年末調整電子化の義務化はいつから?電子化に関する注意点も解説
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- 年末調整は一部の企業を対象に、令和3年1月提出分から電子化が義務化されている
- 電子化が義務ではない企業もあるため、自社が対象かどうか確認する必要がある
- 年末調整に関連する書類には、電子帳簿保存法の対象となっているものもある
年末調整は一部の企業を対象に、電子化が義務化されています。しかし、すべての企業の義務ではないため、自社が対象となっているのか確認が必要です。この記事では年末調整の電子化がいつから義務化されたか、また電子化に際して注意したいポイントなどを解説します。
年末調整の電子化はいつから義務化されたか
年末調整の電子化が義務化されたのは、2021年1月の申告分からです。ただし、対象となる企業は、「前々年度に発行した法定調書が種類ごとにみて100枚以上である企業」です。たとえば、2年前の源泉徴収票の発行数が200枚の企業は、義務化の対象です。
上記のような企業は、2021年より「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」等の電子上で法定調書を提出する必要があります。これを受け、必然的に年末調整も電子化しなければならなくなりました。
なお、上記以外の企業については、年末調整の電子化は義務づけられていません。そのため、従来通り紙の書類による年末調整も可能です。
参考:No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上場合のe-Tax、光ディスク等又はクラウド等による提出義務|国税庁
そもそも年末調整の電子化とは
年末調整の電子化とは、年末調整用の関係書類の作成・提出や、税の控除額の計算・控除証明書の提出などを電子化して一元的に行うことです。作成した年末調整データは、そのままオンライン上で保管できます。
従来は紙に手書きで行なっていた申告書をオンラインで作成・保管できることで、従業員・企業の双方に様々なメリットが期待できます。そのため、義務化の対象外の企業でも、年末調整の電子化を導入する企業は増加しています。
年末調整は現在、電子化が進められています。オンラインで申請すれば紙ベースでの申請よりも効率化でき、従業員への負担も少なくなります。この記事では、年末調整を電子化するメリットやペーパーレス化できる書類、申請の手順、注意点などを解説します。
年末調整の電子化に関する注意点
年末調整の電子化には様々なメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここからは、年末調整の電子化における注意点をご紹介していきます。
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年末調整の電子化に関する注意点
すべての企業の義務ではない
上述の通り、年末調整の電子化が義務づけられているのは、「前々年度に発行した法定調書が種類ごとにみて100枚以上である企業」のみです。すべての企業に電子化が義務づけられているわけではないため、自社が対象となるのかどうか確認する必要があります。
電子帳簿保存法の対象となる書類もある
電子化できる年末調整の申告書の中でも、「給与所得者の源泉徴収に関する申告書」については、電子帳簿保存法の対象となる点に留意しましょう。具体的には、次のような書類が電子帳簿保存法の対象になります。
- 給与所得者の扶養控除等申告書
- 従たる給与についての扶養控除等申告書
- 給与所得者の配偶者控除等申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
電子帳簿保存法の対象書類は、7年間の保管が義務づけられているほか、保管の仕方にも様々な要件があります。
年末調整を電子化する場合は、これらの要件を満たすような環境の整備が必要です。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、税制関連の書類を電子データとして保管する際のルールをまとめた法律です。たとえば、電子上で作成したデータをそのまま電子上で保管する方法や、紙媒体で受け取った書類を電子データ化する方法がまとめられています。
電子帳簿保存法により、これまで紙媒体で保管していた書類の一部は、電子上での管理が必要となりました。法令に違反すると罰則が課せられる恐れがあるため、どの書類が電子帳簿保存法の対象になるのか慎重に確認する必要があります。
義務化されていない企業でも電子化はおすすめ
年末調整の電子化は、一部の企業を除いて義務ではありません。ただし、年末調整の電子化には、従業員・企業の双方にメリットがあるため、対象外の企業であっても、導入がおすすめです。
ここからは、年末調整を電子化するメリットについて解説します。
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年末調整を電子化するメリット
従業員側のメリット
年末調整を電子化することで、従業員にとっては以下のようなメリットを得られます。
- 紙書類に手書きする手間を削減できる
- 面倒な税控除の計算も自動で行われる
- 税額の計算ミスのリスクが減る
- 控除証明書の取得も電子上で完結できる
年末調整の書類には必要な書類が多く、従業員は通常の業務を行いながら書類を作成する必要があります。そのため、電子化によって、オンライン上で必要事項を入力するだけで書類の作成を完了できることは大きなメリットです。
企業側のメリット
年末調整の電子化により、企業側は以下のようなメリットに期待できます。
- 従業員用の申告書の配布・回収の手間を削減できる
- 申告書のチェック作業が簡単になる
- 社内のペーパーレス化により、紙代・印刷代・保管スペースを節約できる
従業員が提出する書類にミスがないかを確認する作業は、非常に手間がかかり、残業をしなければならないケースも多いです。年末調整の電子化によってこの作業を自動で行うことができるため、大きな業務効率化に繋がり、担当者の負担を軽減できます。
年末調整を部分的に電子化する際のポイント
紙での申告に慣れている従業員が多い企業では、年末調整の電子化に抵抗感や拒否感を示され、電子化に踏み切るのが難しいケースもあります。この場合は、年末調整の一部を電子化するのがおすすめです。
具体的には、以下のようなシステムを活用することで、年末調整を部分的に電子化することが可能です。従業員が電子化に慣れてきたら、徐々に電子化する範囲を広げていくのも効果的です。
AI-OCR
AI-OCRとは、OCRと呼ばれる手書き文字やテキストを文字データに変換する技術に、AIを組み合わせた機能です。
この機能の利用により、従業員から提出された紙の申告書を自動で電子テキスト化できます。紙書類の確認作業に比べて、労務担当者の負担を軽減できるでしょう。
RPA
RPAとは、パソコンで行う定型作業を自動化できるシステムです。RPAを年末調整に用いることで、書類のデータ入力や転記作業、書類に不備がないかのチェックの自動化が可能になります。
RPAは人の判断が必要になるような作業には向いていませんが、これらのシンプルかつ繰り返し行うような作業に適しています。RPAの活用により、担当者は年末調整に関する作業に割く時間を削減でき、本来の業務に集中できます。
年末調整の電子化には年末調整ソフトの導入が有効
年末調整を電子化するやり方として、年末調整のソフトの導入が不可欠です。年末調整ソフトとは、従業員用の申告書の配布や回収のほか、税額控除の計算・法定調書の作成や提出を電子上で完結できるツールです。
年末調整ソフトには様々な種類があり、中には無料で利用できる製品もあります。国税庁が提供する無料の年末調整ソフトもあり、システムコストを抑えたい中小企業などは導入を検討するのがおすすめです。
年末調整ソフト とは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説
年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と、導入するメリット・デメリットの他、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。
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年末調整の電子化には年末調整ソフトの導入を
電子化した年末調整の流れ
電子化した年末調整の流れは、大まかに次のようになっています。
- 従業員に「マイナポータル」に登録してもらう
- 年末調整ソフトの導入
- 各従業員が従業員が保険会社などから控除証明書などを電子データで取得
- 各従業員が「3」を含めた必要項目を年末調整ソフトに入力
- 労務担当者が「4」を確認
- 企業が年末調整のデータを電子上で送信
まず行うことは、従業員に「マイナポータル」に登録してもらうことです。マイナポータルとは、様々な行政手続きをオンライン上で行えるWebサイトです。年末調整においては、保険会社・金融機関から控除証明書のデータを電子上で取得するため、登録が必須です。
なお、マイナポータルのデータを年末調整ソフトに連携するには、従業員のマイナンバーカードの取得や、カード読み取り用のICリーダーが必要になります。企業は、これらも手配しておかなければなりません。
年末調整の電子化は準備を万全に
年末調整を電子化するには、従業員への早めの周知が必要です。前述の通り、年末調整の電子化には、従業員のマイナポータルの登録やマイナンバーカードの取得が必要であるためです。
従業員の協力なくして、年末調整の電子化は実現できません。スムーズに電子化を実現するためにも、従業員への早めの周知を心がけて理解と協力を得ておきましょう。
また、従業員が電子上での年末調整業務に戸惑わなくて済むようマニュアルの整備やサポート体制の確立も必要です。
まとめ
一部の企業については、2021年より年末調整の電子化が義務づけられています。対象外の企業については、年末調整の電子化は義務ではないものの、多くのメリットを得られることから導入が推奨されています。
年末調整を電子化するにあたり、必須となるのが年末調整ソフトです。導入によって、年末調整の申告書の作成や面倒な税額控除の計算を簡略化できるなど、従業員・企業の双方に大きなメリットがあります。
年末調整業務に課題を抱えている企業は、年末調整ソフトを導入し、年末調整を電子化するのがおすすめです。
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