年末調整で提出すべき書類とは?年末調整ソフトについても解説

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  • 年末調整に必要な各種控除に関する申告書は、従業員がそれぞれ作成しなければならない
  • 国税庁に提出すべき書類は、支払調書・源泉徴収票・法定調書合計票の3つである
  • 市町区村に提出すべき給与支払報告書には、個人別明細書と総括表の2種類が存在する

年末調整に必要な書類には、従業員に書いてもらう書類や国税庁・市町区村に提出が必要な書類など多く存在します。本記事では、年末調整に必要な書類として、従業員が作成する書類・国税庁に提出すべき書類・市町区村に提出すべき書類などについて解説します。

目次

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  1. そもそも年末調整とは
  2. 【従業員が作成】年末調整に必要な書類
  3. 【担当者が作成】年末調整で税務署に提出すべき書類
  4. 【担当者が作成】年末調整で市町区村に提出すべき書類
  5. 年末調整の申告書を提出しなかった場合
  6. 年末調整の主な流れと手順
  7. 書類作成には年末調整ソフトの導入がおすすめ
  8. まとめ

そもそも年末調整とは

年末調整は、1年の終わりに給与所得者が支払うべき所得税額を算出し、その年の給与から天引きされた源泉徴収税額との差額を精算する手続きです。

通常、毎月の給与や賞与などから一定率の源泉徴収税を差し引いて納税しますが、源泉徴収税は概算であり正確な納税額ではありません。そのため、年末調整では1月から12月までの給与にかかる税金額を改めて計算し、源泉徴収された税金額との差額を精算します。

実際の税金が源泉徴収より多ければ差額を納付し、逆に少なければ過剰に納めていた分が還付されます。この手続きは勤務先(会社)を通じて行われ、年末調整をしないと納税上のデメリットが生じるだけでなく、ペナルティを受ける可能性があります。

なお、年末調整に必要な書類には、従業員に書いてもらう書類や国税庁・市町区村に提出が必要な書類など、数多く存在します。

参考:年末調整がよくわかるページ(令和5年分)|国税庁

【従業員が作成】年末調整に必要な書類

年末調整を行うためには、いくつかの書類が必要となります。以下では、従業員が直面する主要な書類に焦点を当て、それぞれの目的や重要性について解説していきます。

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給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、給与を受ける従業員が自身の所得税法上の扶養状況を申告し、該当する所得控除を受けるための書類です。この申告書を提出することにより、給与で受けられる扶養控除などの諸控除を適用できます。

提出期限は、その年の最初に給与を受ける前日までとなっています。この手続きは、給与関連の円滑な処理や、正確な控除の適用を確保するために欠かせないものです。よって、給与所得者は提出を忘れず、期限内にスムーズな手続きを行う必要があります。

参考:給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁

基礎控除申告書 兼 配偶者控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書

「基礎控除申告書」兼「配偶者控除申告書」兼「所得金額調整控除申告書」は、税金の控除に関する重要な情報をまとめた書類です。以下では、それぞれの概要について詳しく解説します。

参考:令和5年分基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書|国税庁

基礎控除申告書

基礎控除申告書は、給与所得者が年末調整において、基礎控除(最大48万円の控除)を受けるために提出する新しい申告書です。基礎控除は、年間の合計所得が2,500万円以下の場合に対象となります。

ほとんどの給与所得者は基礎控除を受ける資格があるため、提出を怠ると基礎控除が適用されず、納税額が増えてしまう可能性があります。

基礎控除は所得税や住民税の計算ベースとなり、給与所得者が年末調整によって適切な控除を受けるためには、基礎控除申告書の提出が欠かせません。

配偶者控除申告書

配偶者控除等申告書は、配偶者がいる場合に関連する控除を受けるための書類です。具体的には、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を受ける条件を満たす場合、従業員が指定された事項を入力して提出します。

従業員が提出した配偶者控除申告書は会社が回収し、提出期限はその年最後の給与や賞与を受け取る日の前日までです。この書類の内容は「扶養控除等(異動)申告書」と似ていることも多いですが、扱いが異なるため注意が必要です。

配偶者控除申告書の提出が行われると、年末調整において配偶者控除や配偶者特別控除が適用され、納税者の所得から一定金額が差し引かれます。

所得金額調整控除申告書

所得金額調整控除申告書は、主に子供や介護者がいる一部の世帯や、年金を受給しながら給与収入もある世帯の税負担を軽減させることを目的としています。この控除を受けるためには、特定の条件を満たす必要があります。

所得金額調整控除には、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」と「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2つの種類があり、対象者は所定の要件を満たすことで控除を受けることができます。

なお、税制改正に伴って給与所得控除が一律で10万円引き下げられ、一方で基礎控除が10万円引き上げられました。給与所得控除は、給与収入がある人が差し引ける控除であり、基礎控除はすべての納税者が受けられる控除です。

給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者の保険料控除申告書は、企業の従業員が年末調整の際に提出する書類であり、生命保険料・地震保険料・社会保険料など、従業員が支払った各種保険料を申告するために使用されます。

年末調整では、これらの保険料を申告することで、従業員の所得税や住民税の計算に影響を与えます。従業員は、給与所得者の保険料控除申告書に必要事項を記入して提出することで、年末調整において正確な税金の計算が行われ、適切な控除が適用されます。

参考:令和 6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁

控除証明書

年末調整では、従業員が給与などから天引きされた1年間の所得税と、実際に納付すべき年調年税額の過不足を計算し、精算が行われます。

従業員が生命保険料などの所得税控除対象となる支払いをしていた場合、年末調整によって納め過ぎた税額分が還付されます。この際に必要なのが控除証明書です。

控除証明書は、10月頃から従業員に届く保険料の支払証明書であり、年末調整での所得税控除の根拠となります。主な種類としては、生命保険料控除・地震保険料控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除などがあります。

住宅借入金特別控除申告書(2年目以降)

住宅借入金等特別控除は通称「住宅ローン減税」とも呼ばれ、住宅を購入したり、改築したりするときに税金が還ってくる仕組みです。基本的には13年間適用可能です。

1年目の住宅ローン控除は確定申告で手続きが必要ですが、2年目からは「住宅借入金等特別控除申告書」を使った年末調整で手続きが必要です。

この制度は、合計所得が3,000万円以下の個人が、特定の条件を満たす住宅ローンを利用して、住宅を新築・取得・増改築した場合に利用できます。ただし、住宅は床面積が50平方メートル以上であり、その2分の1以上が自己の居住用であることが求められます。

また、特定の住宅ローンは10年以上の返済期間が必要で、返済方法が割賦償還方式でなければなりません。なお、自身の親や友人からの借入金は対象外です。

参考:令和05年分(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書|国税庁

【担当者が作成】年末調整で税務署に提出すべき書類

年末調整は、企業が従業員の給与から天引きした源泉徴収税額と、実際の年間所得税の差額を精算する重要な手続きです。そして、企業の担当者が税務署に提出するべき書類も存在します。ここでは、企業が作成・提出すべき書類について詳しく解説します。

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【担当者が作成】年末調整で税務署に提出すべき書類

  1. 支払調書
  2. 源泉徴収票
  3. 法定調書合計表

支払調書

支払調書は、企業が法人や個人に対して行った支払いの詳細な内容を報告する書類です。この中には、主に給与や役員報酬などが含まれています。給与所得者には「給与所得の源泉徴収票」という書類が提供されますが、それと連動して支払調書が作成されます。

支払調書は、支払者が誰に・どのような内容で・年間でいくら支払ったかを詳細に示しているため、税務署に提出して課税を正確に行うために欠かせない情報となります。

源泉徴収票

源泉徴収票は、企業が従業員に支払った給与や手当、源泉徴収した所得税、控除額などを1年間分まとめて記載した書類です。従業員はこの書類を通じて、1年間に受け取った金額や納めた所得税を一目で確認できます。

源泉徴収は給与から所得税を差し引く仕組みであり、会社が従業員の代わりに所得税を納付します。そのため、従業員は原則として確定申告が不要です。

また、中途入社の場合は前の会社からもらった源泉徴収票と、現在の会社からもらった源泉徴収票を合算することで、正確な所得税の納税額が計算されます。つまり、中途入社者は前勤務先の源泉徴収票も回収する必要があります。

参考:給与所得の源泉徴収票|国税庁

法定調書合計表

法定調書合計表は、企業が源泉徴収票や支払調書などの法定調書を総括し、税務署に提出するための要約書類です。この書類を使用して、企業は従業員への支払額や源泉徴収した税額などを一括して報告します。

企業が法定調書合計表を作成し、法定調書を添付して税務署へ提出することで、税務署は企業の源泉徴収や支払いに関する情報を効率的に処理できます。法定調書一式をまとめて提出することにより、従業員や受給者の所得にかかる税金の徴収を正確に行えます。

参考:給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表|国税庁

【担当者が作成】年末調整で市町区村に提出すべき書類

年末調整が終わり、企業や組織は従業員に関する課税情報をまとめる重要なフェーズに差し掛かります。この際、担当者が作成する書類は単なる手続きとしての意味合いだけでなく、市町区村に提出されることで地域社会への納税情報提供にもなります。

従業員にとっても影響がある年末調整関連の書類について、以下で詳しく解説します。

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【担当者が作成】年末調整で市町区村に提出すべき書類

  1. 給与支払報告書|個人別明細書
  2. 給与支払報告書|総括表

給与支払報告書|個人別明細書

給与支払報告書は、企業や事業者が市区町村に提出する、1年間の従業員ごとの給与支払い実績をまとめた書類です。そして、個人別明細書は、給与を受け取る従業員一人ひとりの個人情報・名前・住所・生年月日・個人番号を詳細に示した書類です。

個人別明細書は源泉徴収票と同様の情報を提供しますが、より詳細な内容が掲載されています。

参考:給与所得の源泉徴収票(給与支払報告書)|国税庁

給与支払報告書|総括表

総括表は、年末調整において市区町村に提出する際の要約書類であり、個人別明細書をまとめたものです。

この書類は従業員が居住する市区町村ごとに作成され、その地域において何人分の個人別明細書が含まれているか、報告人員の中に含まれている退職者の人数などが明示されます。

また、総括表は地域ごとの従業員の給与情報を整理し、地方自治体が住民税を適切に課税できるようにサポートします。

参考:給与支払報告書(総括表)|総務省

年末調整の申告書を提出しなかった場合

年末調整に必要とされる申告書を勤務先に提出せず、年末調整を行わなかった場合には税金を過払いする可能性が高まります。その他にも、年末調整を受けないことによるデメリットは以下のようなことが挙げられます。

  1. 払い過ぎた源泉徴収税額の還付を受けられない
  2. 受けられるはずの各種控除が適用されない
  3. 課税所得額が増えて翌年の住民税額が高くなる
  4. 従業員が個人で確定申告を行わなければならない

毎月の給与などから差し引かれている源泉徴収税額は、基本的に多めに差し引かれていることが多いため、年末調整を行わないと損をすることになります。また、課税所得額が本来よりも多めに算出されていると、翌年の住民税額が高くなります。

したがって、面倒な手続きや損を避けるためにも、適切な年末調整の申告書が求められます。

年末調整の主な流れと手順

1年の終わりに行われる年末調整は、一般的に対象の年の11月頃から翌年の1月下旬にかけて行われます。具体的な流れ・手順は以下の通りです。

  1. 申告書類の提出と回収:11月
  2. 年末調整の計算と申告書類の作成:12月
  3. 申告書類の提出:翌年1月

会社は11月頃に行う申告書類の提出と回収において、従業員から申告書類を回収します。そして、中途採用の従業員は必要な源泉徴収票などを提出します。

各会社によって申告書類の作成・提出の時期は異なりますが、翌年1月末までに税務署や市区町村に提出する必要があるため、会社は迅速な対応をしなければなりません

書類作成には年末調整ソフトの導入がおすすめ

従業員の年末調整手続きを効率的に進めるためには、年末調整ソフトの導入がおすすめです。特に、「年調ソフト」は国税庁が提供する無料のアプリであり、年末調整書類の電子作成を効果的にサポートします。

年末調整ソフトを使用することで、控除額の計算や扶養親族の年齢判定、控除の適用判定などを自動的に行うことができるため、手間と時間の大幅な削減につながります。

また、従業員への手続きをスピーディに行いつつ、正確な計算ができることにより、煩雑な年末調整業務を効率的に実行することが可能です。その結果、正確な給与計算と調整手続きが実現します。

参考:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

年末調整ソフト とは|機能やメリット・デメリット、比較ポイントも解説

年末調整ソフトは、年末調整に関わる業務を効率化してくれるソフトで、国税庁からは無料の「年調ソフト」が提供されています。本記事では、年末調整ソフトの特徴と、導入するメリット・デメリットの他、製品を選定・比較する際のポイントについて解説します。

まとめ

年末調整の提出書類は多岐にわたり、給与所得者は主に源泉徴収票を提出します。その際、所得控除や特別控除を受ける場合には、基礎控除申告書や配偶者控除申告書、所得金額調整控除申告書も必要です。

これらの手続きを効率的に行うためには、年末調整ソフトの導入がおすすめです。特に、国税庁提供の「年調ソフト」は電子的に年末調整の書類を作成でき、控除額の計算や必要な情報の判定を自動で行います。

そのため、総務・経理担当者は手間と時間を削減し、正確で効率的な年末調整を行うことができます。年末調整ソフトを利用することで、年末調整に関する煩雑な手続きをスムーズに進められるでしょう。

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