勤怠管理システムによる残業管理とは?残業代の計算方法も解説

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  • 法内残業・法定時間外労働の違いや法律違反になるパターンなどを理解する必要がある
  • 適切な残業管理で従業員のモチベーション向上・経費削減・職場環境の改善が期待できる
  • 正しい計算方法が必要となるため、勤怠管理システムを使った残業管理がおすすめ

信用低下などにつながらないよう、企業は勤怠管理システムなどを利用して従業員の残業時間を適切に管理しなければなりません。この記事では、残業管理の必要性やメリット、残業代の正しい計算方法などを紹介し、正しく管理する手段として勤怠管理システムを詳しく解説します。

目次

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  1. なぜ減らないのか?日本の残業問題
  2. 残業代の正しい計算方法
  3. 残業抑制に繋がる、勤怠管理システムとは
  4. 勤怠管理システムを導入するメリットとは
  5. 残業管理を行う際の注意点とは
  6. 適切な残業管理を行うポイント
  7. まとめ

なぜ減らないのか?日本の残業問題

働き方改革に伴い労働でのさまざまな変革を求められる今、古くも新しい問題として最重要視されているのが残業問題です。大きく取り上げ続けたにもかかわらず、恒常的に残業がある企業では「業務量の多さ」や「個人の能力差」を残業の主な原因と訴える声も大きいのが現状です。

しかし、そもそもなぜ残業が減らないのか?という点にフォーカスした時、日本独自に根深く残る労働の背景が関わっていることがわかりました。

残業が発生し続ける原因とは

残業管理がいくら大事だとはいっても、残業が発生する原因、そして残業が上手く管理出来ていない原因をしっかりと把握する必要があります。そこでパーソル総合研究所が発表した「職場の残業発生メカニズム」を紐解くと、企業の経営陣・管理職側と従業員側、二つの観点から残業がなくならない根本的原因が見えてきます。

経営陣、管理職側の問題

そもそも、残業抑制に対して前向きではない企業もあるでしょう。日本産業が発展するなかで、仕事への熱量や評価を労働時間の多さで推し量ってきた風土があるからです。またその過去を上司が賛歌としてうたってしまえば、部下はその方針に従わざるを得ず残業を黙認するほかありません。

業務量や効率を度外視しているので、形ばかりの残業規制に走ることにもなり、残業を抑制するどころかサービス残業が横行する環境となってしまいます。

従業員側の問題

会社側が残業削減に取り組んでいても、残業管理が杜撰であれば、基本給が低いなどの独自の理由で従業員が不必要な残業を行えてしまいます。なかには残業を名目に同僚と話しているだけ、なんてこともあるかもしれません。

一方で、業務量の割り振りがあわず残業をしなければ仕事が終わらない、上司が率先して残業するため帰りづらい、という残業を強いられる状況も少なくありません。

参考:パーソル総合研究所|職場の残業発生メカニズム

残業の定義とは

残業の定義については、何となく分かってはいるものの曖昧である方も多いのではないでしょうか。一般的に残業は、企業ごとに定められた終業時間を過ぎてからも行う業務のイメージが強いです。

残業には、大きく分けて法定時間外労働と法内残業の二種類があります。それぞれの特徴とその違いについては、下記の項目で詳しく解説していきます。

また、残業の申請が何分からできるものなのかも気になるポイントです。慣例的に、残業の申請は15分単位や企業によっては30分単位で行っているケースも珍しくありません。

しかし、労働基準法の24条には、勤怠管理は1分単位で行うことが定められています。つまり、勤怠管理を15分や30分単位で行い端数を切り捨てることは違法になってしまいますので、注意が必要です。

法内残業

法内残業とは、法定労働時間内で行う残業のことです。労働基準法の32条には、一日に8時間・一週間で40時間を上限とする法定労働時間が定められています。

元々短い勤務時間での契約を結んでいるパートやアルバイトの従業員が、勤務時間を超えて法定労働時間内で業務を行う場合などに当てはまります。

この場合は、雇い主が従業員に、本来の賃金と同じ時給分を残業代として支払えば問題ありません。

法定時間外労働

法定時間外労働とは、法定労働時間である一日8時間もしくは一週間に40時間を超えて行う残業を指します。

法内残業の場合とは違い、法定時間外労働では残業した分の賃金は、本来の25%増しで支払うことが企業側に義務付けられています。

残業の種類・特徴など

種類特徴残業時に発生する賃金
法内残業一日8時間・週40時間の法定労働時間内で行う残業通常時と同等の額で問題なし
法定時間外労働上記の法定時間を超えて行う残業通常時より25%増しにする必要あり 

残業管理の必要性とは

企業において、残業管理は多くの役割を担っています。法律違反の回避や生産性の向上など、残業管理の必要性について詳しく解説します。

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法律違反になるのを避ける

従業員の勤務時間や残業を何時間したかなどをしっかり把握できれば、過重労働にならないための対策を考えることができます。

残業が多すぎるなどの問題ある労働については、早めの改善が必要です。そうすることで法律違反を避けられるので、過度な残業による健康被害などで訴えられるリスクを回避できます。

生産性を上げる

残業管理を行うことによって、生産性の向上も期待できます。一定時間に従業員一人あたりが生み出す利益を労働生産性といいます。この労働生産性を効率よく上げるには、労働と休息とのバランスをとることがとても重要です。

長時間の労働で従業員の疲労が溜まってくると、生産性が落ちてしまいます。適切な残業管理で、企業全体の労働生産性を上げていきましょう。

労働環境を改善する

労働環境をより良いものに整えることも、残業管理の大事な目的の一つです。労働環境の悪い職場では、従業員が長い期間働き続けることは難しいため、離職率が高くなってしまいます。

残業管理を行い、従業員が働きやすい職場を維持することで、企業のために長く貢献してくれる人材の確保が期待できます。

残業代の正しい計算方法

残業代の計算はどのようにすれば良いか、その正しい計算方法を知っておく必要があります。残業代は、法内残業か法定時間外労働かによって、また賃金契約が時給か月給かによっても計算方法が異なるため、パターンごとに例を挙げながら詳しく解説します。

まず、短時間での労働契約を結んでいるパート・アルバイト従業員の場合、総労働時間が一日8時間・週40時間に収まる範囲の残業については法内残業となります。法内残業では、本来の賃金と同等の額が残業時間数に応じて発生します。

例えば、時給1,000円・一日5時間・週25時間で契約している従業員に、3時間の残業をしてもらった場合の残業代は、下記の計算式で求められます。

時給1,000円×残業3時間=残業代3,000円

次に、法定時間外労働の場合をみてみます。法定時間外労働では、残業分の賃金は25%増し、つまり1.25倍となります。

例えば、上記と同じ従業員が3時間ではなく一日4時間の残業をした時は、一日にトータルで9時間働いたことになります。この場合、一日8時間の枠を超えた一時間分は割り増し賃金として計算します。

時給1,000円×法内残業3時間+時給1,000円×法定時間外労働1時間×1.25倍=残業代4,250円です。

では、賃金契約が時給ではなく月給の場合、残業代はどのように計算するのでしょうか。多くの従業員、殊に正社員のほとんどは月給制であるため、押さえておきたいポイントです。

月給の場合の残業代を計算するには、まず一時間当たりの賃金を算出する必要があります。これは、月給を「一ヶ月当たりの平均労働時間」で割ったものです。

一ヶ月当たりの平均労働時間は、一日の所定労働時間数に、年間労働日数(365日から、年間で定められた休日数を引いた日数)を掛け合わせ、12ヶ月で割って出します。

例えば、一日8時間・年間休日107日の場合だと、8時間×(365日-107日)÷12ヶ月で計算し、一ヶ月当たりの平均労働時間は172時間であることが分かります。

残業代の計算には、通勤手当や住宅手当、臨時で支給されるボーナスなどは含めないため、一ヶ月の給与からそれらを除外した金額を平均労働時間数で割って算出します。

残業抑制に繋がる、勤怠管理システムとは

勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤・残業・休暇など、勤怠に関する情報を一元管理できるものです。法令に沿ったアラート付きのシステムもあり、労働に関するトラブルの回避に貢献しています。

なかでも残業申請機能を有した勤怠管理システムが注目されています。この残業申請機能を利用することで、従来では計算が複雑であったり、ともすれば杜撰になりかねなかったりといった残業の管理が、簡単でスムーズに行えるようになります。

勤怠管理システムを導入するメリットとは

勤怠管理システムで残業管理を行うことで、残業時間の削減や従業員の健康管理ができるなどの、多くのメリットがあります。それぞれ詳しく解説していきます。

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正確な労働時間が記録・把握できる

勤怠管理システムを導入することで、さまざまな勤怠形態に左右されることなく正確な労働時間を記録することができます。同時に残業申請制を取り入れたり、どんな内容で残業するのかを明確にするルールを設定することで、業務内容の把握にも繋がります。

また、労働時間の記録に関する書類については、労働基準法に基づき5年間の保存が必要なため、勤怠管理システムを用いることで記録漏れやミスもなくなり管理者の負担を減らすことができます。

リアルタイムで労働時間を把握でき、残業時間を削減できる

残業時間をリアルタイムで把握することは、どの従業員がどれくらい残業しているか、またどんな業務で残業しているかの確認に繋がります。勤怠管理システムのアラート機能があれば、残業をしている当人だけではなく上司へも警告を促せ、タイムリーな対策を講じることができます。

上司には業務の再振り分けなどの調整に率先して関わってもらいながら、マネジメント力の向上もはかりつつ、職場全体での残業抑制に対する意識を向上させていきましょう。

業務効率の向上や従業員のモチベーションアップに繋がる

勤怠管理システムによって正確な残業管理ができれば、おのずと従業員の労働時間も整っていくというのは大きな魅力の一つです。適切な労働時間の管理によって、長時間に渡る無理な労働がなくなれば、従業員の健康管理に繋がります。

プライベートの充実は業務効率と切っても切り離せない関係にあることを念頭に、残業抑制だけでなく私生活レベルの向上ももたらすことができます。

残業管理を行う際の注意点とは

残業管理を行うにあたって注意点がいくつかあります。残業の承認基準やルールの周知など、押さえておきたいポイントを解説します

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承認の基準を明確にする

残業管理を行うには、残業の承認基準を明確にしておきましょう。定時を過ぎて、急ぎの仕事がないにも関わらずダラダラと社内に残っている従業員に残業代を申請されるのは、企業側からすれば不本意です。

そのような状況を避けるためにも、残業とみなされるのは、どのような状況でどのような仕事を行う場合か、その基準を従業員に明示しましょう。そうすることで、必要な残業のみを効率よく行ってもらうことができます。

また、承認される残業内容を明らかにすることで、従業員の残業に対するモチベーションの向上も期待できます。

ルールが形骸化しないよう注意する

残業管理を続けるうえで、ルールが形骸化しないよう注意することも大切なポイントです。せっかく定めたルールも、その意義を失って形だけになってしまっては意味がありません。

ルールの内容や定めた理由などを全従業員に周知しておきましょう。時間の経過とともに忘れてしまったり、人員が入れ替わったりする可能性もあるので、定期的な呼びかけをおすすめします。

例外が生まれないよう徹底する

残業に関するルールを定めたら、例外が生まれないように徹底することも大切です。

特定の従業員にのみ有利になるような例外を作ることは、他の従業員の不満を招いたり、モチベーションの低下にも繋がってしまうからです。

また、ルールに変更の必要性を感じた時も、全従業員にアンケートを取るなどしてよく協議し、慎重に行いましょう。

適切な残業管理を行うポイント

残業管理を適切に行うための工夫をいくつかご紹介します。残業時間・内容の可視化や勤怠管理システムの利用などについて、それぞれ具体的に解説していきます。

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残業時間や残業内容を可視化させる

残業時間・残業内容の可視化とは、残業の内容や時間の目標・その結果を全体に見えるようにすることです。

まず、これまでの労働時間や内容を整理し、部署ごとで表にまとめておきます。これは、残業が多くなりがちな繁忙期における状況把握にも役立ちます。

次に、部署ごとにまとめた労働時間を参考に、残業時間の目標を設定します。また、その結果を開示し、全従業員に可視化することで、残業に対する社内全体の意識を高めることができます。

残業に関するルールを制定する

残業は無限に課せられるものではなく、時間外労働には、原則月に45時間・年間360時間を上限とする枠があります。

繁忙期や急を要する業務などに対応して、これ以上の残業が可能になるケースもありますが、その場合には調整のための上限が制定されています。

これらを守り残業管理を適切に行うには、どのような場合に残業をするかや、一日の上限時間など、残業に関するルールをしっかりと定めておきましょう。

残業を事前の申請制にするのも一つの方法です。これによって、従業員は気軽に残業できない状況となり、定時内に効率よく業務を終わらせようとする動きが期待できます。

勤怠管理システムを利用する

勤怠管理システムを利用すると、従業員の勤怠に関する情報をまとめて管理できます。なかでも残業申請機能がついた勤怠管理システムは、残業管理をよりスムーズに行える機能として重宝されています。

勤怠管理システムには無料で利用できるものもあるので、少しでも興味を持った企業が気軽に試せるのも嬉しいポイントです。

ただし、無料のシステムだと利用を制限される場合が多いです。より確実に管理を行うには、有料の勤怠管理システムを使用することをおすすめします。

残業管理を適切に行うために

方法内容
残業時間・内容を可視化・残業時間の目標を設定し、結果を開示する
・全従業員に可視化し、残業に対する社内全体の意識を高める
残業に関するルールの制定どのような場合に残業をするかや一日の上限などを決めておく
勤怠管理システムの利用残業申請機能のついた勤怠管理システムがおすすめ

まとめ

残業とは、一般に、企業ごとに決められた終業時間、いわゆる定時を過ぎてからも行う業務を指します。この残業には、法定時間外労働と法内残業の二つの種類があります。

残業管理をすることで、過労働による法律違反を回避できるのはもちろん、従業員の健康を管理できるのは大きなメリットといえます。また、生産性の向上も期待できるため、企業の利益に繋がります。

適切な残業管理を行うには、残業内容や時間を可視化したり、残業に関するルールを制定するなどの工夫が必要です。

しかし、残業内容や時間の把握、ルール設定、また個々に異なる残業代の計算などの残業管理を全て独自に行うのは、とても大変な作業です。

把握不足や申請漏れを防ぎ、適切な残業管理を行うには、勤怠管理システムの利用が不可欠であるといっても過言ではありません。

勤怠管理システムは、残業を含む従業員の勤怠情報の全てをまとめて把握できる便利なシステムです。勤怠管理システムを活用して、より適切な残業管理をしていきましょう。

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