年末調整を効率化する方法とは?提出が遅れるとどうなるのかも解説
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- 年末調整には必要な書類が多く、提出や作成に時間と手間がかかる
- 従業員が1月31日までに書類を提出しなかった場合、個人で確定申告を行う必要がある
- 年末調整業務を効率化するなら、年末調整ソフトなどのシステム導入がおすすめである
年末調整とは、所得税の過不足分を精算する手続きのことを指します。年末調整では提出すべき書類が多く、書類が集まりにくい・記入ミスがあるといった課題も存在します。本記事では、年末調整業務を効率化する方法や、年末調整の提出が遅れるとどうなるのかを解説しています。
目次
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年末調整業務を効率化する重要性
年末調整とは、企業が1年間に従業員に支払った給与・賞与をもとに、所得税・住民税の金額を確定する作業です。
もともと所得税は、毎月の給与や賞与から概算で天引きされていますが、年末に改めて1年間の正確な税額を算出する作業が、年末調整にあたります。なお、税の徴収額に過不足があれば、追加徴収または還付します。
年末調整業務には、膨大な書類の作成・提出や、難しい税額の計算などの煩雑な工程が無数にあり、これを一から手動で行うのは時間と手間がかかります。バックオフィスチームの負担を軽減するためにも、年末調整業務はできる限り効率化することが大切です。
参考:年末調整とは|国税庁
年末調整業務における課題
手動での年末調整業務には、手間と時間がかかるほか、記入ミスなどさまざまな課題があります。年末調整業務の効率化の意義を理解するためにも、手動での年末調整業務における主な課題を把握しておきましょう。
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年末調整業務における課題
年末調整に必要な書類が集まりにくい
年末調整業務における課題として、必要な書類が集まりにくいという点が挙げられます。なお、年末調整に必要な書類には次のようなものがあります。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
上記の書類は、年末調整の対象の従業員全員が作成し、企業に提出しなければなりません。また、従業員によっては上記以外の書類の提出が求められることもあり、準備・作成すべき書類は多岐にわたります。
そのため、期日までに従業員の提出が間に合わず、その結果として、企業が年末調整業務をスムーズに進められないケースが多々見られます。特に、従業員数の多い企業では、書類の回収に時間がかかります。
記入・入力の手間が大きい
年末調整書類は、提出前に各従業員が必要項目を記入・入力しなければなりません。記入すべき項目は膨大で、特に紙の書類に手書きする場合、大きな負担がかかります。
また、難しい専門用語なども多く含まれていることから理解に時間を要し、書き方がわからないことで心理的な負担を感じることもあります。
企業の担当者にとっても手書きの書類を1枚ずつ精査するのは、時間と手間がかかる作業です。そのため、心理的にも身体的にも大きな負担がかかってしまいます。
書類のミス・漏れが多い
年末調整用の書類は専門用語などが多いため、記入するのが難しい上に収入金額の記入なども必要です。これに伴って、必要事項の抜け漏れや金額の記入ミスが起こりやすくなっています。
提出した書類に不備がある場合は、提出した従業員に差し戻さなければなりません。また、提出者には、複雑な書類の再作成・再提出が求められるため、担当者・従業員共にストレスを感じることがあります。
年末調整書類の提出が遅れるとどうなるのか
企業から税務署への年末調整書類の提出期限は、例年1月31日です。各従業員は、この期日に間に合うように年末調整書類を提出する必要があります。
もし、書類の提出が期日に間に合わなかった場合に起こり得る事態について、従業員・企業に分けて解説します。
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年末調整書類の提出が遅れるとどうなるのか
従業員の提出が遅れた場合
従業員の年末調整書類の提出期日は、企業によって異なりますが、一般的には11月上旬から12月上旬に設定されています。社内の期日は法的なものではないため、税務署への提出期限である1月31日までに企業からの提出が完了すれば、公的な問題はありません。
一方、従業員から企業への提出が1月31日より遅れた場合、書類未提出の従業員は個人で確定申告を行い、所得税・住民税の税額を確定させる必要があります。
確定申告では、書類の作成・提出や難しい税額の計算をすべて申告者自身で行う必要があるため、従業員には大きな負担がかかります。
なお、確定申告の期日は例年3月15日です。この期日までに確定申告しなかった場合、該当の従業員には『無申告加算税』や『延滞税』の罰則が課せられます。
企業の提出が遅れた場合
企業は、自社で取りまとめた年末調整書類を1月31日までに税務署に提出しなければなりません。なお、提出が1月31日に間に合わなくとも、税務署に連絡すれば数日間は猶予をもらえるのが通例です。
ただし、期日を大幅に過ぎた場合は、年末調整業務そのものを怠ったと見なされ、所得税法第242条により罰則が課せられる恐れがあります。罰則の内容は、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金となっています。
年末調整業務を効率化する方法
年末調整業務は時間と手間のかかる業務であり、担当者・従業員の双方に大きな負担がかかります。この大変な作業を効率化するには、次のような4つの方法を試すのがおすすめです。
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年末調整業務を効率化する方法
年末調整に関する注意点の周知
年末調整業務をスムーズに行うには、複雑な書類の作成方法や、提出の期日・方法をあらかじめ社内に周知しておくことが大切です。これにより、各従業員が戸惑うことなく、年末調整に必要な作業を正確に進められます。
年末調整における業務負担の大きさは、日常的に使用する機会が少ない専門用語が多いことも原因の1つです。そのため、専門的な知識がなくても正しく書類を作成できるようなフォローを行うことでミスが減り、効率化が実現します。
業務フローや役割分担の明確化
年末調整業務を担当するチームは、業務フローの見直しや、工程ごとに担当者を決めるなどの工夫が必要です。「誰が・いつ・どの業務を・どのように行うか」を明確にすることで、チーム内での連携がスムーズになり、業務を進めやすくなります。
また、年末調整業務のスケジュールを可視化してチーム全員で共有したり、トラブル発生時の対応をあらかじめマニュアル化したりするのもおすすめです。
外部に委託する
年末調整業務は、税理士や専門業者に外部委託するのも1つの方法です。社内でリソースを割かなくてよいため、バックオフィスチームの負担を軽減できるほか、人材不足に対応できます。また、プロに任せることで、適切な年末調整が可能になる点もメリットです。
ただし、委託する場合はコストがかかります。委託することで担当者の残業が大幅に減るといった場合、費用対効果は十分高いと言えますが、もともと規定の勤務時間内に年末調整業務が完了している場合、委託料が加算されてしまいます。
業務負担軽減のための外部委託であれば、コストは大きな問題とはなりません。しかし、残業時間短縮のために効率化を図る場合は、委託料とカットできる残業代のバランスを考慮する必要があります。
システムの導入もおすすめ
年末調整業務を効率化するには、専用のシステム・ツールを導入するのもおすすめです。以下のようなシステムの導入により、年末調整書類の記入・提出・回収を電子上で一本化できるほか、複雑な控除計算を自動化できるメリットがあります。
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給与計算システム
給与計算ソフトは、従業員の給与の計算・支給を自動化できるシステムです。給与計算ソフトの中には、年末調整業務までカバーしているものもあります。
たとえば、給与データをもとにした年税額の計算や、従業員用の年末調整書類の配布・回収のほか、源泉徴収票・給与支払報告書・総括表の自動作成などが可能です。
年末調整業務の大半を自動化できるため、業務担当者の負担を大きく軽減できます。また、複雑な計算を自動化することで、計算ミスなどのヒューマンエラーを防止できる点もメリットです。
給与計算ソフトとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説
給与計算ソフトとは、給与計算の自動化や給与明細の発行などを行えるソフトです。業務の効率化や法改正にも対応できる利便性があります。本記事では、給与計算ソフトをよく知らない方のために、機能やメリット・デメリット、選び方を解説しています。
年末調整ソフト
年末調整ソフトとは、年末調整業務を効率化するためのシステムです。たとえば、控除額の計算や帳票の作成・提出など、年末調整に必要な業務の大半を自動化できます。
年末調整ソフトには、さまざまな製品があり、国税庁も無料のソフトウェアである「年調ソフト」を提供しています。「年調ソフト」では、従業員がスマホを使って、年末調整書類を簡単に作成・提出できます。
年末調整ソフト とは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説
年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と、導入するメリット・デメリットの他、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。
年末調整ソフトの選び方
年末調整ソフトは、製品によってタイプや機能が様々です。導入する際は、以下のようなポイントに注目して選ぶのがおすすめです。
- 自社の目的に合ったタイプか
- 料金プランは適正か
- 既存システムと連携可能か
年末調整ソフトには、年末調整に特化したものもあれば、給与計算や労務管理の機能を兼ね備えているタイプもあります。既に導入済みのシステムがある場合、機能が被らないよう注意する必要があります。
また、年末調整に特化したタイプであっても、既存システムと連携できた方がデータ転記の手間がなく、より効率化が進めやすいでしょう。
年末調整を効率化する際の注意点
年末調整の効率化を狙う際は、注意すべきポイントがあります。効率化を優先しすぎるとかえって負担が増えることもあるため、以下の2点に注意しながら年末調整を効率化しましょう。
精度の維持も考慮する
年末調整に限らずあらゆる業務において、効率化を図る際は無駄な作業の廃止や削減が効果的です。しかし、年末調整はミスが許されない業務であることから、確認作業の簡素化などを安易に行うのは避けるべきです。
効率化が実現しても、精度が落ちてしまっては意味がありません。そのため、年末調整の効率化を図る際は効率化だけでなく、精度の維持も考慮しましょう。
「効率化」を目的にしない
年末調整の効率化を図る際は、「何を目的に効率化するのか」を見失わないようにしましょう。例えば、「バックオフィスチームの負担軽減」を目的に年末調整を効率化する場合、当然ながら業務の負担が軽減されなければなりません。
しかし、効率化すること自体が目標にすり替わってしまうと、マニュアルの作成やシステムの導入作業などにより業務負担が増える可能性があります。
効率化は数日で完了するほど容易なものではないため、効率化に向けた施策は繁忙期に入る前に完了するよう日常的に少しずつ取り組みましょう。年末調整の効率化を図るには、1年前から取り組むのが理想です。
まとめ
年末調整業務は、1年間の従業員の所得をもとに税額を確定する業務です。紙ベースでの年末調整業務は、書類の作成に手間がかかるほか、記入ミスや抜けがある・書類が集まらないなどの課題があります。
なお、年末調整書類の提出が遅れた場合、企業には罰金などが課されます。ペナルティを回避するためにも、企業は期日を守り、正確な年末調整を行わなければなりません。
給与計算ソフトや年末調整ソフトなどのITシステムは、煩雑な年末調整業務の効率化に役立ちます。年末調整業務に課題を抱える企業は、給与計算ソフトや年末調整ソフトの導入を検討するのもおすすめです。
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