給与前払いサービスは賃金業に該当する?利用時の注意点も解説
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- 給与前払いサービスは、従業員が希望するタイミングで給与を受け取れるサービスである
- 金融庁の見解では賃金業に当たらないが、立替型サービスは貸付行為にあたる場合がある
- 貸付行為に当たる立替型サービスを利用する場合、賃金業登録の有無の確認を必ず行う
給与前払いサービスとは、従業員が希望するタイミングで給与を前払いで受け取れる仕組みを提供するサービスです。立替型のサービスは貸付行為にあたる可能性があり、その場合は貸金業に該当します。本記事では、給与前払いサービスと貸金業法の関係や利用時の注意点を解説します。
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給与前払いサービスは賃金業に該当するのか

給与前払いサービスが賃金業に該当するかどうかは、サービスの提供方法によって異なる可能性があります。ここでは、金融庁の見解を含めて、給与前払いサービスの法的な位置付けについて解説します。

給与前払いサービス・システムとは?メリット・デメリットなどを解説
給与前払いサービス・システムとは、従業員が給与日を待たずに、希望のタイミングで給与を受け取れるサービスです。導入により、担当者の負担軽減や従業員の満足度向上につながります。本記事では、給与前払いサービス・システムのメリット・デメリット、選び方を解説します。
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給与前払いサービスは賃金業に該当するのか
金融庁の見解では貸金業にあたらない
給与前払いサービスが賃金業に該当するかについては、平成30年に金融庁から見解が示されました。「グレーゾーン解消制度」における回答によれば、給与前払いサービスは賃金業にあたらないとされています。
なお、金融庁は照会内容について、サービス提供企業が賃金の立て替えを行っていると認識しており、これは貸金業法上の「貸付け(賃金業)」には該当しないという見解です。
貸金業者が行うような貸付けではなく、企業が従業員に支払うべき賃金を一時的に立て替えているという観点が、金融庁の見解の根拠とされています。
参考:グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました~給与前払いサービスの提供について~|経済産業省
貸金業法における「貸金業」の定義とは
貸金業法では、「貸金業とは、金銭の貸付けまたは手形の割引を業として行うこと」を指します。ここでいう「業として」とは、営利目的で反復継続的に行うことを意味し、単発の貸付や偶発的な資金の立替とは区別されるのが基本です。
また、貸金業に該当するかどうかは、契約の名称ではなく取引の実態によって判断されます。例えば、「立替」「前払い」「手数料」といった表現を用いていても、実態として利用者に資金を渡して後日返済させる仕組みであれば、貸付と評価される可能性が高いです。
さらに、貸金業に該当する場合は金融庁への貸金業登録が必要となり、利息制限法や貸金業法の規制(上限金利、契約書面の交付義務、取立規制など)の対象になります。登録を行わずに貸付行為を業として行った場合は、無登録営業として違法となります。
立替型サービスは貸付行為にあたる場合がある
給与前払いサービスには「立替型」と「自社払い型」がありますが、このうち立替型のサービスは貸付行為にあたる可能性があります。
金融庁の見解で対象となっているのは立替型サービスですが、資料によると「導入企業の支払い能力を補完するための資金の立替となっている」「手数料が導入企業の信用力によって変動する」といった条件を満たす場合は、貸付け行為となる可能性が高いと理解できます。
つまり、サービスを提供する会社が給与を立て替えた際に貸し付け行為とみなされてしまうと、手数料が利息と判断されてしまいます。この場合は、利息制限法に抵触する可能性があるため注意が必要です。
ただし、金融庁の見解にもあるように貸付業には該当しないため、適切な手続きを行っていれば指摘される心配はありません。
立替型とは
立替型の給与前払いは、従業員から前払いの申請があった際に、必要な金額をサービス提供企業が一時的に立て替えてくれる仕組みです。立て替えた分の給与は後日まとめて請求・清算されるため、企業は事前に資金を用意する必要がありません。
このタイプの給与前払いサービスを利用することで、労務管理の負担が軽減されます。また、従業員も即払いで給与を受け取れます。
自社払い型とは
自社払い型の給与前払いは、企業が前払い分の資金を自社で用意し、従業員へ支払う仕組みです。このサービスは法的リスクを排除しながら、安全性の高い環境下で利用できるのが特徴です。
支払い方法はさまざまで、自社の口座から従業員の口座への振り込み業務を代行してくれるサービスや、従業員がATMから預託資金を引き出せるサービスがあります。
そもそも給与前払いサービスに違法性はないのか

給与前払いサービスが貸金業法に該当するのかという疑問に加え、それらのサービスに違法性がないのか気になる方も多いでしょう。ここでは、給与前払いサービスの違法性について解説します。
適切な方法や手続きに基づいていれば合法
給与前払いサービスは貸金業に当たらないケースが多く、サービス自体に違法性も指摘されていません。貸金業にあたる場合でも、「貸金業登録」を行っている事業者であれば合法です。
ただし、貸金業にあたるサービスを行っているにも関わらず貸金業登録をしていないなど、違法性のあるサービス事業者がいることも考えられるため、気を付ける必要があります。
また、給与前払いサービスでは一般的に手数料が発生しますが、その手数料を従業員が負担する場合は、あらかじめ労使協定によって合意を得ておかないと、労働基準法における賃金の支払いに関する定め(賃金支払の五原則)に触れてしまう恐れがあります。
違法な「給与ファクタリング」に注意が必要
給与ファクタリング(給料ファクタリング)とは、従業員個人の給与を「債権」とし、給与債権をファクタリング業者が買い取ることで、規定の給料日よりも早く給与を受け取れるものです。
給与を早く受け取れるという点は給与前払いサービスと同じですが、給与ファクタリングは従業員個人とファクタリング業者間で行われるため、従業員を雇っている企業は関与しません。
さらに、給与ファクタリングは貸金業にあたるため、貸金登録をしていないファクタリング業者は違法です。警視庁なども注意喚起しているように、安易に利用しないようにしましょう。

給与ファクタリングとは?仕組みやリスク、悪徳業者の見分け方を解説
給与ファクタリングとは、給与を債権として買い取ってもらい、給料日よりも前に現金を受け取る手法を指します。しかし、給与ファクタリング業者の中には、悪徳業者も存在するため、利用には注意が必要です。本記事では、給与ファクタリングの仕組みやリスクなどを解説します。
給与ファクタリングが貸金業法に該当する理由
給与ファクタリングは形式上「給与債権の売買」と説明されることがありますが、実態としては、利用者が将来受け取る給与を担保に資金を受け取り、後日その全額を支払う仕組みです。このような取引は表面的な契約名ではなく、経済的な実態によって判断されます。
具体的には、利用者が受け取った金額に対して手数料を上乗せし、最終的に給与から差し引かれる構造となっている場合、その差額は実質的に利息に相当する対価と評価されます。
また、給与の支払いが行われなかった場合でも、利用者本人が支払義務を負う契約内容になっているケースでは、債権の売買ではなく返済義務を伴う資金提供とみなされやすくなります。
給与ファクタリングは「債権買取」を装いながらも、実態としては反復継続的に資金を提供し、対価を得る取引構造となるため、貸金業法上の貸付行為に該当すると判断される可能性が高いです。
給与前払いサービスを利用する際の注意点

給与前払いサービスを利用する際には、いくつかの注意点を意識しましょう。安全にサービスを利用できるように、慎重に判断することが大切です。
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給与前払いサービスを利用する際の注意点
賃金業登録について確認する
法律上の貸付行為にあたる立替型の給与前払いサービスは賃金業となるため、まずは貸金業に該当したサービスなのか、該当する場合は賃金業者登録を行っている事業者であるかの確認が重要です。
仮に、貸金業登録の必要があるのに登録を行っていない場合、違法で悪質な事業者である可能性も高いため、トラブルに巻き込まれないように注意しましょう。
手数料について確認する
手数料の金額や支払い方法についても確認しておきましょう。例えば、相場と比べてあまりにも高い手数料が設定されていたり、条件によって手数料が跳ね上がるような料金体系であったりする場合は、悪質業者の可能性が高いです。
特に、貸金業に該当する場合は振込手数料が年利換算して20%を超えると利息制限法に違反します。また、手数料を従業員が支払う場合には適切な合意が必要です。企業側が手数料を負担するケースも多いため、サービス導入の費用対効果についても考慮しましょう。
勤怠管理システムとの連携ができるか確認する
給与前払いサービスの利用では、実際に働いた分の給与を正確に算出する必要があるため、勤怠管理システムとの連携が重要です。従来の給与振込日とは異なることから、連携していない場合は労働時間の確認や手作業での入力が必要であり、ミスにもつながります。
そこで、既存の勤怠管理システムと連携し、勤務実績をもとに前払い可能額が自動で反映されれば、従業員も安心してサービスを利用できます。企業側にとっても、業務の効率化やトラブル防止に役立てられて便利です。
サービスの事業実績などを確認する
給与前払いサービスの信頼性を確かめる際、サービスの事業実績も判断材料の1つになります。例えば、これまでのサービス運用年数、導入企業数、前払いの実施件数、実際に導入している企業の口コミなどが参考情報です。
また、サービス事業者の名前や住所、代表者などを調べて事業者の実態を把握しておくのも、危険なサービスを避けるために有効です。
給与前払いサービスにはメリットも多い

給与前払いサービスには法的な懸念点もありますが、健全な給与前払いサービスを利用する場合はメリットも多いです。ここでは、給与前払いサービスを利用するメリットについて詳しく解説します。
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給与前払いサービスを利用するメリット
従業員満足度の向上や人材定着につながる
給与前払いサービスは、福利厚生の一環として導入されますが、福利厚生の充実は従業員満足度の向上や人材の定着につながります。近年は給与の水準だけでなく、働きやすい職場環境を重視する傾向が強まっています。
従業員が働きやすいと感じる環境を整え、優秀な人材を確保・定着させるためには、福利厚生の充実が重要です。急な支出に備えて給与を前借りしたいというニーズは一定程度あり、給与前払いサービスによって従業員のニーズを満たせられるようになります。
求人応募数の増加につながる
給与前払いサービスは、求人応募数の増加につながります。従業員は急な出費にも対応できるため、生活面での安心感を得ることで求人への応募意欲も高まりやすいです。
給与前払いサービスは導入している企業がそれほど多くはないため、他の企業との差別化ポイントとして効果的といえます。
前払い制度構築の負担を軽減できる
これから給与前払いに対応しようと考えている企業では、それに向けた制度構築の手間がネックとなっていることもあるでしょう。また、すでに前払いに対応していても、経理担当者の負担が大きいといった課題を抱えていることも考えられます。
給与前払いサービスを利用すれば、簡単に前払いの仕組みを導入し、煩雑な手続きもサービス側に任せることができます。従業員もより気軽に申請できるようになり、利便性が高まるでしょう。
給与前払いサービスを選ぶ際のポイント

給与前払いサービスは、安全性や信頼性以外の面でも確認すべきポイントがあります。ここでは、給与前払いサービスを選ぶ際のポイントを解説します。
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給与前払いサービスを選ぶ際のポイント
サービスのタイプを確認
給与前払いサービスには「立替型」と「自社払い型」の2種類のタイプがあります。それぞれ特徴が異なるため、自社にはどちらが適しているか見極めましょう。
法的なリスクを徹底的に排除したいか、従業員のニーズとして即払いが求められているか、あらかじめ資金を準備しておくのと必要になった分だけ後で支払うのではどちらが良いか、手数料の許容範囲はどの程度かなどを検討しつつ、自社に合ったものを選択しましょう。
提携している銀行の種類・数を確認
従業員が利用する銀行が限られている場合、振込手続きや口座への入金がスムーズに行えないことがあります。提携している銀行が多いほど、従業員がそのサービスを利用しやすくなります。
企業がサービスを導入する際には、提携銀行の情報を詳しく確認し、従業員全体にとって利便性の高いサービスを選ぶのがポイントです。
従業員が使いやすいか
給与前払いサービスは従業員のためのサービスであり、従業員が円滑に利用できるサービス仕様かどうかも大事なポイントです。具体的には、給与前払いの申請手続きがシンプルでわかりやすいか、アプリやWebサイトを介した利用が容易かどうかを確認します。
また、サービス提供企業が提供する情報やFAQが充実しているかも大切です。企業がサービスを選ぶ際には、従業員の立場に立って使い勝手を検討し、簡単な操作性でわかりやすいサービスを導入しましょう。
まとめ

給与前払いサービスは、従業員が給料日前に前払いで給与を受け取れるようにするサービスです。基本的には貸金業としてみなされず、金融庁からもその旨の見解が発表されています。
ただし、立替型と自社払い型の2つのタイプのうち、立替型については条件によって貸金業に該当する可能性も指摘されています。そのため、企業が給与前払いサービスを導入する際は、サービス事業者の貸金業登録の必要性と登録の事実確認が大切です。
悪質な業者がいるといったリスクをはじめ懸念点も存在しますが、適切に運用されていれば便利なサービスであるため、従業員への福利厚生を充実させるために導入を検討しましょう。
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