IVRとは?CTIとの違いや導入するメリット・注意点など解説
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- IVRは自動音声対応システムと呼ばれ、CTIに統合されているシステムの1つである
- IVRの活用により、営業時間外の対応や、オペレーターへの適切な振り分けができる
- IVRを運用する際は、コール内容や案内のセリフは簡潔にまとめ、定期的に見直しを行う
IVRとは自動音声対応を意味し、CTIに統合されているシステムの1つです。企業のコールセンターなどに導入することで、顧客の待ち時間の短縮などにつながります。本記事では、IVRとCTIの違いやIVRの主な機能、上手に運用するためのポイントなどを解説します。
IVRとは
IVRとは「Interactive Voice Response」の略で、日本語では自動音声応答システムと呼ばれています。文字通り、コンピュータを使って受信した電話などに自動で音声対応するシステムを指し、コールセンターやお客様窓口などで広く利用されています。
留守番電話とは違い、受信した電話に対して用件を確認する音声を自動的に流します。相手の声を自動認識したり、プッシュボタンによる操作を促したりして、用件ごとに適切なオペレーターや担当者に振り分けることが可能です。
IVRとCTIの違い
CTIとは「Computer Telephony Integration」の略で、電話やFAXをコンピュータと連携させるシステムを指します。コンピュータとの連携によって、既存顧客からの着信かどうかを自動判断でき、既存顧客なら顧客情報を同時に表示するといったことも可能です。
そして、着信に自動で対応するIVRもCTIの1つに含まれます。つまり、IVRはCTIに統合・搭載されているシステムの1つの機能である場合が多いです。
IVRの主な機能
IVRには、コールセンターなどにおけるスムーズな運用に向けたさまざまな機能が搭載されています。ここでは、複数の機能の中から代表的な6つの機能について解説します。
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IVRの主な機能
問い合わせへの自動対応
IVRの最も基本的な機能が問い合わせへの自動対応機能です。電話回線からの着信があるとIVRが自動受信し、あらかじめ設定された自動音声で自動的に応答を始めます。応答手順を事前に設定していることにより、電話交換の人手は不要です。
IVRの自動対応の方法は豊富にあり、問い合わせ内容に合わせた振り分けを行ったり、折り返し連絡の予約を行ったりと、自社に合わせた対応方法を選べます。また、自己解決できるFAQサイトへ誘導するのもコールセンターの混雑を解消する方法として挙げられます。
問い合わせ内容に合わせた振り分け
問い合わせへの自動対応の1つに、問い合わせ内容に合わせた振り分けがあります。発信者の用件に合わせて、最適な担当部署へと自動的に電話をつなぐことで、部署をたらい回しすることなくスムーズな対応ができ、顧客満足度の向上につながります。
例えば、自動音声で予想される用件をいくつか紹介し、発信者にプッシュ操作してもらいます。この作業を何度か繰り返して、用件を絞り込むこともできます。そして、最終的に絞り込まれた用件に合致した担当部署へと自動で電話をつなぎます。
問い合わせ内容に合わせた自動振り分けでは、今までの問い合わせ情報などを分析して、顧客がわかりやすく選択しやすい問い合わせ内容を設定することが大切です。また、自動振り分けできない問い合わせへの対応も考慮する必要があります。
通話録音
IVRには通話録音機能が搭載されており、通話を録音している旨を自動音声で発信者にあらかじめ伝えることができます。通話録音を発信者に知らせることで、過度なクレームの防止に役立ち、録音された通話は対応品質改善のための資料にも活用できます。
また、問い合わせやクレームの内容を分析することで、商品・サービスの改善や商品紹介方法の見直しなどにもつなげられます。
待ち呼通知
待ち呼(まちこ)とは、オペレーターが対応しきれずに通話待ちになっている状態のことで、待ち呼通知は現在の待ち呼の数を通知する機能です。特に、購入予定者からの入電で待ち呼が多くなると、待機時間の長さから顧客が同業他社に流れてしまう恐れがあります。
また、既存顧客でも問い合わせに対する待ち時間が長くなると、顧客満足度の低下を招き、顧客の流出につながりかねません。それらの防止に待ち呼通知が有効であり、どの分野の問い合わせが多いかを分析し、オペレーター配置の適正化に役立てることができます。
一般的には、待ち呼状態の記録とともに、オペレーターに待ち呼の人数を通知します。ただし、中には電話の発信者に対して、自分が何番目の待ち呼なのかを通知できる機能を持ったIVRもあります。
そして、待ち呼を減らすために、待ち呼が多くなりがちな問い合わせに対するFAQ(よくある質問)の充実や、待ち時間にFAQへの誘導を行うなどの対策も必要です。待ち呼が多いオペレーターは不公平感を抱き、離職率が高まるリスクがあるため注意しましょう。
リダイヤル
リダイヤル機能は、自社の保有する顧客情報に登録されている電話番号に自動的に架電して、音声案内を流す機能です。一度の架電でつながらない場合は、設定された間隔と回数でのリダイヤルも可能です。イベントの開催案内やキャンペーンの告知などで利用されます。
大勢の顧客に対して同じ内容の情報を発信する必要がある場合や、特定の時間内に一斉で架電したい場合に、人の手を使わずにできるため効率的な業務の遂行につながります。ただし、架電する顧客の選択と告知方法の使い分けを慎重に行う必要があります。
音声認識
音声認識機能は、発信者のプッシュ操作で分岐するのではなく、発信者の言葉の中にある特定の単語を認識して、関連した情報を自動的に流す機能です。システムの中には、複数の単語を組み合わせて用件を特定するIVRもあります。
また、近年では会話型AIも実用化されています。IVRでもAIを搭載した音声認識機能が増えており、発信者の言葉や不特定多数の単語を認識して、自動的に回答を作成するといった高機能なシステムも登場しています。
IVRを導入するメリット
自動音声で電話対応が可能なIVRの導入のメリットは大きく、業務効率化の実現に向け多くの企業で導入が進んでいます。ここでは、代表的な4つのメリットについて解説します。
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IVRを導入するメリット
オペレーター業務の効率化
IVRの導入は、オペレーター業務の効率化に大変有効な手段です。主に、業務の効率化に役立つ機能の1つとして振り分け機能が挙げられ、問い合わせ事項に対して最も精通しているオペレーターにつなぐことで、より適切な案内を短時間で行うことができます。
そして、適切な案内によって顧客が再度問い合わせする必要がなく、満足度の向上につながります。
また、再度問い合わせの場合でも、以前の問い合わせ情報が表示できるシステムであれば、オペレーターは以前の対応を承知した上でスムーズな案内ができ、オペレーター業務の効率化が図れます。
営業時間外でも対応可能
IVRは自動音声で顧客対応ができるため、営業時間外の問い合わせでも24時間365日対応が可能です。たとえば、オペレーターが対応できる時間を案内して再度のかけ直しを誘導したり、メールやチャットボットといった他の問い合わせ方法を紹介したりできます。
最近では、AI搭載のIVRを利用して問い合わせ事項を自動で判断し、自動音声で案内できるものも開発されています。ただし、内容によっては自動案内できないものや、問い合わせ内容に合致しない回答をする場合もあるため、注意が必要です。
顧客の待ち時間短縮
IVRの導入で、問い合わせ内容ごとの振り分けや他の問い合わせ方法への誘導、オペレータの速やかな対応で顧客の待ち時間の短縮が実現します。適切な振り分けができれば、担当者のたらい回しが削減されるだけでなく、一人ひとりへの対応時間の短縮にも貢献します。
また、IVRには折り返し予約機能を持ったものもあります。これは、自動音声とプッシュ通知で問い合わせの種類と架電可能な時間を確定し、企業側が指定時刻に顧客へ折り返し架電する方法です。顧客は待ち時間を減らし、ストレスなく問い合わせをすることができます。
オペレーター不足の解消
オペレーター業務に関する課題の1つに、労働人口の減少によるオペレーターの採用難があります。さらに、オペレーター不足が慢性化して1人当たりの負担が増すことで、離職を招いてしまう悪循環に陥っていている企業も少なくありません。
このような課題を解決するには、オペレーター業務の早急な効率化が必要とされ、IVRの導入が有効な解決方法となります。IVRを利用すれば電話を振り分ける人材が不要になり、オペレーターは特定の分野に精通でき、他の分野に対する研修の軽減が可能です。
また、FAQを充実させ、着電時や待ち呼状態の際には自動音声でFAQに誘導すれば、オペレーターへの問い合わせ自体を減らすこともできます。さらに、オペレーター不足の解消には、AIの活用も考慮した問い合わせ方法の充実も大切です。
IVRを導入するデメリット
IVRは顧客対応を効率化させるために重要ですが、導入することでデメリットにつながる場合もあります。特に、オペレーターを抱える企業の業務効率化を中心に考えてしまうと、大事な顧客対応における品質の向上が疎かになってしまいます。
例えば、なるべくオペレーターの手間を減らそうとIVRによる選択肢を増やしたり、FAQへの誘導ばかりを優先して案内したりすると、顧客対応を重視していない企業だと判断されてしまう恐れがあります。
また、自動音声は便利な反面、聞き手には簡素なイメージを与えてしまうため、オペレーターにつないだ際には良い印象を与える必要があります。つまり、オペレーターの教育も徹底することが大切であり、企業イメージにも注力しなければなりません。
IVRを導入する際の注意点
IVRを導入しても、期待した効果を得られないと導入の意味が薄れてしまいます。なお、導入が失敗してしまう原因としては、自動音声案内の設計にある場合が多いです。ここでは、自動音声案内の設計する際の注意点を解説します。
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顧客に手間や時間をかけさせてしまう可能性がある
音声案内において、顧客のボタン操作の回数・選択肢の数が多すぎると、顧客は手間と時間を要することになり、ストレスを感じてしまいます。そのため、顧客のボタン操作は2回まで、多くても3回までに抑えるのが適切です。
また、選択肢の多い音声案内は最後まで聞くのに時間がかかり、自分の問い合わせに適した番号がわからなくなる可能性もあります。その結果、長い音声案内を再度聞かなくてはならずストレスにつながってしまうため、選択肢は記憶できる4つ程度が適切とされています。
シナリオ設計によっては導入効果を得られない
シナリオとは、着電から対応までの流れを可視化したものです。シナリオ設計が不十分だと顧客が自分の用件に合う問い合わせ先がわからなくなり、結局「その他の問い合わせ」に集中してしまうことにより、IVR導入の意味がなくなってしまいます。
特に、問い合わせ内容の種類が多く、複雑なツリー構造のシナリオが必要な企業・コールセンターでは、最適なシナリオ設定が顧客の満足度を左右します。よって、導入時にあらかじめ適切なシナリオを検討し、オペレーターや担当部署に番号を割り当てることが重要です。
非常時に柔軟な対応ができるように準備しておく
自社が提供する商品・サービスにトラブルが発生した際や、災害時に緊急な対応が必要とされる際には、通常時とは違う迅速な対応が求められます。
なお、自社が用意するオペレーターの勤務体系が変化することも考えられるため、トラブル時にはどのような対応を行うのか、1つの問い合わせに顧客が集中した場合の対応などを事前にシミュレーションし、スムーズに対応できるように準備しておくことが重要です。
IVRを上手に運用するためのポイント
導入したIVRをより効果的に運用することは、費用対効果を高めるための大きな課題です。ここでは、IVRを上手に運用するための3つのポイントを解説します。
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IVRを上手に運用するためのポイント
コール内容を簡潔にわかりやすくする
自動音声の案内が不適切な場合、最後に設定されている「その他の問い合わせ」に集中してしまい、オペレーターの負担が増えることでIVRの機能を活かせなくなります。したがって、コール内容や案内のセリフは簡潔かつわかりやすくすることが大切です。
例えば、丁寧さを重視するあまり音声案内が長くなってしまったり、一般ユーザからの問い合わせに、専門用語や業界用語などが使われていたりすると離脱率を高めてしまいます。よって、IVRの活用シーンに合わせたコール内容を検討する必要があります。
オペレーターと話す選択肢を入れる
IVRの効果を感じられない場合、「その他の問い合わせ」の選択肢をなくすのでは解決につながりません。特に、問い合わせの中に顧客が求める選択肢がない場合は、「その他の問い合わせ」がないと問題を解決する方法がなくなってしまいます。
そのため、「その他の問い合わせ」が選ばれた問い合わせに対しては、直接オペレーターと話すような流れを設計し、迅速にオペレーターにつなげることが大切です。また、問い合わせ内容を記録し、今後の選択肢やアナウンスの改善資料として活用するようにしましょう。
IVRの設定は定期的に見直しを行う
新商品の発売や既存の商品に変更があった場合、問い合わせが一時的に増えたり、今までになかった問い合わせが浮上することがあります。それらに対応するためにも、IVRの設定は定期的に見直す必要があります。
なお、IVRの中には、電話対応品質の改善や顧客満足度向上などに活用できる、分析機能を搭載したものもあります。分析機能を利用すれば、問い合わせの種類・対応時間・再度問い合わせの有無などを定量的に分析可能です。
まとめ
IVRは自動音声対応を意味し、CTIに統合されているシステムの1つです。コールセンターなどに導入すれば、オペレーターへの適切な振り分けが行え、顧客の待ち時間の短縮と合わせてオペレーターの業務負担軽減にもつながります。
IVRの導入はオペレーター業務の効率化に有効な手段ですが、より効果的に利用するためにはIVRの設定の適正化が重要です。IVRを運用する際は、コール内容や案内のセリフを簡潔にまとめ、定期的に見直しを行うなど、常に客満足度を高める工夫が必要です。
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