営業代行に契約書は必要?契約の種類や記載内容、締結の流れを解説
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- 営業代行の契約書は必ずしも必要ではないが、トラブル回避のため取り交わすのが通例
- 営業代行の契約には、業務委託契約・請負契約・準委任契約の3種類がある
- 請負契約の場合、契約金額が1万円以上の場合は収入印紙が必要になる
営業代行の契約を結ぶ際、契約書は必ずしも必要ではありません。しかし、トラブルを回避するために取り交わすのが通例です。この記事では、営業代行における契約・契約書の種類や記載すべき内容、締結までの流れ、注意点などを解説します。
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営業代行に契約書は必要か
営業代行とは、営業活動を代行するサービスのことです。テレアポ・訪問営業・既存顧客や見込み顧客への営業・営業コンサルティングなどが含まれます。代行サービスは、時間や専門知識を要する営業活動において、企業の営業力を高めるために利用されます。
営業代行において契約書は、必ずしも法的に必要とされるわけではありません。しかし、サービス内容・期間・費用・情報の取扱い・成果物の所有権などを明確にするために、契約書を交わすことが推奨されます。
これにより、双方の期待を明確にしてトラブルを回避できるため、営業代行でも契約書を取り交わすことが通例です。本記事では、営業代行の契約書について、その種類や取り交わすタイミングなどを解説します。
営業代行とは?メリット・デメリットや代行できる仕事内容を解説
営業代行とは、企業や個人の営業業務を代わりに行うサービスのことです。本記事では、営業代行をよく知らない・導入を検討している方のために、営業代行のメリット・デメリットや代行を依頼できる仕事内容、営業代行会社の選び方や活用がおすすめの企業を解説しています。
営業代行における契約の種類
営業代行における契約は、一般的に業務委託契約となります。業務委託契約は、法令上では請負契約と準委任契約の2つに分類されます。ここでは、営業代行における契約の種類について解説します。
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請負契約
請負契約とは、請負人が特定の仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を支払う形式の契約です。この契約形態は、仕事の完成を目的とする場合に利用されます。
ただし、請負人が約束した仕事を完成していなくても、一部の完成した仕事が注文者に利益をもたらした場合、請負人はその利益の割合に応じて報酬を請求できます。
請負契約のメリットには、注文者が必要な時にのみ業務を発注でき、外部の専門的人材やノウハウを活用できることが挙げられます。ただし、業務の進め方を具体的に指示できない点は、注文者にとってはデメリットです。
請負契約書には、報酬の支払い方法とタイミング・納入方法・検収基準・瑕疵担保責任・契約の解除などの項目を明記することが重要です。また、契約金額や請負契約書の種類によっては、課税の対象となり、契約金額に応じた印紙税が必要になります。
参考:請負の意義|国税庁
準委任契約
準委任契約は、業務を遂行することを目的にした業務委託契約の一種です。そのため、業務の遂行を約束することで契約が成立します。成果に対する報酬が支払われるものの、成果を出せなかった場合でも契約違反にはなりません。
ただし、準委任契約では、「善管注意義務」が求められます。これによって、委任された側は、委任された業務を善良な管理者の注意をもって遂行しなければいけません。
準委任契約のメリットは、外部の専門家に頼ることで、自社の人員を効率的に活用できることです。しかし、業務遂行の品質管理が難しくなる点はデメリットです。
準委任契約書の記載項目には、業務内容の定義・報告義務の詳細・業務の遂行方法・報酬の支払い条件・納期・契約解除条件などが挙げられます。
営業代行の業務委託契約書の種類
営業代行の業務委託契約書には、基本契約書・個別契約書の2種類の契約書があります。ここでは、それぞれの契約書について、何を記載すべきかについて解説します。
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基本契約書
基本契約書は、契約の当事者間で継続的に行われる取引の基本的な内容を定めた契約書です。営業代行においては、1回の委託で終了するケースより、継続的に委託するケースが一般的と言えます。
取引の度に契約書を交わすよりも、継続する取引に共通する事項を記載した基本契約書を交わす方が効率的です。
基本契約書に記載する内容
営業代行における基本契約書に記載すべき主な事項は以下の通りです。
- 契約の趣旨や目的
- 契約の当事者
- 代金の支払方法と期日
- 契約期間
- 更新方法
- 契約解除や損害賠償に関する規定
- 裁判管轄
契約書は、一般的に契約内容に応じて記載すべき事項は異なりますが、上記の事項は基本的な内容です。基本契約書にこれらの事項を記載しておくことで、業務を委託する度にこれらの事項を双方に確認し、新たに契約書を交わす必要がなくなります。
なお、基本契約書と個別契約書の両方を交わす場合は、基本契約書に「基本契約であること」「個別事項は個別契約で定めること」などを定めておくことを推奨します。
個別契約書
個別契約書は、具体的な取引に際して締結される契約です。基本契約に基づき、より具体的な取引条件を定めるために使用されます。具体的な業務内容や成果物の品質基準、プロジェクト固有の条件などを指定したい場合は、個別契約書に記載します。
個別契約書に記載する内容
営業代行における個別契約書は、委託したい業務によって記載すべき事項は異なります。個々の取引でどのような業務を委託したいのか、その営業活動はどのように行うのかなどを記載します。
例えば、戸別訪問営業を委託したい場合は、その旨を契約書に記載することに加え、営業の目的や訪問対象のエリア、目標とする契約成立数など、具体的な内容を記載します。
営業代行の契約書を取り交わすタイミング
営業代行の基本契約書を取り交わすタイミングについては、委託者(企業)と受託者(営業代行会社)が営業代行サービスに関して合意に至った後が一般的です。
委託側が営業代行を必要とし、適切な営業代行会社を見つけた後、サービス内容や条件に関する交渉を行います。交渉後、双方が合意に達した時点で正式に契約書を作成し、締結する流れとなります。
なお、個別契約書のタイミングについては、基本契約書に指定があればそのタイミングで行いますが、指定がなければ発注前に取り交わすのが一般的です。
営業代行の契約書締結の流れ
営業代行の契約書締結では、双方に不利な点・不明点がないよう、細分にわたって明確な取り決めを行うことが大切です。ここでは、営業代行の契約書締結の流れを解説します。
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営業代行の契約書締結の流れ
代行会社との打ち合わせ
依頼する営業代行会社が決まったら、その営業代行会社と打ち合わせを行うのが最初のステップです。打ち合わせでは、双方が将来の業務内容についての期待と要件を明確にします。
業務の範囲(テレアポ・訪問販売・商談・受注処理など)・対応地域・期間など、具体的な業務詳細を決定しましょう。
打ち合わせでの注意点として、営業代行会社が対応可能な地域を確認し、自社(依頼者)のニーズに合っているかを検討します。また、依頼内容に応じて業務範囲が大きく異なるため、何を期待しているかを明確にしましょう。
料金体系・支払時期の合意
業務内容に関する協議に関連して、料金体系・支払時期などを明確化することも契約の成功において非常に重要な要素です。この段階では、報酬額の定め方や支払いのタイミング、経費負担の条件など、金銭的な取り決めを詳細に決定します。
料金体系は、一般的に固定報酬型・成果報酬型、その両者を組み合わせたハイブリッド報酬型があります。これに加えて、支払時期は具体的に定め、契約書に記載します。例えば、「業務完了後30日以内」や「月末締めの翌月15日」など、明確な期日を設定しましょう。
そして、交通費やその他の業務にかかる経費の負担者を決定します。経費が発生した場合の支払い条件や支払い方法も合わせて定めます。
注意点として、報酬の計算基準や支払い条件は、後の誤解を避けるためにも可能な限り具体的に定めることが重要です。また、口頭での合意も有効ですが、書面に残すことで後々のトラブルを防げます。すべての条件を契約書に明記しましょう。
営業方針・報告に関する取り決め
営業方針・報告に関する取り決めは、委託者と受託者間のコミュニケーションを円滑にし、期待される成果を達成するために行います。
営業代行では、業務の具体的な運営は代行会社の裁量に委ねられます。しかし、委託者と受託者間で定期的な報告や連絡、相談の仕組みを設けることは、双方にとってメリットが大きいです。
報告に関する取り決めでは、定期的な報告の頻度・報告書の形式(電子メール、文書、オンラインミーティングなど)を明確に取り決めます。また、緊急時や重要な意思決定が必要な場合の連絡手段を決定することも大切です。
営業方針に関する取り決めでは、どのように相談を行うかのプロセスを設定します。これには、定期的なミーティング・相談窓口の設定などが考えられます。委託者が特定の営業方法やアプローチを希望する場合、その指導方法についても事前に合意を図りましょう。
注意点として、営業代行会社に依頼するリスクを最小化するためには、 取り決めを明確にし、双方が理解しやすい言葉で契約書に記載することが重要です。不明瞭な点は事前に解消するようにします。
契約書の内容を確認
業務範囲・料金体系・報告など一通りの取り決めを行ったら、契約書を作成し、その内容が双方の合意した内容と一致しているか確認を行います。これは、合意された契約条件が文書に正確に反映されているかを保証するための重要なステップです。
契約の全項目を細部にわたって確認し、自社にとって不利益な条件がないか、特に注意して確認します。
確認の際は、自社内の法務担当部署や利用可能な法律の専門家に頼んで、契約書の内容を法的な視点から問題点がないか確認することを推奨します。
秘密保持条項もしくは秘密保持契約の確認
秘密保持契約は、ビジネス関係で他社に自社の情報を開示する際に、その情報を保護するための契約です。これにより、開示された情報が外部に漏れることを防ぎます。
秘密保持契約には、契約の一部として組み込まれる「秘密保持条項」と、独立した契約として取り交わされる「秘密保持契約」の主に2つの形式があります。
いずれも情報を開示する前に取り交わすのが一般的です。これにより、情報が保護される前に漏洩するリスクを最小限に抑えられます。
秘密保持に関する取り決めとして、対象となる情報の内容・開示範囲・使用目的を明確にします。また、情報が漏洩した場合の対処方法や補償についても取り決めます。
ただし、秘密情報の範囲を広げすぎると、実務上の運用が難しくなる場合があるので、実務とのバランスを考慮する必要があります。
秘密保持に関する契約内容においても、自社にとって不利益にならないよう、法務担当部署・外部の法律専門家に確認を依頼することが推奨されます。
契約書を2通作成
契約書の作成は、営業代行の契約書締結の最終段階です。契約書は、双方が保管できるように通常2通作成します。これにより、双方が同じ内容の文書を保持し、後々の不一致を避けられます。
また、法人の取引に関する契約書の保管期間は法律によって定められており、日本では、法人税法で通常7年の保管期間が求められています。契約書は紙の形式・電子データなどで保管可能です。
注意点として、契約書を保管する際には、外部に漏れないようセキュリティ対策を行うことが重要です。
営業代行の契約書に関する注意点
営業代行の契約書を取り扱う際には、注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは、営業の契約書に関する注意点を解説します。
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営業代行の契約書に関する注意点
請負契約の場合は収入印紙が必要
営業代行の契約形態が請負契約の場合、契約金額が1万円以上であれば収入印紙が必要になります。請負契約では、契約書に収入印紙を貼付することで印紙税を支払います。契約金額に応じて異なる額面の収入印紙を購入し、契約書に貼り付けることで納税されます。
印紙税額は契約金額に比例して決定され、1万円未満の場合は非課税です。それ以上の場合には200円から始まり、契約金額が増加するにつれて税額も高くなります。
なお、電子契約の場合は物理的な書面による契約ではないため、収入印紙を貼付する必要はありません。電子文書の形態で契約を交わす場合、印紙税法上、課税文書とは見なされないため、印紙税を納める必要がなくなります。
契約日を記載する
契約日は、契約の成立や有効性に関わる重要な要素です。契約日は、契約がいつ成立したのかを明確にするために、契約が成立する日(契約当事者が合意に達した日)を基準に設定します。以下に、契約日の決定の仕方について例を挙げます。
- 契約期間の初日(営業代行サービスが開始される予定の日)
- 最後に署名・記名押印した日(双方の署名または押印が完了した日)
- 最初に署名・記名押印した日
- 基本的な契約条件に双方が合意した日
- 当事者の契約に関する社内承認が完了した日
上記の補足として、最初に署名・記名押印した日を契約日とする場合も考えられますが、あまり一般的ではありません。また、基本的な契約条件に双方が合意することについては、口頭で合意した日を契約日とする場合もありますが、文書化された証拠が必要です。
また、契約日に関する注意点として、契約日は、営業代行サービスが実際に開始される前の日付に設定する必要があります。これにより、サービス開始前の準備期間や条件調整が可能になります。
成果報酬型では基本契約書の内容変更は不要
成果報酬型の契約では、報酬の支払いが委託した仕事の成果に基づくため、具体的な成果や報酬の条件がプロジェクトごとに異なる可能性が高いです。
そのため、成果の定義や報酬の計算方法などの詳細は、個別契約書で定めるのが一般的であり、基本契約書の内容変更は不要です。基本契約書はそのままにしておき、取引ごとの特定の条件は個別契約書で調整することで、柔軟に契約内容を変更できます。
捺印・割印をしておく
契約書における捺印・割印は、日本特有のビジネス慣習ですが、法律上は契約成立に必ずしも必要ではありません。契約は当事者間の合意があれば成立します。しかし、捺印・割印は契約書の真正性を示し、後のトラブルや裁判になった場合の証拠としての価値があります。
捺印は、合意内容が正確に記録されており、当事者間で合意されたことの証拠として強い力を持ちます。トラブルが発生した場合、記名・捺印がされた契約書は、裁判などで重要な役割を果たします。
割印は、契約書が複数ページからなる場合、ページにまたがって割印を施すことで後からページが入れ替えられたり、不正に改ざんされたりすることを防ぎます。これにより、契約書の全ページが当初の合意通りであることを証明できます。
郵送や電子契約でも対応できる
契約書の渡し方に法的な決まりはありません。事前に相手に確認して合意を得られれば、郵送でも問題なく、実際に郵送されているケースも多いです。ただし、マナー的な観点から見ると、相手企業へ持参して手渡しする方法が最も丁寧とされています。
また、営業代行における業務委託契約は電子契約も可能です。電子契約であれば印紙が不要で、印刷代や人件費の削減にも繋がります。また、契約締結後の契約書は電子データで保管するため場所を取りません。
電子契約で締結した契約書を保管する際は、電子帳簿保存法の要件をよく確認し、満たすよう注意しましょう。
テンプレートを活用する
営業代行における契約書を自社で作成する場合、記載内容の漏れや間違いが発生すると後々のトラブルに繋がる恐れがあります。しかし、多くの場合、契約書に記載する内容は膨大で、ミスに気がつかないまま契約を進めてしまうケースも見受けられます。
このような場合に便利なのが、テンプレートの活用です。契約書の雛形を自社用にカスタマイズして使用することにより、情報の漏れや記載ミスを減らせます。テンプレートは、インターネット上で無料で公開されているものもあるため、活用してみましょう。
まとめ
営業代行の契約書締結は、契約の透明性と双方の合意が基本です。契約書は必須ではないものの、営業活動を代行するサービスの範囲・期間・費用・情報取扱いなどの詳細を明確に記載することで、トラブルを防ぎます。
営業代行における契約書には、すべての取引に共通する「基本契約書」と個別の取引の内容を定める「個別契約書」があります。成果報酬型契約では、成果や報酬の計算方法を個別契約書で定め、変更が生じた際にはこの個別契約書のみの更新で対応が可能です。
契約書締結の流れでは、可能な限り不明点がないよう詳細に取り決めを行うことが大切でう。収入印紙・契約日など、取扱いの注意点も押さえておきましょう。委託側・受託側の双方にとって、透明性の高い契約書作成のために本記事の内容を役立ててください。
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