MDFとは?PBXとの違いや関連設備、工事における注意点も解説

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  • MDFとは建物の主配線盤のことであり、PBXは複数の電話回線を集約する交換機を指す
  • オフィス開設時には、PBX・MDF・IDF・EPSといった用語を理解しておく必要がある
  • 回線工事の際は事前にMDF室解錠の手配を行い、余裕を持ったスケジュールを組む

オフィスを開設・移転する際には、電話やインターネット回線の整備が必要です。工事を適切に進めるために、PBX・MDF・IDF・EPSといった用語を理解しておきましょう。この記事では、MDFとは何か、PBXとの違い、関連設備や工事の際の注意点などを解説します。

目次

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  1. MDFとは
  2. MDFとPBXの違い
  3. MDFの関連設備
  4. オフィス開設の際は各設備の違いを理解しておく
  5. 回線工事におけるMDFに関する注意点
  6. まとめ

MDFとは

MDF(Main Distributing Frame)は、オフィスビルやマンションなどの集合施設の通信回線を整備・管理する集線盤です。MDFは通常、ビルの共用部や管理人室に設置されていることが多く、一般的にビルのオーナーが管理します。

MDFは、外部の通信サービスプロバイダーやネットワークインフラストラクチャーと接続される装置として使用されます。外部からの通信回線がビル内のMDFに接続され、そこから各フロアや部屋に分配されます。

MDFは、フロアごとなどビル内の異なる場所に張り巡らされている電話線、データケーブル、光ファイバーなどの複数の通信回線を集約し、所定の場所で分配します。そのため、ビル内の通信インフラが整理され、外線や内線同士の効率的な通信が可能となります。

MDFとPBXの違い

MDFと似た役割をもつ装置として、「PBX」があります。PBX(Private Branch Exchange)は、企業や組織内で電話通信を管理し、制御するための通信システムです。

PBXは主にオフィスビルやコールセンターなどに設置され、外部の電話ネットワークとしての公衆交換電話網やVoIPネットワークなどと企業内の内線とを接続し、受信した通話を組織内の拠点や担当者の内線電話に接続したり、内線同士を繋げたりします。

MDFとPBXは通信回線を制御するという点では似ていますが、PBXは企業内の内線電話業務をコントロールするものなので、建物全体の通信回線を管理するMDFとは全く異なる役割を持っています。

PBXとは?メリット・デメリット、機能などをわかりやすく解説

PBXとは、企業内の電話交換機を意味し、複数の電話回線を集約して、内線同士や外線と内線の接続をコントロールするシステムです。PBXには3種類あり、コストやメリットなどが異なります。本記事では、PBXの選び方や種類ごとのメリット・デメリットを解説しています。

PBXの種類

PBXには、レガシーPBX、IP-PBX、クラウドPBXの3タイプがあります。役割は同じでも、企業のニーズに合わせて導入形態を選ぶことができます。

種類特徴
レガシーPBX従来型のPBXで、専用装置を設置して電話線同士を接続し、内線システムを構築
IP-PBXインターネット回線を利用して内線システムを構築
クラウドPBXクラウド上に構築されたPBXで、インターネットを介して利用可能

MDFの関連設備

建物内の回線を管理するために、MDFと合わせて「IDF」や「EPS」といった設備が使われることもあります。それぞれどのような役割をもっているのか、解説していきます。

IDF

IDF(Intermediate Distribution Frame)は、日本語では「中間配電盤」と呼ばれています。MDFと同様に、通信ネットワークやデータネットワークなどの通信回線を集約し、管理・中継するための装置です。

MDFはビル全体の通信インフラを管理するため、広範囲の回線が集約されます。一方、多くのIDFはフロアや部屋間に設置され、MDFよりも限定的な範囲の通信回線を管理します。そのため、小規模なビルには設置されない場合もあります。

EPS

EPS(Electric Pipe Shaft/Space)、電気配線シャフトのことを指します。電気や通信などの配線や配管を通すために、建物の最上階から最下階までフロアを貫いて設けられた縦穴やシャフトのことです。

EPSは、主に電気室の真上に設けられていることが多く、分電盤やMDFから各階に電気・通信回線を配線する場合に使用されます。

大きいビルでは、各フロアにEPSにアクセスするEPS室があり、IDFが設置されています。EPS室からさらに各フロアへ分配されており、配線工事などの作業の際は入室することになります。

オフィス開設の際は各設備の違いを理解しておく

オフィスを新規に開設したり、移転したりする際には、電話やインターネット回線の整備が必要です。入居するオフィスビルの工事を適切に進めるためには、上記で解説したPBX・MDF・IDF・EPSといった各設備について理解しておくことが重要になります。

これらの用語を理解しておくことで、工事を依頼する業者との会話がスムーズになり、工事の内容が把握できるようになります。また、工事に際して依頼側として何が必要で、何を用意すべきかが前もって分かります。

PBXやIDF、EPSに関しては、そもそも存在するどうか(必要かどうか)もオフィスや建物によって異なりますので、事前に用語を理解しておくことで通信構造の全体像を理解したり、PBXが新たに必要かどうかなどを判断しやすくなったりします。

回線工事におけるMDFに関する注意点

オフィスビルなどに入居する際に必要となる回線工事ですが、その際には集線盤であるMDFにもアクセスしなければいけません。しかし、工事においてはMDFに関して注意すべき点がいくつかあります。ここからは、その注意点について解説します。

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MDFに空きがあるか確認しておく

ビル内での回線工事やMDFの設置を検討する際、MDFに十分な空きがあるかどうかを確認することは非常に重要です。特に、多数のテナントが入っているビルの場合、MDFの容量が限られていることがあるため、新しい回線や通信機器を追加する前に確認しましょう。

オフィスビルでは、通常入居するテナントが一定の通信設備を備えられるようなMDFが設置されているのが基本です。しかし、他のテナントの利用状況によってはMDFに空きがない場合があり、配線工事が行えない可能性も考えられます。

そのため、事前に空き状況をしっかり確認し、対応や対策を行うことが必要です。

MDF室の解錠を手配しておく

MDF室とは、MDFが設置されている部屋のことです。MDFビルの資産であるため、MDF室はビルの管理者によって施錠されていることが多いです。そのため、工事でMDFへのアクセスが必要な場合は、工事する時間帯の解錠を管理者に依頼しましょう。

MDF室に入る許可が下りておらず解錠されていない場合は、後日再工事となり、追加費用が発生してしまいます。また、工事内容によっては長期間延期され、業務に大きな支障を及ぼすことにもなります。そのため、確実に事前依頼をすることが重要です。

なお、名称はMDF室ではなく「通信機械室」や「電気機械室」となっていることもあり、MDF室がどこにあるのかも建物によって異なりますので、きちんと確認しておきましょう。

余裕をもったスケジュールを組む

回線工事やMDFの設置には、予期せぬ問題や障害が発生することがあり、予想以上の時間を要するケースがあります。そのため、技術的な課題や問題に対処するための時間を見込んで、余裕のあるスケジュールを組むことで不測の事態にも対応できます。

また、IDFから占有スペースまでの配管がスムーズに行えるかどうかの確認も重要です。事前に施工業者と一緒に占有スペースまでの配管の有無や状態を確認することで、不必要な遅延や追加工事を防ぎ、計画通りに工事が完了できます。

特に古い建物は要注意

築年数の古い建物では、IDFから自社の占有スペースまでの配管がない、老朽化していて工事が行えないといった問題が見られがちです。こういったケースでは付帯工事が必要となり、追加費用が発生します。

そのため、特に古い建物に入居する場合は、配管工事の手配を行う前に現地調査を行っておくことが重要です。問題が見られるようであれば、付帯工事の手配を先に行いましょう。

「責任分界点」について理解しておく

責任分界点とは、通信回線などのインフラに関して、どの部分が誰の責任で管理されるかを定めたポイントのことを指します。

例えば、回線の障害が発生した場合に、それがユーザーの専有部分のトラブルなのか、MDFなどのビルが管理するインフラの問題、または通信業者側の障害かどうかによって、修理の責任や損害賠償の発生の有無などに関係してきます。

そのため、回線工事などを進める際は責任分界点を理解し、障害発生時などの責任の所在を明確にしておくことが重要です。

電話回線の場合

オフィスビルにおける電話回線の責任分界点は、外部の電柱からMDFまでの範囲が通信業者、MDF以降がビルのオーナーの責任が原則です。また、IDF以降のテナントの占有スペースまでの回線の敷設および、運用時の責任分界点はテナント側に移行します。

電話回線における責任分界点の理解とその明確な定義は、サービスの提供やトラブルシューティングの際に影響してきます。特に、ビルや建物内での複雑な電話インフラが共有されている場合には、十分な理解や注意が必要です。

光回線の場合

光回線の場合は、外部の電柱から専有部分の宅内ルーターまでが通信業者の責任分解点となり、それ以降の個々の機器への接続は、テナント側の責任分界点となります。

ビルのオーナーにははっきりとした責任分界点はありませんが、ルーターまでの配線の中で、配電盤や配電管の故障などについてはオーナー側で修理する責任があります。また、IDF以降の回線の敷設や保守の責任分岐点は、電話線と同様にテナント側にあります。

「MDFまで引込済」の意味を確認

オフィスの物件の紹介記事などに、インターネットの配線に関して「MDFまで引込済」といった記述をよく目にすることがあります。この意味は、ビル施設内のMDFまで回線が引いてある状態のことです。

そのため、MDFから先の回線など敷設に関しては、入居者側で工事を手配し、保守を含めて責任があるということになります。

まとめ

MDFとは、ビル全体の通信回線が集約される場所です。主に配線やコネクションポイントがあり、ビル内の各部署やテナントへの通信サービスがここから分配されます。電話通信を制御するPBXと混同されやすい設備ですが、この2つは全く異なる役割を持っています。

ビルにオフィスを開設する際は、電話やインターネット回線の整備が必要です。入居するビルの工事を適切に進めるために、MDFやPBX、IDF、EPSといった用語を理解して、回線敷設などの工事依頼を行い、スムーズな業務開始を心掛けましょう。

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