CMSの導入ステップ|導入形態別の手順・費用・注意点を解説

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  • CMSの導入形態にはオープンソース・パッケージ・クラウド・スクラッチ開発がある
  • CMSの導入費用は導入形態により異なり、クラウドCMS以外ではサーバー代もかかる
  • CMSは自社の目的に合った導入形態を選び、導入後の運用体制を整える必要がある

CMSにはオープンソース型・パッケージ型・クラウド型・スクラッチ開発といった導入形態があり、それぞれ特徴や導入手順は異なります。この記事では、これからCMSを導入する企業向けに、導入形態別のCMSの導入ステップや費用、導入時の注意点などを解説します。

目次

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  1. CMSとは
  2. CMSの導入ステップ
  3. CMSの導入費用
  4. CMSを導入する際の注意点
  5. まとめ

CMSとは

CMS(コンテンツ・マジネジメント・システム)とは、Webサイトの構築や更新を行うためのシステムです。CMSを利用すれば、Web開発に必要なプログラミングの専門知識がなくても、Webサイトやコンテンツを作成・管理・更新できます。

CMSには、オープンソース型・パッケージ型・クラウド型・スクラッチ開発などの導入形態があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

特徴
オープンソース型CMSのソースコードが無料で一般公開されているタイプ
【メリット】ライセンス費用がかからず安価に導入可能
【メリット】カスタマイズの自由度が高い
【デメリット】大規模なサイトには不向き
【デメリット】公式のサポートがない場合が多い
パッケージ型自社サーバーにソフトウェアをインストールするタイプ
【メリット】公式サポートを受けられる
【メリット】中規模・大規模なサイト向けの製品が多い
【デメリット】ライセンス費用がかかる
【デメリット】サーバーを用意する必要がある
クラウド型ベンダー(システム提供元)のサーバーを利用するタイプ
【メリット】自社サーバーを用意する必要がない
【メリット】低コストで簡単に導入しやすい
【デメリット】カスタマイズに制限がある場合が多い
【デメリット】ベンダーやインターネット環境に依存する
スクラッチ開発システムをゼロから開発するタイプ
【メリット】自社の要件に合わせて独自性の高いシステムを作れる
【デメリット】導入コストが高く、導入までの期間も長くなる可能性が高い

CMSを導入する場合、上記のような導入形態から、自社に適したものを選ぶことになります。本記事では、それぞれの導入形態における導入手順や導入費用などについて解説します。

CMSとは?導入のメリット・デメリットや選び方をわかりやすく解説

CMSとは、コンテンツ・マネジメント・システムの略称で、Webサイトの専門知識がない人でもコンテンツの編集・更新ができるシステムのことです。本記事では、CMSの概要・メリット・デメリット・選定ポイントなど、CMS導入を検討している方に向けて詳しく解説します。

CMSの導入ステップ

CMSの導入ステップは、導入形態ごとに異なります。ここでは、各形態別の導入ステップを解説します。

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オープンソース型の場合

オープンソース型CMSは、ソースコードが無料で一般公開されており、ユーザーが自由に利用や変更ができます。一般的に無料で利用できますが、導入においては、サーバーを用意したり、インストールを行ったりなど、以下のような手順で行う必要があります。

サーバー・ドメインを契約する

オープンソース型のCMSを導入するために必要なものとして、サーバーが挙げられます。サーバーとはデータを管理するコンピューターのことで、CMSにおいては、Webサイトを構成するテキストや画像などのデータを管理するために使われます。

サーバーを用意する方法には、自社でサーバーを立ち上げる方法とレンタルサーバーを契約する方法があります。初心者の場合は、低コストで運用負担が小さいレンタルサーバーがおすすめです。

以下の表にそれぞれの違いをまとめました。

サーバー概要
自社サーバー・サーバーを自社の権限で管理できるセキュリティ対策
・ハードウェアの選択
・カスタマイズが自由サーバーの構築
・運用のコストが高額サーバー管理には専門的な知識を持つ技術者が必要
レンタルサーバー・初期投資を低コストで抑えられる
・月額料金の相場は1,000円前後
・サーバーの提供者が管理を担当するため、運用負担が少ない
・プランによって特定の要件に対応できない場合がある

また、Webサイトの作成にはドメインも必要不可欠です。ドメインとは、Webサイトがインターネット上のどこにあるのかを判別するためのもので、「〇〇.com」のようにURLの一部分を構成します。

ドメインは、ドメイン取扱業者で取得することができます。登録や更新には、数千円程度の費用がかかります。

CMSをインストールする

サーバーを選ぶ際は、CMSツールの動作基準や動作条件に合っているかを確認しておくことが大切です。CMSの動作に適したサーバーが用意できたら、インストールを行います。

自社サーバーの場合、インストール後の設定を自社で行う必要があります。この設定には、SSL設定(暗号化によって情報を保護する)やドメイン設定などが含まれます。

レンタルサーバーの場合、サーバーによってこれらの設定を自動的に行ってくれるサービスを利用できることがあります。なお、インストールの詳細な手順は、サーバーによって異なるため、各社のマニュアルを参照しましょう。

テーマ・テンプレートを選ぶ

CMSには、デフォルトのテーマやテンプレートが用意されています。Webサイトの目的に合ったレイアウトや自社ブランドに合ったデザインを考慮し、適切なテーマやテンプレートを選ぶようにします。

テーマ・テンプレートがどれだけ用意されているかは、CMSツールによって異なり、数千種類のテンプレートが用意されている場合もあります。

納得できるテーマ・テンプレートがない場合や、独自のレイアウトやデザインを希望する場合は、カスタマイズも可能です。しかし、カスタマイズには、HTML・CSS・Javascriptなどの知識・技術が必要です。

初期設定・プラグインのインストール

Webサイトのレイアウトやデザインを決めたら、初期設定を行います。初期設定には、以下のような例が挙げられます。

  1. Webサイトのタイトル・ロゴの設定
  2. 背景やトップ画像の設定
  3. パーマリンク(Webサイトを構成する各ページに付与する固定のURL)の設定
  4. SEO設定(検索で上位表示を目指すための基本設定)
  5. プラグインのインストール

Webサイトの目的によって、CMSの機能を拡張したい場合があります。例えば、お問い合わせフォーム・会員登録・ECなどの機能をWebサイトに実装したい場合、専用のプラグインをインストールする必要があります。

パッケージ型の場合

パッケージ型のCMSは、既製品のCMSツールを自社サーバーにインストールして利用するタイプです。ライセンスを購入するため、初期費用が高額な傾向がありますが、オプションやサポートが充実している場合が多い点も特徴です。

パッケージ型は、付随するサービスやオプションによって導入手順が異なりますが、おおまかには以下のような流れになります。

  1. 導入目的の明確化・Webサイトのデザイン・必要な機能や操作性の洗い出し・管理チームの構成・予算などを決めておく
  2. パッケージ型CMSの選定
  3. 必要に応じてCMSツールの提供元に問い合わせ・ヒアリング・見積もりなどを依頼
  4. トライアル版がある場合は、利用を通じて機能や操作性を確かめる
  5. CMSツールや必要なプラグインを購入後、自社サーバーにインストール
  6. 設定や可能な範囲でカスタマイズを行う
  7. 必要に応じてサポートを受けながら、導入・運用を進めていく
  8. 導入効果を測定・評価する

CMSツールによっては、自社のニーズを反映させるために開発や高度なカスタマイズなどをオプションとして提供している場合もあります。その場合は、上記の手順「3」以降に、スクラッチ開発の導入手順が加わります。

パッケージ型のCMSは、自社サーバーを用意する必要があります。そのためサーバーを始めとするインフラ整備についても、上記の手順「1〜5」と並行して計画的に行う必要があります。

クラウド型の場合

クラウド型は、ベンダー(CMSツールの提供元)のサーバーにインターネットを介してアクセスし、システムを利用するタイプです。月額料金が発生しますが、導入費用を低コストに抑えられ、すぐに利用開始できる点が特徴です。

自社でサーバーを用意する必要がなく、保守管理やアップデートを行う必要もないため、コンテンツ制作に注力できる利便性の高さが魅力です。クラウド型の導入手順は以下の通りです。

  1. 導入目的の明確化・Webサイトのデザイン・必要な機能や操作性の洗い出し・管理チームの構成・予算などを決めておく
  2. クラウド型CMS・料金プラン・有料オプションなどの選定
  3. 必要に応じてベンダーに問い合わせ・資料請求などを行う
  4. トライアル版がある場合は、利用を通じて機能や操作性を確かめる
  5. 契約後、設定や可能な範囲でカスタマイズを行う
  6. 必要に応じてサポートを受けながら、導入・運用を進めていく
  7. 導入効果を測定・評価する

パッケージ型CMSと導入手順が共通しているところが多いですが、クラウド型CMSの料金プランはさまざまです。利用人数・利用できる機能・ページ数などで料金が異なる場合もあれば、料金プランに応じて利用できるサーバーのスペックが異なる場合もあります。

スペックによる料金プランの場合、例えば、1CPU(動作周波数0.8GHz相当)・メモリ1GBだと、複数の担当者が同時にWebサイトを更新するには不向きな可能性が高いです。Webサイトの規模や利用人数が多くなるほど、高スペックのプランを選ぶ必要があります。

このように、クラウド型CMSの料金プランはCMSの利便性に直結しており、Webサイトの目的や自社での管理体制に適したプランを選ぶことが重要です。

スクラッチ開発の場合

スクラッチ開発では、CMSをゼロから開発します。既製品のツールとは異なり、全機能やデザインを自由に開発できますが、開発費用は高額になる場合が多く、導入までに時間がかかります。

社内にWeb開発の技術・経験が豊富なエンジニアがいる場合は、自社で行うのも1つの選択肢になりますが、Web制作会社に依頼するのが一般的です。ここでは、スクラッチ開発における導入ステップを解説します。

1. 要件定義

要件定義とは、Webサイトの目的を踏まえ、CMSに必要な機能を明確にすることです。自社で開発を行う場合は社内の開発担当者と、制作会社に依頼する場合は制作会社と打ち合わせを重ねて、要件定義を行います。

以下に要件定義において、考慮すべきポイントを挙げます。

  1. Webサイトの目的に必要な機能
  2. Webサイトの管理に必要な機能
  3. 自社において何人のチームでCMSを利用してWebサイトを管理するのか
  4. 自社の担当者にとっての使いやすさ(エディタ機能・メニュー構造など)
  5. テーマやテンプレートのカスタマイズ性(レイアウト・色・フォントなど)
  6. SEO対策(URLのフォーマット・メタタグなど)
  7. セキュリティ対策(アクセス制御・SSLの利用など)
  8. データベースの設計
  9. 将来的な拡張性
  10. CMSでの編集がWebサイトにどのように反映されるか(表示するコンテンツ量や行間など)

上記のポイントはあくまでも概要であり、実際の打ち合わせでは、より具体的な話し合いを行うことが大切です。詳細に要件定義を行うことで、自社のニーズに合った開発が行われます。

2. デザイン設計・実装

CMSのスクラッチ開発は、フロントエンドとサーバーサイドの開発を同時に進めることが一般的です。フロントエンドとは、CMSの外観に関することであり、サーバーサイドとは、CMSのサーバー上での処理や機能に関することです。

フロントエンド・サーバーサイドの開発には、以下のような例が挙げられます。

フロントエンドサーバーサイド
・デザイン設計(色・フォント・行間など)
・エディタやページの表示・非表示
・作成・編集したデータを適切に処理する
・機能の実装
・データベースの構築
・セキュリティ対策

フロントエンド・サーバーサイドの開発後、両者を統合して、システム全体の動作を確認します。

デザイン設計や機能の実装などは、開発の各段階で確認をしっかり行い、ニーズと異なる場合は、早い段階で開発者に伝えることが大切です。これにより、無駄な工数を削減し、開発コストを抑えることができます。

3. テスト・Webサイトの公開

開発の最終段階では、運用を想定したテストを行いますが、テストにもさまざまな種類があります。以下にテストの例を挙げます。

種類概要
単体テスト各機能が個別に正しく機能するかを確認する
結合テスト各機能が正しく連携するか、互いに影響し合わないかなどを確認する
データ移行テスト既存のデータを新しいCMSに移行した際に、データの整合性が保たれ、動作に問題がないかなどを確認する
UAT(受け入れテスト)CMSを使用する自社の担当者が実際に操作して、機能・操作性・利便性などを確認する
Webサイトの動作確認Webサイトの動作状況・デザイン・バグや不具合の有無などを確認する

これらのテストを計画的に行い、問題がなければCMSを導入し、本格的にWebサイトを作成します。

十分なコンテンツを用意したらWebサイトを公開しますが、その際にはKPI(数値目標)を設定し、Webサイトの効果検証を行うようにします。ヒートマップやSEO分析などのWEB解析ツールを用いて、継続的にコンテンツの改善を図ることが大切です。

CMSの導入費用

導入形態ごとのCMSの導入費用の相場は以下の通りです。

導入形態費用
オープンソース型レンタルサーバー:月額1,000円程度 
ドメイン取得:数百円~数千円程度
パッケージ型ライセンス費用:50万~100万円
月額:1万~10万円
クラウド型導入費用:無料〜100万円
月額:数千円~数十万円 
※料金プランやオプションによる
スクラッチ開発要件定義の依頼:10万~50万円 
※自社で行う場合は人件費
設計の依頼:30万~100万円
機能実装の依頼:40万~300万円
運用の依頼:月額1万~3万円 
※自社で行う場合は人件費

上記の費用相場は目安であり、Webサイトの種類(ECサイト・ポータルサイトなど)や規模によって変わる場合があります。詳細な費用については、各ツールの提供元に見積もり依頼をして把握するようにします。

また、クラウド型以外は、自社でサーバーや必要な周辺機器を用意する必要があり、そのための費用もかかります。これもWebサイトの規模や管理体制によって、求められるサーバーのスペックが異なるため、費用が大きく異なります。

サーバーを始めとする機器の購入やネットワークの整備は、安く見積もっても数十万円はかかります。OSやソフトウェアのインストールなど、Webサーバーの構築にはさらに5万〜10万円程度かかります。運用保守費用は、サーバー構築費用の10〜15%程度が目安です。

CMSを導入する際の注意点

CMSの導入は、各導入形態の特徴を把握した上でツールを選定し、計画的に導入することが大切です。ここでは、CMSを導入する際の注意点について解説します。

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自社の目的や予算を明確にする

CMS導入の目的や予算を明確にすることは、必要な機能やWebサイトをどのように管理するのか方向性を明確にする上で重要です。目的や予算が明確であることによって、無駄な機能・無駄な工数などを削減し、コストを抑えることにもつながります。

CMSの各導入形態にはメリット・デメリットがあり、自社の目的や予算に合った形態のCMSを選ぶようにしましょう。

例えば、低予算でCMSを導入する場合、オープンソース型かクラウド型が選択肢として挙げられます。CMS導入の目的として業務効率を重視し、操作性や利便性を追求する場合は、カスタマイズの自由度が高いオープンソース型が推奨されます。

しかし、導入目的として、知識のない担当者でもWebサイトを効果的に編集・更新できることを重視する場合は、クラウド型が推奨されます。

これらはおおまかな例ですが、実際にはCMS導入によって、どのような効果を期待するのかKPI(数値目標)を設定することをおすすめします。費用対効果の高さに期待できるCMSを選ぶことが大切です。

セキュリティ対策が必要

CMSは、EC機能・会員登録機能・問い合わせなど、個人情報を扱う場合が多くあります。個人情報を扱わない場合でも、ウイルス感染によるサービス停止やWebサイトの改ざんなど、CMSはセキュリティ上の脅威による被害に遭いやすいシステムです。

そのため、CMSではセキュリティ対策をしっかり行うことが大切です。セキュリティ対策には、管理機能へのアクセス制御・ログ(操作履歴)の取得・暗号化技術などに加え、システムを常に最新状態に保つことが大切です。

導入形態別に見ると、パッケージ型はセキュリティに関する保険やオプションが充実しており、クラウド型はベンダーによって安全対策が行われています。そのため、比較的セキュリティリスクは低いです。

スクラッチ開発では、セキュリティ対策にコストをかけることが前提であり、要件定義の段階からセキュリティ対策を計画的に行います。自社で開発を行う場合は、抜けや漏れがないよう注意も必要ですが、基本的にスクラッチ開発は比較的セキュリティリスクが低いです。

オープンソース型の場合、ソースコードが公開されているため、セキュリティリスクが高いです。そのため、以下のような例を参考に対策することを推奨します。

  1. ファイアウォールを導入する
  2. WAF(ウェブアプリケーションを保護するセキュリティ対策)を導入する
  3. プラグインを必要最小限にし、常に最新状態を保つ
  4. セキュリティパッチ(脆弱性を発見・修正するプログラム)を適用させる
  5. 予測されやすい単純なパスワードにしない

運用体制を整える

CMS導入後は、Webサイトの目的を効果的に達成することを目指すことが大切です。そのためには、Webサイトを更新・管理することが必要不可欠であり、効率的に管理するためには運用体制を整えることが重要です。

以下に運用体制整備のポイントを挙げます。

  1. 担当者の役割分担(※通常業務の片手間ではなく、専任させることが推奨される)
  2. 担当者にCMSの操作や管理についてトレーニングを行う
  3. CMS操作・管理に関する効果的な手順をチーム内で共有できる仕組みを作る
  4. 定期的な更新スケジュールを策定し、計画的にコンテンツの更新・追加を行う
  5. コンテンツの品質を維持するためのルールやガイドラインを共有する
  6. SEO対策を実施する
  7. CMSやプラグインのアップデートなど、セキュリティ管理を適切に行う
  8. Web解析ツールでWebサイトの問題点を明らかにし、改善を行うサイクルを回す

まとめ

CMSはWebサイトを効率的に管理するためのツールですが、さまざまな導入形態があり、各形態の特徴を把握した上でツールを選び、導入することが大切です。代表的な形態として、オープンソース型・パッケージ型・クラウド型・スクラッチ開発が挙げられます。

CMS導入の目的・予算によって、適した導入形態は異なります。セキュリティ対策を重視する場合はパッケージ型やスクラッチ開発、早期に運用開始するならクラウド型などの例が挙げられます。

ただし、これらは目安であり、実際にはさまざまな条件や制約を考慮して選定しましょう。また、費用相場の参考になりますが、利用人数や機能性などによって費用は大きく異なります。本記事を参考にして、自社のWebサイト管理に効果的なCMSを導入してください。

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