勤怠管理システムの利用料の勘定科目は?仕訳方法をわかりやすく解説

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  • 勤怠管理システム利用料の勘定科目は、導入形態によって通信費か消耗品費に分けられる
  • 勤怠管理システムは、10万円以上などの条件によって無形固定資産として資産計上する
  • 勤怠管理システムのサポート料金は、勘定科目のルールがないため解釈で使い分ける

勤怠管理システムの利用料における勘定科目は、導入形態によって異なります。クラウド型とインストール型があり、減価償却の対象か否かでも勘定科目が変わります。本記事では、勤怠管理システムの導入形態による勘定科目の違いや、仕訳方法をわかりやすく解説します。

目次

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  1. 勤怠管理システムの勘定科目は
  2. クラウド型勤怠管理システムの勘定科目
  3. インストール型勤怠管理システムの勘定科目
  4. 勤怠管理システムのサポート料の勘定科目
  5. まとめ

勤怠管理システムの勘定科目は

近年では、働き方改革の一環として厳格な勤怠管理が重要になってきたことから、勤怠管理システムを導入する企業も増えています。勤怠管理システムの多くは、設置料や利用料が発生しますが、その費用を経費計上する場合、勘定科目をどうするのか迷うかもしれません。

そんな勤怠管理システムの勘定科目は、クラウド型かインストール型かによって変動します。ここでは、勤怠管理システムの勘定科目の考え方について、詳しく解説していきます。

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勘定科目に法的なルールはない

そもそも勘定科目とは、出し入れしたお金の見出し・付箋のようなものです。例えば、支出の場合は「お金を何に使ったのか」、収入の場合は「どんなことでお金を得たのか」を簡潔に表すための見出しが勘定科目です。

勘定科目は次の5つのグループで構成されています。

  1. 資産:会社が有する財産
  2. 負債:会社が有する負債
  3. 純資産:会社が有する財産と負債の差額
  4. 収益:事業で得た収入
  5. 費用:収益のためにかかった支出

金銭に関わる何かを経費計上する場合は、その性質にあわせて、まず上記の5グループのどれかに仕訳します。グループ分け後は、支出・収入の内容をより分かりやすくするために、さらに細かい見出し(勘定科目)の設定が必要です。

各グループの中での勘定科目の設定方法に、法的なルールや制限はありません。また、勤怠管理システムに限らず、収入・支出の見出しは自由に設定して構いません。

勘定科目は基本的な決まりに則って設定する

法的なルールや制限はないとしても、入力者が自由に勘定科目を設定すると、経理担当者以外が確認したときに、一体それが何を表すのか分からなくなる場合があります。そして、会社の財政状況の把握が難しくなり、税務調査で問題視される可能性が高くなります。

そのため、勘定科目はある程度、一般的な決まりに則って設定することがほとんどです。例えば、オフィスの電気代は「光熱費」という勘定科目での仕訳が一般的です。

また、勤怠管理システムの費用・利用料を仕訳する場合、勘定科目は通信費・消耗品費などで仕訳する会社が多いです。その際、通信費・消耗品費のどちらで仕訳すべきかは、勤怠管理システムの性質によって異なります。

参考:帳簿の記帳のしかた|国税庁

クラウド型かインストール型で分かれる

勤怠管理システムの利用にかかる費用の勘定科目は、使用するタイプ別、クラウド型・インストール型で次のように区別することが一般的です。

  1. クラウド型:通信費
  2. インストール型:消耗品費

それぞれの考え方について詳しくは後述しますが、クラウドサービスを利用したクラウド型は通信費を勘定科目として使用します。また、買い切りのソフトウェアを購入して、パソコンにインストールして使うインストール型は、消耗品費を使うのが一般的です。

タイムレコーダーなどの機器は減価償却の対象

勤怠管理システムには、タイムレコーダーや専用の読み取り機器などのハードウェアを必要とするものもあります。ハードウェアを購入し、かつ購入費用が10万円を超える場合は「無形固定資産」として資産計上できます。つまり、減価償却の対象となります

なお、減価償却の対象にはハードウェアだけでなく、ソフトウェアも含まれます。例えば、10万円以上のインストール型の勤怠管理システムソフトを購入する場合も、その費用は減価償却の対象になります。

システムの形態によって減価償却の対象が変わる

減価償却とは、事業のために高額な資産を購入する場合、その費用(取得価額)を個々の設定された耐用年数に合わせて、数年に分けて経費計上する方法です。資産価値が年々下がっていき、かつ金額が10万円以上で1年以上使用できる資産が減価償却の対象です。

ハードウェアや買い切り型のソフトウェアは、時間の経過と共に資産価値が下がるため、減価償却の対象になります。

一方、月額費用や年額費用を支払って使用する、クラウド型の勤怠管理システムの場合、資産を自社で保有するのではなく、サービス提供者に一定のお金を支払って借りる形になります。そのため、資産価値に関係なく、減価償却の対象にはなりません。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

参考:耐用年数(器具・備品)(その1)|国税庁

クラウド型勤怠管理システムの勘定科目

勤怠管理システムの中でも、クラウド型の勤怠管理システムの仕訳における勘定科目は、通信費とすることが一般的です。ここでは、勘定科目の考え方や仕訳方法を解説します。

クラウド型は「通信費」

クラウド型の勤怠管理システムは、インターネットに繋いだクラウド上で勤怠管理を行うものです。使用する場所を限定することなく、インターネット環境があれば、PCや端末などにも制限されることなく使用できます

つまり、形のあるものに対して費用を支払うわけではなく、クラウド型の勤怠管理システムにかかるコストは、インターネットの使用料が主となります。そのため、システム運用にかかる費用・ランニングコストは、通信費とすることが一般的です。

クラウド型の仕訳方法

クラウド型の勤怠管理システムにおける運用費用は、全額経費計上できます。年間契約で数年間分を一括で支払う場合もありますが、月額費用を支払う場合は、一月の利用料を毎月経費計上する必要があります。

例えば、月額費用を支払う場合の仕訳では、月額料金の支払時に、その金額を通信費として記帳しましょう。仕訳例は次の通りです。

【クラウド型勤怠管理システム月額5千円を、6月1日に支払う場合】

日付借方貸方概要
6月1日通信費:5,000円普通預金:5,000円クラウド型勤怠管理システムの利用料

インストール型勤怠管理システムの勘定科目

インストール型の勤怠管理システムは、消耗品費として仕訳するのが一般的です。その理由や仕訳方法について、以下で解説します。

インストール型は「消耗品費」

インストール型は、ソフトウェアを購入して、自社のパソコンにインストールして使用する方法です。いわゆる、クラウドサービスを利用しない買い切り型にあたります。

一度購入したものを日々消耗していく、という考え方であるため、仕訳は消耗品費とするのが基本です。なお、ソフトウェアの購入は、店頭だけでなく、インターネット上でダウンロード購入した場合も含まれます。

また、インストール型の勤怠管理システムの取得価額には、ソフトウェアの代金だけでなく、環境設備や人件費も含まれます。それらを含めた価格が、10万円未満か10万円以上かによって、仕訳の方法が異なる点にも留意してください。

インストール型の仕訳方法

購入価格が10万円未満のインストール型勤怠管理システムにかかる費用は、すべて消耗品費として経費計上できます。

ソフトウェアの購入時に、購入にかかった代金の総額を消耗品費として仕訳しましょう。仕訳例は次の通りです。

【インストール型勤怠管理システムの購入代金4万5千円を、6月1日に支払う場合】

日付借方貸方概要
6月1日消耗品費:45,000円現金:45,000円インストール型勤怠管理システムを購入

10万円以上の場合は資産計上が必要

10万円以上する、インストール型の勤怠管理システムを購入する場合は、「無形固定資産」として資産計上しなければなりません。そして、減価償却の処理も必要です。

なお、資産計上の際は、取得価額にあわせて、一括償却資産の特例や中小企業の特例を利用できることもあります。それぞれの内容を解説します。

参考:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

参考:No.5461 ソフトウェアの取得価額と耐用年数|国税庁

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一括償却資産の特例

一括償却資産とは、10万円以上20万円未満の減価償却資産を3年間で一括償却する方法です。3年間の均等償却をもって減価償却を完了できます。

10万5千円の資産を購入し、一括償却資産の特例を利用する場合の仕訳の例は次の通りです。

【インストール型勤怠管理システムの購入代金10万5千円を、6月1日に支払う場合】

日付借方貸方概要
6月1日一括償却資産:105,000円普通預金:105,000円インストール型勤怠管理システムを購入

決算処理の際は、3年間で減価償却を行う点に留意してください。数値は取得価額の総額の1/3で、今回の例でいえば10万5千円÷3=3万5千円となります。

仕訳例は次の通りです。

【インストール型勤怠管理システムの購入代金10万5千円を、3年で割って12月31日に支払う場合】

日付借方貸方概要
12月31日減価償却費:35,000円一括償却資産:35,000円インストール型勤怠管理システムの減価償却

中小企業の特例

中小企業の特例とは、中小企業が30万円未満の資産を購入した場合に、その費用を消耗品費として全額経費計上できる制度です。少額減価償却資産の特例とも呼ばれています。

なお、対象となる中小企業の定義は、青色申告者であり、資本金1億円以下かつ常時使用の従業員の数が1千人以下の法人などを差します。

10万5千円の資産を購入し、中小企業の特例を利用する場合の仕訳の例は次の通りです。

【インストール型勤怠管理システムの購入代金10万5千円を、6月1日に支払う場合】

日付借方貸方概要
6月1日消耗品費(償却不要):105,000円現金:105,000円インストール型勤怠管理システムを購入

中小企業の特例を利用する場合は、資産ではなく消耗品費として計上するため、減価償却は不要です。さらに、年度末の仕訳も発生しません。

勤怠管理システムのサポート料の勘定科目

勤怠管理システム運用の際は、クラウド型・インストール型を問わず、運営元からサポートを受けることがあります。例えば、システムの導入・環境整備などが代表的です。

そんな、サポートを受ける際に発生するサポート料は、経費計上できます。サポート料の勘定科目にも明確なルールはないため、その費用をどのように解釈するかで仕訳しましょう。

一般的な勘定科目と解釈の仕方は次の通りです。

  1. 運営元への報酬と解釈する場合:支払手数料
  2. ソフトウェアの購入費用とあわせて計上する場合:消耗品費
  3. サポートのために、サービス会員となって会費を支払うと解釈する:諸会費

導入費用や月額料金に含まれている場合

クラウド型のシステムの場合は、月額料金にサポート料が含まれている場合があります。この場合、サポート料は通信費に含めて仕訳することができます。

また、インストール型のシステムにおいて、ソフトウェアの購入費用に、導入・システム設置・環境整備などのサポート料が含まれている場合は、その費用は消耗品費やソフトウェアの勘定科目で仕訳できます。

まとめ

勤怠管理システムの導入・運用で発生する費用は、クラウド型ならば通信費、インストール型ならば消耗品費の勘定科目での仕訳が一般的です。なお、インストール型で取得価額が10万円を超える場合は、資産計上・減価償却処理をしなければなりません。

勤怠管理システムを導入すれば、従業員の労働時間の正確な把握、給与計算、健康状態などを自動で適切に管理できます。特に、働き方改革が進む現代では、労働時間の適切な管理は企業の重要課題となっています。

勤怠管理システムは、経費計上における勘定科目がやや複雑ですが、得られるメリットはそれ以上に大きいでしょう。的確かつ効率的な勤怠管理のためにも、ぜひ導入を検討してみてください。

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