュニティを作る

ユーザー同士のコミュニティの向上のために、オンラインフォーラムや掲示板を設け、ユーザー同士が質問を投稿し、回答し合える場所を提供するのもおすすめです。例えば、技術的な製品に関する疑問に対する情報交換が行えるようなプラットフォームを整備します。

ユーザーコミュニティには、製品の専門家やサポート担当者を積極的に参加させると、ユーザーの質問に迅速かつ適切に回答することができます。これにより、ユーザーは満足感を得て、企業に対して信頼感を持つようになります。

ユーザーコミュニティを通じて、ユーザーが製品やサービスを活用した際の成功体験やヒント、ベストプラクティスを共有するプラットフォームを提供することが可能です。そのため、他のユーザーが製品の価値を見出し、効率的に使用できるようになります。

サービスを改善する

顧客からのヒアリングなどを通して、サービスを改善することによって、顧客満足度を向上させることができます。高い満足感を得た顧客は、より長期間にわたりサービスの利用を続ける傾向があり、その結果としてリテンションレートもアップします。

顧客からのフィードバックを取り入れてサービスを改善することは、競争力を維持する上でも重要です。ビジネス環境は常に変化しているため、顧客の要望に迅速かつ効果的に対応することによって、競合他社に対する優位性を保つことができます。

リテンション施策に関する注意点

リテンション施策の計画を策定する際には、慎重かつ戦略的なアプローチが求められます。リテンション施策を成功させるためには、いくつかの注意点をしっかりと押さえることが肝要です。

ここからは、リテンション施策に関する注意点として、以下の項目の詳細を解説します。

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あらゆるデータを収集しておく

リテンション施策において、データ収集は極めて重要です。ツールやプラットフォームを利用して多岐にわたるデータを収集することで、深い洞察を得られ、より効果的な戦略を展開できます。

広範囲のあらゆるデータを集めることで、顧客が製品やサービスをどのように使用しているか、どの機能が重要であるかなど、行動の理解が深まります。集めた情報は、個々の顧客層に合わせたリテンション戦略を策定する際に役立ちます。

顧客の今後の行動を予測するためには、過去のデータから学習することが重要です。顧客がどの機能を使用するか、どのような要因や契機がリテンションに影響を与えるかなど、予測モデルの構築にあたって多岐にわたるデータの分析が有効です。

ハイタッチからスタートする

リテンション施策を導入する際には、ハイタッチなアプローチから始めることが重要です。ハイタッチは、直接的でパーソナルな接触やサポートを提供する方法であり、初期段階での関係構築や信頼の構築に役立ちます。

また、個別の顧客に対して、パーソナライズされたアドバイスや解決策を提供することが可能です。そのため、顧客は自分に適したサポートを受けることができ、製品やサービスへの愛着を深めることができます。

ハイタッチなアプローチは、顧客の初期の利用段階での課題や疑問を素早く解決するのに有効です。ユーザーが最初の体験で問題に直面した場合、迅速で適切なサポートを行うことでリテンションの向上にも繋がります。

PDCAサイクルを回す

リテンション施策において、PDCAサイクルを回すこともポイントです。PDCAサイクルは、計画・実施・評価・改善の4つのステップから成り立ち、効果的なリテンション施策の設計・実施から継続的な最適化までをサポートします。

PDCAサイクルを回すことで、リテンション施策は持続的に改善され、変化する市場や顧客のニーズに柔軟に対応できるようになります。継続的なPDCAサイクルの適用は、効果的なリテンション施策の立案と実施において欠かせないアプローチです。

まとめ

リテンション施策は、既存顧客を継続的に引き留めるための有効な戦略であり、企業の成功のために特に重要になります。また、新規顧客獲得に比べて既存顧客の継続が低コストであることから、顧客と長期的で良好な関係を築くことが大事になります。

顧客の声を取り入れ、フィードバックを重視することで、サービスの改善点が把握でき、リテンション率の向上に繋がります。

リテンション施策の成功のためには、顧客との信頼関係を築き個別ニーズを理解し、パーソナライズされたサポートを提供することが成功のカギとなるので、これらを踏まえて効果的なリテンション施策を策定しましょう。

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