年末調整とは?受けられる控除や必要書類などをわかりやすく解説

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  • 年末調整とは、対象の年度内における所得税の過不足を調整する手続きのことである
  • 年末調整で受けられる控除には、扶養控除や基礎控除、生命保険料控除などがある
  • 年末調整を行わないと、税金の過払いが起きたり、企業にペナルティが課せられたりする

年末調整とは、所得税の過不足を調整する手続きのことを指します。年末調整を行うことで各種控除を受けることができますが、企業が適切に行えないと罰則を受けることもあり注意が必要です。本記事では、年末調整に必要な書類や年末調整を行わないとどうなるかなどを解説します。

目次

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  1. 年末調整とは
  2. 年末調整の対象になる人・ならない人
  3. 年末調整で受けられる控除
  4. 従業員が提出する年末調整に必要な書類
  5. 年末調整をしないとどうなるのか
  6. 年末調整はいつからいつまでにやるべきか
  7. 年末調整を忘れていた場合は還付申告を行う
  8. 年末調整業務を効率化するなら年末調整ソフトがおすすめ
  9. まとめ

年末調整とは

年末調整は、給与所得者が支払うべき所得税額を算出し、1年間に給与から天引きされた源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。

毎月の給与や賞与などから、一定率の源泉徴収税を差し引いて納税を行うのが基本ですが、源泉徴収税は1年間の概算であり、正確な納税額ではありません。そのため、実際の税金が源泉徴収より多ければ差額を追加納付し、少なければ過剰に納めていた分が還付されます。

この手続きは勤務先(会社)を通じて行われ、年末調整をしないと納税上のデメリットが生じるだけでなく、雇用主がペナルティを受ける可能性があります。

参考:年末調整とは|国税庁

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は、どちらも所得税に関わる手続きですが、役割や主体が異なります。まず年末調整は、会社が従業員の所得税を代行して申告や納税を行う手続きです。

対して確定申告は個人が行うものであり、自分の所得や支出を税務署に申告し、最終的な所得税額を納税する手続きです。個人事業主をはじめ、年金受給者など特定の条件に該当する人、会社員であっても補填の必要がある場合には確定申告を行います。

また、双方では申告期間と受けられる控除の種類にも違いがあります。詳細は以下の通りです。

年末調整項目確定申告
会社手続きを行う主体個人
会社員・公務員対象者個人事業主・年金受給者
当年11月末~12月上旬(会社が定めた期間)申告期間翌年2月16日〜3月15日
14種類受けられる控除の種類・年末調整で受けられる控除
・医療費控除・寄附金控除
・雑損控除・青色申告特別控除

年末調整の対象になる人・ならない人

年末調整は所得税を適正に計算し、源泉徴収した税額を調整する手続きですが、その対象となる人や除外される人は具体的な基準に基づいて定められます。そして、所得や勤務形態など、さまざまな条件が関わってきます。

ここでは、年末調整の対象となる人や除外される人の基準を解説します。

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12月に行う年末調整の対象になる人

毎年12月に行う年末調整の対象になる人は、会社などで通年勤務している人や、年の途中から就職して年末まで働いている人です。具体的には、1月から12月まで同じ会社で働いた人、年内の中途採用で年末まで現職に勤務した人が該当します。

さらに、短期間で複数の仕事をした人や、青色事業専従者と呼ばれる特殊な雇用形態の人も含まれます。毎月の収入から源泉徴収された税金を、年間の実際の所得に合わせて再計算し、適切な税金を確定するのが年末調整です。

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年の途中で行う年末調整の対象になる人

年の途中で年末調整の対象になる場合があります。ここからは、国税庁が提示している年の途中で行う年末調整の対象になる人々について解説します。

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年の途中で海外勤務等で非居住者になった

年の途中で海外勤務などで日本を離れる場合、所得税法に基づき居住者と非居住者の区分が重要になります。たとえば、日本で給与を受け取る居住者で、該当の年の給与額が2,000万円以下で、かつ1年以上の予定で海外に転勤する場合、年末調整の対象になります。

その際、会社はその居住者が海外に出国する前までに、年末調整を行わなければなりません。なお、所得税法において居住者は日本国内外の所得に課税されますが、非居住者には日本国内で得た所得(国内源泉所得)のみが課税されると定められています。

参考:No.2517 海外に転勤する人の年末調整と転勤後の源泉徴収|国税庁

年の途中で死亡によって退職した

年の途中で死亡によって退職したケースでは、年末調整の対象になることがあります。社員が支給期を迎えてから亡くなった場合、それまでの給料は死亡した社員の所得となります。この給料に関しては、源泉徴収が行われます。

一般的に控除額が多い場合は戻し、少ない場合は不足分を加算して控除します。会社側も同様に精算を行い、正確な所得税の額を計算します。

ただし、支給期を迎えてから死亡した場合は源泉徴収の対象となりますが、支給期を迎える前に亡くなった場合は源泉徴収が行われず、相続税の対象となります。

年の途中で著しい心身の障害のため退職した

年の途中で著しい心身の障害によって退職した場合、その年の年末調整の対象となるかは状況次第です。一般的に、退職した時点から再就職が不可能で、かつ退職後に他から年内の給与の受け取りが困難であることが明確な場合、年末調整の対象となります。

ただし、再就職の意思や実際の動向など、さまざまな要素も考慮されます。特に、心身の障害による退職は重症なケースに限定されます。たとえば、大事故やそれに準じるケースでは、年の途中での退職は年末調整の対象にはなりません。

また、著しい心身の障害による退職者であっても、再就職の意思や再就職後の給与受給の見込みがある場合は、年末調整の対象とはなりません。

12月に支払われる給与を受け取って年の途中で退職した

12月に支払われる給与を受け取り、同時に年の途中で退職した場合、本年の年末調整の対象になります。この状況では、再就職するかどうかや再就職先の有無は関係ありません。

12月に支給された給与を受け取ってからすぐに退職すると、その年の年末調整は退職した会社で受けることになります。新たな給与を受け取る見込みがないことが重要であり、再就職しても年内に給与を受け取らないという、確実な見通しがある場合に該当します。

本年の給与総額が103万円以下かつ年の途中で退職したパート勤務者

年の途中で退職したパート勤務者は、年末調整の対象になることがあります。たとえば、本年の給与総額が103万円以下であり、年の途中で退職した場合です。パートやアルバイトで得る収入は、基本的に給与所得とみなされます。

パートの収入金額が103万円(給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円を合算したもの)以下であることに加え、他に所得がない場合は所得税の対象になりません

したがって、パート勤務者が年の途中で退職した場合、103万円以下の年収内で源泉徴収された所得税は本来支払う必要がないものであるため、年末調整を通じて支払った所得税分が還付されることがあります。

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年末調整の対象にならない人

年末調整の必要がないケースにはいくつかのパターンがあります。収入が年間で2,000万円を超える従業員や、災害減免法による源泉所得税の徴収猶予を受けている人、複数の勤務先から給与を得ており、他の勤務先に扶養控除を提出している人などが含まれます。

また、年の途中で退職し、12月31日に在籍していない従業員も年末調整の対象外です。たとえば、1年の途中で転職した場合、退職する前の会社では年末調整の対象外となり、新しい会社では年末調整の対象になります。

そのため、前の会社での年末調整は必要ありませんが、次の年度の扶養控除等申告書の提出は求められます。このように、年末調整の対象外の従業員は、本年の12月31日時点で会社に在籍していない退職者です。

転職先の会社に、本年の12月31日時点で在籍している場合は、その会社での年末調整が必要になります。

参考:No.2665 年末調整の対象になる人|国税庁

年末調整で受けられる控除

年末調整には、収入から差し引かれる控除があります。控除は収入に対して適用される特定の金額や割合に沿って行われ、実際の課税額を減らす効果があります。主に所得税や住民税の計算において、控除を利用することで支払う税金が軽減されるのが特徴です。

主要な控除として、「所得控除」「税額控除」があります。所得控除は課税対象となる収入から差し引かれるもので、子供の扶養控除や医療費控除などがあります。所得控除を受けると課税所得が減少し、その分税金も減る仕組みです。

また、税額控除は支払う税金自体を減らすものです。基本控除額として、特定の金額が税金から差し引かれる仕組みです。税額控除が多ければ多いほど、実際に支払う税金が減るため節税の効果があります。

扶養控除基礎控除
障害者控除勤労学生控除
寡婦控除ひとり親控除
生命保険料控除地震保険料控除
小規模企業共済等掛金控除住宅ローン控除(2年目以降)
所得金額調整控除配偶者控除・配偶者特別控除

参考:各種控除について(給与所得者用)|国税庁

確定申告が必要な控除

年末調整で申告可能な控除は多く存在しますが、中には年末調整では申告できない控除・確定申告を行わなければならない控除があります。主に挙げられるのは以下の通りです。

控除の種類
医療費控除雑損控除
寄付金控除住宅ローン控除(1年目)

これらの控除を受ける場合には、従業員が個人で確定申告を行う必要があるため、会社は事前に従業員全体に周知しておくことが大切です。

従業員が提出する年末調整に必要な書類

従業員が年末調整に向けて会社に提出する書類は、正確な情報提供と申告のために必要です。ここでは、従業員が提出する年末調整に必要な書類について詳しく解説します。

参考:給与所得者の方へ(令和5年分)|国税庁

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扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等(異動)申告書は、給与を受け取る従業員が自身の所得税法上の扶養状況を申告するための書類です。この申告書を提出することで、給与から受けられる扶養控除などの所得控除を適用できます。

具体的には、配偶者や子供など家族を扶養している場合に、家族に対する控除を受けるための手続きとなります。

扶養控除等(異動)申告書の提出期限は、本年の最初に給与を受け取る前日までとなっています。提出しないと控除が受けられず、余計な税金を支払うことになりかねません。したがって、給与所得者は提出を忘れず、期限内にスムーズな手続きを行いましょう。

基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「基礎控除申告書 」兼「配偶者控除申告書」兼「所得金額調整控除申告書」は、税金の控除に関する重要な情報をまとめた書類です。以下では、それぞれの概要について詳しく解説します。

基礎控除申告書

基礎控除申告書は、給与を受ける人が年末調整で最大48万円の基礎控除を受けるために提出する書類です。基礎控除は、年間の合計所得が2,500万円以下の場合に受けられます。

この控除は給与所得者のほとんどが受けられるものですが、申告書を提出しないと基礎控除が適用されず、支払う税金が増えてしまう可能性があります。

また、基礎控除は所得税や住民税の計算に重要な役割を果たす控除であり、給与所得者が正確な控除を受けるためには、基礎控除申告書の提出が必要です。

年末調整では、収入から複数の控除を差し引いた金額に対して税金が計算されますが、基礎控除はその中でも最も基本的な控除です。

参考:No.1199 基礎控除|国税庁

配偶者控除等申告書

配偶者控除等申告書は、配偶者がいる場合に関連する税金の控除を受けるための書類です。これを提出することで、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」といった特定の控除を受ける条件を満たすことができます。

提出期限は、本年の最後の給与や賞与を受け取る日の前日までです。提出された配偶者控除申告書により、年末調整の際に配偶者控除や配偶者特別控除が適用され、収める税金額を軽減できます。

参考:A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁

所得金額調整控除申告書

所得金額調整控除申告書は、特定の世帯や収入構成における税金の負担を軽くするための控除申告書です。これは、子供や介護者を抱える世帯をはじめ、給与と年金を受け取る人々を支援するための制度です。

所得金額調整控除には「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2つのタイプがあります。対象者は、所定の要件を満たすことで控除を受けることができます。

参考:No.1411 所得金額調整控除|国税庁

保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書は、生命保険料・地震保険料・社会保険料など、従業員が支払った保険料を申告するために用いられます。しかし、この控除を適用するためには、控除証明書も同時に提出する必要があります。

控除証明書は、国民年金保険料の納付額を証明する書類です。給与所得者が社会保険料控除を受ける際、年末調整や確定申告時には、控除証明書や領収証書を申告書に添付することが求められます。

保険料控除申告書は、従業員が支払った保険料を正確に記録し、税金の計算に反映させるための重要な手続きです。この手続きを行うことで、従業員の税金負担を軽減するための控除が正しく適用され、給与所得者が支払う税金を効果的に管理できるようになります。

参考:控除証明書とは何ですか。|日本年金機構

住宅借入金特別控除申告書(2年目以降)

住宅借入金等特別控除、通称「住宅ローン減税」は、住宅を購入や改築する際に税金が還付される制度です。この特別控除は、基本的に13年間継続的に適用できます。

なお、最初の年は確定申告で手続きが必要ですが、2年目以降は「住宅借入金等特別控除申告書」を使った年末調整で手続きが可能です。

この制度を利用するには、特別控除を受ける年分の合計所得が3,000万円以下の個人が、特定の条件を満たす住宅ローンを利用して住宅を新築、取得、または増改築する必要があります。

参考:年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ|国税庁

参考:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

年末調整をしないとどうなるのか

年末調整は、給与を受け取る際に行う大切な手続きですが、これを怠ると税金に関する重要な情報が抜けてしまいます。その結果、所得税や住民税の計算が適切に行われず、税金の支払いが増える可能性が生じます。

また、控除や特典を受ける機会を逃すことにもなりかねません。ここでは、年末調整を行わなかった場合に生じる具体的な影響について詳しく解説します。

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各種控除の申告ができない

年末調整を怠ると、自身の所得に関連するさまざまな控除を受けられなくなる可能性があります。年末調整の時に提出する各種申告書によって、会社が所得控除や税額控除を計算し、税金を少なくするための手続きを行ってくれます。

しかし、会社がこれらの申告書を受け取らなかったり、適切に処理してくれなかったりすると、控除の適用が受けられなくなります。その結果、自身の総所得額が増え、支払う税金の額も上がる可能性が高まります。

したがって、税金を減らすために控除を受けたい場合は、年末調整時に各種申告書を提出して適用を受けることが重要です。

税金の過払いが起きる

年末調整を行わないと、過払いした税金が返ってこないため、実際には支払う必要のない税金を納めたことになります。さらに、翌年の住民税にも影響を与えます。

住民税は前年度の所得に基づいて計算されるため、年末調整がされないと、実際の所得に合わない金額を支払うことになります。また、所得が高いほど支払う金額も増えるため、年末調整を怠ると支払う税金が実際よりも多くなる可能性があります。

つまり、年末調整を怠ると、自分のお金を必要以上に失ってしまう可能性があるため、しっかりと手続きを行うことが大切です。

確定申告の手間が増える

年末調整を怠ると、確定申告をすべて自分自身で行わなければならなくなります。すなわち、企業が行う年末調整の代わりに、自分で納税するための作業をすべて行うことになります。これには、時間がかかるだけでなく税金に関する知識も必要とされます。

税金の知識がない人や初めて確定申告をする人にとっては、調査や勉強をしながら手続きを進めることになるでしょう。具体的には、自分で給与明細から確定申告に必要な情報を集めたり、医療費や副業の所得を考慮しながら計算を行ったりする必要性が生じます。

そのため、会社側からも年末調整を受けるように働きかけることが大切です。

企業に罰則が課せられる

企業が年末調整を怠ったり、誤った情報を提出したりすると、それらに対する罰則が課される可能性があります。以下では、企業に対してどのような罰則が課せられるのかを詳しく解説します。

『1年以下の懲役または50万円以下の罰金』が適用される場合

所得税法第242条は、年末調整手続きにおいて、書類の偽りの記載や必要な届出を怠った場合に適用される規定です。

たとえば、企業が従業員の所得に関する情報を偽ったり、年末調整に必要な書類に虚偽の記載を行って税務署に提出したり、年末調整の手続き自体を怠ったりすると、所得税法第242条に基づいて罰則が科せられます。

この場合、最大で1年以下の懲役または最大50万円の罰金が科せられることがあります。企業が税務申告や所得に関する情報を虚偽で報告したり、年末調整の手続きを適切に行わなかったりする行為に対する重い罰則です。

参考:所得税法第242条|e-Gov法令検索

『10年以下の懲役または200万円以下の罰金』が適用される場合

所得税法第240条では、源泉徴収義務を怠り、従業員の給与から天引きすべき所得税を源泉徴収しない、または納付しなかった企業に適用される罰則を定めています。

これは、会社が従業員から天引きした所得税を税務署に納めなかった場合や、従業員の給与から天引きすべき所得税を天引きしていなかったり、天引きしたものの納付を怠った場合に適用されます。

企業が源泉徴収した所得税を納付しなかった場合、所得税法第240条に基づき最大で10年以下の懲役または最大200万円以下の罰金が課せられます。また、税金の未納は重大な法的違反であり、組織全体が法に則った責任を果たすことが求められます。

参考:所得税法第240条|e-Gov法令検索

年末調整はいつからいつまでにやるべきか

一般的な年末調整のスケジュールにはいくつかの重要なステップがあります。ここからは、年末調整はいつまでにやるべきか、一般的なスケジュールについて解説します。

参考:令和5年分 年末調整についてのお知らせ|国税庁

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申告書の回収と確認

年末調整の準備は11月頃から始まります。企業はこの時期に、従業員に必要な書類を配布します。書類は年末調整時に必要とされる情報を正確に反映するため、従業員は正確に記入して提出する必要があります。

会社がこれらの書類を従業員から回収し、記入内容を確認します。提出された書類に誤りがあると、所得控除額や税額控除額が正しく計算されず、誤った課税額が計算される可能性があるため注意しましょう。

年末調整の計算と源泉徴収票の作成

従業員からの申告書回収が完了した後、12月下旬までには年末調整の計算と源泉徴収票の作成が行われます。会社は従業員が提出した申告書に基づき、給与所得控除や保険料控除、住宅ローン控除などを計算します。

これらの控除を適用し、源泉徴収票としてまとめ上げます。源泉徴収票には、従業員が年間で受け取った給与・各種控除・源泉徴収税額などが記載されます。従業員は作成された源泉徴収票を受け取り、確定申告の際に必要な情報として活用します。

法定調書の作成と提出

年末調整の後、法定調書の作成と提出が行われます。期限は、支払いが確定した年の翌年1月31日です。年末調整の計算が終わったら、会社は税務署や市区町村に提出する法定調書を作成します。

法定調書には、源泉徴収票をはじめとしたさまざまな書類が含まれ、従業員が受け取った給与額・各種控除・源泉徴収税などの情報が記載されています。会社はこれらの情報を集計し、税務署や自治体に提出します。

年末調整を忘れていた場合は還付申告を行う

年末調整は、基本的に1年間のスケジュールの中で提出までの期限が設けられています。ただし、従業員が申告書の提出を忘れていた場合など、年末調整の提出期限が過ぎてしまった際には、従業員が個人で確定申告を行わなければなりません。

そして、1年間で納めすぎた税金がある場合には、確定申告と合わせて還付申告を行います。還付申告は納税者の義務ではありませんが、払いすぎていた場合は還付金として手元に戻ってくるため、必ず行っておきたいものです。

また、年末調整では提出した申告書の不備などによって、すべての控除申請が行われないことも考えられます。よって、医療費控除や寄附金控除といった会社では把握しきれない申告に関しては、別途個人で還付申告を行う必要があります。

なお、還付申告は申告すべき年の1月1日から5年間のみ申告が可能です。

参考:No.2030 還付申告|国税庁

年末調整業務を効率化するなら年末調整ソフトがおすすめ

年末調整の煩雑な業務を効率化するためには、年末調整ソフトの活用がおすすめです。このソフトは、従業員が年末調整に必要な書類を電子的に作成でき、従業員の給与や控除に関する計算作業を自動化します。

年末調整ソフトを活用することで、手作業での計算や判定作業を省くことができるため、間違いなどのリスク軽減につながり、税務申告の誤りや不備を減らすことが可能です。また、年末調整の書類作成に要する時間も大幅に短縮されます。

手作業で計算や判定をすると時間がかかりがちですが、年末調整ソフトを使うことで迅速に作業を進められます。さらに、控除額や適用条件の変更にも迅速に対応できるため、法改正などで情報が更新された場合でも、柔軟な対応が可能です。

年末調整ソフトを導入することで、手間がかかる計算作業を自動化し、正確に年末調整の書類を作成できるため、効率的な業務の遂行が実現するでしょう。

年末調整ソフト とは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説

年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と、導入するメリット・デメリットの他、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。

まとめ

年末調整は給与所得者が支払うべき所得税を調整し、年間の給与から天引きされた源泉徴収税との差額を算出する手続きです。年末調整を怠ると、企業に罰則が課されることもあるため、リスク軽減としても年末調整ソフトは非常に役立つツールです。

年末調整ソフトは控除額や書類作成、控除の判定などを自動化し、人事担当者の負担を軽減します。従業員の給与データを入力し、ソフトが自動的に所得税の控除額を計算することで必要な書類を生成できるため、手作業での集計や計算の手間が省けます。

特に、年末は多忙な時期であることから、手作業では入力ミスや負担が大きくなりがちですが、年末調整ソフトを使えば効率的に作業を進められます。したがって、年末調整をスムーズに行うためには、ソフトの導入を検討してみるのがおすすめです。

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