ACD(着信呼自動分配装置)とは?できることや注意点などを解説

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  • ACDとは、顧客からの入電を自動で設定したオペレーターに振り分けるシステムである
  • ACDにより、待ち時間や着信回数を基準として、各オペレーターへの割り振りを行える
  • コールセンターへのACD活用で、たらい回しによる顧客満足度の低下防止などが可能

ACDとは、日本語で「着信呼自動分配装置」を意味し、顧客からの入電を自動でオペレーターに振り分けるシステムです。コールセンターで活用することで、業務効率化による対応時間の短縮につながります。本記事では、ACDのできることやメリットなどを解説します。

目次

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  1. ACDとは
  2. ACDでできること
  3. コールセンターでACDを活用するメリット
  4. コールセンターでACDを活用する際の注意点
  5. コールセンターでACDを活用する方法
  6. まとめ

ACDとは

ACDとは、コールセンターなどにかかってきた電話を、あらかじめ設定したルールに従って、オペレーターに自動で振り分ける仕組みです。正式には「Automatic Call Distribution」といい、日本語訳は「着信呼自動分配装置」となります。

ACDは、特にインバウンド業務(受電業務)の効率化に役立つことから、インバウンド型のコールセンターやコンタクトセンターでの導入が進んでいます。

本記事では、ACDでできることや活用するメリットのほか、活用する際の注意点などをご紹介していきます。

ACDでできること

ACDでは、インバウンド業務を支援するための機能・仕組みが充実しています。ACDでは、どのようなことができるのか、具体的に解説していきます。

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待ち呼ガイダンス

待ち呼とは、すべてのオペレーターの回線がふさがっており、電話がつながりにくくなっている状態を指します。ACDでは、待ち呼が発生した場合に、待ち呼ガイダンスとして自動で音声ガイダンスを流すことが可能です。

たとえば、「電話が混雑しておりますので、しばらくお待ちください。」のような音声ガイダンスが一般的です。電話がつながらない状態が長く続くと、顧客が途中で電話を切る可能性が高まります。場合によっては、業務にかかわる重要な電話を取りこぼしかねません。

よって、待ち呼ガイダンスを流すことで、顧客にしばらく待つように呼びかけたり、かけ直しなどの他手段の検討を促したりできます。このような取り組みにより、重要な電話を取りこぼしにくくなり、顧客満足度の低下を防ぎます

待ち呼の詳細設定

待ち呼ガイダンスの内容は、自社ルールに合わせて柔軟に変更できます。たとえば、待ち呼ガイダンスの自動音声の内容を「大変混雑しております。お手数ですが再度おかけ直し下さい。」のように変更できるケースが代表的です。

また、Webページの問い合わせフォームに案内したり、別の窓口に転送したりすることも可能です。なお、ACDによっては、音声ガイダンスの再生後に自動で回線を切断できます。これらの機能により、顧客の待ち時間の短縮化が図れます。

さらに、待ち呼の詳細設定では、電話がかかってきた日時によって自動音声の内容を変更させる「スケジュール制御」も可能です。そのため、休日・営業時間外にかかってきた電話に対しては、「営業時間内に再度おかけ直し下さい。」のようなガイダンスを流せます。

待ち時間順着信

待ち時間順着信とは、待機時間が長いオペレーターに優先的に着信を振り分けることです。待機時間が長いオペレーターに優先的に着信させることで、オペレーターへの均等な割り当てを実現できます。

オペレーター間で着信回数に差が出ると不満につながりやすいため、社内環境を整えるためには待ち時間着信機能を上手く活用することが大切です。

着信回数優先着信

ACDでは、待ち時間ではなく、着信回数に合わせてオペレーターに電話を振り分けることもできます。つまり、着信回数が少ないオペレーターに優先的に電話を振ることで、全オペレーターの着信回数の均一化を狙えます。

特に、新人オペレーターは1件あたりの応対時間が長くなりやすく、同時に着信回数が少なくなる傾向があります。そこで、着信回数を考慮して電話を振り分けることにより、新人オペレーターも一定件数の応対をこなせます。

その結果、熟練と新人オペレーター間の着信回数の格差を防ぎつつ、新人オペレーターも効率よく実績を積めるようになります。

スキルベースルーティング

スキルベースティングとは、オペレーターのスキル・専門性・言語などに応じて、入電を自動で振り分ける機能です。

たとえば、専門性の高い内容は、新人オペレーターでは対応できない可能性があります。そのため、スキルベースティングの利用で、顧客の目的やニーズに合わせて最適なオペレーターに電話を転送できます。これにより、効率的な着信処理を実現できるでしょう。

なお、スキルベースティングはIVR(音声自動応答システム)と組み合わせて利用するのが一般的です。

IVRは、オペレーターにつなぐ前に自動音声を流したり、顧客の電話の目的を把握したりできるシステムです。たとえば「資料請求は1番」「商品問い合わせは2番」のように、目的・ニーズに合わせて顧客にダイヤルを選択してもらうケースが代表的です。

ランダムルーティング

ランダムルーティングの利用により、顧客からの入電をランダムでオペレーターに振り分けることができます。これは、電話の振り分けルールを設定する手間を省ける点が大きなメリットです。

ただし、ランダムルーティングを利用した場合、スキルや専門性を無視して各オペレーターに電話が振り分けられます。つまり、新人オペレーターや専門外のオペレーターに電話がつながる可能性があり、場合によっては業務効率が低下しかねない点に留意しましょう。

オーバーフロー転送

オーバーフロー転送とは、本来電話に応対するコールセンター・窓口だけで入電を捌き切るのが難しいときに、別センター・窓口に自動で電話を転送する仕組みです。

たとえば、顧客の待ち時間が一定時間を超えた場合や、受電件数がセンターの応対可能な電話件数を超過した場合などに、別窓口に電話を回します。

電話がつながらない状態が長く続くと、顧客はストレスや不安を感じ、結果として顧客満足度が低下する恐れがあります。したがって、オーバーフロー転送を利用して効率よく入電を捌くことで、さまざまなリスク回避につながります。

コールセンターでACDを活用するメリット

コールセンターでACDを活用することで、さまざまなメリットが見込めます。ここからは、コールセンターでACDを活用するメリットをご紹介していきます。

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オペレーターの業務効率化と負担軽減

コールセンターでACDを活用することにより、オペレーターの業務効率化と負担軽減を図れます。

たとえば、ACDではさまざまなルールに従って各オペレーターに電話を自動で振り分けることが可能です。オペレーター全員への均等な振り分けを実現することで、1人のオペレーターに業務負担が集中するのを防げます

また、スキルや専門性に応じて電話が振り分けられるため、オペレーターは自身の専門外の電話を受ける頻度が下がります。問い合わせ内容を把握可能な担当者に確認したり、電話を転送したりする手間を省けるため、業務の効率化・応答時間の短縮化が図れるでしょう。

各オペレーターの業務効率が向上することで、コールセンター全体における業務の効率化・迅速化にも期待できます。

顧客満足度の向上につながる

コールセンターでのACDの活用は、顧客満足度の向上につながります。たとえば、IVRとの併用により、顧客の目的やニーズに合わせて最適なオペレーターに1回で電話をつなぐことができます。

仮にACDがない場合は、顧客のニーズと合致しないオペレーターが応対に出る可能性があります。その結果、応対が不十分だったり、内容が分かるオペレーターに電話を転送したりするといった事態に陥りやすいです。

つまり、顧客が望む回答をすぐに提供できなければ、当然ながら顧客満足度は低下しやすくなります。一方、ACDの活用により、待ち時間の短縮化や電話のたらい回しを防止できるため、さまざまなリスクを低減できるでしょう。

的確な提案で成約率の向上に貢献する

コールセンターにかかってきた電話の内容をACDとIVRで振り分け、専門性の高いオペレーターへとつなげることで、新たな新規提案を行うことができます。つまり、専門性の高い訴求によって、顧客の購買意欲を促進し、的確な提案で成約を獲得します

その結果、問い合わせしたものとは別の商品・サービスの成約につながったり、応対品質の高さに関する口コミが広がったりすることによって、収益の向上にも貢献するでしょう。

新人オペレーターの教育への活用

ACDは、新人オペレーターへの教育にも活用できるメリットがあります。たとえば、経験の浅い新人オペレーターに対しては、難易度の低い電話を優先的に割り振ったり、入電件数を抑えたりすることができます。

新人オペレーターは、自身のスキル・学習速度に合わせて業務に取り組めるため、着実なスキル・知識の獲得が可能になります。また、応対件数を稼ぐことで、業務への自信も高まりやすくなるでしょう。

コールセンターでACDを活用する際の注意点

ACDは、ただ導入・運用するだけでは、効果を実感しにくいです。コールセンターでACDを活用する際は、次の2つのポイントに注意しましょう。

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コールセンターでACDを活用する際の注意点

  1. 既存システムと連携できるか確認
  2. 振り分けを管理する人材が必要

既存システムと連携できるか確認

ACDは、IVR・CRM(顧客関係管理)といった外部システムとの連携により、さらなる利便性の向上が期待できます。たとえばCRMとの連携により、オペレーターは顧客情報を確認しながら応対ができるため、スムーズかつ質の高い接客が可能になります。

このようなメリットを得るためにも、外部システムとの積極的な連携がおすすめです。ただし、システム同士の連携には相性があります。よって、新しくACDを導入する際は、あらかじめ自社の既存システムとの連携可否や相性について確認しておきましょう。

振り分けを管理する人材が必要

ACDを活用する際は、電話の振り分けを管理する人材を設置しましょう。ACDでは電話の自動振り分けが可能ですが、その前にはあらかじめ振り分けルールを人間が決めておく必要があります。

入電状況やコールセンターの運営状況は、日々変化していきます。たとえば、熟練オペレーターが急に休暇を取り、他の新人オペレーターで対応しなければならないなどのケースが代表的です。

そのような状況の変化に応じて、振り分けルールもその都度変更させなければ、入電を捌けなくなる恐れがあります。さまざまなリスクを避けるためには、状況の変化に合わせて、最適なルールを設定できる人材が必要です。

よって、自社の入電状況・コールセンターの運営状況を把握した人材が適しているでしょう。また、設定が複雑になるほどACDの管理も煩雑になるため、管理者にはACDについての知識も求められます

コールセンターでACDを活用する方法

ACDは、PBXとの併用によって、より効果を高められます。PBXと併用するには、主に次のような2通りの方法があります。

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ACD機能を備えたPBXの導入

ACDの活用効果を高めるには、ACD機能を備えたPBXを導入するのもおすすめです。PBXとは、外線と内線または内線同士の交換装置を指します。

ACD機能を備えたPBXの導入により、コールセンターにかかってきた電話を、着信状況や待機時間などに応じて、適切にオペレーターに転送できます。

PBXには、次の3種類があります。

  1. レガシーPBX
  2. IP-PBX
  3. クラウドPBX

それぞれ特徴・費用が異なるため、自社に適したものを選びましょう。中でも、クラウドPBXは導入・運用コストが比較的小さいことから、導入する企業が増えています。

コールセンターをアウトソーシングする

ACDを活用するには、PBXを備えたコールセンターに電話対応業務を委託するのも1つの方法です。自社でのPBX・ACDの導入が不要なため、コストや人的リソースを節約できるメリットがあります。

特に、ACDの設定や、新しい着信フローの構築には専門的な知識やスキルが必要です。コールセンターそのものをアウトソーシングすることで、このような煩雑な作業をカットできるでしょう。

また、プロの専門業者に業務を委託するため、高品質な電話応対を実現できる点もメリットです。

定期的なフィードバックと改善を行う

ACD機能はコールセンター業務を効率化するものですが、実際に自社の業務にどの程度反映されているのか、効果検証を定期的に行う必要があります。

特に、新人がどの程度成長したのか、専門性の高い内容を話せる人材はどのくらいいるのかといった現状把握が重要です。そして、ACD機能が適切な業務分配・顧客対応ができているかをフィードバックし、常に改善を心掛けていくことが大切です。

まとめ

ACDとは、あらかじめ設定したルールにしたがって、オペレーターに電話を自動で振り分ける仕組みです。たとえば、着信回数・待機時間に応じて電話を振り分け、応答待ちの顧客に自動音声を流すことが可能です。

ACDの活用により、オペレーターの業務効率化と負担軽減、顧客満足度の向上、新人オペレーターの効率的な育成が可能になります。また、外部システムとの連携によってさらに利便性が高まるため、自社の既存システムとの連携可否は、導入前に必ず確認しましょう。

入電業務に課題を抱える企業は、ACDを活用し、業務の効率化・迅速化を図るのがおすすめです。

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