営業代行は下請法の対象になる?適用条件や気をつけるべきことを解説

Check!

  • 営業代行で下請法が適用されるのは、「役務提供委託」が発生した場合のみ
  • 役務提供委託における親事業者・下請事業者の資本金額も適用条件に含まれる
  • 下請法が適用される場合、親事業者にはさまざまな義務や禁止事項が課される

営業代行は営業業務を代行会社へ委託できるサービスですが、単に自社の営業業務を委託するだけでは下請法の対象にはなりません。本記事では、営業代行において下請法が適用される条件や、適用される場合に気をつけるべきことなどについて解説します。

目次

開く

閉じる

  1. 営業代行は下請法の対象となるのか
  2. 営業代行で下請法が適用される場合に気をつけること
  3. 下請法に違反した場合
  4. まとめ

営業代行は下請法の対象となるのか

下請法は「下請代金支払遅延等防止法」を略した通称で、親事業者が下請事業者に対して不当な取引をさせることを防ぎ、下請事業者の利益を保護するための法律です。親事業者が下請法に違反した場合には、指導・勧告・罰金などを受ける場合があり、注意が必要です。

しかし、すべての下請業務が下請法の適用を受けるわけはありません。下請法が適用されるのは、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託の4つの業務に限られています。

その中で営業代行が該当するのは、役務提供委託である場合です。ただし、役務提供委託であるだけで下請法が適用されるわけではなく、親事業者や下請事業者の資本条件を満たした場合に適用されます。

本記事では、営業代行において下請法が適用される条件や、適用される場合に気をつけなければならないことについて解説していきます。まず、下記で下請法が適用される、役務提供委託と資本条件について解説します。

参考:下請代金支払遅延等防止法

役務提供委託とは

役務提供委託は、下請法第2条4項で、「事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」と定義されています。すなわち、役務の提供を業務として行う事業者が、その全部または一部を再委託する業務委託のことです。

したがって、営業代行会社が依頼された代行業務を他の事業者(下請事業者)に委託する場合に役務提供委託となり、次で解説する資本条件を満たせば、下請法が適用されます。つまり、営業代行会社が依頼された代行業務をすべて自社で行えば下請法適用外です

参考:下請代金支払遅延等防止法 第二条(定義)|e-Gov法令検索

親事業者・下請事業者の資本条件

クライアントから受けた依頼事項を下請事業者に依頼すれば、役務提供委託の対象とはなりますが、それが下請法に直結するわけではありません。下請法の適用には、親事業者(営業代行会社)と下請事業者の資本条件を満たす必要があります

法令の該当条項は、下請法2条7項・8項と下請法施行令1条・2条で、簡単にまとめると、運送等以外の役務提供委託では以下のような条件となっています。

①親事業者:資本金または出資の総額が5,000万円を超える法人事業者

 下請事業者:個人、資本金または出資の総額が5,000万円以下の法人事業者

②親事業者:資本金または出資の総額が1,000万円を超え5,000万円以下の法人事業者

 下請事業者:個人、資本金または出資の総額が1,000万円以下の法人事業者

参考:下請代金支払遅延等防止法 第二条(定義)|e-Gov法令検索

参考:下請代金支払遅延等防止法施行令

営業代行で下請法が適用される場合に気をつけること

下請法は、下請事業者を守るための法律です。下請法が適用されると、親事業者には法に基づいたさまざまな義務や禁止事項が発生します。ここでは、親事業者の義務と親事業者の禁止行為について解説します。

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

営業代行で下請法が適用される場合に気をつけること

  1. 親事業者の義務
  2. 親事業者の禁止行為

親事業者の義務

親事業者と下請事業者との取引を公正化して、下請事業者の利益を保護するために、下請法では親事業者に対して、下に示した4つの義務を課しています。ここでは、それぞれ義務について詳しく解説します。

参考:親事業者の義務|公正取引委員会

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

書面の交付

親事業者は、下請事業者に業務発注する際には、下請法第3条に基づいた記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を交付する義務があります。3条書面に記載しなくてはならない項目は、「下請法第3条の書面の記載事項等に関する規則」で定められています。

また3条書面は、下請事業者の事前承認があれば、公正取引委員会規則で定める電子書面での交付も可能です。また、書面の書式は定められていないので、必須の記載事項が記載されていれば、取引内容に応じた独自の発注書面の作成が可能です。

参考:下請代金支払遅延等防止法 第三条(書面の交付等)|e-Gov法令検索

支払期日の設定

下請法第2条の2に基づいて、親事業者は下請事業者との合意の下で支払期日を定めなければなりません。支払期日は、下請事業者が役務の提供をした日から起算して、最長60日(2ヶ月)以内となり、できる限り短い期間内を定めなくてはなりません。

60日以内という規定から、一般的に60日ルールと呼ばれます。 60日を超えると下請代金の支払遅延の禁止に該当し、下請法違反となります。親事業者の会計の締め日と支払日が設定されている場合は、間違いが起きやすいので注意が必要です

たとえば、締めが月末で支払日が翌々月25日の場合、役務の提供が25日から月末に行われれば、60日以内の支払となります。しかし、提供が早まって10日になると、翌々月の25日では60日を越えてしまいます。役務の提供日と支払日の管理をしっかりと行いましょう

参考:下請代金支払遅延等防止法 第二条の二(下請代金の支払期日)|e-Gov法令検索

書類の作成・保存

下請法第5条に基づいて、親事業者は下請事業者への委託事項を記載した書類(5条書面)を作成し、2年間保存する義務があります。この規定は、取引トラブルの未然防止のほか、中小企業庁や公正取引委員会の調査・検査を正確かつ迅速に行うために定められています。

5条書面は、条件を満たせば電磁的記録も可能です。記載事項は下請法5条規則で規定されていますが、多くは3条書面と重複しています。ただし、5条書面では、発注後の取引経緯の記録も必要なため、3条書面の写しをそのまま5条書面にすることはできません

参考:下請代金支払遅延等防止法 第五条(書類等の作成及び保存)|e-Gov法令検索

遅延利息の支払

下請法第4条の2に基づいて、設定された支払期日に下請代金を支払わなかった場合は、下請業者に対し、遅延利息を支払う義務が生じます。遅延利息の利率は年率14.6%と定められており、民法や商法の規定や親事業者と下請事業者の合意よりも優先度の高い規定です。

支払遅延は下請法に違反する行為で、場合によっては公正取引委員会からの指導や勧告を受ける恐れがあります。遅延利息は高率のため、支払の遅延は企業の利益を損ねることになります。支払期日の確認がすぐにできる体制を整えましょう。

参考:下請代金支払遅延等防止法 第四条の二(遅延利息)|e-Gov法令検索

親事業者の禁止行為

下請法では、上で解説した親事業者の義務のほかにも親事業者の禁止事項を定めています。この禁止事項に抵触すると、下請事業者の承認などがあったとしても下請法違反となります。ここでは、下にある営業代行に関わる親事業者の禁止行為について解説します。

参考:親事業者の禁止行為|公正取引委員会

参考:下請代金支払遅延等防止法 第四条(親事業者の遵守事項)|e-Gov法令検索

\気になる項目をクリックで詳細へジャンプ/

受領拒否・返品下請け

下請法第4条第1項により、親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒むことが禁止されています。また、正当な理由のない納期の延期も受領拒否とみなされます。したがって、親事業者は、あらかじめ定められた納期までに成果物を受け取らなければなりません。

親事業者が受領を拒むことができるのは、下請事業者に責任があり、3条書面に明記された委託内容や納期が実行されなかった場合です。したがって、3条書面に記載されていない事項についての下請事業者の責任は認められません

また、下請法第4条第1項では、下請事業者の責任のない返品も禁止されています。下請事業者の瑕疵がある場合の返品は可能です。その場合は、納品してから6ヶ月以内に返品しなくてはなりません。

下請代金の減額・買いたたき

下請事業者に責任がないのにも関わらず、下請代金を減額することは下請法第4条で全面的に禁止されています。下請代金の減額の禁止は、市場価格や物価の変動・消費税率の変化、そして下請事業者との合意などに関わらず優先して適用されます。

また、親事業者による買いたたきも禁止されています。買いたたきとなるのは、発注した内容と同種・類似する内容に対して著しく低い価格水準である場合や、下請事業者と十分な協議がなされずに低い価格で決定された場合など、ケースバイケースで判断されます。

購入・利用強制

親事業者が正当な理由なく、下請事業者に強制的に指定の製品や材料を購入させることやサービスに加入させることは下請法で禁止されています。正当な理由とは、下請事業者への依頼事項が、特定の機器を使わないと達成できないなどの場合です。

禁止事項のサービスには、保険・リース・インターネットプロバイダーへの加入などの強制があります。

報復措置

親事業者の違反行為を中小企業庁や公正取引委員会に報告したことを理由に、親事業者が下請事業者に対して取引数量の削減や取引停止など、下請事業者が不利益になる取り扱いを行う行為は下請法の違反になります。

これにより、下請事業者は親事業者から不利益な取扱いを受けた場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通告して適切な指導を求めることができます。不利益な取扱いは、下請法に違反する行為であり、下請自業者は下請法に照らして判断する必要があります。

割引困難な手形の交付

親事業者が下請代金を手形で支払う場合、下請事業者が一般の金融機関で割引困難な手形で交付することは下請法上できません。一般の金融機関とは、預貯金の受入と資金の融通ができる金融機関のことです。

割引困難な手形とは、手形期間で判断され、営業代行では120日を超える手形が該当します。ただし、下請法では、下請事業者の利益を不当に害する場合となっていますが、割引困難な手形の交付で判断される場合が多いです。

不当な利益の提供要請・給付内容の変更及びやり直し

親事業者が自己のために、金銭や役務・その他経済上の利益を不当に提供させることは下請法第4条第2項で禁止されています。「自己のため」には子会社も含まれますが、強制ではなく任意に提供される場合は除かれます。従業員の強制的派遣要請などが該当します。

また、下請事業者に責任がないのに、発注の取り消し・発注内容の変更・受領後のやり直しをさせることも禁止されています。発注の内容を変更する場合は、あらかじめ変更内容を記載した書類を作成して保存する必要があり、それに伴う費用の支払が必要になります。

下請法に違反した場合

親事業者が下請法に違反した場合、公正取引委員会から改善を求める指導が入ったり、下請法第7条に基づいた勧告がなされたりする場合があります。また、勧告を受けると、企業名や勧告内容などが公正取引委員会の公式サイトに公表されます。

さらに、3条書面の交付義務違反や5条書面を交付しなかった場合は、下請法第10条により、50円以下の罰金が科せられる場合があります。これらの罰則・罰金は、親事業者の利益を損なうばかりでなく、社会的信用や企業イメージの失墜につながります。

参考:ポイント解説 下請法|公正取引委員会

まとめ

営業代行は営業業務を代行会社へ委託できるサービスですが、単に自社の営業業務を委託するだけでは下請法の対象にはなりません。営業代行で下請法が適用されるのは、営業代行会社が業務を下請事業者に再委託する役務提供委託が発生した場合です。

また、役務提供委託であっても、親事業者や下請事業者の資本金額条件を満たしている必要があります。下請法が適用された場合、親事業者には下請法により、さまざまな義務や禁止事項が課され、違反した場合には指導・勧告・罰金などを受ける可能性があります。

Share

top