営業代行費用の仕訳における勘定科目とは|記入例や注意点も解説
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- 営業代行費用の仕訳における勘定科目には、「外注費」などが使われることが多い
- 外注費の支払先が法人か個人かにより、源泉徴収が必要となる範囲には違いがある
- 勘定科目に法律上の規定はないが、税務調査で指摘を受ける場合もあるため注意が必要
経理業務では、営業代行費用の仕訳における勘定科目に悩む場合も多いです。勘定科目に法律上の規定はありませんが、源泉徴収の有無などに関わり、税務調査で指摘を受けると延滞税などが課される場合もあります。本記事では、勘定科目の概要や注意点などを詳しく解説します。
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営業代行費用の仕訳における勘定科目とは
勘定科目とは、会計で取引や事象を記録するために使用される分類のことです。企業の財務状況や経営成績を明確に把握する際、異なる性質の取引を分類し、整理するために用います。勘定科目は、資産・負債・純資産・収益・費用の5つの基本的な要素に大別されます。
その中でも、営業代行費用とは企業が自らの営業活動を他社に委託し、対価として支払う費用を指します。営業活動には、商品やサービスの販売促進、顧客からの注文受付、市場調査など、営業に関連するさまざまな活動が含まれます。
ここでは、営業代行費用の仕訳における勘定科目について解説します。
混同しやすい勘定科目の違い
営業代行費用を会計処理する際には、「外注費(委託費)」の勘定科目を使用することが考えられます。外注費は、外部の企業や個人事業主に業務を委託し、その対価として支払われる費用です。
混同しやすい例として、支払手数料は専門家に依頼をした場合などに支払う費用であり、弁護士や社労士への報酬が挙げられます。支払手数料には報酬の他にも、振込手数料や送金手数料なども該当します。
また、販売手数料は売上の増加に直接貢献するものであり、代理店契約を締結している代理店に商品・サービスを販売してもらうために支払う費用です。勘定科目では「販売促進費」を用います。
営業代行では、外注費と販売手数料が混同しやすいですが、「代理店契約」を結んでいるか否かで判断できます。
勘定科目 | 概要 |
---|---|
外注費 | 外部の企業に業務を委託する費用(業務の実施) |
支払手数料 | 専門家やサービス提供者に支払う費用 |
販売促進費 | 代理店契約を結んでいる代理店に商品を販売してもらうための費用 |
給与 | 会社の従業員に対して支払われる報酬(労働サービスの対価) |
勘定科目に法律上の規定はない
勘定科目に関しては、法律上の厳格な規定が存在せず、企業は自社の会計処理に最も適した勘定科目を自由に設定できます。しかし、注意すべきポイントがいくつかあります。
一度設定した勘定科目は、会計の継続性の原則に従って、一貫して使用しなければなりません。ただし、業務形態の変化など、例外的な状況では変更が可能です。
勘定科目は第三者が財務諸表を理解しやすいよう、明確かつ簡潔に設定することが理想的です。また、法律上の規定はないものの、わかりにくい勘定科目は税務署から指摘されたり、説明を求められたりする可能性があります。
営業代行費用の仕訳と源泉徴収の関係
法人の場合と個人の場合では、源泉徴収の必要性などに違いがあります。ここでは、営業代行費用の仕訳と源泉徴収の関係について解説します。なお、仕訳における勘定科目は「外注費」とします。
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営業代行費用の仕訳と源泉徴収の関係
源泉徴収が必要となる範囲は法人と個人で異なる
外注費において源泉徴収が必要となるか否かは、支払いを受ける側が個人であるか法人であるかによって異なります。支払いを受ける側が個人の場合、原則として外注費に対して源泉徴収が発生します。
対して、法人に対しての支払いでは、源泉徴収の義務は発生しません。なぜなら、法人は独立した税務主体であり、自らの所得に対する税金を計算して納税する責任があるためです。
ただし、報酬の性質・契約の内容・支払金額が一定以上の場合など、特定の条件下において源泉徴収が必要となるケースもあります。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
法人の場合の仕訳記入例
以下の表は、営業業務を月500,000円で外部企業に委託した場合の記入例です。この場合、借方に「外注費」として500,000円を記入し、貸方は実際の支払方法に応じた勘定科目で500,000円を記入します。
これにより、外部の法人に営業活動を委託し、その対価として支払った費用を会計上で記録でき、企業の財務状況に営業代行にかかる費用が反映されます。
借方勘定科目 | 借方 | 貸方勘定科目 | 貸方 |
外注費 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 |
個人の場合の仕訳記入例
以下の表は営業業務を月100,000円で個人に委託したとき、源泉徴収が発生した場合の記入例です。個人の場合、多くが源泉徴収の対象となる点が法人と異なります。
借方の記入方法は法人の場合と同様ですが、貸方では個人へ実際に支払う金額と源泉所得税額を分けて記入します。
源泉徴収税額は金額によって異なり、100万円を超えない金額は、支払金額に10.21%をかけた金額が源泉所得税額となります。100万円を超える部分の金額は、100万円を引いて20.42%をかけ、102,100円を加算します。
借方勘定科目 | 借方 | 貸方勘定科目 | 貸方 |
外注費 | 100,000円 | 普通預金 | 89,790円 |
預り金 | 10,210円(源泉徴収) |
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
営業代行費用の仕訳における勘定科目の注意点
勘定科目は、企業の財務取引を体系的に記録・分類するために重要です。そのため、仕訳においては一貫性を保ち、誤解が生じないように意識する必要があります。ここでは、営業代行費用の仕訳における勘定科目の注意点について解説します。
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営業代行費用の仕訳における勘定科目の注意点
勘定科目は一度設定したら変更しない
勘定科目は一度設定したら、変更を行わず継続的に使用します。これは、会計の一貫性を保ち、財務報告の比較可能性を確保するためです。勘定科目を頻繁に変更すると、過去のデータとの比較が困難になり、経理業務の混乱や誤解を招く可能性があります。
継続的に同じ勘定科目を使用することで、会社の財務状況を正確かつ一貫して追跡し、分析が容易に行えます。
会社のルールに沿って設定する
勘定科目に法律上の規定はありませんが、会社ごとに財務報告の一貫性と明瞭性を保つためには、独自のルールに沿って勘定科目を設定する必要があります。これにより、企業は財務状態や経営成績を正確に把握し、関係者に対して適切に情報を提供できます。
勘定科目の設定は、企業の業種やビジネスモデルに適合しなければならず、社内で統一された基準を定めることが大切です。企業が運用上の効率性を高め、財務分析の質を向上させるために重要となります。
わかりやすい名称で設定する
勘定科目は経理業務を効率的に進めるため、一般的にわかりやすい名称を使用するのが理想的です。その結果、経理担当者や他の従業員が財務データを容易に理解し、正確な財務報告を行うことが可能になります。
また、明確な勘定科目の設定は、会社内でのコミュニケーションを改善し、誤解や間違いが生じる可能性を減らすこともできます。
税務調査は外注費と給与の違いに注意が必要
税務調査では、外注費と給与の違いに注意が必要です。税務当局は、外注費が実際には隠れた給与ではないかを検証することがあります。それは、外注費として不適切に処理された給与は、社会保険料や源泉徴収税の未納につながる可能性があるためです。
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税務調査は外注費と給与の違いに注意が必要
外注費と給与の税務上の違い
外注費と給与の主な違いは、税金と社会保険料の取り扱いにあります。外注費の支払いに対しては、これまで述べた通り、一定の条件下で源泉徴収税が発生することがあります。
対して、給与は従業員に対して支払われる報酬であり、支払いには常に源泉徴収税が適用され、社会保険料の支払い義務も発生します。これらの違いから、経理処理において適切な区分が重要になります。
給与として認められる条件
営業代行費用が外注費ではなく、給与として認められるケースには以下のようなものがあります。
- 契約上の仕事が特定の人にしかできず、他の人には代わりが効かない場合
- 仕事をする際に、依頼者から仕事の具体的な指示を受けている場合
- 仕事が完遂できなくても、それまでの仕事の報酬が請求できる場合
- 仕事をするための用具や材料を依頼者から提供されている場合
営業代行会社の視点から見て、上記の条件に該当すると、外注費ではなく給与として扱われる可能性があります。
外注費が給与として認められた場合の対応
税務調査によって、これまで外注費としていた費用が給与とみなされた場合、企業は適切な対応をしなければいけません。以下では、外注費が給与として認められた場合の対応について解説します。
源泉所得税を支払う
税務調査で外注費が給与と認められた場合、過去に支払った金額に対して源泉所得税を支払う必要があります。計算方法は、100万円までの部分には10.21%を適用します。100万円超の部分に対しては20.42%の税率を適用した上で、それぞれの税額を合計します。
例えば、200万円の外注費が給与として認められた場合、計算式は「(200万円 – 100万円) × 20.42% + 102,100円」で、源泉所得税は約306,500円となります。
仕入税額控除の否認
外注費が給与とみなされた場合、外注費にかかっていた消費税は仕入消費税の控除対象から外れます。
この消費税額は、税込金額から税抜金額(税込金額を1.1で割ったもの)を引いて計算します。給与として扱われると消費税額は控除できず、これまでの消費税額を税務署に納付しなければなりません。
また、期限までに消費税を納付しなかった場合、延滞税や無申告加算税の対象になるため注意しましょう。
延滞税などのペナルティが課される
税務調査で外注費が給与と認められると、源泉所得税や消費税の支払いに加え、追加でペナルティが課せられることがあります。これには、過少申告加算税・不納付加算税・延滞税が含まれます。
ペナルティは過去に遡って計算され、企業にとって大きな負担になり得ます。また、過少申告加算税は、事前通知後の税務調査までの期間や税務調査後によって税率が異なります。
そして、不納付加算税は税務署の事前通知の有無によって税率が変わり、延滞税は納期限からの経過期間に応じて変動します。
参考:源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
税務調査で指摘を受けないための対策
税務調査で外注費が給与と指摘を受けないようにするためには、さまざまな対策が考えられます。以下では、税務調査で指摘を受けないための対策として、代表的なものを解説します。
委託事業者との契約関係を明確化する
業務請負契約書や業務委託契約書を締結し、委託先との関係を明確にします。また、成果物や納品物を契約書に明記し、委託先が自由に業務を遂行できるようにすることが大切です。自社の組織図には委託先の名前を掲載せず、従業員とは異なることを明記します。
不透明な記載・処理は追徴課税を受けることになるため、すぐに違いが判断できるような記載と管理が求められます。
契約書など文書関連は必ず発行してもらう
契約書などの文書は、必要な時にすぐ取り出せるように管理しておきましょう。そのためには、外注先との取引の際には必ず請求書を発行してもらうように、日頃の取引から相手先に周知しておくことが大切です。
税務調査では、取引が正しいかどうかを証明する必要があります。したがって、証拠資料として活用するためにも、文書関連は必ず発行してもらうようにし、外注費が給与と認識されるリスクを軽減するようにしましょう。
まとめ
営業代行費用の勘定科目は会計上の分類であり、企業が外部に営業活動を委託する際に発生する費用を記録します。勘定科目の選択は自社の経営戦略や会計方針に基づき、明瞭性と一貫性を保つことが求められます。
販売手数料・支払手数料など類似の費用があるため、契約内容や報酬の性質に基づき、適切な勘定科目の選択を行うようにします。また、営業代行費用に関連する源泉徴収は、主に支払先が法人か個人かによって異なります。
税務調査では、外注費と給与の違いに注目する場合があり、正確な区分が必要です。外注費を給与とみなされることを避けるためには、契約内容の明確化や適切な文書管理が重要です。本記事を参考に、営業代行費用について適切な会計処理を行いましょう。
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