法人カードの経費処理方法とは|仕訳方法・保存書類について解説
Check!
- 法人カードの仕訳方法は、白色申告の場合と青色申告の場合で異なる
- 法人カード利用時に帳簿で使う勘定科目には、消耗品費や旅費交通費など数種ある
- 法人カードを利用する際は、利用にかかるコストや管理方法・支払い方法に留意する
企業や個人事業主が契約できる法人カードですが、法人カードを利用した際の経費精算は確定申告や細かな支払い方法によって異なるため、仕訳が複雑です。本記事では、法人カードを利用した際の仕訳の方法や、帳簿に使う勘定科目の他、保存すべき書類についても解説します。
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法人カード利用時の仕訳方法
法人カードを利用した際の会計処理は、あらゆる観点により仕訳の方法が異なります。確定申告が白色申告・青色申告によって異なるほか、分割払いやリボ払いによって発生する手数料にも仕訳の仕方があります。
また、法人カードのポイント・キャッシュバックなどは会社所有となるため会計処理を行う必要があります。法人カードの年会費についても仕訳を行う必要があり、処理漏れのないよう注意が必要です。以下で法人カード利用時の仕訳方法について解説します。
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法人カード利用時の仕訳方法
白色申告の場合
白色申告の場合は、単式簿記での記帳になるためシンプルに仕訳ができます。単式簿記の場合、取引が発生した日の仕訳を行います。記載する項目は日付・金額・内容のみです。そのため、個人のカードでも法人カードでも処理の手間はほとんど変わりません。
他の経費処理ほど専門的な簿記の知識がなくても記帳がしやすいため、帳簿の付け方がわからない場合でも経費処理が行えます。
青色申告の場合
青色申告の場合は、複式簿記で記帳を行います。複式簿記の方法は取引を複数の勘定科目を用いて、左側を「借方」右側を「貸方」で記帳を行う方法です。複式簿記は、お金の出入りと財産の増減を一緒に確認することが可能です。
青色申告の場合は、青色申告特別控除として最大65万円の控除を受けられるメリットがあります。クレジットカードで消耗品などを購入した分の仕訳は、購入した日の仕訳は貸方を「未払金」の勘定科目で会計処理を行います。
また、クレジットカードの利用額が普通預金の口座から引き落としされた日に借方を「未払金」貸方を「普通預金」で再度処理を行う必要があります。
専用口座の利用で仕訳を簡略化できる
青色申告の場合、法人カードを利用した分が法人口座(個人事業主の場合は事業用口座)から引き落としされる場合は、仕訳を簡略化することが可能です。仕訳は商品を購入した日付で貸方を「未払金」ではなく「普通預金」で処理を行います。
ただし、年をまたぐ場合は簡略化できません。年をまたぐ場合は取引日に貸方を「未払金」で一旦処理し、口座から引き落とされた日に借方を「未払金」貸方を「普通預金」で再度会計処理を行う必要があります。
分割払い・リボ払いで発生する手数料の仕訳
法人カードでの支払方法を分割やリボ払いにした場合、分割手数料が発生します。発生した手数料は「支払手数料」の勘定科目を用いて会計処理を行う必要があります。
仕訳の日付は借方に「消耗品費」など購入した商品に該当する勘定科目、貸方に「未払金」で一旦処理を行います。
その後、カード利用代金が口座から引き落としされた日に、借方の「未払金」に元金の金額と「支払手数料」に手数料の金額、貸方に「普通預金」で元金と手数料の合計金額で処理を行い、会計処理が完了します。
ポイントやマイルを使った場合の仕訳
法人カードを利用して付与されたポイントやマイルは個人カードと同様、カード会社によって異なりますが、商品や金券と交換したり、商品購入の支払いに充当したりとさまざまな利用方法があります。
ポイント利用分の仕訳は、用途によって異なる会計処理を行います。ポイントを値引きとして考える場合は貸方を「未払金」で処理し、雑収入として考える場合はポイント利用分の金額を「雑収入」として処理します。
また、ポイントを金券と交換した場合、借方を「前払い金」貸方に「雑収入」として仕訳を行います。
キャッシュバックがあった場合の仕訳
カード会社により、カード利用分に対してポイントやマイルではなく、キャッシュバックで利用金額の一部を現金で還元するキャッシュバック型を採用している場合があります。キャッシュバックは利用代金に対しての還元率がカード会社によって設定されています。
キャッシュバックされた際の仕訳は、カード代金が口座から引き落としされた日に行います。借方にカード利用代金を「未払金」で処理し、貸方の「普通預金」にキャッシュバック分を差し引いた金額、キャッシュバック分を「雑収入」に分けて仕訳します。
年会費の仕訳
法人カードの年会費は、経費計上することが可能です。仕訳は「支払手数料」の勘定科目を用いるのが一般的ですが、「諸会費」「雑費」で処理するケースもあります。個人事業主は、カードの私的利用が多い場合、年会費を経費として認められない場合もあります。
「雑費」で計上する際は、年会費が1万円以内の場合有効ですが、将来的に年会費が増額する見込みがあるなら「支払手数料」で計上しておくのが無難です。年会費は毎年発生する経費のため、勘定科目は統一しておきましょう。
法人カード利用時に帳簿で使う勘定科目
法人カード利用時に帳簿で使う勘定科目は複数存在します。用途に応じてどの経費にあたるのか、統一性を持って勘定科目を選択する必要があります。法人カードを利用した支払いのすべてが経費として認められるわけではありません。
以下の表では、法人カード利用時に帳簿で使う勘定科目と内容をまとめました。どの経費がどの科目に該当するか把握しておきましょう。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
消耗品費 | 事業用の文具や清掃用品など金額が10万円未満で使用期間が1年に満たないもの |
旅費交通費 | 業務の目的で利用した電車・バス・タクシーなどの移動費や、ホテルなどの宿泊費・有料道路代・ガソリン代・駐車場代など |
接待交際費 | 取引先や顧客との飲食・手土産やお中元やお歳暮などの贈答品、慶弔費などの交際費 |
通信費 | 業務上必要な携帯電話代・固定電話代・インターネット利用代金・切手など郵送費 |
新聞図書費 | 業務で使用するための新聞の購読費用・資料として購入した書籍で電子図書も含まれる |
会議費 | 会議で利用した会議室などのレンタル料、お茶やお菓子のほか備品も含まれる |
光熱費 | 事務所などの電気・水道・ガス・灯油代の使用料金 |
修繕費 | 事業で使用する備品や設備などの修繕費用 事務所移転の際に発生する原状回復費用も含まれる |
研修費 | 業務上で必要とされるスキルを習得するための研修費用 |
法人カードを利用するメリット
法人カードを利用することでさまざまなメリットが得られます。業務や管理の負担が軽減されるほか、支払いが猶予されることによりキャッシュフローが安定します。また、個人のカードにはない、ビジネス向けの付帯サービスが受けられるなどメリットが多数あります。
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法人カードを利用するメリット
業務・管理負担が軽減する
法人カードを利用することにより、経費精算や経理業務の負担が軽減するメリットがあります。現金決済の場合、経費精算業務の稟議に時間がかかったり、経費精算費用の振り込みを行ったりと多くの工数と時間を要します。
法人カードで経費の支払いを行うことにより、経理処理や経費精算処理が簡略化するため、大幅な業務負担の軽減が実現します。
また、法人カードを利用することで小口現金を無くせるため、出納業務や現金の残高確認など煩雑な業務を削減できるといったメリットもあります。
会計ソフトとの連携でさらなる業務効率化が可能
法人カードを利用するだけでも経理業務の負担は減りますが、会計ソフトや経費精算システムと連携することでさらなる効率化に期待ができます。
法人カードとシステムを連携することで、カードの利用明細が自動でシステムに同期されます。自動で同期されることで入力作業が減るため、入力ミスを防ぎつつ経理業務負担の大幅削減が実現できます。
ただし、中には法人カードと連携できない会計ソフト・経費精算システムもあるため、業務効率化を重視する場合は連携可否の確認が必要です。
計上漏れを防げる
経費の支払いに法人カードを利用することで、経費申請忘れや領収書の紛失による計上漏れを防げます。法人カードで経費の支払いを行うと、カード会社から支払い明細書が発行されるため、経費申請を忘れたり領収書を紛失したりしても計上漏れが起きません。
現金での立替は領収書の紛失があると経費として計上することが難しく、個人カードでの立替は本当に業務で使用したものか判断がしにくいです。そのため、従業員に金銭的負担をかけないためにも法人カードの活用がおすすめです。
キャッシュフローを安定させられる
法人カードは毎月決まった日に口座引き落としされるため、支払いに猶予が生まれキャッシュフローが安定します。また、引き落とし予定額が把握でき、資金繰りの計画も立てやすいです。
そのため、事業用口座に手元資金が残り、資金繰りに余裕が生まれるといったメリットもあります。法人カードの締め日・支払日はカード会社によって異なりますが、締め日から支払日まで約1ヶ月ほどの猶予期間があります。
そのため、現金決済を行うよりも支払い計画が立てやすく、手元に資金を長く残しておけます。
ビジネス向けの付帯サービスを利用できる
法人カードには、カード会社によってあらゆるビジネス向けの付帯サービスがあります。ポイントやマイルが貯まるサービスだけではく、空港ラウンジの利用・海外旅行をサポートする海外アシスタンスなどが提供されています。
ETCカードの無料発行サービスもあり、従業員の交通費用として活用すれば、経費精算を効率化できます。法人カード1契約につき複数枚発行できるカード会社も存在し、従業員の個人立替も不要になります。
そのほかにも保険・優待サービス・福利厚生などのさまざまな特典があるため、カード会社の付帯サービスを確認して法人カード会社を選定するのも1つの手段です。
法人カードを利用する際の注意点
法人カードを利用する際にはいくつかの注意点があります。年会費などの総合的なコストに留意することや、カードの不正利用や紛失を防ぐために管理方法や支払い方法についてのルール設定も必要です。
また、プライベート利用と混同すると経理処理が煩雑になるため、注意しなければなりません。以下にて、法人カード利用時に注意すべきポイントについて解説します。
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法人カードを利用する際の注意点
総合的なコストに留意する
法人カードの多くは年会費が発生します。年会費無料の法人カードも存在しますが、付帯サービスやポイントの面で満足できない場合もあります。年会費の相場は10,000円~数万円程度がほとんどですが、中には1,000円程度のカード会社も存在します。
年会費は経費精算できますが、カードの利用予定があまりない場合は、高額な年会費が無駄になることもあるため、総合的なコストに留意することも重要です。万が一に備えて法人カードを持っておきたい場合は、年会費のお手頃なカード会社を選びましょう。
カードの管理方法・支払方法を徹底する
法人カードは管理方法の徹底や、支払方法のルールを明確に通達する必要性があります。法人カードは従業員用のカードを追加発行することも可能です。従業員にカードを持たせることで経費精算を効率化できますが、徹底した管理が必須です。
法人カードを利用できる従業員は、交付を受けた社員だけに限るのが鉄則です。カードの使い回しはカード会社より禁止事項としての規定もあります。従業員に預けたままでは不正利用や紛失のリスクも高まるため、利用する際にその都度手渡しするようにしましょう。
また、カード利用による報告や経費精算の利用明細が多くなると照合が煩雑になるため、利用範囲を設定することも重要です。支払方法は法人カードの場合、基本的に1回のみですが、締め日も意識してカードを利用するなどのルールを周知させましょう。
公私混同のカード利用はしない
法人カードは法人の事業用口座から引き落としされるため、プライベート利用とビジネス利用のカードは分けて使う必要があります。法人カードでプライベート利用をした場合、法人が利用代金を一旦立て替える必要があり、会計処理に手間がかかります。
また、法人カードを利用した際に付与されたポイント分は、会社所有のものとなります。そのため、ポイント分の処理などを考慮すると、法人カードで個人の買い物のために利用するのは避けるのがベターです。個人の支出は個人カードを別途契約して利用しましょう。
法人カード利用時に保存すべき書類
法人カード利用の際に金銭のやり取りが発生しないため、カード会社は受領者ではありません。そのため、基本的には利用明細書は領収書には該当しません。利用明細書を領収書代わりに活用するには、国税関係帳簿書類の要件を満たしている必要があります。
- 利用店舗名
- 利用者名(契約者名)
- 利用金額
- 利用年月日
- 購入した商品名や利用したサービス名
以上5つの要件を満たしていれば領収書代わりに活用できますが、カード会社によって利用明細に記載されている内容が異なるため、要件を満たしているか確認しておきましょう。
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法人カード利用時に保存すべき書類
税務調査に必要な書類
法人カードの利用明細書は領収書に該当しませんが、税務調査に備えて保管しておきましょう。店舗からもらえるレシートやクレジット売上票も一緒に保管することをおすすめします。法人カードの使途が不明確だと、税務調査で不正を疑われる可能性があります。
また、法人カードを利用するとクレジット売上票・領収書・明細書など複数の書類を受け取りますが、これらは1つにまとめておきましょう。別々に保管していると誤って2回経費計上してしまうリスクがあり、二重計上すると税務署から指摘されます。
Web明細は7年間保管
法人カードのWeb明細は電子帳簿保存法の保存書類に該当するため、法人の場合7年間の保存が定められています。個人事業主の場合は基本的に5年間です。法人の保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から7年とされています。
Web明細は電子的データのまま保存し、提示の要求があればすぐに提示・提出ができるように保存先も明確に整理しておきましょう。
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- 基本カード1枚につき1枚のETCカードを発行することができる
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ここが少し気になる…
- 追加カードの発行が3枚までなので、利用者が多い企業には不向き
- 国内・海外旅行傷害保険とショッピング保険がない
- 付帯サービスに魅力を感じない場合、他カードと比べてメリットが少ない
まとめ
企業や個人事業主が契約できる法人カードは、個人カードにはない付帯サービスや利用限度額が高い設定など、事業の経費支出に役立つクレジットカードです。
法人カードを利用した際の仕訳の方法や帳簿に使う勘定科目などは、利用用途に応じた処理を行う必要があります。法人カードには経理処理や経費精算の処理を簡略化し、業務負担を軽減できるなど多くのメリットが得られます。
しかし、法人カードを利用する際は年会費などのコストや管理方法など、注意すべき事項も多くあります。自社の業務形態にあったサービス内容の法人カードを利用し、キャッシュフローを安定させて経費処理を効率化させましょう。
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