メール配信システムにおけるセキュリティ対策とは?選び方も解説

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  • メール配信システムは個人情報を扱うものであるため、セキュリティ対策が重要である
  • メール配信システムでは情報漏えい・迷惑メール判定・メール誤送信などのリスクがある
  • セキュリティ対策としては、送信元アドレスの認証や通信データ暗号化などが有効である

メルマガやお知らせを一斉送信するには、メール配信システムの利用が便利です。しかし、顧客の個人情報を扱うため、運用する際はセキュリティに注意を払う必要があります。本記事では、メール配信システムにおけるセキュリティリスクや対策などについて解説します。

目次

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  1. メール配信システムではセキュリティが重要
  2. メール配信システムにおけるセキュリティリスク
  3. メール配信システムにおけるセキュリティ対策
  4. セキュリティ性の高いメール配信システムの選び方
  5. まとめ

メール配信システムではセキュリティが重要

メール配信システムは、メールマーケティングを行う企業などによく導入されているシステムで、メルマガ配信などを効率的に行えます。一般的なメールソフトでも送信数が少なければ一斉送信は可能ですが、メール配信システムでは大量メールの一斉送信を可能にします。

しかし、メール配信システムには、メルマガ登録や会員登録・セミナーへの参加登録などで得た、大量の個人情報が保管・管理されています。そのため、情報が漏えいすると多くの顧客に迷惑がかかるだけでなく、企業の社会的な信用低下など多くの問題に発展します。

したがって、メール配信システムには、強固なセキュリティ対策を施す必要があります。ただし、セキュリティ対策はシステム内部だけに限らず、運用をする際にも求められます。

運用をする際のセキュリティ対策とは、人為的なミスによる情報漏えいなどへの対策を指し、メール配信システムの運用ルールの策定などが必要です。

メール配信システムの仕組みとは?機能やメリット・デメリットも解説

メール配信システムとは大量のメールを一斉配信できるツールで、メルマガ配信などのメールマーケティングで配信効率を上げることが可能です。この記事では、メール配信システムの主な機能やシステム導入によるメリット・デメリット、導入の際の比較ポイントなどを詳しく解説します。

メール配信システムにおけるセキュリティリスク

顧客の個人情報を保管・管理するメール配信システムでは、強固なセキュリティ対策が必要不可欠です。ここでは、メール配信システムにおけるセキュリティリスクを、外部要因と内部要因に分けて解説します。

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メール配信システムにおけるセキュリティリスク

  1. 外部要因
  2. 内部要因

外部要因

セキュリティリスクの外部要因とは、外部から自社サーバーへの攻撃に該当するものを指します。外部要因には、不正アクセスによる情報漏えい・スパムメール判定・ブラックリスト登録などがあります。

不正アクセス

不正アクセスとは、アクセス権限のない者が自社のサーバーやシステムの内部に侵入することです。詐欺行為や個人情報の取得目的で行われることが多く、情報の抜き取りだけでなく、データの改ざんや削除なども行われます。また、システムが停止する場合もあります。

不正アクセスの手口は年々巧妙化・深刻化しているため、常に最新のセキュリティ対策を施す必要があります。メール配信システムで管理されている個人情報の漏えいは、企業の信用を失墜させ、企業の大きな損失につながる可能性があります

さらに、一度でも不正アクセスで侵入されると、バックドアと呼ばれる裏口を作られ、いつでもシステムに侵入できるように構築される場合もあり、放置するほど被害が拡大する恐れがあります。そして、不正アクセスは世界中から受けるリスクがあります。

スパムメール判定

スパムメールは迷惑メールとも呼ばれ、受信者が必要としない情報を大量に送信したメールを指します。メール配信システムで大量のメールを一斉送信すると、スパムメールと判断される場合があるため、スパム認定を避けるための対策が必要です。

ユーザーやブロバイダはスパムメールを受信しないように、さまざまな対策をしています。そして、スパムメールと判断されたメールは迷惑メールに振り分けられ、ユーザーの目に留まらなくなってしまいます

迷惑メールに振り分けられたメールは、通常の受信フォルダーに格納されたメールと比べて格段に開封率が悪くなります。そのため、送信したメルマガなどのマーケティング効果はほとんど発揮されません。

近年では、docomo・SoftBank・auなどの各社携帯キャリアや、フリーメールでも厳しいスパムメール対策が施されているため、十分な対策が求められます。

ブラックリスト登録

メール配信におけるブラックリストとは、スパムメールと判断した発信元のIPアドレスの受信拒否リストで、プロバイダやスパムメール対策団体が作成しています。ブラックリストに掲載されると、メールの振り分け以前にメール自体が相手に届きません。

ブラックリストの解除には、プロバイダや管理団体への申請が必要で、解除されない限りメールの使用はできなくなります。つまり、突然メールが届かなくなった場合は、ブラックリストに登録された可能性が高いです。

内部要因

セキュリティリスクの内部要因とは、社内の人為的ミスなどから起こるリスクで、メールの誤送信・情報の持ち出し・パスワードの流出などがあります。以下で、これらのリスクについて詳しく解説します。

メールの誤送信

ビジネスでメールの活用は不可欠ですが、人為的ミスによる誤送信が毎年増加傾向にあります。例えば、他の受信者のアドレスが分からないBCCで送るはずのメールを、受信者全員のアドレスが表示されるCCで送ってしまい、情報漏えいするケースが多くあります

また、ユーザーがメルマガ登録や会員登録をする際に、メールアドレスを間違えて入力してしまう場合もあります。該当のアドレスが存在しなければ誤送信にはなりませんが、簡単なメールアドレスの場合、他の人のアドレスと一致して送信してしまう場合も考えられます。

情報の持ち出し

どの企業においても、個人情報の持ち出しには厳密なルールが設けられており、情報漏えいを防止しています。しかし、情報の持ち出しによる情報漏えいは少なからず起こっているのが現状です。なお、情報の持ち出しには、PCやタブレットの持ち出しも含まれます。

最近では、インターネットを介してアクセスできるシステムも多いことから、持ち出したPCやタブレットで企業内のデータにアクセスできてしまいます。そのようなシステムでは、ショルダーハックや、Wi-Fi利用時のウイルス感染にも厳重な注意が必要です。

パスワードの流出

従業員によるログイン情報流出もありがちなリスクです。一般的にログイン情報には、利用者を特定するIDと設定されたパスワードがあります。これらのログイン情報は、なりすましや第三者による不正ログインを防止するためにあり、厳重に管理されなくてはなりません

特に、推測されやすいパスワードやパスワードの使い回しは、第三者に不正アクセスされるリスクが高まります。そして、個人のIDを使って第三者が不正アクセスすると、アクセスログの記録から、そのIDを持った個人が疑われることになってしまいます。

メール配信システムにおけるセキュリティ対策

メール配信システムを導入する際には、セキュリティの外部要因・内部要因を排除するような対策が施されていることが必須です。ここでは、どのような対策を行えばいいのか、具体的に解説します。

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強固なパスワードを設定する

強固なパスワードを設定し、他の人物に知られないようにすることは、セキュリティ対策の基本です。悪意ある第三者は、ブルートフォースアタックと呼ばれる、IDやパスワードを片っ端から自動試行する手口により、単純なIDやパスワードは数秒で破ってしまいます。

そこで、重要になるのが複雑なパスワードです。パスワードの条件を設定し、条件に合わないパスワードは設定できなくするのがおすすめです。また、複雑なパスワードの設定が、会社だけでなく自分を守ることにもつながることを、従業員へ周知しておくことも大切です。

送信元アドレスの認証を行う

送信元アドレスの認証とは、送信元アドレスがメール送信の権限を持っているかを確認することで、認証されないと迷惑メールに分別されてしまうおそれがあります。認証のための仕組みには、SPFレコード・DKIM署名・DMARCの3種類があります。

SPFレコード

送信者がメールを送ると、受信サーバーは送信者のIPアドレスを受け取ります。そこで、SPFレコードが指定してあれば、受信サーバーは送信元サーバーにIPアドレスを問い合わせ、IPアドレスが見つかれば、送信元の正規サーバーからの送信だと判断されます。

正規のサーバーからの送信と判断されれば、通常の受信ボックスに送られ、問い合わせたIPアドレスが見つからなければ、迷惑メールと判断されて迷惑メールフォルダに入れられてしまいます。なお、SPFレコードは、契約しているプロバイダの設定で行えます。

DKIM署名

DKIM署名が設定してあれば、送信したメールは送信サーバーが一旦受け取り、秘密鍵を用いてメールに電子署名を付与します。そして、受信者側の受信サーバーが署名付きのメールを受信し、送信元のDNSサーバーの公開鍵を取得し、署名を照合します

正しく照合できれば正規のメール、照合できなければ迷惑メールと判断されます。また、メールが改ざんされていない証明にもなります。迷惑メールの多くは送信元のメールアドレスを偽装していることが多いため、偽造でないことを証明する必要があります。

DMARC

DMARCは、SPFレコードとDKIM署名のドメイン認証を補強する認証方法で、事前にSPFレコードとDKIM署名の設定を完了させておく必要があります。

DMARCでは、なりすましメールではないか、信頼できるメールであるかを判断し、認証されなかったメールは、設定によって異なる処理が行われます

処理の方法は「隔離」「拒否」「なし」の3種類で、「隔離」は受信者の迷惑メールフォルダに移動され、「拒否」は受信者への配信は行いません。「なし」は通常通り受信者に配信されます。DMARCでは、送信者にDMARCレポートがドメイン所有者に送信されます。

STARTTLSでデータ通信を暗号化する

STARTTLSは「スタート・ティーエル エス」と読み、インターネット上の通信を暗号化するSSL/TLSの技術を、メールサーバー向けに特化させた技術です。なお、メールサーバーだけでなく、Web全般の通信の暗号化にも使われています。

STARTTLSでは、送信サーバーと受信サーバー間でメールが暗号化され、その間のハッキングの防止ができ、安心した通信が可能です。ただし、STARTTLSでデータ通信を暗号化するには、受信サーバー・送信サーバーの両方がSTARTTLSに対応している必要があります。

受信サーバーがSTARTTLSに非対応の場合は、暗号化されずに送信されセキュリティの強化にはなりません。

また、暗号化されているかの確認ができないことや、送信者と送信サーバー間、受信サーバーと受信者間のデータは暗号化されていないといったデメリットがあります。

作業環境・担当者を制限する

多くの従業員がメール配信システムを操作できる環境では、内部要因における情報漏えいのリスクが高くなります。そのため、メール配信を行う担当者を明確にし、担当者以外にはIDやパスワードを発行しないなどの対策が重要です。

また、最近では社外のパソコンやタブレット・スマートフォンからもアクセスできるシステムが増えてきています。しかし、社外での利用は情報漏えいのリスクが高くなるため、社外アクセスできる担当者や利用場所の限定など、より強固なセキュリティ対策が必要です。

送信前にダブルチェックを行う

メールは一度送信すると途中で止めることはできません。したがって、送信前のチェックが重要になります。ただし、担当者1人のチェックでは、思い込みによって間違いに気付けないことも多いため、送信前のチェックではダブルチェックを行う慎重さが必要です。

メルマガ配信のチェック事項には、BCCの設定・添付ファイル間違い・差出人アドレスの誤り・件名の記載・予約配信の時間などがあります。これら以外にメルマガ自体のチェックも必要なため、内容と合わせて文言のチェックも徹底して行いましょう。

操作ログを残す

メール配信システムは、操作ログを残して記録できる機能が搭載されているものが多いです。操作ログを残しておけば、いつ・誰が・どのような操作をしたかの確認ができ、操作ミスで起こったトラブルの原因を特定しつつ、再発防止に役立てることができます

そして、操作ログを記録していることを従業員に周知しておけば、従業員の不正行為の抑止にもつながります。また、操作ログの記録により、外部からのサイバー攻撃を素早く察知・対処することができ、被害を最小限に抑えられます。

セキュリティ性の高いメール配信システムの選び方

メール配信システムのセキュリティを高めるには、導入時にセキュリティの高い製品を選び、運用時の情報漏えいなどを防ぐ、2つの方面からの対策が必要です。ここでは、製品を選ぶ際のチェック事項を解説します

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送信元アドレスの認証機能はあるか

セキュリティの高いメール配信システムの導入を行う際、第一のチェックポイントは送信元のアドレスの認証機能です。これは、自社のメールが悪意のある迷惑やなりすましのメールでないことを証明する機能で、受信者の正常な受信フォルダーへの配信が可能です。

迷惑メールフォルダに入ったメールの開封率は低いため、折角送ったメルマガがユーザーの目に留まりません。よって、送信元アドレスの認証機能では、SPFレコード・DKIM署名・DMARCなどへの対応を確認します。

メール・添付ファイルを暗号化できるか

メール送信中のハッキングなどの不正アクセス防止には、メールの暗号化が有効です。また、暗号化は迷惑メール判定の緩和の効果にも期待できます。暗号化には、STARTTLS・SSL/TLS方式・PGP S/MINE方式・POP3s/IMAP4s/SMTPs方式などの種類があります。

なお、セキュリティの高いメール配信システムの導入では、暗号化ができるかどうかでなく、暗号化の種類やレベルのチェックが重要です。添付ファイル送信が可能なメール配信システムなら、メール本文の暗号化と合わせて添付ファイルの暗号化も確認しましょう。

プライバシーマークを取得しているか

プライバシーマークは、個人情報を適切に取り扱って運用している事業者に与えられるマークで、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)から付与されます。

プライバシーマークを付与された事業者は、個人情報の取り扱いが適切な事業者であることをアピールすることができ、信頼性を高められます。

また、自社でシステムを管理する場合は、自社が取得するのがおすすめです。そして、ベンダーのクラウドサーバーを利用する場合のセキュリティ対策はベンダーに依存するため、プライバシーマークを取得しているベンダーからの導入が安心です。

参考:制度案内|プライバシーマーク制度|一般社団法人日本情報経済社会推進協会

導入実績の豊富さと信頼性の高さ

さまざまな事業者への導入実績を持つベンダーのメール配信システムは、現在に至るまでに、導入した事業者要望に応えたシステムとなっている場合が多く、使い勝手がいいシステムである可能性が高いです

そして、施されているセキュリティ対策も同様で、事業者にとって必要なセキュリティ機能を備えているでしょう。メール配信システムのセキュリティ性について迷ったら、導入実績が豊富で信頼できそうなベンダーを選ぶのも1つの方法です。

費用対効果がどれだけ得られるか

メール配信システムの利用には、初期費用などの導入コスト、運用におけるランニングコストが発生します。そのため、必要な費用に対する効果が得られるかを十分に検討することが重要です。

特に、セキュリティ対策を重要視しているシステムでは、費用が高い傾向にあるため、自社がどの程度のレベル感でセキュリティ対策を行いたいのか、明確化しておく必要があります。そして、求める費用対効果を可能な限り得られるようにしましょう。

トラブル発生時に対応をしてくれるか

セキュリティ対策は自社内での意識を高めることも重要ですが、システムによってはベンダー側に一任することも多いです。よって、ベンダーがどのようなサポート体制を敷いているのか、比較検討する際に把握することをおすすめします。

どうして迷惑メールに振り分けられてしまうのか、スパム認定されないようにするにはどうすればよいのかなど、トラブル時の対応の可否などを事前に確認しておくと、いざという時にも混乱せずに済みます

まとめ

メルマガやお知らせの一斉送信には、メール配信システムの利用が便利です。しかし、顧客の個人情報を扱うため、強固なセキュリティ対策が施された製品の導入が必要です。また、運用を始めてからも、情報漏えいなどのリスクに備えなくてはなりません。

メール配信システムのセキュリティ対策としては、送信元アドレスの認証や通信データの暗号化などが有効とされています。しかし、メールの誤送信や情報の持ち出し・パスワードの流出など、人為的ミスから起こる情報漏えいの対策も求められます。

したがって、システム内でのセキュリティ対策だけでなく、パスワードの複雑化やシステム利用者の制限など、社内ルールの徹底も重要です。最近では、社外でもシステム運用が可能な製品も多くなり、セキュリティ対策の重要性は増しています。

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