勤怠管理における適切な休憩時間の取扱について|ルールや管理方法も解説

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  • 企業は、従業員に適切な休憩時間を付与しないと、労働基準法に違反する
  • 休憩管理を適切に行わないと、従業員の健康やコンプライアンスを守れない可能性がある
  • 適切な休憩時間の管理には、勤怠管理システムの導入が有効である

勤怠管理における休憩時間には、休憩時間の3原則が存在します。従業員への適切な休憩時間の付与は、労働基準法で定められており違反すると罰則が科されます。本記事では、勤怠管理における適切な休憩時間の管理について分かりやすく解説していきます。

目次

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  1. 正しい勤怠管理のための「休憩時間の定義」
  2. 休憩時間の3原則とは
  3. 休憩時間を管理しないリスク
  4. 勤怠管理における適切な休憩管理のポイント
  5. 適切な休憩管理には勤怠管理システムを導入する
  6. まとめ

正しい勤怠管理のための「休憩時間の定義」

厚生労働省の労働基準法第34条の規定により、休憩時間の定義として「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」とされています。

 休憩時間はどんなタイミングでも、小分けで休憩を取るのも、法律的に支障はありません。ただし、休憩時間は思い思いに過ごせるようにする必要があり、就業規則の規定を守りながら、休憩を取ることができます。

原則として、休憩は事業単位で同時に取る必要がありますが、労働組合や労働者の過半数の書面がある場合は分散での休憩も可能です。ただし、サービス業や運送業など、途中休憩が難しい業種の場合は、労使協定の締結で一斉休憩を取らなくてもいいとされています。

参考:労働基準法( 昭和22年04月07日法律第49号) – 厚生労働省

休憩時間の3原則とは

休憩時間についても、労働基準法で厳格な規定があります。万が一、会社側が法律通りの休憩時間を提供しているとしても、提供方法を誤ると、正式な休憩とは認められません

その場合は、違法となるため罰則対象に該当します。労働者が休憩を取る場合に、会社側が守るべき3つの原則を紹介しましょう。

休憩時間の3原則①休憩中は労働から解放されること

休憩時間中は、労働から解放されることが原則です。これは意外にも厳守されていないケースもあるのではないでしょうか。

例えば、お昼の休憩中に、職場で弁当を食べながら電話番もするといった行為は、職場で電話番といった労働を継続していることになるため、正式な休憩とは認められません。

また、来客に備えて休憩時間中も休みなく職場で待機するといった行為も、基本的に違法です。しかし、職場内で自由に休憩できると定められている場合だと違法にならないケースもあります。

参考:労働基準法 第19条 労働時間及び休憩時間|e-Gov法令検索

休憩時間の3原則休憩時間は労働時間の途中に付与すること

労働で疲れた心身をリフレッシュさせ、無理のない労働を継続するために、休憩は法律で義務づけられています。そのため、労働時間の途中に休憩を与えないと、本来の目的にそぐわなくなります。

と言っても、休憩を取る時間については特に制約がないため、ぴったりと昼の12時に休憩を与える必要はなく、労働時間の途中であれば職場の事情に応じて、休憩の時間を設定しても問題はありません。

しかし、始業後あまり時間も経過していない時間に休憩を与えるといった行為では、この原則の目的を満たすことは難しいため、ある程度の常識範囲内で行政や専門家に確認をとりながら、実際の休憩時間を定める必要があるでしょう。

休憩時間の3原則休憩時間は一斉に付与すること

国が定める労働基準法第34条第2項において、休憩は労働者に対して一斉に与えなければならない旨が規定されています。例えば、同じ部署に属する5人の従業員に順番に休憩を取らせるような行為は違法行為です。

しかし、業種によっては一斉付与が難しいため、企業と従業員の間で締結する労使協定や就業規則で提示することで変則的な休憩時間の設定も可能です。

ただし、運輸交通業・商業・金融業・広告業・映画業・演劇業・通信業・保健衛生業・接客娯楽業・官公庁などの事業については、労使協定を取り交わさなくても、労働者に対して順番に休憩を与えられます

休憩時間の原則:例外①

運輸交通業通信業
商業保険衛生業
金融広告業接客娯楽業
映画・演劇業官公署

以上の業種については、労使協定を締結しなくても休憩の一斉付与から除外されます。
参考:休憩(第34条) 休日(第35条) | 愛媛労働局

休憩時間の原則:例外②

例外①の業種に該当しない場合でも、労働者と使用者間で労使協定を結ぶことで一斉に休憩を付与しないことが認められます。稼働率等を考慮し、時差休憩を採用する際は、「一斉に休憩を付与しない理由」「新設される休憩の時間」「対象者の範囲」などの詳細を定める必要があります。

休憩時のタイムカード打刻は必須ではない

休憩時間の打刻に関しては、現状法律では定められていません。ですが時給制の場合、休憩時間には給料が発生しないため、どれだけ休憩したのかは正確に把握しなければなりません。タイムカードの打刻が必須でなくとも、しっかり休憩を取ったかの確認は必要となります。

休憩時間を管理しないリスク

平成29年に制定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に、労働時間を把握するために企業が講じなければならない措置として、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」の記載があります。

つまり、始業・終業時刻の記録・保存と違って休憩時間を正確に記録する義務はないが、適正な管理ができていないとさまざまなリスク発生が考えられます。ここでは、休憩を管理する必要性を理解するためにも、3つのリスクを解説します。

参考: 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省

従業員が健康を害する恐れ

労働時間が、6時間・8時間と規定されていたとしても、絶え間なく仕事を続けたら、心身ともに疲労が蓄積してしまいます。結果として、業務効率が低下するだけでなく、作業中の事故発生のリスクや、労働者が過労性の健康障害を誘発する恐れもあります。

休憩は作業から解放される時間として、心身をリフレッシュし、集中力を高める効果があるため、一定の労働時間を超える場合は休憩が不可欠です。従業員の健康・企業の業績向上のためにも、勤怠管理による休憩時間の管理は重要です。

労働基準法違反として罰せられる

労働条件によって定められた休憩時間を従業員に与えることは、企業側の義務と規定されています。万が一、違反した場合は、「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労働基準法第119条)」が課されます。

故意に与えていなかった場合、休憩状況の把握ができていなかった場合であっても、同じように処罰されるため注意が必要です。企業側が休憩状況の把握に務めるだけでなく、従業員にも必ず休憩を促すようにしましょう。

参考:労働基準法 第13章 罰則|e-Gov法令検索

コンプライアンスに反する

労務コンプライアンスとは、企業が法令を遵守したうえで労務管理を遂行することを指します。労働基準法・最低賃金法・男女雇用機会均等法など、さまざまな労務に関する法律が制定されており、企業側はそれらに決められた内容を厳守する義務があります。

休憩時間中の労働・休憩時間の付与方法など、休憩に関連する解釈のずれが原因で、使用者と労働者の間でトラブルに発展するケースも少なくありません。

労務コンプライアンスが確立されているかどうかは、企業の信用につながります。労務コンプライアンス違反を防ぐためにも、企業側は従業員の労働時間を把握し、適正な労務管理をしなければなりません。

勤怠管理における適切な休憩管理のポイント

勤怠管理において、休憩時間がきちんと取れているかどうかを把握することは、働きやすい環境整備だけでなく、労務コンプライアンスの視点からも重要です。 しかし、現実には、従業員一人ひとりの休憩時間を正確に掌握するには課題が残ります。

そこで、企業として留意しなければならない勤怠管理における休憩時間のルール・注意点・管理方法を解説します。

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休憩と認められないケースについて

業務に追われている労働者の中には、昼食中におにぎりやパンを食べながら、仕事を続けるといった方もいるかもしれません。

しかし、労働基準法第34条3項では、企業側が労働者に対して休憩時間を自由に取らなければならないことが定められており、休憩中は仕事から完全に離れる必要があります。

例えば、休憩中に電話番をしてもらうといった簡単な作業であっても、基本的に厳禁といえます。こういった場合は休憩時間を付与したとは認められず、労働時間として賃金の支払いが必要になります。

時短勤務者の休憩時間について

国の労働基準法第34条で、「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定められています。

 これを基準に解釈すると、時短勤務で6時間働いている場合の休憩時間はなしでも支障はありません。なぜかと言うと、6時間以上ではなく6時間を超えた場合と定められているからです。6時間丁度で勤務を終えるのであれば、法律上休憩はなくても良いとされています。

とは言え、働きやすい職場環境を作っていくうえで、適度の休憩時間は必要でしょう。

参考:労働時間・休憩・休日関係|厚生労働省

休憩時間中に仕事を依頼しない

休憩時間は、労働者が労働から完全に開放される時間である必要があります。そのため、電話応対や来客対応などの業務であっても、休憩時間にこれらの業務を強制できません

もし、強制した場合は、企業側は労働者に給与を支払い、必要であれば時間外手当も支払ったうえで、別途休憩時間を労働時間内に与えなければなりません。やむを得ず電話応対や来客対応の人手が必要な場合は、休憩時間をシフト制にするなどの工夫をしましょう。

原則休憩時間中は従業員の自由である

従業員の休憩時間の過ごし方については、原則として従業員の自由であるとされています。そのため、休憩時間中の従業員の行動を制限できません。ただし、これらの自由は、一般的に見て常識的な範囲内での自由です。

例えば、休憩時間内に帰社できないような遠出や飲酒などは、避けなければならない行為と言えます。また、社内の規律を保持するために必要であると判断された場合、例外として会社側は制限を加えることが可能です。

一例として、休憩時間中の政治活動を禁止するのは正当な行為です。政治活動は、企業の施設管理を妨げたり、従業員間の対立を誘発したり、ほかの従業員の休憩の自由を妨げたりする恐れがあるためです。

規定を満たしていれば残業中の休憩は不要

休憩時間の必要条件は、1日の労働時間の長さで決まります。そのため、残業の必要があった場合、例外なく休憩時間を別に与えなければならないといった訳ではありません。

例えば、所定就業時間が1日3時間の従業員に1時間の残業を命じた場合、労働時間の合計は4時間のため、残業中の休憩は不要です。

同じように、6時間就業し45分の休憩をすでに取った従業員に1時間の残業を命じても、合計の労働時間は7時間のため、プラスして休憩時間を与える必要はありません。

休憩は分割しても良い

6時間以上の就業に対して付与しなければならない休憩時間は、一括・分割のどちらでも構いません。例えば、労働時間が8時間を超える従業員に対し1時間の休憩を与える場合、30分を2回にしたり、45分と15分などに分けたりして与えることも可能です。

 また、残業によって必要な休憩時間が変化する場合もあります。例えば、所定就業時間が8時間の場合は、45分の休憩で支障がありません。ただし、1時間の残業を命じた場合は、8時間以上の就業となるため、別に15分の休憩時間を労働時間内で与える必要があります。

適切な休憩管理には勤怠管理システムを導入する

勤怠管理システムでは、従業員の就業時間に対応して休憩時間が自動で割り出されます。そのため、休憩前後の打刻が不要なため、申請承認の担当管理者だけではなく、従業員の工数を軽減できます。

また、勤怠管理システムは、クラウドやサーバ上で従業員の勤怠情報を管理します。そのため、CSV形式で情報を保管することができ、勤怠管理・給与管理など従業員の情報がオンライン上で一元管理できます。

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正確な休憩時間の算出ができる

正確な給与計算を行うのに、労働時間・勤務時間・休憩時間を記録しておいて、集計をする必要があります。勤務時間の定義は、出勤時刻から退勤時刻までの時間です。労働時間は、勤務時間から休憩時間をマイナスすることで割り出されます。

企業は、労働基準法第34条により、労働時間が 6時間を超えた労働者に休憩を与える義務があります。付与する休憩時間は、労働時間が 6時間を超え8時間以下の場合は最低45分、8時間を超える場合は最低60分と規定されています。

変形労働にも対応できる

変形労働時間制とは週単位の平均労働時間が40時間を超えなければ、1日の労働時間が8時間を超えても残業としない制度を指します。しかし、残業としないといった誤解により、変形労働時間制においての正しい運用が理解されていない場合もあります。

最近では、変形労働時間制・フレックス・裁量労働制など、さまざまな働き方が要求されます。そこで、煩雑化する勤怠管理を効率化するために、ぜひ、勤怠管理システムの導入をおすすめします。法に基づいた残業代の計算や正確な労働時間の把握などが可能です。

勤怠管理の業務が効率化できる

タイムカードでの勤怠管理を行っていると、月末に各拠点からタイムカードを取り集めて打刻漏れをチェックし、必要であれば従業員に確認をしたうえで打刻漏れを修正して集計するといった、労働時間の集計から給与計算の完了までにかなりの時間と労力を要します。

また、人による作業のため、ヒューマンエラーが発生するリスクが残ってしまいます。そこで、勤怠管理システムを採用すれば、打刻漏れの軽減が可能で、集計はワンクリックで完了するため、管理の手間や作業のミスをなくし、全体的な業務効率の向上に期待ができます。

労働基準法に即した管理が行える

労働時間をはじめとした労働に関する法改正は、しばしば実施されます。特に、政府から働き方改革が推奨されている現代においては、今後も一定の法改正が行われるものと推測されます

新たな法改正が施行されれば、勤怠管理の内容も法律に合わせて正しく変更しなければなりません。勤怠管理システムは、アップデートを行うことで法改正後の内容に自動で対応してくれるため、手間をかけて内容変更を行う必要がありません。

労働基準法に合わせた勤怠管理とは?重要性や法律上のルールを解説

労働基準法に合わせた勤怠管理には、従業員の労働時間の正確な管理や法改正に伴う迅速な把握・対応が必要不可欠です。本記事では、労働基準法に合わせた勤怠管理の重要性や勤怠管理に関わる法律上のルール・勤怠管理システムの活用についても分かりやすく解説します。

まとめ

従業員に適切な休憩を与えることは、従業員の健康・業績・適切な労務管理において、とても重要です。休憩時間の管理は、休憩中は労働から解放されること・休憩時間は労働時間の途中に付与すること・休憩時間は一斉に付与すること、など一定ルールがあります。

また、休憩時間中に仕事を依頼しない・原則休憩時間中は従業員の自由・規定を満たしていれば残業中の休憩は不要・休憩は分割しても良い、などの注意点も多く、すべてを正確に把握するのは難しい面もあるでしょう。

そこで、注目していただきたいのが、従業員の工数を削減できる勤怠管理システムの導入です。勤怠管理システムを活用し、正確な休憩時間の管理を行いましょう。

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