法人カードのポイントを利用した際の会計処理|注意点も解説

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  • 法人カードのポイント利用時の会計処理は、利用用途によって異なるため注意する
  • 法人カードのポイントは会社のものであるため、社長・従業員関わらず個人利用は避ける
  • 使用するポイント額が多い場合は、税理士に依頼することも1つの手段である

法人カードのポイントは、利用方法によって会計処理が異なります。また、ポイントの個人利用は最悪の場合、業務上横領の罪に問われることもあるため注意が必要です。本記事では、法人カードのポイントを利用した際の会計処理や注意点を解説しています。

目次

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  1. 法人カードとは
  2. 法人カードのポイントを利用した際の会計処理
  3. 法人カードの会計処理・ポイント利用における注意点
  4. まとめ

法人カードとは

法人カードとは、企業や個人事業主に対して発行されるクレジットカードを指します。法人カードは利用限度額が個人カードよりも高い設定であるケースが多く、保険や空港ラウンジの利用など、個人カードより手厚い付帯サービスや特典なども含まれています。

法人カードは基本的に商品の購入などに利用し、光熱費などを法人カードに一本化することで、振込手数料の削減にもつながります。また、個人カードと同様に法人カードにもポイントサービスがあります。

利用する額に応じて付与されるポイントは、事業に使用することを目的とした商品や金券と交換したり、商品の購入にポイントを使用したりと、さまざまな用途に活用できて経費の削減にも役立ちます。

その他にも、引き落とし口座を法人口座に設定することで、事業とプライベートの区別がつきやすく、会計処理のミスを防止できるなどの効果もあります。

法人カードのポイントを利用した際の会計処理

法人カードに付与されたポイントを利用した際は、会計処理が必要です。ポイントの使い方は、商品や金券と交換したり、商品の購入に利用したり、キャッシュバックを受けた場合など、ケースによって会計処理の方法が異なります。それぞれを以下で具体的に解説します。

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商品や金券と交換した場合の仕訳

法人カードに付与されたポイントは、商品や金券と交換することが可能です。カード会社によって交換できる商品のラインナップは異なりますが、事業のために必要な商品やグルメ品として大切な取引先への手土産などに利用するなど、さまざまな用途に活用できます。

また、金券と交換することで経費として利用できます。つまり、商品を購入するためだけでなく、贈答品や社内の表彰にも利用できます。しかし、商品・金券それぞれでポイントの扱いが異なり、仕訳・勘定科目も異なるため注意が必要です。

以下で商品や金券と交換した場合の仕訳をそれぞれ解説します。

ポイントと商品を交換した場合

ポイントを商品と交換した場合の仕訳は以下の通りです。例えば、ポイントを商品(3,000円分)と交換した場合、ポイントは会社の収入扱いになり、貸方は「雑収入」として計上します。

ポイントで交換した商品は、事業での利用を目的とした商品として扱われるため、借方は「仕入高」で計上します。したがって、交換する商品は事業の範囲内で使用する必要があります。個人での利用を目的とした商品との交換は避けるのが得策です。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
仕入高3,000円雑収入3,000円

ポイントと金券を交換した場合

ポイントを金券と交換した場合の仕訳は以下の通りです。例えば、ポイントと金券(4,000円)を交換した場合は、ポイントは雑収入として計上し、金券の勘定科目は会社の資産となるため、「前払金」または「貯蔵品」として計上します。

ポイントと金券の交換は課税対象外取引に当たるため、以下の会計処理となります。また、ポイントと交換した金券を利用して消耗品などを購入する場合は、借方を「消耗品」貸方を「前払金」として会計処理を行います。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
前払金4,000円雑収入4,000円

ポイントで事務用文具を購入した場合の仕訳

ポイントで事務用文具を購入した場合、全額ポイントで支払うか、一部をポイントで支払うかによって会計処理の方法が異なります。また、ポイント使用分の処理は値引処理・両建処理の選択に合わせて勘定科目が異なります。

値引処理は、ポイント使用後の支払金額で会計処理を行います。そして、両建処理は、ポイント使用前の支払金額とポイント使用分を「雑収入」として計上し、会計処理を行う国税庁から案内されている方式です。なお、どちらを選択するかは事業主の判断になります。

全額ポイントで支払った場合

全額ポイントで支払った場合の仕訳は以下の通りです。ポイントを使用する際の会計処理は「値引き」または「雑収入」として会計処理を行いますが、クレジットカードの決済は、カード代金の決済日にまとめて支払うため「未払金」として計上します。

法人カードのポイントで商品を購入する際は、ポイントを使用した「値引き」として扱います。しかし、法人カードのポイントを使用するにはカード払いにて支払いを行う必要があります。

全額ポイントで支払った場合は、クレジットカードの決済日に合わせる必要があるため勘定科目を「未払金」として計上します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
消耗品費2,000円未払金2,000円

一部をポイントで支払った場合(雑収入の場合)

一部をポイントで支払った場合の仕訳は以下の通りです。例えば、事務用文具(1,000円分)の購入に500ポイント使用し、残りをクレジットカードで支払った場合です。ポイント使用分を「値引き」ではなく「雑収入」とした場合の仕訳となっています。

ポイント使用分を「雑収入」で計上し、クレジットカード支払い分は「未払金」として計上します。両建処理を行う場合はポイント使用前の金額とポイント使用額を値引処理ではなく、「雑収入」として扱う必要があります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
消耗品費1,000円未払金500円
雑収入500円

一部をポイントで支払った場合(ポイント分の値引きを受けたとする場合)

一部をポイントで支払った場合の仕訳は以下の通りです。例としては、事務用文具(1,000円分)を500ポイント使用し、残りをクレジットカードで支払い、ポイント分の値引きを受けたとする場合の仕訳としています。

値引処理で計上するため、ポイント利用分は計上せず、実際に支払った分だけを計上します。その際、ポイント使用分の金額などを記載する必要はありません。なお、クレジットカードで支払いを行う際は貸方に未払金を使用します。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
消耗品費500円未払金500円

キャッシュバックを受けた場合の仕訳

キャッシュバックを受けた場合の仕訳は以下の通りです。例えば、前月に10,000円のカード利用額が預金口座から引き落としされ、2,000円がキャッシュバックされた場合の仕訳です。

カード利用によるキャッシュバックは「雑収入」として扱います。キャッシュバックの会計処理は、該当するカード代金が支払われた決済日に行うため、借方が「未払金」となります。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額
未払金10,000円預金8,000円
雑収入2,000円

法人カードの会計処理・ポイント利用における注意点

法人カードの会計処理やポイント利用をする際は、いくつかの注意点があります。ここでは、会計処理・ポイント利用に関する把握しておくべきポイントをいくつか解説します。

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ポイント利用に関するルールを策定する

法人カードを利用して付与されたポイントは会社のものとなります。法人カードは代表者だけでなく、社員が出張の際や社用車のETCカード・給油などで使用する場合もあるため、社内で法人カードを利用する場合はルールを明確にする必要があります。

具体的には、カードの利用内容はすべて報告するようにし、ポイントの利用を完全に制限するなどの取り決めを行うことで、不正利用を防止する効果があります。

なお、ポイントの取り扱いについては、明確なルール設定を就業規則に記載しておくことで社員も把握しやすくなります。

法人カードのポイントの個人利用は避ける

法人カードのポイントは会社のものであるため、個人利用は避けるのがベターです。つまり、ポイントは会社の資産となるため、会社所有のものを業務以外で個人利用した場合、刑法第253条の業務上横領の罪に問われる可能性があります

カードの裏面に代表者・取締役社長の氏名が記載されていても、カード利用代金の支払いは会社が行います。そのため、カードの名義が代表者名でもポイントは会社所有という認識を持ち、個人での利用は避けましょう。

法人カードの個人利用を避けるためにも、個人用とプライベート用のクレジットカードは完全に切り離して使用するのが得策です。

参考:刑法第253条|e-Gov法令検索

個人事業主の場合は個人利用しても問題ない

個人事業主の場合は、法人カードのポイントは個人カードのポイントと同じように用途を問わず使用できます。個人事業主の場合は、法人ではなく個人でカード契約を行うため、カード利用により付与されたポイントは会社ではなく個人のものとして扱われます。

そのため、ポイントの個人利用は個人事業主であれば問題ありません。しかし、会計処理を行う際は「雑収入」として計上する必要があります。なお、年間20万円分のポイント以下であれば、所得税の申告は不要です。

仕入税額控除について把握する

仕入額控除とは、事業者が自社売上分の消費者から預かった消費税から、仕入分で支払った消費税を差し引いた金額を納税する制度を指します。仕入額控除を適用することにより、消費税の二重課税を防止することができます。

例えば、商品を購入した際、その取引については仕入税額控除を行うことになり、消費税の「課税仕入れにかかる支払い対価の額」は2通りあります。以下でポイント使用が「対価の値引き」である場合と、「対価の値引きでない」場合について解説します。

ポイント使用が対価の値引きである場合

ポイント使用分が「対価の値引き」である場合、商品対価の合計額からポイント使用相当分を差し引いた金額(値引後の金額)となります。ポイントの使用が対価の値引きであるか判断するには、商品購入の際に発行されるレシートで確認します。

仕入税額控除を行う際は、対価の値引きである場合、ポイント使用相当分が値引された金額が課税仕入れの対価の額となります。対価の額の貸方勘定科目は現金支払いの場合は「現金」で計上します。

ポイント使用が対価の値引きでない場合

ポイント使用が「対価の値引きでない」場合は、商品対価の合計額(全額)となります。対価の値引きでない場合は、上記の通りレシートで確認できますが、合計金額からポイント使用相当分が「ポイント支払い」として記載されます。

仕入税額控除を行う際は、対価の値引きでない場合、ポイント使用される前の金額が課税仕入れの対価の額となります。対価の額の貸方勘定科目は現金支払いの場合、合計金額からポイント使用分を差し引いた金額を「現金」、ポイント使用分を「雑収入」で計上します。

参考:No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の仕入税額控除の考え方|国税庁

ポイント額が多い場合は税理士に相談するのがおすすめ

法人カードのポイントを使用する際は、さまざまなポイントの使用方法があります。しかし、商品や金券と交換した場合、ポイントで商品購入をした場合、キャッシュバックを受けた場合などケースによって会計処理の仕方が異なります

また、個人事業主の場合もポイント使用分の会計処理が異なります。ポイント使用分の仕訳については税務上の規定が特にないため、仕訳処理に不安が残る場合も少なくありません。したがって、ポイント額が多い場合は税理士に相談するのがおすすめです。

まとめ

法人カードのポイントは、利用用途によってそれぞれ会計処理が異なるため、注意が必要です。また、法人カードの利用によって付与されたポイントは会社所有の資産となり、業務以外の用途には利用できないとされていることから、個人利用は避けなければなりません。

法人カードでの会計処理やポイント利用をする際は、ポイントの利用に関するルールを策定して社員に周知し、ポイントの個人利用は避けるなどの対策を行うことが重要です。個人で利用した場合、業務上横領の罪に問われる可能性もあるため注意しましょう。

また、課税事業者は消費税の二重課税を解消するための「仕入税額控除」の仕組みについての把握も必要になり、会計処理はポイントの利用用途によって複雑な処理になる可能性もあります。

法人カードの会計処理を行う際は、ポイントの使用については税務上明確な規定がないため、仕訳処理に不安が残る場合やポイントの使用額が多い場合は税理士に相談するのがおすすめです。

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