工程管理システムをエクセルで作ることはできるのか?作り方を解説
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- 工程管理システムはエクセルで作ることもでき、操作がしやすいなどのメリットがある
- エクセルは急なアップデートで互換性がなくなったり、属人化が起こりやすかったりする
- 工程管理システムをエクセルで作成する場合には、わかりやすい表の作成を意識する
工程管理システムをエクセルで作ることは可能です。自社で作成することにより、費用の削減や自社仕様にカスタマイズをすることができます。しかし、エクセルでの管理には注意点もあります。本記事では、工程管理システムの作り方やメリット・デメリット、注意点を解説します。
目次
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工程管理システムをエクセルで作成することはできるのか
工程管理システムは、エクセルで作成することが可能です。エクセルで工程管理を行う場合、主にバーチャートとガントチャートという表が用いられます。これらの表はそれぞれ異なる特徴を備えており、必要に応じて使い分けるのがおすすめです。
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バーチャートとは
バーチャートとは工程表の一種であり、主に作業の内容と日付の管理を目的として用いられます。エクセルでバーチャートを作成する際は、列(縦軸)に作業内容・行(横軸)に日付を入力する場合が多いです。
バーチャートの特徴は、作成のしやすさと使いやすさにあります。構成がシンプルで複雑な式の設定などが不要なため、専門的なスキルがない従業員でも使用できます。また、一目で内容を把握できるため、誰でも簡単に作成や管理を行えるでしょう。
ガントチャートとは
ガントチャートも工程表の1つです。ガントチャートは業務の進捗状況を管理することができ、作業の見える化によって全体像を把握しやすくなるという特徴を備えています。
ガントチャートをエクセルで作成する場合、列(縦軸)に作業内容・行(横軸)に進捗状況を入力します。また、必要に応じて、担当者・作業内容・開始日などの情報を追加します。
ガントチャートでは複数の工程の進捗を可視化できるため、全体の状況を直感的に管理することが可能です。したがって、スケジュールの設定が行いやすく、作業が遅れている箇所をスムーズに把握できます。
エクセルで工程管理システムを作成するメリット
工程管理システムをエクセルで作成すると、システム導入にかかる費用を削減することができます。また、操作がしやすく、他システムとの連携や自社に合った仕様にできることも大きなメリットです。
ここでは、工程管理システムをエクセルで作成するメリットを4点取り上げ、それぞれについて解説していきます。
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費用を削減できる
工程管理システムをエクセルで作成する大きなメリットの1つとして、費用を削減できるという点が挙げられます。工程管理システムの導入には初期費用やランニングコストがかかりますが、エクセルを使用することで、これらの費用を抑えることができます。
エクセルは多くの社用パソコンに標準的に搭載されており、すでに業務で使用されている場合がほとんどです。そのため、新たなシステム導入が不要であり、費用をかけず場合によっては無料で工程管理システムを作成することが可能です。
操作がしやすい
2つ目のメリットとして、エクセルは操作性に優れているという点が挙げられます。エクセルはビジネスをする上で広く使用されているツールであり、使いやすく設計されたソフトウェアです。
また、エクセルは基本的な操作を習得している人が多く、誰でもスムーズに使用できます。つまり、新たなシステム操作の習得にかかる時間や労力が不要なため、時間的なコスト削減にもつながります。
自社仕様にできる
工程管理システムをエクセルで自作する3つ目のメリットは、自社の仕様に合わせて作成できるという点です。基本的なフォーマットのテンプレートを使用して、内容を自社の業務に合わせてカスタマイズすれば、自社の仕様に合ったものを自由に作成できます。
また、エクセルの操作において一定以上のスキルを備えていれば、引用式や参照式などを使用して自由に作成することも可能です。実際に使用する担当者に使い勝手を確認しながら作成することで、運用開始後のトラブル防止にもつながるでしょう。
このように、エクセルによるカスタマイズはシステムを構築する場合に比べて手間がかからず、工夫次第で業務効率の向上が見込めます。
連携性に優れている
エクセルは他システムとの連携性に優れているため、カレンダーツールなどと連携できるというメリットも得られます。工程管理においてはスケジュール管理が必須となるため、工程表の内容をカレンダーで共有することで業務管理がスムーズになるでしょう。
また、エクセルのデータをCSVに変換することで、他システムへのインポートが可能になるケースもあります。システム同士の連携が難しい場合には、このような方法も役立つでしょう。
エクセルで工程管理システムを作成するデメリット
工程管理システムをエクセルで作成した場合、注意が必要なデメリットも存在します。エクセルは平行管理やファイルの共有が難しく、スマホやタブレットなどのマルチデバイスには対応していません。また、アップデートによる不具合なども課題となっています。
ここでは、エクセルで工程管理システムを作成する際のデメリットを5点取り上げ、詳しく解説します。
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エクセルで工程管理システムを作成する5つのデメリット
アップデートにより互換性がなくなる
エクセルを含むMicrosoft officeソフトのアップデートが行われると、旧バージョンとの互換性が失われたり、以前のバージョンで作成したファイルが使えなくなるといった不具合が起こったりする場合があります。
そのため、アップデートによってそれまで使用していた工程管理システムが開けなくなると、業務が停滞する原因となります。
また、ファイルが回復できない場合は、入力済みのデータがすべて失われる可能性もあるため、バックアップやアップデートの管理などが必要になります。
他のシートとの並行管理がしにくい
エクセルで工程管理を行う際は、生産管理や経費精算シートのデータを参照するために、別シートを開く必要があります。工程管理においては他部署のデータが必要となる場面も多く、シートの切り替えによるデータ照合は手間がかかってしまいます。
また、別シートからデータを取得するために複雑な引用式を設定すると、ファイルが重くなって業務に支障をきたすなどのリスクも生じます。つまり、複数のシートにわたる情報を必要とする場合は、エクセルによる管理が不向きであると言えます。
工程管理以外を一元管理できない
複数のシートを同時に編集できないことに加え、1つのエクセルで作成した工程表は工程管理しか行えません。つまり、システムでは他の業務と連携した管理が行えるのに対し、エクセルでの管理では工程管理にしか対応できません。
特に、工程表はスケジュール管理や生産管理など、多くの管理項目との連携・情報共有が必要です。よって、エクセルのみで管理を行う場合、他の管理業務と合わせて一元管理できないのは大きなデメリットとなります。
編集作業の属人化が起こりやすい
エクセルで工程管理システムを自作すると、複雑な設定が必要になります。特に、VBAやマクロなどを用いたエクセルファイルは、作成者以外が内容を理解することが難しく、編集作業の属人化が起こりやすくなるというデメリットが発生します。
また、システム作成者の退職などによってエクセルファイルを編集できなくなった場合、エラーが解決できず、ファイルがすべて使えなくなるケースも見られます。加えて、新しいファイルへのデータ引き継ぎや、過去データの取得ができないことも考えられます。
工程管理システムは随時内容の変更や修正を行う必要があるため、属人化は大きなリスクとなります。したがって、ファイルの設定内容をマニュアルなどに記載しておくなどの対応を行い、業務の透明性を確保しましょう。
企業成長に柔軟な対応ができない
エクセルでの管理では属人化しやすいことにより、企業成長に柔軟な対応がしにくいというデメリットもあります。
具体的には、新しい生産工場を建てて新たな工程管理を行う場合、エクセルの工程表では全体像が把握しづらく、どのように広げていくのかといった判断が難しくなります。また、グローバル化に対応したい場合にも、海外の拠点などへの対応が困難です。
したがって、企業の新たな横展開がしにくいというのもエクセル管理における弊害となります。
ファイルの共有が難しい
エクセルは社内ネットワーク経由でしか使用できないため、社外からはファイルの更新や確認ができません。そのため、更新内容をリアルタイムで共有できず、現在の進捗状況を把握するのに時間がかかってしまうでしょう。
また、エクセルは複数名での同時編集に対応できない場合があります。特に、古いバージョンのエクセルを同時編集する際は、先に編集中の人が作業を終えるまで待つ必要があり、業務効率の低下につながります。
工程管理システムをエクセルで作る方法
工程管理システムをエクセルで作る方法として、バーチャートやガントチャートの作成が挙げられます。表を一から作成することも可能ですが、簡単に始めたい場合はテンプレートの利用も検討してみましょう。
ここでは、バーチャートやガントチャートの作成方法を解説します。
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工程管理システムをエクセルで作る2つの方法
バーチャートの作り方
バーチャートを作成する際は、作業の内容や所要時間を洗い出し、項目ごとに整理することが重要です。その後、日付の入力や担当者の割り当てを行い、チャートを完成させましょう。ここでは、これらの手順について解説していきます。
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バーチャートの作り方の主な流れは5つ
作業内容を洗い出す
バーチャートの工程表を作成するには、作業内容の洗い出しが不可欠です。バーチャートでは作業内容ごとに進捗管理を行なっていくため、抜け・漏れがないように全ての作業を事前にリストアップしておきましょう。
作業内容を洗い出す際は、大まかな項目を書き出してから、詳細な内容を書き加えていくのがおすすめです。担当者1人で作成すると作業が抜けてしまう場合があるため、複数名でチェックを行いましょう。
洗い出した内容を並べる
続いて、洗い出した作業内容を順序よく並べ替えていきます。この手順によって、作業の抜け・漏れをチェックする効果が得られます。また、作業順に並べ換えることで進捗状況を把握しやすくなり、バーチャートによる進捗管理がスムーズになります。
所要時間を洗い出す
この手順では、作業順に並んだ作業内容を見直し、それぞれの納期や作業にかかる所要時間を洗い出していきます。所要時間の見積もりに誤差があると、正確な進捗管理を行えなくなってしまうため注意しましょう。
特に、所要時間を少なく見積もると、トラブルが発生した際に対応する余裕がなくなってしまう場合があります。よって、イレギュラーな事態を想定し、所要時間に余裕を持たせておくのがポイントです。
進捗遅れの正確な所要時間を洗い出すには、過去の実績データや現在の業務効率の把握が不可欠です。必要な情報を取得し、客観的なデータに基づいた所要時間の予測を心がけましょう。
日付を入力する
続いて、所要時間に基づき、作業内容ごとに作業を完了させる予定日を入力します。その際、予定日を厳しく設定してしまうと、1つの箇所で遅れが発生した場合に全ての工程に遅延が出てしまいます。
そのため、所要時間と同様に少し余裕を持った日程を設定しておきましょう。
担当者の割り当て
最後に、各作業の担当者を誰に割り当てるかを設定します。業務量の偏りが生じないように、なるべく均等に作業の割り当てを行いましょう。
担当者の割り当てにおいては、作業内容に応じた従業員のスキルを見極めて最適化することが重要です。そのため、従業員それぞれの能力や作業量を把握した担当者が割り当てを行うことが望ましいでしょう。
ガントチャートの作り方
ガントチャートを作成する際は、まずバーチャートと同様に作業内容の洗い出しを行います。続いて、作業の依存関係にも注目し、日程や担当者の割り当てを実施しましょう。ここでは、ガントチャートを作成する手順について解説します。
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ガントチャートの作り方の主な流れは4つ
作業内容を洗い出す
ガントチャートを作成する際も、作業に関する内容を洗い出すことから始めましょう。工程の始めから終わりまでを項目ごとに書き出し、各工程を切り分けていく方法が効果的です。
この際、作業工程の分類を意識するのがおすすめです。大まかな作業項目とそれらに属する細かな項目とを併記することで、作業の関係性を把握しやすくなります。洗い出した作業内容は、バーチャートの作成と同様に、手順に沿って並べ替えを行います。
日程を決める
続いて、洗い出した作業内容ごとの日程を決めていきます。作業の開始日・終了日・休日などを設定し、作業内容ごとに振り分けていきましょう。その際、作業内容の工数や重要度を考慮し、余裕を持った日程を設定しておくのがおすすめです。
作業の規模や内容によっては、作業期間が長期にわたる場合があります。ガントチャートの横軸が長くなりすぎると工程表が見づらくなるため、必要に応じて作業期間の単位を週単位や月単位に設定しましょう。
作業の依存関係を洗い出す
作業の中には、相互に依存関係があり、順を追って行わなければならない作業も存在します。日程を決めていく中でこのような作業が見つかった場合には、作業の開始日などを考慮しながら、スケジュールに矛盾が生まれないように調整する必要があります。
たとえば、部品Aの組み立てを行なってから作業Bを行う場合、作業Bの開始日は部品Aの組み立て作業の終了日以降に設定しなければなりません。このように、作業の依存関係をあらかじめ把握した上で、日程の調整を行いましょう。
担当者の割り当て
最後に、各作業における担当者の割り当てを行います。従業員によって能力や作業量が異なるため、業務時間や業務量が均等になるように配慮しながら配置を決めるのがポイントです。
たとえば、仕事が速い従業員に多く作業を割り当てると、進捗はスムーズになります。しかし、一部の従業員に仕事が偏ることで、業務の属人化やミス・不満につながる場合もあります。よって、不公平感が生まれないようにできるだけ平等な作業分配を心がけましょう。
工程管理システムをエクセルで作る際に意識すること
工程管理システムをエクセルで作る際は、わかりやすさを心がけ、作業の重複が起こらないように注意しましょう。ここでは、いくつかの注意点について解説していきます。
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工程管理システムをエクセルで作る際に意識する2つのポイント
わかりやすい表を作る
エクセルで工程管理システムを作成する際は、一見してどのような表になっているかがわかるようにしておくのがポイントです。工程管理は複数の担当者によって行われる場合が多く、進捗に合わせて情報を更新する必要があるため、複雑な形式のものは不向きです。
つまり、見やすい表を作るためには、色分けや塗りつぶしなどの機能を使う方法が効果的です。その際、手作業でセル選択や色分けを行うと手間がかかってしまうため、必要に応じて数式・マクロ・条件付き書式などを設定しておきましょう。
複雑すぎるエクセルファイルは属人化を招く原因となりますが、適度に自動化することで業務効率が上がります。手作業の工程が増えるほど入力ミスの可能性も上がってしまうため、入力が必要な箇所・設定によって自動化できる箇所をバランスよく配置しましょう。
作業が重ならないように区分する
エクセルで工程管理を行う際は、作業期間の入力などを手作業で行います。そのため、各作業の実施期間が重複したり、スケジュールが入り乱れ、矛盾が生じてしまったりする場合があります。
工程表が完成してからこのような問題に気づいた場合は、作業内容の区分方法を見直し、スケジュールの修正を行いましょう。なお、全ての作業期間を修正しなくても、区分の切り分けを調整することで改善される場合があります。
工程管理において、作業日程の設定は重要な項目です。当初の予定から大幅に遅れている作業があった場合は、無理のあるスケジュール設定が行われていないかを確認しましょう。
エクセル上の工程管理システムを使用する際に注意すること
エクセルで作った工程管理システムを使用する際は、入力時における人為的なミスや、エクセルファイルの管理方法に注意しましょう。ここでは、これらの注意点を取り上げ、それぞれについて解説します。
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エクセル上の工程管理システムを使用する2つの注意点
人為的ミスに注意する
エクセルで作成した工程管理システムを使用する場合、担当者が手入力によって情報を更新します。そのため、データの入力間違いや、誤って数式を削除してしまうなどの人為的なミスが生じる可能性があります。
エクセルによる工程管理システムでは、詳細な計算式や書式設定などが行われているケースが多いです。したがって、手入力が必要な箇所をわかりやすく示し、編集を行うべきではない箇所はロック機能などを利用して編集を行えなくするのが効果的です。
また、入力ミスによってエラー表示が出た場合は誤りに気付くことができますが、エラーが表示されなかった場合は、どの箇所に入力ミスが起こっているのかを把握することが困難になります。
その結果、原因の究明や内容のチェックに多くの時間がかかってしまうため、人為的ミスが起こらないように十分に注意しましょう。
ファイルの管理に気をつける
エクセルの工程管理システムを利用する際は、ファイルの管理方法にも注意が必要です。たとえば、複数名が1つのファイルにアクセスして編集を行なった際、上書き保存に失敗すると新しいバージョンのファイルが作成されてしまいます。
この場合、異なるバージョンのファイルが作成され、それぞれ異なる編集内容が保存されます。また、誰かが工程管理システムのファイルをコピーして保存すると、ファイルの数が増えてしまい、どれが最新のファイルか把握できなくなってしまいます。
このようなファイルの乱立は業務の混乱を招き、時間が経過するほどにデータの統合が困難になります。したがって、不必要なファイルのコピーや別名保存を行わないなどのルールを明確に定め、適切な管理を行いましょう。
まとめ
工程管理システムはエクセルによって自作できます。エクセルによる工程管理は、バーチャートやガントチャートによるものが一般的です。バーチャートは作成しやすく構成がシンプルであり、ガントチャートは作業全体の進捗を把握しやすいという特徴があります。
工程管理システムをエクセルで作成する場合、システムの導入費用やランニングコストがかからないというメリットがあります。また、自社の仕様やニーズに合わせて自由に工程表を作成でき、担当者に特殊なスキルがなくても簡単に使用できます。
エクセルによる工程管理を行う際は、わかりやすく可視性に優れた工程表を作成しましょう。また、手入力による人為的なミスを軽減するための工夫や、ファイルの管理方法に関するルールを定めることも重要なポイントです。
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