カスタマーサクセスのアダプションとは?成功のポイントも解説

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  • アダプションとは、カスタマーサクセスにおいて顧客にサービスを定着させるフェーズ
  • カスタマーサクセスで重要なTTVの短縮には、アダプションフェーズが大きく影響する
  • アダプションを成功させるには、成果の出そうな指標から取り組むことが有効である

アダプションとは、カスタマーサクセスにおいて顧客にサービスを定着させるための重要なフェーズです。この記事では、カスタマーサクセスのアダプションがTTV(タイムトゥバリュー)に与える影響や、アダプションを成功させるためのポイントを解説します。

目次

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  1. カスタマーサクセスのアダプションとは
  2. アダプションがカスタマーサクセスのTTVに与える影響
  3. カスタマーサクセスのアダプションを成功させるポイント
  4. まとめ

カスタマーサクセスのアダプションとは

カスタマーサクセスとは、自社の商材を購入した顧客に対して、能動的に関わり顧客の成功体験を積み重ねる取り組みのことです。カスタマーサクセスでは、新規顧客を育て、一般顧客やロイヤル顧客にランクアップさせ、自社の収益向上を目指します。

カスタマーサクセスには、いくつかのフェーズがあります。アダプションは、提供した商材をある程度使えるようになった顧客に対して行います。この段階では、顧客に商材の運用による成功体験を積み重ねてもらうことで、サービスの定着化を図ることが目的です。

本記事では、カスタマーサクセスのアダプションがTTVに与える影響や、アダプションを成功させるためのポイントを解説します。以下では、本題に入る前に、カスタマーサクセスの各フェーズの役割について解説します。

カスタマーサクセスとは?メリットや施策例、成功のポイントも解説

カスタマーサクセスとは、すでに商品やサービスを購入している顧客に能動的に働きかけ、顧客を成功へ導くことです。解約率の減少やLTVの最大化といった効果が期待できます。この記事ではカスタマーサクセスの概要やメリット、成功のためのポイントなどを解説します。

カスタマーサクセスのフェーズ

カスタマーサクセスの実施には、それぞれの段階を追った顧客への支援が必要です。多くの場合は、以下の4つのフェーズで進めていきます。

  1. オンボーディング
  2. アダプション
  3. エクスパンション
  4. チャーン

ここでは、各フェーズについて詳しく解説します。

オンボーディング

オンボーディングとは、元々は新人を早く職場に馴染ませ、職場への定着化・戦力化を図る取り組みのことでした。それが転じて、カスタマーサクセスでも、契約直後の顧客を提供した商材に早く馴染ませ、顧客の囲い込みを図る取り組みで使われるようになりました。

そのため、カスタマーサクセスのオンボーディングでは、商材を提供した側が積極的に顧客にアプローチして、商材の操作方法からより効果的な使い方まで、さまざまなサポートを提供します。これにより、早期の解約を防いで、アダプションへとつなげていきます。

カスタマーサクセスのオンボーディングとは?重要性や流れを解説

カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは、ユーザーが商品やサービスを初めて使う際に、いち早く使いこなせるようサポートすることを指します。この記事では、カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの重要性や実施の流れ、ポイントを解説します。

アダプション

アダプションは、オンボーディングによって自社商材の利用法を理解した顧客に対して、より効果的な運用・活用を支援して、提供した商材の定着化を図るフェーズです。アダプションの取り組みの是非が、商材の継続利用率を大きく左右します。

アダプションでは、顧客に対して継続的な活用状況データの収集やヒアリングなどを通して、顧客の課題や問題点を把握し、適切な支援をしていきます。アダプションを行うことにより、顧客との関係性の強化を図ることができ、顧客満足度の向上につながります。

エクスパンション

エクスパンションは、商材の利用が定着し、顧客満足度が高まった顧客に対して、上位商材を導入するアップセルや、関連取材を導入するクロスセルを狙うフェーズです。エクスパンションの成功は、LTV(顧客生涯価値)の向上につながります。

エクスパンションを成功させるためには、オンボーディングフェーズでのエクスパンションフェーズを見据えた顧客の目標設定と、アダプションフェーズでの正確な顧客情報やニーズの把握が必要です。このフェーズで重要なのは、顧客の立場に立ったフォローアップです。

チャーン

チャーンは、顧客が自社提供の商材を解約するフェーズです。ここでは、滞りのない解約手続きを進めると同時に、顧客から解約理由などを詳しくヒアリングすることが重要です。

解約の理由は、自社の商材がその顧客の運用に適合しなかったり、顧客の所属する業界動向の把握が不足していたりなどさまざまです。それらの解約理由は、提供する側にとって、これからの商材開発やカスタマーサクセス改善のための重要な資料となります。

アダプションがカスタマーサクセスのTTVに与える影響

TTV(Time to Value)とは、顧客が自社商材の利用を始めてから、価値を実感するまでにかかる時間のことをいいます。競争の激しいビジネスの中を勝ち抜くには、できる限りTTVを短くすることが重要であり、それはカスタマーサクセスも例外ではありません。

カスタマーサクセスのTTVは、オンボーディングから本格的な運用に至るアダプションまでだといわれます。そして、TTVの短縮が早期の顧客の囲い込みにつながり、顧客離れを防ぎます。これにより、エクスパンションフェーズへのスムーズな展開を可能にします。

TTVを短縮するには

カスタマーサクセスにおいてTTVを短縮するには、オンボーディングからアダプションまでのプロセスで、どこに時間を要したのかなどのプロセス上の問題点を洗い出すことが重要です。中には、サポートの不足や余計なプロセスが入っている場合があります。

出てきた問題点の改善でTTVの短縮は可能ですが、TTVの短縮だけに集中しすぎないことが重要です。いくらTTVが短縮できても、顧客が急かされた印象を持ってしまうと、顧客満足度が低下してしまいます。TTVの短縮と顧客満足度のバランスが重要です

カスタマーサクセスのアダプションを成功させるポイント

カスタマーサクセスのアダプションは、導入初期に行うオンボーディングを終了して、顧客のアップセルやクロスセルを狙えたり、エクスパンションにつながったりなどとても重要なフェーズです。

ここでは、アダプションを成功させるポイントを解説していきます。

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効果の出やすい成功指標から取り組む

短いTTVの中で、カスタマーサクセスのアダプションを成功させるには、効果が出やすい成功指標から取り組み、顧客に成功体験を実感させることが大切です。顧客の一つの成功体験が顧客の欲求を高め、さらに活用が進んで新たな成功体験へとつながります。

そのため、顧客と相談しながらいくつかの成功指標をリストアップして、その中からより効果が出やすく、顧客がその効果を実感しやすい指標を優先的に取り組むのがおすすめです。これを積み重ねることで、商材の信頼とともに企業の信頼も高められます。

顧客をセグメントする

セグメントとは、顧客を行動・ニーズ・価値観などの共通点に基づいてグループ化することです。たとえば、新規顧客や低活動顧客などのグループに分け、それぞれのグループが製品をどのように受け入れているかを分析します。

グループ化した上で分析を行うことで、各セグメントにおけるアダプションの進捗を把握できます。これにより、各セグメントに効果的なアプローチを行うことが可能です。

顧客が体験するシナリオを策定する

カスタマーサクセスのオンボーディングフェーズでは、顧客が自社の商材を使えるようにすることに重点が置かれます。しかし、アダプションでは次のフェーズであるエクスパンションにつながるシナリオを考えて、顧客を成功体験に導くことがより重要になります。

そのため、顧客のアップセルやクロスセルを狙ったシナリオを策定する必要があります。しかし、シナリオは常に顧客満足度の向上に軸足を置いたものでなくてはならず、顧客の活用状況やヒアリングなどでの情報収集が重要です。

そこで得られた情報を基に、顧客の抱える課題や問題点の解決とアップセルやクロスセルが可能な商材を見越したシナリオを作り、顧客の成功体験を積み重ねていきます。

カスタマージャーニーマップを活用しよう

アダプション成功のシナリオを考える際に役立つのが、カスタマージャーニーマップです。カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスに触れる各接点での体験を図に表したものです。

顧客の一連の体験を可視化することで、どの段階でつまずいているのか、またはスムーズに進んでいるのかを把握しやすくなり、そこから改善点を見つけ出せます。

カスタマージャーニーマップは各セグメントごとに作成すると、ある時点における顧客の共通の感情や行動を予測したシナリオを策定しやすくなります。また、カスタマーサクセスに関わる他のメンバーと、アダプションの状況を共有できるツールでもあります。

顧客の組織構成を把握する

特に新規顧客が自社商材を導入する場合、担当者や決裁者を始めとした顧客企業の組織構成を把握することが重要です。しかし、組織構成は変動することがあるため、今後のサポートや商談を進めるためには、リアルタイムで組織構成の変動を把握することが必要です。

また、組織変更があった際の引き継ぎは、顧客の企業内で行われますが、提供している商材の資料が未整備のために、引き継ぎがスムーズに行えていない企業も多く見受けられます。そのため、提供側で引き継ぎ資料を用意しておくのもおすすめです。

資料には、商材のマニュアルや今までの経緯が記載されていることが必要です。提供側が用意することで顧客側が助かるだけでなく、提供側も説明する時間が短縮され、効率的なサポートを可能にします

データをもとにサービスを改善する

カスタマーサクセスのアダプションでは、顧客に対してさまざまなサポートを行います。しかし、オンボーディングフェーズでのサポートと違い、顧客によって必要なサポートが異なっている場合が多いため、顧客の実態把握がサポートの重要なポイントになります。

顧客の実態把握には、顧客からのヒアリングも大切ですが、客観的なデータも重要です。顧客が気付いていない潜在的な課題が見えてくることも少なくありません。たとえば、ログインや機能の利用状況などを分析して、その企業の課題を探ります。

ログイン回数は多くてもID数が少なければ、一部の従業員しか利用していないと判断できるため、より多くの人が利用できるような支援が必要です。

また、搭載している機能の中で極端に利用頻度が少ない機能があれば、その機能を効果的に活用してもらえるような支援を行いましょう。

顧客の声を集める

顧客ごとの情報収集は、その顧客の満足度を高めるために必要です。集めた情報は、自社の商材やサポートを顧客にとって、より魅力あるものに育てていくためにも活用することが大切です。定期的なアンケートなどで、顧客の声を収集して自社の改善に努めましょう。

顧客の声の収集では、自社の良い点ばかりでなく、サービス利用時の悩みや困ったことや不満・要望など、自社にとって負の部分の収集が大切です。アンケート結果が商材やサポートの改善につながれば、今後のマーケティングに活かせます

顧客のエンゲージメントを高める

カスタマーサクセスのアダプションフェーズでは、提供した商材に関するセミナーや情報交換会などがよく開催されます。これらの取り組みは、顧客エンゲージメントを高めるために非常に効果的な手法です。

アダプションフェーズのセミナーは、導入検討のためのセミナーとは異なります。自社商材をすでに導入している企業を対象に、より便利な機能の使い方や活用方法を詳しく紹介します。情報交換会は、同じ商材を利用する企業同士で具体的な情報交換が可能です。

最近では、Webセミナーの開催も増えて、顧客も参加しやすくなっています。また、ワンポイントアドバイスのような動画の共有も、顧客エンゲージメント向上のために活用されています。

適切なタイミングでフォローアップする

顧客へのフォローアップは、顧客に合わせた適切なタイミングで行うことが重要です。特にアダプションフェーズでのフォローアップは、その顧客に適合したサポートが必要です。そのため、ヒアリングや取得したデータを参考にしてタイミングを見計らいましょう。

タイミングを見つけるためには、継続的にデータ収集と分析を行い、利用状況の変化を監視することが大切です。そして、変化があったタイミングでのフォローアップが効果的です。変化の良し悪しに関わらずその原因を追求し、さらなるフォローアップに役立てましょう。

まとめ

アダプションとは、カスタマーサクセスにおいて顧客に提供した商材の定着を図るとともに、次のフェーズへの基盤となる重要なフェーズです。そして、カスタマーサクセスで重要視されるTTVの短縮に大きな影響を与えるのもアダプションフェーズです。

アダプションフェーズを成功に導くためには、成果の出やすい指標から取り組むシナリオを策定し、顧客に継続的な成功体験を与えることが大切です。また、顧客の活用状況データを収集・分析し、適切なタイミングでのフォローアップを心掛けましょう。

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