ナレッジベースとは?利用するメリットや活用例、作り方も解説
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- ナレッジベースとは、企業や従業員が蓄積してきた知識・知見をまとめたデータベース
- ナレッジベースを利用することで、業務効率化や顧客対応の質向上などが期待できる
- ナレッジベースを構築する際は、ナレッジマネジメントツールの活用がおすすめ
ナレッジベースとは、企業や従業員が蓄積してきた知識・経験などを一箇所にまとめたデータベースのことです。ナレッジベースを利用することで部門間の情報共有がスムーズになり、業務効率化に繋がります。この記事ではナレッジベースのメリットや活用例、作り方などを解説します。
目次
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ナレッジベースとは
ナレッジベースとは、業務に関する知見を一元管理するデータベースのことです。業務に関する知見とは、企業が業務を通じて蓄積してきた知識・経験・スキル・ノウハウのことで、過去のプロジェクトの成功や失敗の知識も含みます。
なお、英語では「Knowledge Base」と表記し、「知識ベース」とも呼ばれています。ナレッジベースは社内での共有が可能であり、1人の社員が得た新たな知識を追加すれば、組織全体で共有して知識向上を図ることができます。
また、アクセス権の制御によって、特定の情報に対して権限を持つ人だけがアクセスできるようにすることも可能です。
ナレッジベースに蓄積される知識は、企業にとって知的な資産です。この資産は、将来のプロジェクトや、新たな課題に対応するための戦略に使われます。本記事では、ナレッジベースのメリット・活用例・作り方などを解説します。
ナレッジベースが注目されている背景
ナレッジベースは、「社内に知識を蓄積して、新たな戦略に生かす」ことを基本的な考え方とします。この考え方自体は、ナレッジベースの登場以前からありましたが、その方法は、「上司に教えを請う」「先輩の仕事を見る」など、人から人へ継承する方法が主流でした。
しかし、近年は働き方が大きく変化し、終身雇用制度の崩壊・成果主義の採用・雇用の流動化など、個々の従業員が組織にとどまる期間が短くなりました。このような状況下で、人から人へと知見を継承する方法では、組織内の知識を蓄積することが困難になりました。
こうした背景に加え、現代の労働環境は「働き方改革」の一環で、柔軟性・効率性が求められています。この改革では、限られた労働力で生産性を向上させることがひとつの目的です。
ナレッジベースは、新たな知識の継承方法であると同時に、限られた労働力で生産性を向上させる方法でもあります。ナレッジベースは、近年の労働課題に対応し、企業の持続的な成長を実現するための優れたツールとして注目を集めています。
ナレッジベースを利用するメリット
ナレッジベースは、社内で一元的に情報を管理するため、アクセスが早いことや、情報に一貫性があることを始め、さまざまなメリットを生み出します。ここでは、ナレッジベースを利用するメリットについて解説します。
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ナレッジベースを利用するメリット
専門的な情報に素早くアクセスできる
ナレッジベースによって、社員は蓄積された情報に素早くアクセスすることができます。これにより、業務の中で生じた課題に対して迅速に対応できます。また、専門的な知識を手軽に得られるため、即座に必要な知識を身につけられ、業務の品質向上に期待できます。
ナレッジベースは、社内全体で知識の共有が促進されるため、企業としての競争力が向上します。最善の手法や最新の情報にアクセスできることで、競争相手となる他の企業よりも迅速な意思決定が可能になります。
部門間での情報共有がスムーズになる
ナレッジベースは、社内全体で一元的に管理された情報にアクセスできるため、部門間での情報共有がスムーズになります。他の部門の成功体験や、最善の手法を学ぶことが容易であり、同様の課題に直面した際に、解決の参考にすることができます。
さらに、現在進行しているプロジェクトに関する情報が共有可能な場合、部門間での協力関係も築きやすくなります。プロジェクトの進捗を確認したり、プロジェクトの成功に必要な技術・リソースを提供し合ったり、ナレッジベースは連携手段としても効果的です。
業務効率化・生産性アップに繋がる
ナレッジベースは、業務効率化・生産性アップに繋がります。ナレッジベースに蓄積された過去の事例・成功体験などを利用すれば、同様の業務を行う際に、それらをベースにして作業を進めることができます。
また、ナレッジベースで業務の流れを社内で共有した場合、担当者が異なっても一貫性のある仕事を実現しやすくなります。社内での情報共有により、業務の流れは共通化されるため、業務の品質にバラつきが出にくくなります。
このように、作業自体が効率化されたり、一貫性のある仕事によって修正の手間が減ったりすることで、生産性が向上します。知識が共有されることで、業務の属人化も抑えられ、「担当者が不在で業務を進められない」ことによる時間的なロスを抑えることもできます。
さらに、ナレッジベースは他のツール・システムに活用することができます。例えば、ナレッジベースを自動音声応答装置に活用すると、問い合わせの電話に対して直接担当者が対応する必要性が低くなります。
よくある問い合わせをナレッジベースに蓄積することで、自動音声が適切な回答を提供します。自動音声によって、担当者が同じ問い合わせに何度も対応する負担が減り、人的リソースを有効活用できます。
顧客対応の質が上がる
ナレッジベースは、顧客対応に関連するツール・システムに活用することで、顧客対応の質を上げることに役立ちます。例えば、ナレッジベースをFAQシステムに活用した場合、顧客のさまざまな質問・要望に対し、迅速かつ正確な回答を提供できます。
また、コールセンター業務では、ナレッジベースを活用した共有ツールを導入した場合、経験の浅いオペレーターが対応しても、一貫性のある回答を提供できます。
これらは、ナレッジベースが過去の問い合わせを蓄積し、組織内で手軽かつ即座に情報を引き出せることによって得られるメリットです。対応が早く、提供される情報が正確で一貫性があることは、顧客満足度の向上につながります。
ナレッジベースを活用すると、経験豊富な特定の担当者に依存することなく、顧客対応の質を向上させることができます。
人材育成のコストを削減できる
ナレッジベースは、従業員がそれぞれ情報にアクセスして、自己学習することができるため、トレーニングや研修の手間・時間を削減できます。自己学習を促進することで、従業員が自ら問題解決しようとする姿勢や、対処能力を高めることにも繋がります。
一元管理された情報は一貫性があり、従業員は統一された知識を学習できます。情報を整理することで、「新入社員向けの学習内容」「営業部門向けの学習内容」など、目的に応じてアクセスしやすくすることも可能です。
また、暗黙知を蓄積することにより、自己学習でも高度なスキルを身につけられる可能性もあります。暗黙知とは、言葉・図・数値などで表現することが難しい知識のことです。
機械の操作技術・デザインのセンス・顧客と良好な関係を築くスキルなどが暗黙知に該当します。これらは表現の仕方が難しいですが、ナレッジベースで継承できないわけではありません。継承・言語化などのプロセスを経て、情報として蓄積することが可能です。
ナレッジベースによって、トレーニング・研修をどこまで削減するかは、企業によって適切な判断が求められます。しかし、ナレッジベースを活用した効果的な教育方法が確立すれば、人材育成のコスト削減と、企業全体の知識向上を両立させることが可能です。
ナレッジベースの活用例
ナレッジベースは、さまざまな業務に活用でき、また、他のツール・システムに組み込むことで、より利便性を向上させることができます。ここでは、ナレッジベースの活用例について解説します。
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ナレッジベースの活用例
問い合わせ窓口の自動音声応答
ナレッジベースは、問い合わせ窓口の自動音声応答に活用されるケースがあります。例えば、ナレッジベースによって、ユーザーの目的に合った自動音声を流すことができます。その際、ユーザーのダイヤル操作や音声認識によって、ユーザーを目的別に振り分けます。
活用場面として、コールセンターにおける入電・飲食店やホテルの予約・資料請求の受付などが挙げられます。同じ内容での問い合わせが多い場合には、ナレッジベースを構築した自動音声応答を導入することで、業務を効率化できます。
なお、電話による問い合わせだけでなく、LINEやWebサイトのチャットにおける自動メッセージ応答に、ナレッジベースが活用されることも一般的です。
FAQ
ナレッジベースは、FAQシステムに組み込むこともできます。これがユーザー向けのFAQの場合、ユーザーは自分の疑問にアクセスして、即座に適切な解決策を発見することが可能になります。
企業にとっても、問い合わせに直接対応する回数が減り、顧客満足度の向上に繋げられる利点があります。
従業員の教育目的で作る社内Wiki・社内FAQなどにナレッジベースを活用した場合、従業員のよくある質問や社内ルールに関する情報に手軽にアクセスできます。これにより、社内で知識の均一化が図れ、また、従業員が自己学習する文化を社内に醸成することができます。
企業内検索システム
企業内検索システムとは、企業内の多岐にわたるデータを、さまざまな保管場所から横断的に検索できるシステムです。このシステムは、エンタープライズサーチとも呼ばれます。
企業内検索システムにはナレッジベースが利用され、部門の垣根を越えて、社内のデータを検索できます。また、社内だけではなく、テレワークの従業員が社外からアクセスして、検索することも可能です。
データの最終更新者を確認することで、その知見に詳しい人は誰なのかについて、見当をつけることもできます。これにより、特定の知見が求められる業務やプロジェクトについて、最適な人材を見つけたり、知見の詳細を尋ねたりすることが容易になります。
オンライン社内研修
ナレッジベースは、オンライン社内研修で活用することができます。ナレッジベースは、部門を越えてアクセスできるだけでなく、地域の異なる事業所間や、リモートワークの従業員もアクセス可能です。
また、ナレッジベースは、画像・音声・動画・PDFなど、さまざまなデータを共有することができます。これにより、テキストでは指導が難しいノウハウを場所の制限なく共有することができます。
ナレッジベースは、オンライン研修の場面だけではなく、研修に参加する従業員が事前に予習したり、研修の復習をしたりする際にも便利です。
ナレッジベースの導入に適した企業
上記で説明したメリットや活用方法を踏まえて、ナレッジベースはどういった企業に適しているのかを解説します。以下にあてはまる企業は、ナレッジベースが問題解決の足がかりになるかもしれません。
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ナレッジベースの導入に適した企業
コミュニケーションや連携がスムーズではない企業
社員数が多かったり、部署が細かく分かれていたりする企業では、社員同士のコミュニケーションや連携がスムーズにいかないこともあります。しかし、ナレッジベースを導入すれば、情報を分散させることなく、全社員が容易にアクセスできるようになります。
また、仕事の進捗状況や1日のスケジュールもリアルタイムで共有できるため、誤解や混乱を招くことなく連携が図れます。さらに、意見を交換するためのプラットフォームとしても機能するので、社員のコミュニケーションに悩む企業にもおすすめです。
ノウハウや知見の引継ぎに支障を感じている企業
近年は人材の流動化が激しく、入社から数年で他の企業へ転職してしまうといったことも珍しくありません。そのため、頻繁にノウハウや知見の引継ぎが必要になるものの、人によって教え方が違ったり、内容を網羅できなかったりと支障が出る可能性があります。
しかし、ナレッジベースを活用することで、個人のノウハウや知識を一元化できるので、新入社員への引継ぎが容易になります。経験豊富な従業員の知識や技術を失うことなく、組織全体で共有していきたいと考える企業にとっては心強い存在です。
ナレッジベースの作り方
ナレッジベースは、商用ツールを利用する以外にも、自社で独自に作ることができます。ここでは、ナレッジベースの作り方を解説します。
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ナレッジベースの作り方
既存のツールを使う
多くの企業にとって、Excel・Wordなどは身近なツールですが、これらの既存ツールを使ってナレッジベースを作ることができます。既存のツールを使うメリットは、従業員にとって手軽であり、導入コストを抑えられることです。
ただし、大量のデータを扱う場合、検索で目的の情報が見つかりにくくなる課題があります。この課題の対策として、情報整理がしやすいフォーマットにしたり、タグ付けを利用したりすることが考えられます。
また、Excel・Wordなどは、セキュリティ性が高くないため、機密情報については慎重な取り扱いが求められます。利用の際は、アクセス権の制御や暗号化を活用することに加え、定期的な監査を行うなど、安全対策を講じることが推奨されます。
ナレッジマネジメントツールを活用する
ナレッジマネジメントツールとは、従業員の知見を社内全体に共有するためのツールであり、言い換えれば、ナレッジベースを利用するためのツールです。ツールによって、データの共有方法は異なり、以下の類型に大別することができます。
データベース型 | データベースに情報を蓄積する |
データマイニング型 | データを分析して、新たな知見を見出す |
社内Wiki型 | 社内で自由に編集できる |
ヘルプデスク型 | FAQやチャットボットなど、一問一答式で情報を共有する |
検索特化型 | 検索性に優れ、曖昧なキーワードでも情報を見つけやすい |
これらのツールは、コスト(初期費用や月額費用など)がかかりますが、目的に応じて優れた機能を提供します。例えば、データマイニング型なら、AIや統計的な方法によってデータを分析することで、経営戦略に役立てることができます。
また、いずれのツールも検索性に優れ、目的の情報を見つけやすいことがメリットです。ExcleやWordと比較して万全なセキュリティ対策ができ、クラウド型のツールなら、セキュリティ対策をサービス提供者(ベンダー)に任せることができます。
ナレッジマネジメントツールとは?導入のメリットや選び方を解説
ナレッジマネジメントツールとは、社員が持つ知識や経験などを社内で共有するためのツールです。本記事では、ナレッジマネジメントツールをよく知らない方・導入を検討している方のために、ナレッジマネジメントツールの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。
ナレッジベースを導入する際のポイント
ナレッジベースは、適切に導入・運用しなければ、その効果を上げることはできません。ここでは、ナレッジベースを導入する際のポイントを解説します。
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ナレッジベースを導入する際のポイント
対象範囲を定める
ナレッジベースに蓄積するのはどのような情報か、対象範囲を定めることも重要です。どの部署の、どの業務のナレッジを集めるのか、明確にしておきましょう。
情報は多ければ良いというわけではなく、不要なものまで蓄積すると管理が複雑になります。対象範囲を決めるには、まず業務フローを把握し、必要な情報を体系的に整理しておく必要があります。
また、どの程度の粒度の情報まで蓄積したいのかも確認しておくべきです。細かい作業手順などは、ナレッジベースではなくマニュアル等にまとめた方が管理しやすい場合もあります。
社内に導入メリットを共有する
ナレッジベースを導入することは、社内全体で知見に関する管理方法が変わることを意味します。これは、業務の流れを変更する必要性も伴います。そのため、ナレッジベースの浸透には時間がかかります。
社内で円滑にナレッジベースを利用できるようになるためには、事前に社内で導入メリットを共有しておくことが大切です。導入メリットを共有する際は、社内の課題を明らかにし、ナレッジベースの導入でどのような成果に期待できるのかを具体的に示せるようにします。
導入の目的・目標を明確にすることで、従業員が積極的にナレッジベースを利用する可能性を高めることができます。
ナレッジベースの検索性を高める
ナレッジベースを導入しても、情報の蓄積が不十分だったり、検索性が低かったりすると、目的の情報にスムーズにアクセスすることができなくなります。
情報の蓄積は、時間や労力がかかるため、企業が情報を蓄積するための時間を作るように努めることが大切です。情報の検索性を高めるための対策例については、以下にまとめます。
- 情報を1ヶ所に集約する
- 誰でも利用しやすい場所にナレッジマネジメントツールを設置する
- データのフォーマットを統一しておく
- カテゴリーやタグなどを活用する
自社で独自にナレッジベースを作るか、ナレッジマネジメントツールを利用するかによって、工夫の仕方は異なります。しかし、上記の例は、いずれの場合でも検索性を高めるための一般的な方法です。
常に最新の情報に更新する
ある時点では正しかった情報も、時間の経過によって不適切になる場合があります。ビジネスの状況は常に変化するため、ナレッジベースも最新の情報に更新しなければ、従業員は不適切な情報にアクセスすることになってしまいます。
これが、顧客向けのシステムに活用していた場合、顧客に誤った情報を提供してしまい、企業の信頼性を低下させてしまうことになりかねません。そのため、ナレッジベースの情報は、定期的に更新・修正することが重要です。
その対策の1つとして、導入段階で、管理がしやすいようにナレッジベースを構築する必要があります。ナレッジマネジメントツールを選ぶ場合は、管理する際の視点も踏まえて、情報更新がしやすいものを選ぶようにしましょう。
まとめ
ナレッジベースは、社内の知識を効率的に共有するためのデータベースです。業務効率化・顧客満足度向上・人材育成コストの削減など、さまざまなメリットを生み出します。また、現代の労働課題や働き方改革にも対応しており、生産性の向上に寄与します。
ただし、ナレッジベースは、構築や従業員間の浸透に時間がかかります。そのため、ナレッジベースを導入する際には、自社の課題を明確にし、目的・目標を社内で共有することが大切です。また、検索性を高める工夫で、利便性を向上させる必要もあります。
ナレッジマネジメントツールを利用すれば、ナレッジベースを構築する時間を短縮でき、情報の蓄積もスムーズです。また、検索性に優れており、ツールによっては経営戦略のための分析が可能なものもあります。有効な情報共有手段として、ご検討ください。
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