ナレッジ共有とは?共有のメリットや共有する際のポイントも解説
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- ナレッジ共有とは、個々の社員が持つ知識やスキルを組織全体に共有する取り組み
- ナレッジ共有により、業務効率化や属人化解消といった効果が期待できる
- ナレッジ共有の際は目的を明確にし、常に最新の情報に更新することが重要である
ナレッジ共有とは、個々の社員が持つ知識やスキルを組織全体が使えるように共有する取り組みのことです。ナレッジ共有により、業務効率化や属人化解消といった効果が期待できます。本記事では、ナレッジ共有のメリットやフレームワーク、共有する際のポイントなどを解説します。
ナレッジ共有とは
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ナレッジ共有とは、業務を通じて獲得したナレッジを部署内などのメンバーと共有することです。ナレッジは、「知識」を意味する「knowledge」が語源の和製英語で、世間一般的には「ノウハウ」「スキル」を含めた言葉として認知されています。
本記事では、ナレッジ共有の重要性やメリット、ナレッジ共有を成功させるためのポイントなどを解説します。
ナレッジ共有の重要性
働き方の多様化や人材の流動化を受け、ナレッジ共有の重要性が高まっています。たとえば、リモートワークの普及により、オフィスで同僚と一緒に仕事をする機会が減りました。
また、新卒入社した企業に定年まで勤めるケースが少なくなり、新人社員は先輩社員の背中を見て学ぶという従来のスタイルも通用しなくなっています。
つまり、近年の企業では、他社員の働き方・経験を自然に見聞きする機会が少なく、必然的に、業務に関する知見を得る機会も減少しています。
業務の知見が狭くなることは、パフォーマンスの低下を招く恐れがあります。そのような事態を防ぐためにも企業は社員に対し、積極的なナレッジの共有を促すことが大切です。
企業の競争優位性を高めることにつながる
企業の組織内におけるナレッジ共有を活性化させることで、新しいアイデアの創出が促進され、新製品・新サービスの開発につながります。さらに、パートナーシップによる新規事業の創出など、社外との知識共有によっても新しい技術・ビジネスモデルが生まれています。
市場環境の変化が激しい現代では、スピーディーな意思決定と問題解決が必要とされますが、ナレッジ共有によって過去の成功や失敗事例を即座に参照できると、最適な戦略を素早く策定することが可能です。
また、AIの技術やデジタル化へも柔軟に対応していくことにより、企業の競争優位性を高められます。ナレッジ共有は、企業独自の戦略的な要素としても、重要性が高まっています。
ナレッジ共有の主なステップ
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ナレッジ共有によって、個人や組織が持ち合わせている知識を他者とスムーズに共有するには、効率的なステップを踏む必要があります。ナレッジ共有の主なステップは、以下のとおりです。
- 共有すべき知識の収集
- 知識の整理とわかりやすい構造化
- ツールなどを活用した知識の共有
- 共有された知識を使って問題を解決
- フィードバックと改善を行う
ナレッジ共有では、ビジネスシーンで広く活用できるような知識を収集し、業務効率化を図るのが基本的な活用方法です。知識の可視化・構造化には、ドキュメント・動画・データベースなど統一されたフォーマットによる整理が重要です。
さらに、誰でもわかりやすく使いやすい共有方法を選択し、迅速な問題解決が行えるような体制づくりにつなげられると、組織全体の成長にも役立ちます。
ナレッジ共有のメリット
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ナレッジ共有には、業務の効率化や属人化の防止などさまざまなメリットが期待できます。ここからは、ナレッジ共有の主なメリットについて解説します。
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アクセス数を調査する際のポイント
業務を効率化できる
ナレッジ共有によって業務効率化につながります。一般的に、業務経験が長い社員ほど業務の効率性や生産性が高くなりますが、それは業務を通して得たナレッジが豊富であるからです。
反対に、業務経験の浅い社員はナレッジが少ないため、ベテラン社員に比べて業務の効率性は低くなります。ナレッジを共有することで、ベテラン社員のナレッジを新人社員にも共有できます。
業務経験の少ない社員でもノウハウを活用しながら業務にあたれるため、ベテラン社員と同等の業務効率化に期待することが可能です。
他部署との情報共有がスムーズになる
ナレッジを共有することで、他部署や顧客との情報共有がスムーズになります。プロジェクトや業務によっては、他部署との連携が必要不可欠な場合もありますが、情報共有できる体制が整っていないと、業務の滞りや認識のずれが生じるリスクがあります。
しかし、ナレッジ共有によって顧客情報や競合他社の情報を企業内で共有できると、顧客の問い合わせ対応の質が向上したり、新製品の開発に活用できたりする可能性が高いです。さらに、顧客満足度や企業全体の付加価値向上にも期待できます。
業務の属人化を防ぐ
ナレッジ共有により、業務の属人化を防止できるメリットがあります。難易度の高い業務は、その経験や知識が豊富な社員に属人化しやすい傾向があります。
業務ノウハウを組織全体で蓄積しないまま担当者が休職・離職すると、他の誰も業務の進め方を知らないという事態に陥りかねません。そこで、ナレッジを共有することにより、組織全体で同レベルの業務ノウハウを蓄積できるため、業務の属人化を防げます。
新人研修の時間を削減できる
新人研修の時間・手間を削減できる点も、ナレッジ共有のメリットです。ナレッジには、新人社員が一人前に育つまでの過程も含まれます。
その過程をもとにしたプログラムを組むことで、従来の新人研修よりも効率的な業務知識・スキルを伝授でき、新人研修にかかる時間の短縮化が可能です。企業にとっては、即戦力を確保できるため、組織全体での業務効率と生産性の向上にもつながります。
社員同士の関係性を良好に保てる
ナレッジ共有は、社員同士の関係の円滑化にも役立ちます。一般的に、ナレッジが豊富な社員ほど仕事が早く正確なため、多くの仕事を任せられる傾向があります。
しかし、特定の社員に業務負担が集中すると、評価の偏りから公平性がなくなるなど社員間での不満が生じやすくなり、関係が悪化する可能性があります。そこで、ナレッジを共有できると、社員間の知識格差を解消しながら、業務スピード・品質の均一化を狙えます。
社員の公平性を確保し、円滑な人間関係を構築することが可能です。
ナレッジ共有の考え方・フレームワーク
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ナレッジ共有においては、「暗黙知と形式知」「SECI」を理解しておく必要があります。ここでは、ナレッジ共有の考え方・フレームワークについて解説します。
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ナレッジマネジメントとは、個人が持つ知識やスキルなどを組織で共有し活用する経営手法です。ナレッジマネジメント導入により、組織力の強化や業務効率化といった効果が期待できます。この記事ではナレッジマネジメントの意味やメリット、実践のステップなどを解説します。
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暗黙知と形式知
ナレッジには「暗黙知」と「形式知」の2種類があります。ナレッジ共有においては、暗黙知を形式知に変える取り組みが必要です。しかし、暗黙知には、経験が生む勘のような言語化しにくい情報も含まれるため、変換が難しい場合もあるでしょう。
その際は、以下で解説するSECIモデルを活用して、他者と共同作業を行うなどの手順を踏むことにより、形式知を獲得しやすくなります。
暗黙知 | 個人の経験で得た「言語化されていない知識」 |
形式知 | 文章・表・図などを使い「可視化された状態の知識」 |
SECIモデル
暗黙知を形式知に変えるフレームワークとして、「SECIモデル」があります。SECIモデルは次のような4つのステップで構成されており、段階を追って実践することで、形式知を獲得できます。
暗黙知を持つ社員自身は上手く言語化できない場合でも、他者との会話などからヒントを得て言語化・可視化に繋がる場合もあるでしょう。まずは、自身が持つ暗黙知をどうにかして他社に共有しようとする姿勢が大切です。
Socialization(共同化) | 複数社員で共同で業務に取り組み、お互いの暗黙知を共有し合う |
Externalization(表出化) | 共同化で表出した暗黙知を文章・表・図などを用いて表現する |
Combination(連結化) | 表出化で可視化した知識を他の知識と組み合わせ、新しい知識として創出する |
Internalization(内面化) | 新しく得た知識を、学習・体験を通して各自の内面に落とし込む |
ナレッジ共有のポイント
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ナレッジ共有をスムーズに進めるには、いくつかのポイントを押さえるのがおすすめです。ここでは、ナレッジ共有のポイントについて解説します。
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ナレッジ共有の目的を明確にする
ナレッジ共有の際は、あらかじめ目的を明確にしましょう。たとえば、「業務の属人化を解消する」といった目的の設定が必要です。目的がないままナレッジ共有を始めると、どのナレッジをどのように共有すべきかが判断できず、施策が形骸化する恐れがあります。
また、目的が不明瞭では、社員がナレッジ共有の意義を見出せず、積極的に取り組まない恐れがあります。そのような事態を避けるためにも、ナレッジ共有では初めに目的を明確にし、全社員に周知することが大切です。
ナレッジ共有の担当者を決める
明確な担当者がいない場合、他人任せになる恐れがあるため、ナレッジ共有の担当者を決めておくことも大切です。また、ナレッジ共有の担当者が選任されていない場合、社員各自が自分の考えに基づいて自由に行動する可能性があります。
これでは、さまざまな知識が無秩序に乱立する恐れがあり、かえってナレッジの共有が難しくなります。混乱を防ぐためにも責任の所在を明らかにし、ルールに則ったナレッジ共有を推進することが重要です。
ナレッジ共有を促進する仕組みをつくる
ナレッジ共有を浸透させるには、ナレッジ共有を促進するような仕組みを構築する必要があります。仕組みの例として、次のようなものが挙げられます。
- 業務報告書を作成する
- 会議の内容を議事録にまとめる
- 顧客からの問い合わせ履歴をExcelに残す
ナレッジ共有を促進する上で大切なポイントは、情報を残しやすい環境を整えておくことです。上記のような施策は日頃の業務に取り入れられていることも多く、全社員が取り組みやすいでしょう。
なお、新しい施策を採用する場合は、社員が記入や操作の仕方に迷わずに済むよう記入例を掲示したり、システムの操作マニュアルを整備したりなどの取り組みも必要です。
常に最新の情報に更新する
ナレッジ共有では、常に最新の情報に更新することが重要です。情報は鮮度が大切であり、古い情報をいつまでも使い続けていると、顧客や取引先からの信頼を失う恐れがあります。
たとえば、自社製品がリニューアルした場合、営業担当者は変更点がある製品の特徴や従来品との違いを理解しておく必要があります。この作業をスムーズに行うためにも、ナレッジは適宜アップデートしていかなければなりません。
併せて、全社員に同レベルのナレッジを提供するためにも、ナレッジの更新・削除・追加があった際には、全社員に同時に周知できるような仕組みやルール作りが必要です。
ナレッジマネジメントツールを活用する
ナレッジ共有には、ナレッジマネジメントツールを活用するのもおすすめです。ナレッジマネジメントツールとは、ナレッジの登録・削除・閲覧などを一元管理できるシステムです。
たとえば、ヘルプデスク機能・ファイル共有機能・検索機能・チャット機能などが標準搭載されており、社員が各自で得たナレッジの投稿や検索を効率的に行えます。また、テンプレート機能が備わったツールなら、必要項目の入力だけで簡単にナレッジを共有できます。
ナレッジマネジメントツールは、情報の更新の際にも便利です。システムを操作するだけで、その内容がアクセス権のある社員全員に共有されるため、個別に周知する手間を省けます。
さまざまな機能を備えたナレッジマネジメントツールの導入によって、手間のかかるナレッジの共有作業を簡略化できます。社員の業務効率化をはじめ、効果的なナレッジの蓄積につながります。
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ナレッジマネジメントツールとは?導入のメリットや選び方を解説
ナレッジマネジメントツールとは、社員が持つ知識や経験などを社内で共有するためのツールです。本記事では、ナレッジマネジメントツールをよく知らない方・導入を検討している方のために、ナレッジマネジメントツールの機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。
まとめ
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ナレッジとは、業務を通じて得た知識やスキル・ノウハウを指します。働き方の多様化や人材の流動化により、組織全体でのナレッジの蓄積が難しくなっていることから、積極的なナレッジ共有が重要視されています。
企業のナレッジ共有では、業務効率の向上や業務の属人化の防止、新人研修の即戦力化につながります。ナレッジ共有をスムーズに進めるには、目的の明確化やナレッジ共有を促進する仕組みの構築が必要です。
ナレッジマネジメントツールは、ナレッジ共有に必要な機能を備えており、社内のナレッジ共有の促進に役立ちます。ナレッジ共有に課題を抱えている企業は、ナレッジマネジメントツールの導入がおすすめです。
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