【2025年最新】電子帳簿保存法とは?改正点などをわかりやすく解説

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- 電子帳簿保存法とは、国税関係の書類を電子データで保存することを認める法律
- 電子帳簿保存法の改正により、電子取引書類は電子データでの保存が義務付けられた
- 電子帳簿保存法対応システムを導入する際は、保存要件の把握・業務フロー見直しが重要
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律です。本記事では、電子帳簿保存法の保存方法や要件、これまでの主な改正点、電子帳簿保存法に対応したシステムの選び方などをわかりやすく解説しています。
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電子帳簿保存法とは

電子帳簿とは、会計帳簿や仕訳帳などをデジタル保存した帳簿で、電子帳簿保存法とは、電子帳簿の保存に関するルールを定めた法律です。企業・個人事業主(所得税・法人税の義務者)に該当するすべての人が対象です。
電子帳簿保存法により、税法で紙の保存が義務づけられている帳簿は、電子データでの保存が可能になりました。しかし、紙書類をデータで保存するには一定の要件を満たす必要があります。また、電子帳簿保存法では電子取引した情報の保存義務についても定めています。
電子帳簿保存法は、税制改正に伴い、内容の変更や緩和措置がとられています。企業は、これらの変更点を常に把握し、適切な対応をとっていく必要があります。最新の情報を収集し、自社のシステムや運用体制の見直しを行いましょう。
電子帳簿保存法の改正点まとめ

2022年〜2025年にかけての電子帳簿保存法の主な改正点を表にまとめました。
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年 | 主な改正点 |
---|---|
2022年 | ・電子取引書類の電子データ保存が義務化(2023年12月末までの猶予期間あり) ・事前承認制度の廃止 ・スキャナ保存のタイムスタンプ付与期間を最長2ヶ月に延長 ・タイムスタンプ・電子署名要件の緩和 |
2024年 | ・電子取引書類の電子データ保存の完全義務化 ・過少申告加算税軽減措置の対象範囲見直し ・スキャナ保存要件の緩和 ・電子取引の検索要件緩和 |
2025年以降 | ・重加算税の加重措置免除要件の新設(2027年1月~) ・青色申告特別控除(65万円)の適用要件見直し(2027年分~) ・e-Tax添付書類の要件緩和(白黒可、JPEG対応は2028年1月~) |
2022年1月の電子帳簿保存法の主な改正内容

2022年1月に電子帳簿保存法の法改正が行われました。概ね保存要件を緩和する内容ですが、義務化や厳罰化の内容もあり、保存義務者は改正内容を把握しておく必要があります。以下に改正内容の一部を紹介しますが、国税庁のホームページも確認しておきましょう。
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2022年1月の電子帳簿保存法の主な改正内容
電子取引書類の電子データ保存の義務化
電子帳簿保存法の改正により、全ての事業者は電子取引で受け取った書類を、電子データのまま保存することが義務付けられました。
以前のように紙に印刷して保存する方法は認められず、タイムスタンプを付与するなど、一定の要件を満たした形でデータ保存する必要があります。これは、大企業だけでなく、小規模企業や個人事業主も対象となります。
事前承認制度の廃止
これまで、帳簿・証票類を電子的に保存する際には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、法改正により事前承認は廃止になりました。
これは事務負担を軽減するための改正です。保存の3ヶ月前までの承認や準備の手間がなくなり、電子的な保存がしやすくなっています。
書類の受領からスキャナ保存するまでの期間延長
これまでは、国税関係書類をスキャナ保存する場合は、3営業日以内にタイムスタンプを付与しなければいけませんでした。法改正後は、タイムスタンプの付与期間が最長2ヶ月まで延長され、時間的な余裕が持てる改正がされました。
タイムスタンプ・電子署名の要件緩和
法改正では、前述の期間延長以外にもタイムスタンプ・電子署名に関する要件が緩和されています。スキャナで読み取る際にはタイムスタンプ以外に受領者の自署も必要でしたが、改正によって自署は不要になりました。
また、データの訂正・削除などの事実が確認できる(履歴が残る)、あるいは訂正・削除ができないシステムやクラウドサービスに保存する場合はタイムスタンプの付与が必要なくなりました。
電子帳簿保存法の区分と要件

電子帳簿保存法では、保存方法や保存する情報によって区分を3つに分けており、各区分で満たすべき条件を定めています。ここでは各区分の概要と要件について解説します。
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電子帳簿保存
電子帳簿保存とは、電子的に作成した帳簿類をデータの状態で保存することです。会計ソフトを始めとするソフトウェアで作成した帳簿も「電子的に作成した帳簿類」に含まれます。
電子帳簿保存要件では、真実性や可視性を確保することを保存の条件として求めています。これは、電子帳簿保存に関わるシステムや、コンピュータ・ディスプレイ・プリンタなどに関する条件で、詳細は次の通りです。
電子帳簿保存要件
電子帳簿保存要件では、保存に使用するシステムに「訂正・削除や通常の業務処理期間を経過した後の入力の履歴が確認できること」を求めています。また、システム関係書類として、概要書・仕様書・操作説明書・事務処理マニュアルを備え付けておくことも必要です。
また、電子化した帳簿と関連する他の帳簿との間で、記録事項の関連性が相互に確認できなければなりません。
可視性の確保条件として、コンピュータ・その他のデバイス・プログラムなどの操作マニュアルを備え付け、整然とした形式と明瞭な状態で出力できることが求められます。さらに、取引に関する検索ができることも重要な要件です。
参考:電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】|国税庁
スキャナ保存
スキャナ保存とは、紙の書類を画像データで保存することです。郵送された請求書や紙で発行された領収書などをスキャナで取り込むケースを始め、スマホやカメラで撮影した書類もスキャナ保存に該当します。
スキャナ保存要件
スキャナ保存の要件は、電子帳簿の保存と同様の要件が求められる他、タイムスタンプ(刻印された時刻以降に記録が変更されていないことを証明する)の付与を求めています。入力期間は早期入力方式は7営業日以内、業務処理サイクル方式は最長2ヶ月以内です。
画像データは解像度200dpi以上・24ビットカラー以上が求められ、読取情報の保存も必要です。出力には14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタが必要で、拡大・縮小ができることや4ポイントの文字サイズを識別できることも求められます。
スキャンする書類は、資金・物品の流れに直接関係する重要書類(契約書・納品書・領収書など)と、それ以外の一般書類に分けられます。見積書や検収書などの一般書類の場合は、適時入力や保存・出力における白黒階調も認められます。
電子取引
紙ではなく電子的に書類をやりとりした場合は電子取引に該当します。電子的に授受した取引情報には、メールで送られた請求書やダウンロードした領収書などが含まれます。
なお、FAXは紙で受け取る場合には電子取引に該当しませんが、FAX機能を使ってデータで送受信する場合は電子取引に該当します。
電子取引の保存要件
電子取引の保存には、改ざん防止の措置が必要です。改ざん防止措置には、タイムスタンプの付与・履歴が残るシステムで授受や保存・事務処理規定を定めて守るなどの方法があります。
その他は電子帳簿保存の要件における可視性の確保と同様で、操作マニュアルやシステム概要書の備え付け・整然かつ明瞭に出力できること・検索機能の確保を求めています。
なお、検索機能の確保は、特別に高機能なシステムやソフトウェアを導入しなくても、エクセルに代表される表計算ソフトによる索引簿の作成でも可とされます。また、フォルダ内に「日付・金額・取引先」をファイル名として規則的に保存することも認められます。
電子帳簿保存法の対象・対象外の書類

電子帳簿保存法に則って国税関係の帳簿・書類を保存する際は、保存対象となる書類と電子保存が認められない書類があることを理解しておかなければいけません。ここでは電子帳簿保存法の対象・対象外の書類について解説します。
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電子帳簿保存法の対象・対象外の書類
電子帳簿保存法の対象書類
電子帳簿保存法の対象書類については、区分ごとの保存要件と併せて理解するのがおすすめです。対象書類であっても、要件を満たしていない場合は法的に認められません。以下に対象書類について解説します。
電子帳簿保存の対象書類|帳簿、決算関係書類
税法上、保存義務のある書類には仕訳帳や総勘定元帳などの国税関係の帳簿や決算関係書類があります。これらは電子的に作成されたものなら、電子保存が可能です。取引関係書類も自己作成し、写しとして保存する場合は電子帳簿として保存できます。
これらの書類は「電子的に保存可能」ですが、逆に言えば、プリントアウトして紙として保存することも可能です。一方で紙で授受を行った場合は後述のスキャナ保存に該当します。取引関係書類においては電子的に授受した場合、電子保存しなければいけません。
対象書類 | 詳細 |
---|---|
国税関係帳簿 | 仕訳帳・総勘定元帳・売掛帳・買掛帳・現金出納帳・固定資産台帳など |
決算関係書類 | 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など |
取引関係書類 | 注文書・見積書・契約書・領収書など |
スキャナ保存の対象書類|契約書、請求書など
スキャンして電子的に保存が可能な書類は、相手方から紙で受領した取引関係書類です。これらの書類は紙のまま保存しても問題ありません。
スキャナ保存する場合は、資金・物品の流れに直結する重要書類(契約書・納品書・領収書・請求書など)は、カラーで保存・出力できることが求められます。一般書類となる見積書・注文書・検収書などはモノクロでも構いません。
電子帳簿保存法の対象外の書類
電子帳簿保存法では、要件を満たさない保存方法や書類については対象外となります。たとえば、手書きで作成した帳簿が対象外となりますが、これについては詳細を後述します。
また、電子的に作成された国税関係帳簿と決算書類は、電子的に保存することも紙で保存することも可能ですが、一度でも紙で出力したものを電子的に保存することは認めていません。
手書きで作成した帳簿・書類
国税関係帳簿と決算書類は一貫して電子的に作成されたものでなければ電子帳簿保存が認められないため、手書きの国税関係帳簿と決算書類も対象外となります。当然、スキャナ保存も認められません。
手書きの領収書や請求書などの取引関係書類に関しては、スキャナ保存が可能です。ただし、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。
電子帳簿保存法に違反した場合の罰則

電子帳簿保存法は守らなければいけない義務のため、違反をすると罰則があります。電子帳簿保存法に違反した場合にどんな罰則を受けるのか、以下に解説します。
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電子帳簿保存法に対応したシステムを導入しない場合の罰則
青色申告承認の取り消し
青色申告とは確定申告の種類で、最大65万円の特別控除や欠損金の繰り越しなどの利点があります。企業や個人事業主にとっては節税のメリットが大きい青色申告ですが、電子帳簿保存法に違反すると青色申告の承認が取り消されてしまう可能性があります。
節税のメリットを失うだけではなく、事業者としての信頼を失うリスクも大きいです。申告漏れや保存要件の見落としがないように、システムを導入・運用する必要があります。
追徴課税
追徴課税とは、税務調査で申告漏れや隠蔽などが発覚した場合に、本来の納税額との不足分に加え、ペナルティとして税金が加算されることです。適切な電子帳簿保存システムを導入していれば申告漏れは防ぎやすいですが、申告漏れは過少申告加算税が課されます。
システム以前に、申告や電子帳簿保存法について認識しておらず無申告だった場合は、無申告加算税が課せられます。所得隠しや脱税など意図的な場合は、重加算税として支払うべき税額の35〜40%の高額の追徴となるので気をつけましょう。
推計課税
推計課税は、税務調査の際に帳簿の不備・不足があった場合に課される可能性があります。例えば帳簿の内容のエビデンスとなる領収書や請求書などが保存されておらず、原本も紛失している場合には、収入や経費から推計して課税します。
推計による課税のため、実額で課税する場合よりも納税額が大きくなる可能性もあり、いずれにしても帳簿の不備・不足は、事業者にとって何のメリットもありません。
会社法による過料
会社法976条では、国税関係書類を適切に保存しなかった場合は、100万円以下の過料を徴収することがある旨が記載されています。これは電子帳簿保存法違反によって、会社法にも違反する可能性があることを意味しています。
2024年からの電子帳簿保存法の改正点

2024年1月1日から、電子取引書類の電子データ保存が完全義務化されました。また、2023年の税制改正により、電子帳簿等保存とスキャナ保存などに関して、いくつかの変更がありました。
以下で、2024年から適用された電子帳簿保存法の主要な変更点を、3つの区分に分けて解説します。
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2024年からの電子帳簿保存法の改正点
電子帳簿等保存の改正
令和5年度税制改正では「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象範囲が見直されました。改正前は対象が「全ての青色関係帳簿」でしたが、改正後は「仕入帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿」となりました。
この軽減措置を受けるには、適用を受けたい年の確定申告期限までに「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書」を提出する必要があります。
スキャナ保存の改正
スキャナ保存に関する改正では、いくつかの保存要件が緩和されました。解像度や諧調などの情報の保存や、入力者情報の確認が不要となりました。また、帳簿との相互関連性の確認が求められるのは「重要書類」に限定されました。
「過去分重要書類」のスキャナ保存には届出が必要ですが、今回の改正によるスキャナ保存適用に関する届出は不要です。
電子取引の改正
電子取引データ保存に関する改正では、検索要件が大幅に緩和されました。基準期間の売上高が5,000万円以下の場合や、電子保存データを書面出力し一定の要件を満たす場合、すべての検索要件が不要となります。
また、電子データ保存への移行が困難な場合、書面出力と電子データのダウンロード対応を条件に、検索要件を不要とする猶予措置が新設されました。
2025年以降の電子帳簿保存法の改正点

自由民主党・公明党から公表された「令和7年度税制改正の大綱」の中で、電子帳簿保存法に関する改正点が明記されています。以下で、2025年以降に適用される電子帳簿保存法の改正点について解説します。
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2025年以降の電子帳簿保存法の改正点
重加算税の適用対象変更
これまで、電子データ上の取引情報でも改ざん防止策が不十分だと、税務調査で修正申告を求められた際に通常の10%上乗せの重加算税が課せられていました。
改正後は、一定の要件を満たすシステムで記録・保存し、かつ税務当局への届け出を行えば、この重加算税が免除されます。具体的には、以下の要件を満たし事前届出をした場合です。
- 記録の訂正・削除履歴が確認できるシステムでの保存
- 帳簿記録を修正した場合、その履歴が確認できるシステムの使用
- 請求書等の取引情報と帳簿記録との関連性の確保
- 上記システムで適切に保存されていることの証明
なお、この改正は、2027年1月1日以降の申告から適用されます。
青色申告特別控除の適用要件一部変更
青色申告特別控除の最高額65万円の適用要件が見直されます。
従来は、詳細な帳簿を一定基準を満たす電子データで保存することが要件の1つでしたが、改正後は、一定の要件を満たすシステムで電子取引情報を保存することでも要件を満たせるようになります。
ただし、この場合のシステムとは、先述の重加算税の加重措置の免除を受けるためのシステムと同じものです。つまり、適切な電子取引情報管理システムを導入すれば、税務上のメリットが二重に得られることになります。
なお、この改正は2027年分以降の所得税について適用されます。
スキャナ読み取りの要件見直しによるe-Taxの利便性向上
e-Taxで提出する添付書類等のスキャンデータに関するルールが緩和されます。具体的には、従来はカラー画像(256階調以上)での保存が必須でしたが、白黒画像(256階調以上)も認められるようになります。
また、2028年1月からはJPEG形式のファイルも受け付けるようになります。これらの変更により、白黒スキャナの使用やデータ容量の圧縮が可能となり、e-Taxがより便利になります。
電子帳簿保存システムを使用するメリット

電子取引を採用している企業にとって、電子帳簿保存システムを使用するメリットは多いです。システムを使用することで得られるメリットの代表をまとめました。以下に課題を感じている企業は導入を検討してみましょう。
- 電子帳簿保存法に対応できる
- 書類の管理が容易になる
- 紙の書類の保管コスト削減が可能
- 書類への不正リスクが軽減する
電子帳簿保存システムの選び方

十分な検討ができないまま電子帳簿保存システムを導入すると、自社に適さず導入が無駄になる可能性があります。導入する際は、自社にとって使いやすいシステムかどうかしっかり検討しましょう。以下に確認すべきポイントをまとめました。
- 電子保存したい領域に対応しているか
- 保存業務の効率化が図れる機能が備わっているか
- 受発注や経費精算業務との連携が可能か
- 無理せず使い続けられる価格か
一度導入したシステムを変更するには手間がかかるため、長年使い続けることを前提に慎重に選びましょう。次の項目で最もメリットを感じやすい業務の効率化に関する部分について解説します。
保存業務の効率化が図れる機能が備わっているか
業務の効率化は企業にとって多くのメリットをもたらしてくれるため、自社で既に導入している他のシステムや業務フローなども踏まえて選ぶのがおすすめです。
たとえば、証憑収集機能付きのシステムなら、取引関係書類の受領・スキャンから電子データの保存に至るまでの業務をスムーズにする自動分類・自動判定・自動検査などができます。タイムスタンプの一括付与や画像が要件を満たしているかの確認も可能です。
既に導入している会計システムと連携できると、明細入力や仕訳伝票への添付なども効率化でき、データの一元管理によって、データの正確性・一貫性も向上します。その他、画像データから文字を判別してデータ化するOCR機能も便利です。
電子帳簿保存システム導入時のポイント

国税関係書類を電子的に保存する上で、効率的なのは電子帳簿保存システムの導入です。中でも、法的要件を満たしたシステムは「JIMMA認証」を得ており、日本文書情報マネジメント協会のウェブサイトから確認できます。
しかし、ただ導入するだけでは期待したほどのメリットを感じにくいため、どのように運用すべきかを事前に把握しておくことが大切です。以下にシステムの導入と運用におけるポイントを解説します。
参考:JIIMA認証制度|公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会
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電子帳簿保存法対応のシステム運用のポイント
電子化する書類の範囲を決める
電子帳簿保存法では、電子取引については電子保存を義務付けています。社内の取引内容を整理し、電子化必須の書類と紙でも可の書類とを分け、電子化する書類の範囲を決めましょう。
また、電子データと紙のどちらの保存でも認められる帳簿・書類もありますが、正確性と効率性の向上・作業負担の軽減・保管場所などの観点からも電子化が推奨されます。
単に法的義務に迫られて電子化するよりも、長期的な視野で電子化する書類の範囲を検討した方が電子化のメリットを最大限活用できる可能性が高まります。
業務フローを見直す
システム運用を見据えて、現在の業務フローのままで問題はないか、より効率的な業務フローにできないか、業務フローの見直しを事前に検討しておくのも重要です。
特に多くの従業員を抱える大企業では、各部署から請求書や領収書などが電子データと紙が混在した状態で提出されると、経理担当者の業務負担が大きくなります。
取引関係書類はデータのまま、あるいはスキャン保存で電子化してから経理に渡すなど、業務フローを最適化することが大切です。
従業員への周知を行う
電子化した帳簿の改ざん防止措置として、事務処理規定を備えて運用するケースもあります。その場合は規定について従業員への周知を行うことも大切です。事務処理規定については国税庁のホームページでサンプルが公開されているので参考にしましょう。
また、スキャナ保存のルールやシステム、関連機器の操作方法について従業員の理解を深めることが、法令遵守と業務効率化につながります。
海外にも拠点を置くグローバルな会社の場合、海外拠点のメンバーにも周知を行う必要があります。もちろん、外国籍の社員にも正しく理解してもらわなければならないため、電子帳簿保存法だけでなく変更後の業務フローについても英語での丁寧なフォローが必要です。
セキュリティ対策を徹底する
電子帳簿保存システムには企業の機密情報を含むデータが保管されるため、導入する際はセキュリティ対策も講じる必要があります。具体的には、以下のような対策が有効です。
- 管理者のみ閲覧・編集・削除ができるよう設定する
- 推測されやすいパスワードの使用を禁止する
- 定期的にデータのバックアップを取る
多くのシステムはベンダーによって強固なセキュリティ性が確保されていますが、社内でも対策を行い、情報流出や紛失を防止しましょう。
まとめ

電子帳簿保存法は、保存区分ごとの要件を満たせば、国税関係帳簿や決算書類などの電子化が可能です。特に電子取引については、電子保存が義務付けられています。
電子帳簿保存法は税制改正に伴い、内容の変更や要件緩和が随時行われています。違反すると罰則の対象となる一方で、適切な電子化により業務効率化のメリットも得られます。
最新の規定を把握し、自社のシステムや運用体制を見直すことで、法令遵守と効率的な業務運営の両立を目指しましょう。
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