電子帳簿保存法改正で領収書の保存はどうなる?要件や保存方法を解説

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  • 電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの付与があれば、領収書の電子保存が可能
  • 領収書を電子保存すると、経費精算業務の効率化や紛失・不正リスク軽減に期待できる
  • 電子化していない領収書の原本は破棄できないが、電子化した原本は破棄が可能になる

電子帳簿保存法の改正で、領収書やレシートの電子保存が可能になりました。さらに2024年からは、領収書でも電子取引データであれば電子保存が義務化されます。本記事では、領収書を電子保存するメリットや保存方法、要件などを解説しています。

目次

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  1. 電子帳簿保存法により領収書・レシートも電子保存可能
  2. 領収書・レシートを電子保存するメリット
  3. 領収書・レシートの電子保存のやり方
  4. 領収書・レシートの電子保存要件
  5. 領収書・レシートの保存期間や原本の対応
  6. まとめ

電子帳簿保存法により領収書・レシートも電子保存可能

国税関係帳簿書類に含まれる領収書やレシートは、法律により一定期間の保存が義務付けられています。従来すべての国税関係帳簿書類が紙のまま保管されていましたが、1998年に電子帳簿保存法が施行され、電子保存も可能になりました。

近年の法改正により電子保存要件が大幅に緩和され、タイムスタンプの付与があれば領収書やレシートも電子保存可能となっています。また、受領者が電子帳簿保存法対応の経費管理システムを使用していると、受領者側のタイムスタンプが不要となりました。

領収書やレシートの電子保存要件の緩和とともに、電子取引の領収書は紙での保管が不可になるなど、電子化導入のメリットや必要性が大きくなっています。

参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、税法の中で紙での保存が義務化されている帳簿書類について、条件付きで電子データ保存を認めること、およびインターネット上での取引データの保存の義務化を定めた法律です。

書類の保存要件は大きく以下の3つに区分されます。

  1. 電子帳簿等保存:会計ソフトで作成された帳簿・書類をデータのまま保存
  2. スキャナ保存:紙の請求書などをスキャンした画像データを保存
  3. 電子取引:PDF文書やWebサービスで受け取ったデータを保存

国税関係帳簿に分類されるものなのか、国税関係書類なのか、それとも電子取引なのかによって保存方法が異なるため、どの書類が何に分類されるのかの把握が必要です。ただし、手書きで作成された国税関係帳簿は電子保存が認められないため、紙での保存が必要です。

参考:国税庁「電子帳簿保存法の概要」

主な電子保存対象書類

電子帳簿保存法により、電子保存しなければならない書類が明確に定められています。主な電子保存対象書類を以下にまとめました。

国税関係帳簿国税関係書類・電子取引
・仕訳長
・総勘定元帳
・売掛帳
・買掛帳
・現金出納帳
・固定資産台帳
・請求書
・見積書
・納品書
・注文書
・領収書

上記以外にも電子保存すべき書類があるため、漏れがないように確認しておきましょう。

電子帳簿保存法の主な改正内容

電子帳簿保存法は1998年の施行から幾度か改正されてきましたが、2022年に要件の緩和や猶予期間の導入などの点が変更されました。ここでは、2022年の改正によりどのような点が変更されたのかを解説します。

参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

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タイムスタンプ・検索要件の緩和

タイムスタンプは、電子的なスタンプの付与により、その電子文書が改変されていないことを証明する技術です。

2022年の改正前には、文書をスキャナで読み取り後、受領者が自署した上に3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありました。しかし、改正により受領者の自署が不要になり、タイムスタンプ付与までの期間が2か月と7営業日まで伸びました。

また、検索要件もこれまで主要項目5つすべてに検索項目を設置する必要がありましたが、「日付」「取引金額」「取引先名」の3つに減っています。

事前承認制度の廃止

国税関連書類を電子データで保管する場合、改正前では3か月前までに管轄の税務署長に届け出て事前承認を得る必要がありました。この制度では承認までに時間がかかることが多く、企業にとって手間がかかり電子化を妨げる原因になっていました。

改正により事前承認制度が廃止され、電子データの保存申請や承認が不要となりました。ただし、「電子帳簿保存法に対応したシステムを導入済み」および「社内規定の策定と周知を行っている」ことを条件としています。

電子取引の電子保存義務化

電子取引とは電子データを用いて行う取引で、一般に契約書や見積書、領収書など取引に関する文書をメールやPDF、またはWebやクラウドサービスなどでやり取りしたことを指します。

2022年の改正前までは、この電子取引による取引情報は電子データそのままのほか、紙に出力して保管することを認められていました。

しかし、改正後は紙に出力して保管することは認められず、電子取引の取引情報はオリジナルの電子データのままでの保管が義務化されます。

適正事務処理要件の廃止

適正事務処理要件とは、不正防止のために相互にけん制しあう「相互けん制」と事務処理手続きの「定期チェック」、および問題点があった場合の「再発防止策」のことです。文書をスキャナ保存する場合、改正前は改ざん防止の観点からこの3つの要件が必要でした。

しかし、青色申告の承認取り消しは取引の事実が電子データ以外で確認できる場合に限り、ただちに罰則とはなりません。

また、会社法の規定により国税関係帳簿書類を適切に保管しなかった場合、100万円以下の過料が課せられます。なお、2022年の改正により、追徴課税は通常の35%に10%が加重され、不正防止のため罰則が強化されました。

罰則の強化

電子帳簿保存法に違反した場合には、下記のような罰則があります。

  1. 青色申告の承認取り消し
  2. 推計課税および追徴課税

しかし、青色申告の承認取り消しは取引の事実が電子データ以外で確認できる場合に限り、ただちに罰則となりません。

また、会社法の規定により国税関係帳簿書類を適切に保管しなかった場合、100万円以下の過料が課せられます。なお、2022年の改正により、追徴課税は通常の35%に10%が加重され、不正防止のため罰則が強化されました。

参考:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

領収書・レシートを電子保存するメリット

領収書を電子保存するには電子化する手間がかかるものの、一度電子化すれば手間以上のメリットがあります。ここでは、領収書を電子保存するメリットについて解説します。

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テレワークに対応可能

領収書・レシートの電子保存導入により、テレワークやリモートワークに対応しやすくなります。従来の紙による経費申請は、作成した書類を従業員が経理部に直接提出する必要がありましたが、電子保存ではこれが不要になります。

メールや特定のフォルダなどにデータを送信、もしくはアップロードするだけで提出が完了するので、長期出張やテレワーク時でも経費の提出のためだけに出社する必要がありません。フルリモートワークを導入している企業にとっては、必須とも言えるでしょう。

経費精算業務の効率化

領収書の電子化は、経費の申請をする従業員と処理をする経理担当のどちらにとっても業務の効率化が可能です。申請する従業員にとっては書類を集めて整える手間が大幅に省けます。

経理担当にとっては、データ化された状態で領収書を受け取れるので、会計ソフトや経理精算システムにデータを入れやすく、使用しているシステムによっては仕訳作業まで素早く完了できます。

また、電子保存されていれば、領収書の内容が曖昧でも経理精算システムの検索機能で探し出せます。そのため、棚やファイルを探し回る手間と時間が省け、業務効率化につながります。

管理コスト・スペース削減

領収書は、法人の場合7年間の保存が法律で定められています。領収書が紙の状態の場合、棚やファイルなど物理的な保管場所が必要です。その保管する量が増えるばかりで、保管場所に悩まされる企業も少なくありません。

領収書を電子保存できることで、保管のスペース自体はもちろん保管に必要な棚などの管理用備品も不要になり、その面のコストカットにつながります。

参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

紛失リスク軽減

紙の領収書の場合、領収書や必要書類を揃えて提出するまでに時間がかかります。領収書は一般的にサイズが小さいものなので、提出前に紛失するリスクがありました。

領収書の電子保存ができれば、経費精算をしたい従業員はスマートフォンから領収書をデータ送信で提出できるため、もらってすぐに送信すれば紛失リスクを減らせます。

また、紙のデータは適切に管理していても劣化する上に、火事や地震などの災害で焼失すると元に戻せません。電子データならあらかじめクラウドなどにバックアップを置けるため、劣化や消失のリスクを低減できます。

改ざん・不正リスク軽減

領収書やレシートを電子保存する場合、タイムスタンプの付与が要件になっています。タイムスタンプは付与された文書が改変されていないことを証明するため、改ざんされるリスクを軽減できます。

また、電子化により経費精算システムを使用でき、システムにより文書へのアクセス履歴の記録ができるため、不正な持ち出しなどがあった場合も特定しやすくなります。

領収書・レシートの電子保存のやり方

領収書やレシートの保存方法は、紙の領収書を受け取った場合と初めから電子データの領収書を受け取った場合とで方法が異なります。ここでは、領収書が紙の場合と電子データの場合での保存方法をそれぞれ解説します。

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紙の領収書・レシートの保存方法

紙の領収書やレシートの保存方法には、「紙のまま保存」または「電子データとして保存(スキャナ保存)」の2つの方法があります。

紙の領収書は税法上紙原本の保存が必要ですが、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件に従いスキャンを行うと、電子データとして保存が可能です。また、スキャンして保存した紙の原本は処分できます。

しかし、このスキャナ保存を行うかどうかは任意になっています。今まで通り、紙の領収書を紙のまま保管しても問題ありません。

参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】

PDFなどデータで受け取った領収書の保存方法

電子取引による領収書は、電子メールに書かれた領収書やクラウドサービスの電子領収書、WebサイトからダウンロードしたPDF形式の領収書などが該当し、これらをハードディスクやクラウドなどに保存する必要があります。

2022年の電子帳簿保存法の改正により、電子取引で電子データとして受領した領収書はすべて電子データのまま保存が義務付けられました。また、電子データで受け取った領収書を紙に印刷して保存することは禁止されています。

2022年1月1日から2023年12月31日までは経過措置として紙保存が認められますが、あくまで経過措置であり義務自体は発効しています。そのため、期間が過ぎた2024年1月1日からは電子データ保存のみとなります。

参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】

領収書・レシートの電子保存要件

領収書やレシートは、受け取った際に紙または電子データの状態の違いがあります。どちらも電子データにして保存できますが、法律に沿った保存を行わなければなりません。ここでは、電子保存の際の要件について解説します。

参考:国税庁「電子帳簿保存時の要件」

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領収書・レシートのスキャナ保存要件

領収書やレシートを紙の状態で受け取った場合、機器でスキャンして電子データにできます。スキャナ保存の要件は書類によって異なりますが、領収書やレシートは重要書類に分類されるため、真実性の確保に関する下記の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 入力期間の制限:最長2か月と7営業日
  2. 一定水準以上の解像度:解像度200dpi以上
  3. カラー画像による読み取り:赤・緑・青それぞれ256階調(約1677色)以上
  4. タイムスタンプ付与
  5. 読み取り情報の保存:読み取った電子データの解像度および階調情報の保存
  6. バージョン管理:訂正・削除の事実および内容の確認などのため
  7. 入力者などの情報の確認

また、こちらの可視性の確保に関する要件もすべて満たす必要があります。

  1. 帳簿の相互関連性の保持:電子データの記録と国税関係帳簿の記録との間で、相互にその関連性が確認できる
  2. 見読可能装置の備え付け:14インチ以上のカラーディスプレイなど
  3. 電子計算処理システムの概要書などの備え付け:パソコンや専用ソフトなどの電子計算処理システムに関する書類など
  4. 検索機能の確保:取引年月日などの日付・日付または金額の範囲指定・2つ以上の任意の記録項目を組み合わせての検索ができること

参考:国税庁「電子帳保存法一問一答【スキャナ保存関係】」

領収書・レシートの電子取引要件

領収書やレシートの電子取引要件とは、電子データとして受け取った領収書を電子データのまま保存する場合に満たすべき項目のことです。電子帳簿保存法では、「真実性の要件」と「可視性の要件」が規定されています。

真実性の要件

真実性の要件とは、保存した記録が改ざんされないようにする「真実性の確保」を満たすための要件です。そのため、下記のいずれかの要件を行う必要があります。

  1. タイムスタンプが付与された後、取引情報の授受を行う
  2. 取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付与し、保存を行う者または監督者に関する情報を確認できるようにしておく
  3. 訂正や削除を確認できるシステム、または訂正や削除が行えないシステムを使用
  4. 訂正や削除の防止に関する事務処理規定を定め、それに沿った運用を行う

しかし、すべての要件が使えるとは限りません。たとえば、1の場合発行者がタイムスタンプを付与しない可能性があります。また、4の場合は大企業だと周知徹底に時間と手間がかかるため、従業員の少ない中小企業に向いているでしょう。

可視性の要件

真実性の要件とは、保存されたデータを検索してすぐに表示・閲覧できる「可視性の確保」を満たすための要件です。そのため、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 電子データを保存した場所に、パソコンなどの電子計算機・プログラム・ディスプレイ・プリンタおよびその操作マニュアルを備え付け、画面・書面にすぐに明瞭な状態で出力できるようにしておく
  2. 電子計算機処理システムの概要書を備え付ける
  3. 以下の検索機能を確保する

a. 取引年月日・取引金額・取引先での検索

b. 日付または金額の範囲指定での検索

c.  2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索

ただし、保存義務者が税務職員の質問検査権に基づく電子データのダウンロードや提示に応じられる場合、bとcの検索機能の対応は不要です。

参考:国税庁「電子帳保存法一問一答【電子取引関係】」

領収書・レシートの保存期間や原本の対応

領収書やレシートの保存期間や原本の対応は、領収書やレシートを電子化している場合と紙のままの場合とで異なっています。ここでは、電子化している場合としていない場合とに分けて解説します。

参考:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」

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領収書・レシートの保存期間や原本の対応

  1. 電子化している場合
  2. 電子化していない場合

電子化している場合

領収書など国税関係書類は、法人税法で確定申告書の提出期限翌日から7年の保存が義務付けられています。個人事業主の保存期間は、青色申告なら7年、白色申告なら5年です。

この期間はいつでもデータを出せるよう保存しておく必要があります。なお、2022年の電子帳簿保存法の改正により定期的な検査が不要になったため、領収書の電子データがあれば原本を破棄してもよくなっています。

しかし、入力期間を過ぎて保管したものやプリンターの最大出力を超える大きさの書類の場合は、原本の保存が必要です。

電子化していない場合

電子化せず紙のまま保存する場合も、保存期間は電子化した場合と同じく法人は原則7年、個人事業者なら青色申告で7年、白色申告で5年となっています。

電子化をしない場合は、紙の領収書やレシートそのものが取引を証明する書類となるため、保存期限を経過するまで破棄できません

まとめ

国税関係帳簿書類である領収書やレシートは、従来紙での保存が原則でした。しかし、2022年の電子帳簿保存法改正により、電子保存の要件が緩和された上に電子取引の情報を紙で保存するのが禁止になったことから、電子化導入の必要性が高まっています。

電子化によって、これまでの保管場所や備品が不要になることによるコスト削減、経費精算システムの使用により経費精算業務を効率化できるなど多くのメリットがあります。

しかし、領収書やレシートを電子化するには、法律に定められた要件に沿ったスキャン方法および保存方法で管理する必要があります。

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