人事評価方法の種類とは?それぞれの特徴やメリット・注意点を解説
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- 人事評価制度は企業の成長のために欠かせないものであり、その方法・種類は多数ある
- 人事評価制度には、能力評価・コンピテンシー評価・360度評価などの種類がある
- 人事評価制度を導入する際は、自社の目的や風土に合った種類を選ぶ
人事評価制度は社員の育成や企業の成長のために欠かせないものですが、その種類は多数あり、自社に合った方法を選ぶのは簡単ではありません。この記事では、これから人事評価制度を導入したい企業向けに、それぞれの種類の特徴・メリット・デメリットを解説します。
人事評価制度の目的・重要性とは
人事評価制度は、企業内の社員を評価し、それに基づいて報酬や役職などの決定を行う制度です。社員にとっては、給与や昇進などに大きな影響を与え、その評価はモチベーションにも直結します。
ただし、人事評価制度は能力把握だけでなく、社員の成長や組織の発展を促すためのものです。そのため、社員の能力や適性を評価する以外に、組織全体の目標達成や成長戦略に資する材料としても利用されます。
人事評価制度は多岐にわたり、企業によって様々な方法や基準が存在します。この記事では、これから人事評価制度を導入したい企業向けに、それぞれの種類の特徴・メリット・デメリットを解説します。
人事評価方法の種類
自社に最適な方法を見つけることは容易ではありませんが、適切な制度が構築されることで、社員の成長や組織の発展につながる重要な仕組みです。以下では、8つの人事評価方法について解説します。
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能力評価
能力評価は、仕事を遂行するために必要なスキルや知識などを評価する方法です。業務に必要な能力や技術がどれだけ備わっているか、それをどの程度効果的に活用しているかを査定します。
この評価方法は、厚生労働省が公表している「職業能力評価基準」というリストを活用することが多いです。このリストは、56もの業種における適切なスキルや知識、業務遂行能力を示しており、企業はこれを参考にして、社員の能力を客観的に評価することができます。
能力評価は業務の成果や目標達成度から客観的に評価できますが、評価者の主観によって評価基準が異なりやすいという側面もあるため、評価基準の統一が必要です。
情意評価
情意評価は、社員の仕事に対する意欲や姿勢、勤務態度などを評価する方法です。主に、職場での振る舞いや態度、他の社員との協調性など、組織内の行動や態度を評価の対象にします。
情意評価の利点としては、社員の内面的な側面を評価できることが挙げられます。また、目標達成に数値が関連付けにくい社員のフォローアップやサポートにも役立ちます。しかし、主観的な評価が含まれるため、公平性を保つための対策や配慮が必要です。
成果評価
成果評価は、社員の一定期間における業績や成果を評価する方法です。通常、売上高や目標達成度などの具体的な数値や、成果物の品質を基準に評価されます。この方法は、数値やデータに基づく定量的な評価を行うため、目標達成の明確な可視化が可能です。
成果が評価されることで、社員は会社から認められた実感を得られ、今後の業務に積極的に取り組むことができます。しかし、成果評価では個人の業績が評価されるため、チームワークや連携を犠牲にするリスクがあります。
この方法を導入する際は、個人の成果を評価しつつも、チームワークを促進する仕組みが重要です。
MBO(目標管理)
MBO(目標管理)とは、社員が自らの目標を管理する人事評価方法です。個人が組織の目標に沿った目標を自ら設定し、達成に向けた計画を立てることが特徴です。
この方法では、社員が自ら目標を設定することでやりがいを感じ、業務効率やモチベーションが向上するとされています。
しかし、MBOは社員が目標を設定する自主性が重要なため、組織の理念や目標が社員に浸透していない場合には、目標設定に制約が生じ、モチベーションが低下するリスクもあります。
MBOは社員にとって自主性を促し、組織と個人の目標を統合するための効果的な手法ですが、理念の浸透や目標設定の透明性が必要です。
MBOとは「Management by Objectives」の略であり、目標管理方法の1つです。MBOは、社員のモチベーション向上や企業の目標達成の実現性アップにも繋がります。この記事では、MBOのメリット・デメリットや導入時のポイントなどを解説します。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価は、個人のスキルや技能だけでなく、業務成果を達成するための行動の傾向を評価の基準とします。企業は優秀な社員の行動特性を分析し、そのモデルを評価基準として設定します。
この手法は、社員がどのような行動をして成果を上げているかが明確になり、それを基にした人材育成が行えます。コンピテンシー評価は、具体的な行動特性が評価基準となるため、社員は成長につながる具体的な行動をイメージしやすくなります。
ただし、この手法を導入するには、コンピテンシーモデルの設定やヒアリング、評価基準の設定など多くの手間がかかるデメリットがあります。
しかし、社員の行動をより詳細に把握し、成長につながるフィードバックを行うことができるため、その手間をかける価値はあるでしょう。
コンピテンシー評価とは?メリットや注意点、導入する流れなどを解説
コンピテンシー評価とは、業務で成果を上げている従業員を分析して、それを評価基準にする人事評価の手法です。コンピテンシー評価は人材育成の効率化に繋がりますが、注意点も存在します。本記事では、コンピテンシー評価の概要や導入手順、上手に運用するコツを解説しています。
バリュー評価
バリュー評価は、企業が設定した価値観に基づいて、社員の行動を評価する方法です。企業が定めた行動規範や価値観に従って行動し、それをどの程度実践できているかを評価します。
この評価方法は従来の年功序列や最近の成果主義とは異なり、仕事の結果だけでなく、社員の行動やその過程を重視します。バリュー評価を取り入れることで、行動や過程にも焦点を当てるため、社員の考える力や行動力が伸びる傾向があります。
しかし、バリュー評価には定量的な評価が難しいというデメリットも存在します。社員の行動を客観的に評価することが難しく、評価者の主観や印象が入りやすいため、公平な評価が難しくなることがあります。
ミッショングレード制度
ミッショングレード制度は、社員が担当する役割(ミッション)に基づいて等級(グレード)を設定し、その業績を評価する制度です。これは、かつての職能資格制度と職務等級制度を統合したもので、新しく採用された制度です。
この制度は客観的な評価が可能であり、企業の理念に合致した役割分担を促進します。従来の年功序列に代わる制度として、社員の役割を重視する点が特長です。役割等級制度とも呼ばれ、社員の年齢や職位にかかわらず、与えられた役割に応じて等級が決まります。
しかし、これまでの経験で昇給してきた社員にとって、業務内容によって給与が変動する可能性があることが不満を招くリスクがあります。そのため、この制度を導入する際には、社員の理解を得るための説明やサポートが重要です。
360度評価
360度評価は、従来の上司から部下への評価だけでなく、異なる立場や複数の人々からの意見を集める方法です。これにより、多角的な視点から評価でき、従来の方法に比べて客観性が高くなります。
社員にとっても公正な評価が期待され、企業にとっては人材の最適な活用につながる重要な手段です。ただし、管理者や上長以外の社員も評価を行うため、評価を集めるまでに時間がかかり、社員は通常業務に加えて評価作業に追われることがあります。
360度評価とは、上司が部下を評価する従来の評価方法とは異なる新たな人事評価手法です。部下が上司を評価することもあるため、全社員の人材教育に活かせるうえ、評価の公正性が得られます。本記事では、360度評価を行う必要性、そのメリットやデメリットなどを解説します。
人事評価方法の種類|比較一覧
人事評価方法は企業の文化や目標によって異なる特徴を持ち、それぞれが特定の企業や状況に向いています。以下の表に、それぞれのメリット・デメリット、どのような企業におすすめかをまとめます。
種類 | メリット | デメリット | おすすめな企業 |
---|---|---|---|
能力評価 | 個々の能力を重視するため、仕事への適性がわかる | 実績や行動以外の要素が把握しにくい | どんな企業でも |
情意評価 | 仕事への姿勢や意欲が把握できる | 主観的な偏りが出やすい | チームワーク重視の企業 |
成果評価 | 具体的な成果を評価できる | 仕事の過程が見えにくい | 数値目標を持つ企業 |
MBO | 目標設定から成果を評価できる | 目標設定が難しい | 社員が主体的に行動できる企業 |
コンピテンシー評価 | ・行動特性を重視した評価が可能 ・評価のブレが少ない | ・定量的な評価が難しい ・正しい手順で進めないと、効果を得られない場合がある | 成長意欲を持つ企業 |
バリュー評価 | 企業価値観に基づいた行動評価ができる | 定量化が難しい | 企業文化が重要な企業 |
ミッショングレード制度 | 役割に応じた等級評価ができる | 年功序列との調和が難しい | 役割重視の企業 |
360度評価 | ・多面的な評価ができる ・自身の評価に納得しやすくなる | 時間や人手がかかる評価を気にするあまり、適切ない育成が行えなくなる | チームワーク重視の企業 |
人事評価方法の種類を選ぶ際の注意点
人事評価方法の種類を選ぶ際には、企業の独自性や目標、社員のニーズに合わせた検討が必要です。異なる評価方法にはそれぞれ特長があり、適切な選択は企業文化や目指す方向性に大きな影響を及ぼします。
ここでは、人事評価方法を選ぶ際に考慮すべき注意点について解説します。
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人事評価方法の種類を選ぶ際の注意点
自社に合った方法を採用する
人事評価方法を選ぶ際、最新のトレンドや他社の成功事例に惑わされず、自社に最適な方法かを見極めることが重要です。たとえば、他社が成功した手法があっても、それが自社の風土や目標に適合するかは別の話です。
そのため、自社の独自性や価値観を反映できるかどうかを確認しましょう。評価方法は企業の目的に直結しており、目的に合った方法を選ばなければなりません。
自社の状況や目的、価値観を明確に把握し、それに合致した評価方法を選定することが、社員への適切な評価や、企業の成長に繋がるポイントとなります。
社員の意見をヒアリングする
社員の意見を取り入れることで、評価制度に対する共感や受容が高まります。社員が評価制度に納得し、それが公平に実施されることで、モチベーションや仕事への取り組みの向上が見込めます。
また、社員の意見を取り入れることで、評価制度の改善点や調整すべき部分を特定することができます。このフィードバックを元に、より効果的な評価方法を構築し、社員の成長や企業の成果に寄与することが可能です。
まとめ
人事評価制度は、企業が社員の働きぶりを評価し、給与やキャリアの成長に反映させる方法です。この制度にはさまざまな種類があり、能力や業績、行動特性などを基に評価する方法や、社員からのフィードバックを取り入れる方法などがあります。
これらの評価制度を使うことで、社員のモチベーションを高めたり、業績向上に貢献したりすることが期待されます。ただし、制度をうまく導入できないと、社員の不満や意欲低下などの問題が生じることもあります。
そのため、企業は自社の文化や目標に合った適切な評価方法を選び、柔軟かつ公平な評価を行うことが重要です。企業と社員の双方にとって有益な人事評価制度を構築することで、生産性や労働環境を改善することができるでしょう。
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