車両管理責任者と安全運転管理者の違いとは?業務内容も解説

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  • 車両管理責任者とは、従業員が業務で使用する車両の運用・管理を行う責任者である
  • 安全運転管理者とは、事業主に代わって車両の安全運転を確保するための責任者である
  • 安全運転管理者は法律上で選任が必須・選任資格もあるが、車両管理責任者には必要ない

車両管理責任者と安全運転管理者は名前が似ているため、混同して考えてしまうことも多いです。しかし、安全運転管理者は法律上で適切な選任が定められているため、正しく理解することが重要です。本記事では、車両管理責任者と安全運転管理者の違いについて詳しく解説します。

目次

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  1. 車両管理責任者とは
  2. 安全運転管理者とは
  3. 車両管理責任者と安全運転管理者の違い
  4. 車両管理責任者の業務内容
  5. 安全運転管理者の業務内容
  6. 車両管理を行うなら車両管理システムの導入がおすすめ
  7. まとめ

車両管理責任者とは

車両管理責任者とは、文字通り会社が保有する車両(以下社用車)を管理する責任者を指し、社用車が車検切れとなったり不備が起こったりしないような管理を中心に行います。車両管理責任者は安全運転管理者と違い、法で定められた役職ではありません。

したがって、社用車を保有する企業では車両管理責任者を置かなくても法に触れることはありません。しかし、車両管理責任者の指名は、社用車の法に沿った管理や社用車管理のコスト削減・運用のための社内トラブル防止などにつながるため、行うのが懸命です。

また、車両管理責任者の業務内容には車両自体の管理だけでなく、その車両を利用する人の管理も含まれます。具体的には、私的利用の防止・事故の防止・利用目的と走行距離の管理なども職務範囲となり、幅広い業務を担います。

車両管理責任者とは?安全運転管理者との違いや業務内容を解説

車両管理責任者とは、企業が保有する車両の運用・管理を行う責任者のことを言います。安全運転管理者と違って、法律上の選任や選任資格がない役職ですが、車両管理責任者の選任で、コストの削減などに繋がります。本記事では、車両管理責任者の業務内容などを解説しています。

安全運転管理者とは

安全運転管理者制度は、道路交通法令の遵守や交通事故防止のために定められた制度です。

一定台数以上の自動車を保有する事業所には、事業主に代わって車両の安全運転を確保するための責任者である、安全運転管理者の選任が道路交通法第74条で義務付けられています。

安全運転管理者の選任義務のある事業所は、乗車定員11人以上の自動車を1台以上保有する事業所、または乗車定員11人以下の自動車を5台以上保有する事業所です。保有する自動車が20台以上ある場合は、20台ごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要となります。

また、自動二輪車は1台を0.5台として計算し、原動機付自転車は含まれません。自動車運転代行業者については、自動車運転代行業の業務適正化に関する法律で別途規定され、営業所ごとの安全運転管理者の選任、10台ごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要です。

参考:安全運転管理者制度|福岡県警察

安全運転管理者の選任資格要件

安全運転管理者は選任資格要件も明確に規定されています。安全運転管理者副安全運転管理者ともに20歳以上、副安全運転管理者を選任する場合の安全運転管理者は30歳以上でなくてはなりません。

また、安全運転管理者は運転管理経験2年以上が必要ですが、公安委員会の教習修了者であれば1年でも構わず、公安委員会が適性を認定した人の選任も認められます。なお、副安全運転管理者は運転管理経験1年以上、または運転経験3年以上が必要です。

安全運転管理者や副安全運転管理者には欠格要件もあり、公安委員会の解任命令によって解任されると2年間選任できません。そして、一定の違反行為後2年以内の人も選任できません。違反行為としては、ひき逃げ・酒気帯び・無免許運転などが挙げられます。

参考:安全運転管理者制度の概要|警察庁

選任・届出をしなかった場合のリスク

安全運転管理者や副安全運転管理者を選出・解任・変更したら、その発生日から15日以内に管轄の警察署を経由して公安委員会への届け出が必要です。また、自動車の台数変更による台数基準の変更や、事業所が移転・閉鎖した場合にも届け出が必要になります。

届け出は令和5年1月4日以降、警察のサイトから申請書類をダウンロードして行うオンライン申請も可能になっています。なお、警察署に提出する際には、令和2年4月1日に届出書類の書式が変更となっているため、古い書式を保管して利用している場合は注意が必要です。

安全運転管理者や副安全運転管理者の選任・届出は法で定められているため、選任義務違反・解任命令違反・是正措置命令違反選任・選任解任届出義務違反に認定されると、50万円以下の罰金が科せられます。2022年10月1日の法改正で罰則が強化されています。

参考:安全運転管理者制度の概要|警察庁

参考:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁

車両管理責任者と安全運転管理者の違い

安全運転管理者は、一定の社用車を保有する企業には法で選任が義務付けられ、資格条項や業務内容も法において具体的に規定されています。一方、車両管理責任者の選任は法の規定がなく、その業務内容は社内規定に定められているのが一般的です。

車両管理責任者の必要性

車両管理責任者の業務は、社用車の管理・運用を担うのが一般的とされています。そして、安全運転管理者が選任されている場合は、安全運転管理者が車両管理責任者を兼任している場合も多いです。

車両管理責任者の必要性としては、従業員における社用車の私的利用・不正利用を防止することが挙げられます。仮に、企業の管理が届かないプライベートで社用車を使用し、事故などを起こした場合、従業員だけでなく企業に対する損害賠償を請求されることがあります。

また、ドライバーの交通安全に対する意識を高め、事故を防止する観点からも車両管理責任者の重要性は高いと言えます。

安全運転管理者の必要性

安全運転管理者は、交通安全教育や自動車の安全運転確保に必要な業務を行います。安全運転管理者の選任が義務付けられていない企業でも、交通事故のリスクに備えて車両管理責任者を選任し、安全運転管理者が行うべき業務も含めて遂行することが求められます

なお、安全運転管理者は法律によって専任することが義務付けられており、企業が法令や規則を守るために必要であるとされています。ただし、会社の危機管理や業務の効率化・コスト削減としても、安全運転管理者の必要性は非常に高いです。

車両管理責任者の業務内容

車両管理責任者の業務内容は、公的に決められているわけではなく、各企業が規定の中で独自に定めている場合が多いです。ここでは、一般的な車両管理責任者が行う業務を解説します。

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台帳や規程の管理・確認

法律上の作成義務はありませんが、車両情報や保険の加入状況・使用状況などを管理するための車両台帳、運転者を管理する運転者台帳の整備は大切な業務です。これらの台帳を整理することで、社用車の法的整備がスムーズに行え、事故発生時の対応も素早くできます。

また、社用車の利用規定の整備や運転日報などを作成し、社用車が正しく利用されているかの確認を行うことも車両管理責任者の業務となります。

車両の使用許可を出す

従業員の社用車の利用は許可制の場合が多く、自動車のカギは車両管理責任者が管理するのが一般的です。利用する従業員の上司が利用許可を出しても、利用したい時間帯に空いた社用車がなければ貸出しできないため、最終的な使用許可は車両管理責任者が出します

社用車の貸出し前には、申請書などを提出させるように徹底し、利用時間・利用目的・おおよその走行距離など確認しながら、不正利用が発生しない社用車管理が必要です。

社用車ごとのコスト管理

社用車ごとの給油状況や走行ルート・走行距離・駐車場利用料などの管理も、車両管理責任者の業務です。これにより、社用車の不正利用の防止や無駄なコスト発生の防止につながり、利用者に運転日誌の提出を求めることでコスト削減や安全運転にも貢献します。

詳細な記録管理で社用車の稼働状況を把握できれば、保有する社用の台数やレンタカー・カーリースの検討、買い替え時の車種の検討などに役立ち、将来的な社用車にかかるコスト削減も可能になります。

定期的な車両の整備・点検

定期的な車両の整備・点検も車両管理責任者の業務です。車両の点検には車検・法定点検・日常点検があり、車検と法定点検は実施項目と間隔が法律で定められています。車検切れの車両で公道を走行すると道路交通法違反となり、免許停止処分が科せられます

法定点検や日常点検において、自家用車の場合には罰則規定がありません。しかし、定期的な点検によって車両の不具合の早期発見が可能です。そして、突然の故障防止や交通事故防止につながり、車両を長持ちさせられることでコスト削減にも寄与します。

安全運転管理者の業務内容

安全運転管理者の業務内容は、道路交通法施行規則第9条の10で明確に定められています。ただし、道路交通法施行規則の改正で令和4年4月1日より安全運転管理者の業務が拡充され、「酒気帯びの有無の確認」と「酒気帯び確認内容の記録・保存」が追加されています。

参考:道路交通法施行規則第9条の10|e-Gov法令検索

参考:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁

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運転者の適正把握

安全運転管理者は、社用車を利用する従業員が運転技能・自動車や交通安全に対する知識を持ち、交通規則を遵守していることを把握しなくてはなりません。この把握によって、運転者本人だけでなく、事業者にも大きな損害をもたらす交通事故の未然防止に役立ちます。

運転者の適正把握は従業員の観察による場合が多いですが、運転適性検査を活用するのもおすすめです。また、交通規則の遵守では有料にはなりますが、運転経歴に係る証明書を発行してもらうのも良いでしょう。そして、定期的な運転免許証のチェックも必須事項です。

安全運転確保のための運行計画の作成

安全運転管理者は最高速度違反・過積載運転・過労運転・放置駐車違反などを防止し、安全な運転を確保するための運行計画を作成しなくてはなりません。運行計画書を作成する目的は、運転者の交通事故のリスクから従業員と会社を守ることです。

一般貨物自動車運送事業者等では、運行計画書や運行日誌を基に業務を行いますが、営業車でも運行計画書の作成は必要です。特に、運行計画書では運行ルートと運転時間を確認し、無理のない計画であることをチェックします。

無理な運航計画に対する使用許可は事故の原因となるため、慎重なチェックが求められます。

長距離・夜間運転時の交換運転者の配置

安全運転管理者は、車両の運行が長距離であったり夜間運転が必要であったりする場合は、あらかじめ交替要員となる運転者を配置しなくてはなりません。これは、運転手の疲労によって安全運転の継続が難しくなることを防ぐためです。

例えば、貸切りバスの昼間走行の場合、原則1運行9時間・500kmまでというように細かく規定されています。したがって、営業に使う社用車などにおいても、長時間の運転や夜間の運転については注意を払う必要があります

異常気象時の安全確保の措置

安全運転管理者は、異常気象・天災などで安全運転に支障が生じる恐れがある場合には、安全確保に必要な指示や措置を講じなくてはなりません。そのため、異常気象が予想されるときには、運転者との連絡体制の確保や危険回避方法などの指示を行う必要があります。

近年では、ゲリラ豪雨・大量積雪などが多く発生しており、安全確保における役割の重大さが増しています。また、地震発生時の対応などのマニュアル作成も安全運転管理者の業務の1つです。

点呼等による安全運転の指示

安全運転管理者は、運転しようとする従業員に対して点呼などを行う必要があります。具体的には、日常点検整備の実施の有無、飲酒・疲労・病気などがなく正常な運転が可能であることを確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えなくてはなりません

運転者の体調が悪い場合には、交代や利用の不許可を指示します。また、日常点検で不備があれば、修理や他の車両の手配をします。その際、運転前後のチェックリストを利用するのも1つの方法です。

運転日誌の備え付けと記録

安全運転管理者は、運転者名・運転の開始および終了の日時・走行距離など、自動車の運転の状況を把握するために必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転終了時に運転者に記録させなければなりません

運転日誌は、車両故障の防止や危険個所の情報収集などに役立つものを作成すると、有効活用へとつなげられます。

酒気帯びの有無の確認

安全運転管理者は、運転者または運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視などで確認しなくてはなりません。しかし、法令改正により、令和5年12月1日からは、国家公安委員会が定めるアルコール検知器の使用が義務化されます。

酒気帯び運転や飲酒運転は厳罰化され、長期の懲役または多額の罰金が科せられるほか、免停や免許取消処分となります。また、会社によっては懲戒処分の対象にもなるため、従業員と会社の信用を守る観点からも、厳正な対処が必要です。

参考:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁

酒気帯び確認内容の記録・保存

安全運転管理者は、酒気帯びの有無の確認で行った内容を記録して1年間保管しなくてはなりません。アルコール検査での確認・記録の対象者は、業務遂行のために運転する者を指しますが、私有車両を業務で使用する場合も記録・保管の対象となります。

参考:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁

運転者に対する安全運転の指導

安全運転管理者は、運転者の運転技能・知識など、安全運転を確保するための指導を行わなくてはなりません。安全運転指導は、安全運転管理者にとって最も重要な業務であり、安全運転管理と交通安全教育を取り入れた、年間スケジュールに沿って行うのが効果的です。

参考:道路交通法施行規則第9条の10|e-Gov法令検索

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まとめ

車両管理責任者と安全運転管理者は、名前が似ているため混同されがちですが、違いを正しく理解して社用車の運用・管理を行うことが重要です。

安全運転管理者は、一定の車両を保有している企業には道路交通法で選任が義務化されています。具体的には、従業員への交通運転教育や交通事故の発生防止を行うのが業務です。

車両管理責任者は、主に車両の適正な管理と運用を行うのが業務です。安全運転管理者と車両管理責任者、どちらの業務も多岐にわたるため、車両管理システムの導入で一括管理するのがおすすめです。

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