勤怠管理システムの導入で使える補助金・助成金|注意点も解説
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- 勤怠管理システムの導入時に、IT導入補助金または働き方改革推進支援助成金が使える
- 補助金と助成金にはそれぞれのメリットや注意点がある
- 補助金・助成金を活用する際には、申し込み期日と支給までの時間に注意する
働き方改革に伴い、勤怠管理システムを導入する企業が急増しています。本記事では勤怠管理システム導入に使える「IT導入補助金」と「働き方改革推進支援助成金」の2種類について、補助金と助成金の違いや詳細、申請手続きの流れ、注意点について解説します。
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勤怠管理システムとは?なぜ導入が増えているのか
勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤・残業・休暇など、勤怠に関する情報を一元管理できるものです。法令に沿ったアラート付きのシステムもあり、労働形態にかかわらず正確な労働時間を把握できるシステムは、働き方改革に順応する企業の負担軽減やトラブル回避に貢献しています。
しかし、システムの導入には金銭的コストがつきもので、足踏みをしている企業も少なくありません。そんな時は、国からの助成金をきっかけにしてみるのも一つの手段です。
勤怠管理システムの導入に使える補助金や助成金
勤怠管理システムを導入する際に、国が行っている補助金・助成金の支援を利用できます。システムの導入にかかるコスト面をサポートしてくれるため、ぜひ利用しましょう。勤怠管理システムの導入に使える制度は、主に2つです。
- IT導入補助金
- 働き方改革推進支援助成金
2つの制度は内容や支給元の違いはもちろんですが、なにより「補助金」と「助成金」という異なる種類のお金であることをまず知っておきましょう。IT導入補助金では最大450万円の補助が、働き方改革推進支援助成金では成果目標達成時に上限100万円の助成が受けられます。まずは補助金と助成金の違いから解説していきます。
補助金と助成金の違い
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
資金の支給元 | 国(経済通産省) 自治体 | 厚生労働省 自治体 |
目的 | 創業・起業支援 事業の運営・育成支援など | 労働環境の改善・維持 雇用促進・環境維持 人材開発・育成など |
審査 | 申請後、該当事務局による書類審査により合否が決定 | 書類申請後、事業の活動内容を書類で提出することで認定される |
メリット | 助成金よりも種類が多い 助成金よりも金額が多く、使用範囲が広い | 補助金よりも認定がおりやすい 社会保険労務士による代行手続きが可能 |
デメリット | 補助金対象の領収書・書類は、事業終了後5年間保管する必要がある 定期的な事業の状況報告や収益納付を必要とする場合がある | 国の見直しが定期的にあるため、最新状況を常にチェックしておく必要がある 最初の申請から受給まで1年から1年半かかる |
国や自治体による補助金や助成金は、それぞれの支給元が異なります。申請先や申請方法なども異なるため、事前に確認しておきましょう。
また、申請内容には細かい指定があります。公的資金を財源としているため、申請後も事業内容をまとめた書類の提出などが義務となっている場合も多いです。
中でも勤怠管理に関係する補助金・助成金は、IT導入補助金と働き方改革推進支援助成金の2つです。補助金や助成金の目的や概要を知り、自社に適切なものを選びましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、主に中小企業や小規模事業者を対象としたITツールやクラウドサービスの導入をサポートする補助金です。中小企業や小規模事業者がもつ自社課題をサポートするための資金でもあります。
国の中小企業政策における中核的な実施機関である中小機構のもとで運営されている補助金制度です。自社課題とした、労働力の管理・業務の効率化や安定化をはかるために必要なITツールを導入するための資金の援助を目的としています。
インボイス制度も見据えた企業間取引のデジタル化を支援するため、ソフトウェアの購入費やクラウド利用料などを対象に最大で450万円の補助が受けられます。
働き方改革推進支援助成金
厚生労働省が定めた5つの要件を満たした中小企業事業主が対象となっており、労務管理や人材確保、業務の効率化といった業務に取り組むための設備投資に対して経費助成を行うための助成金です。
以前行われていた職場意識改善助成金とは類似点が多いです。また新型コロナウイルス感染症対策のひとつとして行われていた「職場意識改善特例コース」はすでに受付を終了しており、まったくの別物となります。
「労働時間正管理推進コース」で成果目標を達成すると上限額が100万円の助成を受けられます。
IT導入補助金とは
それでは、「IT導入補助金」制度について詳しく解説していきます。制度の内容について、概要・対象事業主・対象経費や補助金の目安について紹介しています。
参考:IT導入補助金2024
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IT導入補助金とは
制度の概要
IT導入制度の補助金には、以下の3つの枠組みがあります。
- 通常枠
- デジタル化基盤導入枠
- セキュリティ対策推進枠
通常枠には、A類型とB類型の2種類があります。どちらも自社課題やニーズに合うITツールの導入経費を一部補助することが目的です。対象のソフトウェア購入費やクラウド使用料、システム導入に関わる補助金を受け、業務の効率化や売上アップを図ります。
A類型よりB類型の方が申請する業務プロセス数が多く、賃上げ目標も必須となります。計画が実現できなかった場合は、補助金を返還することになります。
A類型
・下図のうち、共通プロセスから1種類以上のソフトウェアを申請すること。
・賃上げ目標:加点項目
B類型
・下図のうち、4種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請すること。
・賃上げ目標:必須要件
種別 | プロセス | |
業務プロセス | 共通プロセス | 顧客対応・販売支援 |
決済・債権債務・資金回収管理 | ||
供給・在庫・物流 | ||
会計・財務・経営 | ||
総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム | ||
業務特化型プロセス | その他業務固有のプロセス | |
汎用プロセス | 汎用・自動化・分析ツール |
デジタル化基盤導入枠は、通常枠の補助対象に加えてハードウェア購入費も対象です。会計・受発注・決済・ECの4つのいずれかの機能を含むソフトウェアが対象ですが、勤怠管理は対象でありません。
セキュリティ対策推進枠は、2023年から始まった、サイバーインシデントに備えたサービス利用料を補助するものです。こちらも勤怠管理に直接関わるものではありません。
対象となる事業主
補助対象者は、日本国内の中小企業、小規模事業主です。対象となる業種や資本金、働いている従業員の数など細かな規定があります。中小企業において対象となる業種は、飲食・宿泊・卸・小売・運輸・医療・介護・保育等のサービス業や製造業・建設業等です。
業種ごとに資本金や従業員数に細かな規定があるため、下記サイトで確認しましょう。小規模事業主は、正規の従業員5人以下のサービス業、20人以下の宿泊・娯楽業、製造業などが対象です。
対象経費と補助金の目安
補助対象の経費区分は、以下の通りです。
- ソフトウェア購入費
- 最大2年分のクラウド利用料
- 導入関連費等
補助率は2分の1以内、つまり、50万円のソフトウェアを購入した場合、25万円分の補助金が支給されます。
また、支給金額は以下の通りです。
- A類型では5~150万円未満
- B類型では150~450万円未満
A類型では1つ、B類型では4つ以上の商品やサービスの利用が対象です。
働き方改革推進支援助成金とは
ここでは、経済通産省が助成する「働き方改革推進支援助成金」について解説します。「働き方改革推進支援助成金」は4つのコースがあり、そのうち3つが勤怠管理システムの導入に活用できます。それぞれ自社に見合ったコースを選ぶことで適切な助成を受けられます。
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働き方改革推進支援助成金とは
労働時間短縮・年休促進支援コース
生産性の向上や時間外労働の削減などの労務管理や、年次有給休暇・特別休暇取得の促進に向けた労働環境の整備を促進を目的としたコースです。指定された9つの条件の中から1つを選び、以下の1番から3番の中から成果目標とするものを1つ以上決めて実行します。
全ての対象事業場において、令和5年度又は令和6年度内において有効な36協定について、①時間外・休日労働時間数を縮減し、月60時間以下、又は月60時間を超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出を行うこと②全ての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること③全ての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること
引用:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
以上厚生労働省の公式サイトからの抜粋です。詳細は公式のサイトにて確認してください。
勤務間インターバル導入コース
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設定することです。労働者の生活時間や睡眠時間の確保し、健康保持や過重労働の防止を図ることを目的としています。
中小企業や小規模事業主が、事業実施計画において指定したすべての事業場において、休息時間数が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバルを導入し、定着させることが成果目標として設定されています。
下記のうちのどれかひとつを成果目標とし、その達成率によって補助金額が決定します。
①新規導入
勤務時間インターバルを導入していない事業場において、事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とする、休息時間数が9時間以上の勤務感インターバルに関する規定を労働協約または就業規則に定めること
②適用範囲の拡大
既に休息時間数が9時間以上の勤務感インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下であるものについて、対象となる労働者の範囲を拡大し、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象とすることを労働協約、または就業規則に規定すること
③時間延長
既に休息時間が9時間未満の勤務感インターバルを導入している事業場において、当該事業場に所属する労働者の半数を超える労働者を対象として、当該休息時間数を2時間以上延長して休息時間数を9時間以上とすることを労働協約又は就業規則に規定すること
引用:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省
以上厚生労働省の公式サイトからの抜粋です。詳細は公式のサイトにて確認してください。
【全コース共通】助成対象となる取り組み
全コースに共通する取り組みは、以下の9つです。
①労務管理担当者に対する研修
②労働者に対する研修、周知・啓発
③外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) によるコンサルティング
④就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤人材確保に向けた取組
⑥労務管理用ソフトウェアの導入・更新
⑦労務管理用機器の導入・更新
⑧デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
⑨労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
引用:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
以上、厚生労働省の公式サイトからの抜粋です。9つのうち、1つの取り組みを選んで、期限内に実施し、それぞれのコースの成果目的を設定します。勤怠管理システムの導入を行いたい場合は、主に6番目の項目が当てはまります。
【全コース共通】利用条件
支給対象となる事業主は、次のいずれにも該当する中小企業事業主(※1)です。
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること。
(2)全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、勤怠(労働時間)管理と賃金計算等をリンクさせ、賃金台帳等を作成・管理・保存できるような統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していないこと。
(3)全ての対象事業場において、交付決定日より前の時点で、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則等に規定されていないこと。
(4)全ての対象事業場において、交付申請時点で、36協定が締結・届出されていること。
(5)全ての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること。
(※1)中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業となります。
引用:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
業種 | A.資本または出資額 | B.常時使用する労働者 |
小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業(※2) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
以上厚生労働省の公式サイトからの抜粋です。詳細は公式のサイトにて確認してください。
助成金・補助金申請手続きの流れ
ここでは、それぞれの助成金・補助金の申請手続きの流れについてまとめています。IT導入補助金と働き方改革推進支援助成金では、申請先が異なりますので注意してください。
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助成金・補助金申請手続きの流れ
IT導入補助金
IT導入補助金の申請は、補助金を受けたい対象の事業者だけではなく、IT導入支援事業者と共同で行います。IT導入支援事業者はITベンダーとも言われ、事業者が購入・利用するITサービスの提案からサポートやアフターフォローまでを支援する存在です。
ITベンダーは、IT導入補助金のサイト内の支援事業者一覧リストに記載のある事業者を選びます。リストに記載のない事業者に依頼しても、補助金の申請がおりませんので必ず確認を行いましょう。
申請の流れは以下の通りです。
- 公式サイトにて事前に「gBizID」のアカウントを取得*
- 公式サイトにて、みらデジ経営チェックを確認
- ITツールとITベンダーの選定をする
- 選定したITベンダーと共に交付申請を行う
- ITツールの購入・利用を行い、指定された事業を運営する
- 事実実績報告書を作成、提出する
- 補助金の援助額の有無、金額の確定の通知を受け取ったら、補助金の交付手続きを行う
- 事業の実施結果報告書を提出する
*アカウント取得に数週間かかることもあるため注意。
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金の申請の流れは以下の通りです。
- 交付申請書、事業実施計画の作成を行う
- 申請書と計画書の提出
- 審査後、交付の合否の通知
- 事業実施計画に沿って、事業を行う
- 支給申請書、事業実施結果報告書を作成し、提出する
- 審査後、支給額が決定する
申請先は各都道府県の労働局となります。申請書およびマニュアルなどはすべて公式サイトで確認ができます。
制度を活用する際の注意点
ここでは、制度を活用する際の注意点について解説します。補助金・助成金の申請には、細かなルールがありますが、申請期間には期限があること、支給までには時間がかかることをよく理解しておきましょう。
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申請期間の期限
まず、2023年におけるIT導入補助金の申請書の受付は、3月28日から行われています。種類によって、4次募集まで行われており、それぞれ締め切り日と交付日が発表されているため、サイトで確認してください。
また、事業を実施する対象期間は4月から翌年の3月まで、事業実施報告の期間は、4月から7月までとなっています。対象期間と報告期間を間違えないようにしましょう。
働き方改革推進支援助成金では、2023年における交付申請期限は11月30日まで、取り組みの実施は翌年の1月31日までです。どちらも期日を過ぎると受け付けてもらえなくなってしまうため、注意しましょう。
支給までの時間
助成金や補助金は、申請後、交付の認可がおりてもすぐには支給されません。申請がおりたら、事業の実施報告書を提出し、達成率によって助成や補助を受けられる金額が決まります。そのため、支給には1年くらいの猶予をもって望まなければいけません。
実施報告書の受理後、支給額の通知が届いてから、約1カ月後に指定の銀行などに振り込まれます。書類に不備があると修正し再提出を行わなければならず、さらに時間がかかるため、余裕をもってプランを実行する必要があります。
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まとめ
勤怠管理システムの導入に使える補助金と助成金について解説しました。ここで紹介した2つの補助金・助成金制度は、勤怠管理システムを導入するための準備支援金ではありません。あくまでも、業務の効率アップや働き方の改革といった目的達成のための支援金です。
助成金や補助金を受けるには、申請書類や業務書類の作成や提出といった細かな仕事が増えるというデメリットもあります。また、申請後、交付、支給金額の通知、支給に至るまでも時間がかかるのも難点です。
しかし、働き方改革によって業務プロセスを見直すことは、企業にとって隠れた問題を浮き彫りにするチャンスでもあります。補助金や助成金を上手く使って、必要なシステム導入にかかるコストを軽減し、業務の効率化をはかりましょう。
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