みなし残業とは?固定残業との違いや違法性の基準を分かりやすく解説

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  • みなし残業とは、一定の残業時間分を基本給に含めて支払う賃金制度である
  • みなし残業制の導入は、労働時間の適切な管理が行えることが前提である
  • 労働時間の適切な管理や残業時間の把握には、勤怠管理システムの導入が有効

みなし残業とは、実際の残業時間に関わらず毎月一定の残業を行ったと仮定し、給与にあらかじめ固定残業代を含めて支払う賃金制度を指します。本記事では、固定残業やみなし労働時間との違い、何が違法になるのか、みなし残業制を導入する際のポイントを分かりやすく解説します。

目次

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  1. みなし残業とは
  2. みなし残業が「おかしい」と言われる理由
  3. みなし残業のメリット
  4. みなし残業のデメリット
  5. みなし残業制を導入する際のポイント
  6. みなし残業の管理には勤怠管理システムを活用
  7. おすすめの勤怠管理システム3選
  8. まとめ
  9. 勤怠業務を効率化!関連サービスはこちら

みなし残業とは

みなし残業とは、従業員の正確な残業時間を把握できない場合に、あらかじめ残業時間を見込んでおくことです。

給与はみなし残業代を含んだ形で設定されており、「必ず残業しないといけない」ということではないため、残業せずに帰宅できれば、従業員側は少ない負担で多めの給料を貰えます。

企業側は残業代を細かく計算する手間が省ける一方で、従業員がみなし残業で設定している時間よりも短く働いた場合でも、残業代を含んだ給与を支払い続けなければなりません。そのため、残業代を正しく計算するより経費が高くなる可能性があります。

また、みなし残業で計上している金額よりも残業代が多くなってしまった場合は、未払いや思わぬトラブルに繋がるケースもあるでしょう。余計なトラブルを避けるためにも、みなし残業を設定する場合には残業時間の調整が必要です。

みなし残業の種類と違い

みなし残業には、大きく分けて固定残業代制とみなし労働時間制の2種類があります。それぞれの違いや特徴を見ていきましょう。

固定残業代制

固定残業代制は一般的に「みなし残業代制」などと呼ばれており、毎月の給与の中にみなし残業代を含めて支払う制度です。基本給の中にみなし残業代を含める「基本給組み入れ型」と、基本給とは別に一定額を支払う「手当型」があります。

例えば、基本給の中に月30時間分のみなし残業代を含めたり、基本給とは別に手当として残業代を支払ったりします。残業代として支給されることはないものの、あらかじめ追加された金額を従業員が受け取れるのが特徴です。

みなし労働時間制

みなし労働時間制は実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ設定した労働時間を働いたとみなして給与を支払う制度です。常に社内で仕事をしているような職種ではなく、営業職など社外に出ることが多い職種に用いられるケースが多いでしょう。

外での仕事が多い場合は労働時間の算出が難しく、残業代も計算しにくくなってしまいます。正確な労働時間が把握できない場合には、みなし労働時間制を用いて給与を計算する方法がおすすめです。

また、専門性が高い仕事など、労働者側に時間管理を任せた方が良いケースもあります。固定残業代制と同じく、事前に給与を設定できるため企業側は計算が容易になるでしょう。職種や業種などに合わせ、自社に合った制度を取り入れるのがおすすめです。

みなし残業が「おかしい」と言われる理由

みなし残業が「おかしい」と言われる理由としては、制度について正しく認識できていないためです。従業員への説明が不十分であった場合に不服を申し立てられることがあります。ここでは、具体的にどういった理由で「おかしい」と言われてしまうのかを解説します。

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みなし残業が「おかしい」と言われる理由

  1. 制度を悪用する企業の存在
  2. 残業代の未払いや​​支給条件が不明確

制度を悪用する企業の存在

みなし残業制は「従業員の正確な残業時間を把握できない​​」などのケースで適用するためのものです。しかし、これを「どれだけ残業してもみなし残業にする」「働かせ放題にできる」と自己都合解釈する企業が存在します。

こういった違法な導入を行っている企業があるため、「自分の会社もそうなのでは」と不安になってしまうのです。こういった不安要素を取り除いてトラブルを防止するためにも、従業員への説明は徹底しなければなりません。

残業代の未払いや​​支給条件が不明確

みなし残業における支給条件が不明確だったり、残業時間が指定時間よりも超えているのにもかかわらず未払いであったり、トラブルになる要素があると「おかしい」と異議申し立てが起こります。

みなし残業制は、基本給にあらかじめ設定した残業時間分の賃金を含んだ給与体制ですが、時間超過が発生すれば上乗せが必要なので、常に残業時間の管理が必須です。会社はもちろん、従業員側でも残業時間を管理してもらうことでトラブルを防げます。

みなし残業のメリット

みなし残業は、企業側と従業員側の双方にメリットがあります。企業側は残業計算の業務を効率化でき、従業員側は安定した収入を得られるのが主なメリットです。ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。

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企業側のメリット従業員側のメリット
残業計算の業務が効率化ができる安定した収入を得られる
人件費を把握しやすい
従業員の生産性アップが期待できる

【企業】残業計算の業務が効率化ができる

企業側の主なメリットとしては、残業計算の業務を効率化できる点が挙げられます。残業代が変動する場合には、毎月正しい残業代を計算しなければなりません。一方で、みなし残業を取り入れた場合には、基本的に一律の金額を支払うため細かな計算は不要です。

残業代を算出するためには、時間外労働や休日出勤の有無を細かく調べ、基本給から残業代を計算しなければなりません。みなし残業を導入している場合には、ベースとなる給与に残業代も含まれており、別途計算する必要がなくなります。

みなし残業以上に残業がある場合や、手当などを付ける場合は計算が必要になりますが、給与計算の業務が非常に楽になります。

【企業】人件費を把握しやすい

毎月、残業代が変動する場合には人件費も変動してしまいますが、みなし残業を導入している場合は基本的に固定となります。みなし残業以上の残業がある場合や、別途手当をつける場合を除き、給与が固定されるため人件費を把握しやすいのがメリットです。

常に安定した経営を続けていくためには、人件費の把握が欠かせません。人件費は経費の指標の1つとして機能しているため、容易に把握できることで経営方針も考えやすくなるでしょう。

【企業】従業員の生産性アップが期待できる

みなし残業を取り入れると、従業員の意欲向上による生産性のアップが期待できるでしょう。仮に設定されている残業時間よりも短い時間しか働いていなかったとしても、従業員は残業代を含めた給料を貰うことができます。

そのため、できるだけ早く仕事を終わらせようと考える従業員も多く、効率的に仕事をしてくれるようになります。定時で帰っても残業代が貰えるので、早く終わらせて別のプロジェクトの準備をしようと考える従業員も少なくありません。

結果として企業全体の作業効率が良くなり、生産性がアップします。みなし残業は企業側にも従業員側にもメリットがあるため、近年では取り入れる企業も増えてきているようです。

【従業員】安定した収入を得られる

従業員側のメリットとしては、安定した収入が得られる点が挙げられます。残業の有無に関わらず決められた金額を支払ってもらえるため、モチベーションのアップにも繋がるでしょう。

特に、時期によって仕事量に変動のある企業では、残業の有無によって得られる収入に大きな差が出てしまいます。そのような場合でも、みなし残業を導入すれば常に安定した収入を得られるのがメリットです。

みなし残業のデメリット

みなし残業の導入には多くのメリットがある一方で、従業員の誤解を招く場合があるなどデメリットもあります。メリットだけに目を向けるのではなく、デメリットまでしっかり理解した上で導入を検討しましょう。

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従業員の誤解を招く場合がある

みなし残業は基本の給与の中に一定の残業代を含める形になりますが、従業員の中には「必ず残業をしなければならない」「決められた時間は必ず残業をする必要がある」などと感じてしまう方もいます。

そのような誤解を招かないためにも、あらかじめ制度について説明をしておく必要があるでしょう。みなし残業がどのような制度なのかを解説するのはもちろん、従業員側が得られるメリットについても説明しておくのがおすすめです。

残業のルールなどを社内で周知した上で、みなし残業を導入しましょう。先に説明をしておけば、誤解や勘違いを招く心配もありません。

実際の労働がなくても残業代を支払う必要がある

みなし残業では、設定した時間以下の労働でも残業代を支払わなければなりません。例えば、月に20時間の残業代を含めた形で給与を設定している場合、仮に残業がゼロだったとしても20時間分の残業代を支払う必要があります。

ただし、みなし残業の導入によって従業員の生産性がアップしていれば、余分な残業代を支払ったとしても高い費用対効果を得られるでしょう。普段は残業が必要な業務量でも、みなし残業を取り入れることで残業時間が減るケースもあります。

サービス残業の原因になる可能性がある

みなし残業は、あくまでも先に設定している時間分の給与を支払うもので、それ以上に残業をした場合は別途で残業代が支給されます。しかし、従業員の中には「みなし残業以上の残業代は貰えない」と勘違いしてしまう方もいるでしょう。

また、企業側が「みなし残業分を越えても残業代を別途支払う必要はない」などと誤認しているケースもあります。そのような誤解から、サービス残業の原因になる可能性があるため、勘違いのないように正しい方法で導入しましょう。

みなし残業制を導入する際のポイント

みなし残業制を導入する際は、トラブルを避けるためにも適切な管理やツールの導入を行う必要があります。

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労働時間の適切な管理が前提である

2019年4月に行われた労働安全衛生法の改正により、従業員の労働時間の管理が義務付けられました。みなし残業制を導入している場合、労働時間の把握が必要ないと考えてしまうケースもありますが、必ず正確な時間を把握した上で給与を支払わなければなりません。

正しい労働時間を毎月計算できる体制を整えるためにも、勤怠管理ができるシステムやソフトを導入するのがおすすめです。みなし残業制を導入した場合でも、労働時間の管理が必要な旨は、従業員全員にも必ず伝えておきましょう。

参考:働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)|厚生労働省

参考:労働安全衛生法|e-Gov法令検索

労使協定や就業規則等に必要事項を明記する

みなし残業制を導入する際は、労使協定や就業規則等に必要事項を明記することも重要なポイントです。従業員がみなし残業の給与形態をしっかり理解できるようにするほか、設定された時間数がどれくらいなのかを把握できるようにしましょう。

また、総額を記載するだけでなく、基本給と残業代がそれぞれいくらなのか明らかにしておくことも大切です。従業員によって具体的な金額が異なるため、雇用保険料などに記載しておきましょう。

従業員への周知や明記を怠ると違法になるほか、求人広告にもみなし残業の詳細を記載する必要があります。応募者がみなし残業について理解できるように、詳細を必ず明記しておきましょう。

給与明細に残業時間を明記する

みなし残業制を導入する場合には、必ず給与明細に残業時間を明記します。最初から残業代を含む形で計算された給与だとしても、給与明細には正しい残業時間を明記しなければなりません。そのためにも、勤怠管理を徹底する必要があります。

従業員にも残業時間を把握する必要がある旨を伝え、自身でも確認してもらうようにするのがおすすめです。残業時間を明記した上で、基本給とみなし残業代を記載し、給与明細を作成しましょう。

月45時間を目安に残業時間を設定する

みなし残業制を導入する場合には、月45時間以下を目安に残業時間を設定しましょう。36協定の限度が原則45時間であるため、それ以上の残業時間を設定してしまうと、思わぬトラブルに繋がってしまう可能性があります。

みなし残業自体の制限は定められていないものの、過度な残業時間を設定することはトラブルの元です。36協定に則り、残業時間は45時間以下に設定しましょう。

参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省

固定残業代を超える労働は差額の残業代を支給する

みなし残業は、あらかじめ残業時間を設定しておきますが、その時間を超えて残業をした場合は別途残業代を支払う必要があります。みなし残業制を導入しているからといって、それ以上の残業代を支払わなくて良いわけではありません。

固定残業代を超える労働をした場合は、必ず差額の残業代を支給しましょう。正しい残業代を支給しない場合は、未払いとなってしまう場合があります。従業員との大きなトラブルにもなりかねないため、勤怠管理を徹底して未払いのないように注意しましょう。

休日出勤など割増出金分は区別する

固定残業代を超える労働は差額の残業代を支給しなければならないのと同様に、休日出勤などの割増出金分は区別し、追加で給与を支払う必要があります。深夜残業や休日出勤などを行った際の計算方法はあらかじめ設定しておき、決められたルール通りに計算しましょう。

割増出金分を計算せずに支払うと、未払いなどのトラブルに繋がるケースもあります。みなし残業制を取り入れていても、勤怠管理をしっかり行って割増出金分を区別して計算するようにしましょう。

基本給の減額は従業員の同意を得る

基本給の減額を行う際は、必ず従業員に説明をして同意を得ましょう。一方的に基本給を減額してしまうと、大きなトラブルになりかねません。また、減額をした後の金額が最低賃金を下回るのは違法です。

最低賃金とは都道府県ごとに設定されているもので、1時間あたりの賃金が明記されています。アルバイトだけでなく正社員も同様の基準で設定されているため、基本給が最低賃金を下回ると違法になってしまいます。

基本給は固定残業代や交通費などを除いた金額なので、計算する際に間違えないようにしましょう。また、正社員で月給制の場合には時間給に換算して計算します。その際、必ず固定残業代は除いてから計算しましょう。

参考:最低賃金制度の概要|厚生労働省

残業時間を正しく管理できるツールを導入する

みなし残業制を取り入れた場合でも、残業時間は常に正しく把握しなければなりません。計算ミスや未払いが起こらないようにするためにも、勤怠管理システムなどの便利なツールを導入し、社内でしっかり管理しましょう。

出勤や退勤の時間を管理するほか、休日出勤の有無や設定した以上の残業を管理できるシステムもあります。

みなし残業の管理には勤怠管理システムを活用

みなし残業の管理には、勤怠管理システムを活用するのがおすすめです。ここでは、勤怠管理システムの機能や活用法について解説します。

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労働時間の適切な管理

勤怠管理システムを導入すれば、労働時間を適切に管理できるようになります。複雑な勤務形態でも管理できるシステムもあり、さまざまな業種に対応可能です。出勤や退勤の時間を管理するほか、休日出勤や時間外労働も簡単に管理できます。

勤怠管理システムは、他のツールと連携させることで、さらに便利に使えるケースもあるでしょう。中には、残業超過を検知して通知をしてくれる機能もあり、みなし残業制を取り入れている企業には特におすすめです。

残業時間の管理・把握

勤怠管理システムを使えば、残業時間の管理や把握も簡単にできます。みなし残業制を導入する場合には、残業時間の把握が重要なポイントです。

固定残業代に含まれている金額を超えた場合には、追加で残業代を支払わなければならないため、残業時間の把握は必須といえます。従業員に管理してもらうのはもちろんですが、勤怠管理システムによって管理を行い、正しく把握するようにしましょう。

法改正への対応

給与や労働に関する法律は変更される場合があるため、常に把握をして対応していく必要があります。しかし、法改正がある度に対応するのは負担が大きいでしょう。

勤怠管理システムを導入した場合、システムが改正内容にあわせて自動でアップデートしてくれるため、法改正にも対応可能です。対応漏れなどを防止できるのはもちろん、自社の業務を効率化できるため、ぜひシステムの導入を検討しましょう。

給与システムと連携

勤怠管理システムを給与システムと連携させることができれば、給与明細に正確な残業時間を明記できます。みなし残業制を導入する場合でも、残業時間は必ず明記しなければならないため、システムを連携させることで経理の業務を効率化できるでしょう。

既に自社で給与管理システムを導入している場合は、そのシステムと連携できる勤怠管理システムを選ぶのがおすすめです。他システムとの連携のしやすさや機能性にも注目しながら、自社に合ったシステムを選びましょう。

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まとめ

みなし残業の導入には、給与計算の効率化や生産性の向上など、さまざまなメリットがあります。企業側にたくさんのメリットがあるだけでなく、従業員側も安定した給与を貰えるようになるため、正しく説明すれば理解を得やすいでしょう。

ただし、みなし残業の意味を間違えたり、残業代の未払いがあったりするとトラブルになる可能性もあります。メリット・デメリットの双方を理解するのはもちろん、みなし残業に関する正しい知識を付けた上で導入を検討しなければなりません。

また、みなし残業制を取り入れる際には、勤怠管理システムもあわせて導入するのがおすすめです。時間外労働の管理や正しい勤怠管理、給与計算のためにも導入を検討しましょう。従業員にもあらかじめ説明をきちんと行うことで、スムーズな導入を目指せるはずです。

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