Excelで原価管理を行う方法|原価管理システムについても解説

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  • Excelで行う原価管理は、教育にかける時間の削減や自社に合わせてカスタマイズが可能
  • Excelには、共同作業の難しさや、セキュリティに脆弱性があるといった課題がある
  • 原価管理システムでは、労務コストの削減や原価変動時のシミュレーションができる

Excelを使用した原価管理は低コストで行えます。しかし、業務の属人化などのデメリットもあるため注意が必要であり、Excelよりも原価管理システムでの管理の方がおすすめです。本記事では、Excelで原価管理を行うメリットや原価管理システムについて解説します。

目次

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  1. 原価管理とは
  2. Excelの原価管理表の作り方
  3. Excelで原価管理を行うメリット
  4. Excelで原価管理を行うデメリット
  5. 原価管理を行うなら原価管理システムがおすすめ
  6. 原価管理システムを導入するメリット
  7. 原価管理システムを導入するデメリット
  8. 原価管理システムを選ぶ際のポイント
  9. まとめ

原価管理とは

原価管理とは、商品やサービスを提供する際に発生する原価を管理する手法です。原価を正確に把握することにより、利益を最大化させるための経営判断ができます。また、余計なコストを削減したり、正しい価格を設定したりするためにも原価管理が欠かせません。

原価にはさまざまな種類があり、業種や業態によって原価に含まれるものが異なります。さらに、原価管理はリスク管理をすることも目的の1つです。原価変動による利益への影響を把握することにより、リスクを最小限に抑えられます。

原価管理を行う際は、標準価格の設定・実際原価の把握・差異分析・改善策の実施など、各ステップを踏みながら進めていきましょう。先に標準価格を設定してから実際原価を把握すると、差異分析がしやすくなります。分析後は、改善をして利益率の向上を目指します。

Excelの原価管理表の作り方

原価管理は、Microsoft社が提供しているソフト「Excel」を用いて行えます。ここでは、Excel(エクセル)を使った原価管理表の作り方を見ていきましょう。

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縦軸・マスターシートに必要な項目を入力

Excelで原価管理表を作成する際は、最初に縦軸・マスターシートに必要な項目を入力しましょう。縦軸には原価要素を入力します。原価要素は、製品やサービスの製造・提供にかかるすべての原価です。具体的には、材料費や人件費などに分けられます。

次に、マスターシートとは、原価要素ごとに単価や標準原価を定義したシートです。マスターシートを作成しておくと、実際原価を入力する際に単価や標準原価を自動的に計算できます。それぞれに必要な項目を入力し、原価化管理表のベースを作成しましょう。

関数を使用する

Excelで原価管理表を作成する場合、関数を使用すると簡単に管理できます。関数が入力されていると自動で合計額などを計算してくれるため、手作業で計算する手間が省けてミスも減らせるでしょう。よく使われる関数は、以下の通りです。

  1. SUMPRODUCT:複数の範囲の合計を計算する関数
  2. SUM:範囲の合計を計算する関数
  3. AVERAGE:範囲の平均を計算する関数
  4. COUNT:範囲内のセルの数を数える関数
  5. IF:条件によって異なる値を返す関数
  6. VLOOKUP:ある範囲から値を検索して、別の範囲から値を返す関数

例えば、E2からE4列までの合計を算出したいときは該当のセルに「=sum(E2:E4)」と入力します。このように、関数を上手く用いることで原価管理表作成の手間が大きく省けるでしょう。

Excelで原価管理を行うメリット

Excelで原価管理を行うメリットとしては、コストを抑えられる点が挙げられます。また、教育にかかる時間を削減できるのも大きなメリットです。以下で、Excelで原価管理を行うメリットを4つ紹介します。

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コストを抑えて原価管理できる

Excelは既に会社のPCに導入されているケースが多く、ほとんどの企業が新たに大きな導入コストをかけなくても利用可能です。既にインストールされていれば導入にかかる時間も削減できるため、今すぐに原価管理表をしたい場合にも向いています。

専用のツールを導入する場合には、どうしてもコストや時間がかかってしまうため、原価管理表を急いで作成したい場合には困るでしょう。その点、Excelは既に導入している企業も多く、操作も比較的簡単なことから、ミスや入力漏れも少なく済む傾向にあります。

教育にかかる時間を削減できる

Excelは会社のPCにインストールされているケースが多いため、教育にかかる時間も削減できます。普段からExcelを用いた管理を行っている企業では、新たに操作方法や入力方法を教えたり、指示したりする手間も省けるでしょう。

また、Excelの使用に慣れている従業員がいる企業においては、教育コストや教育にかかる時間を大幅に削減できます。関数や基本の入力方法が分かれば原価計算表は作成できるため、インストールされているものの使用頻度の少なかった企業でも気軽に利用可能です。

テンプレートで作業を効率化できる

Excelにはさまざまなテンプレートが用意されており、その中には原価管理表のテンプレートもあります。テンプレートはベースの形が既に作成されている状態であり、各企業が対象となる原価の項目や金額を入力するだけで手軽に使用できるのが大きなメリットです。

なお、テンプレートにも複数の種類があるため、自社の形態に合うものを選んで使いましょう。一から原価管理表を作成するとなると少し手間になりますが、テンプレートを使って作成すれば専門知識のない方でも短時間で作成可能です。

また、原価管理を複数人で行っている場合には、チームで同一のテンプレートを使うことで統一した様式での管理が行えます。その際、バラバラの様式で管理すると、後でまとめた際に手間になったり、ミスが発生しやすくなったりするため注意が必要です。

自社に合わせてカスタマイズができる

Excelでの原価管理は、自社に合わせてカスタマイズできます。自由度の高いExcelにおいては、セルに入力できるデータ・計算式・関数などが豊富に用意されており、自社のニーズに合わせた表のレイアウトを作成可能です。

また、ExcelにはマクロやVBAといった機能があり、上手く活用すれば自動化や繰り返し処理を簡単に行うことができます。原価管理表の作成や更新を自動化すれば、業務効率を向上させられるでしょう。

このように、自社が求めるカスタマイズにより、柔軟性のアップや作業効率化が狙えます。

Excelで原価管理を行うデメリット

Excelでの原価管理には多くのメリットがありますが、ヒューマンエラーが発生しやすいといったデメリットもあります。また、業務の属人化やセキュリティリスクにも注意が必要です。ここでは、Excelで原価管理を行うデメリットを5つに分けて解説します。

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ヒューマンエラーが発生しやすい

Excelでの原価管理は基本的に手入力で行うため、ヒューマンエラーが発生しやすいとされています。原価要素や数量、単価などの入力ミスが発生すると、全ての計算が狂ってしまう可能性もあるため十分に注意しなければなりません。

また、計算式や関数の使い方を間違えると、誤った計算結果を導き出すこともあります。その他にも、表の不備によるミスが発生するケースもあるでしょう。Excelでは多くの数字や関数を利用するため、どうしてもヒューマンエラーが発生しやすくなってしまいます。

業務の属人化

Excelを用いた原価管理のデメリットとして、業務が属人化しやすい点が挙げられます。業務の属人化とは、特定の社員のみが業務を理解・実施でき、担当者が不在の場合や退職した際に、業務が継続できなくなる状態のことです。

マクロや関数を組み込むと自動で計算できるため、処理の手間が省けます。しかし、複雑な関数を複数用いている場合は操作が煩雑になり、使いこなせる従業員が限られるでしょう。そうなると、担当者が不在の場合に業務が進まなくなってしまいます。

担当者不在の際に作業ができないと、業務に大きな支障が出てしまうため注意が必要です。したがって、企業全体で管理ができる体制を整え、属人化が起こらない環境を整えましょう。

共同作業が難しい

Excelでの原価管理は、共同作業が難しい点がデメリットです。Excelのファイルは個人で操作する分には特に問題ありませんが、複数人で共有しながら作業を進めることはできません。そのため、チームで原価管理を行う場合に支障が出る可能性があります。

例えば、同時編集ができないだけでなく、ファイルを共有する際も毎回保存したファイルを送信し、保存して作業を進めなければなりません。一方、クラウド上で管理できるようなファイルであれば、同時編集や共有も簡単に行えます。

Excelのファイルは、セルの値を直接変更することが可能です。よって、共同作業を行う場合は、データの整合性を保つためのルールを定める必要があります。このように、Excelでの原価管理では共同作業が難しい点に注意が必要です。

更新に手間がかかる

Excelでの原価管理では、更新に大きな手間がかかります。Excelファイル形式の管理においては、情報を更新する度にファイルを開く手間が発生します。クラウド上に保存されたファイルのように自動更新されないため、毎回新たなファイルを開かなければなりません。

また、更新したファイルはメールやチャットなどで毎回共有する必要があり、データの更新には大きな手間がかかってしまうでしょう。チームで管理している場合は更新に余計な時間がかかるほか、どれが新しいファイルか分からず混乱する可能性もあります。

セキュリティリスクがある

Excelでの原価管理にセキュリティリスクがある理由としては、ファイルの持ち出しが容易な点が挙げられます。Excelのファイルは、USBメモリやメールなどで簡単に持ち出し可能です。そのため、不正アクセスや情報漏洩のリスクがあります。

また、Excelのファイルにはセキュリティの脆弱性が懸念されます。つまり、悪意のあるコードが埋め込まれて、情報漏洩やシステムの改ざんなどの被害に遭うリスクもゼロではありません。

したがって、Excelのセキュリティリスクは、金銭的損失や業務の停止にもつながる可能性があり、おすすめはできません

原価管理を行うなら原価管理システムがおすすめ

原価管理システムとは、原価計算・予実の比較・原価の管理・損益の分析などの計算を効率的に実行できるシステムです。原価管理を行うためのさまざまな機能を備えており、ヒューマンエラーや属人化などの課題を解決できます。

実際原価や標準原価などの原価計算を自動化できるだけでなく、差異分析や予実比較の実行も可能です。グラフや表による原価管理の可視化ができるシステムもあり、一目で原価の状況を把握できます。

また、原価管理システムは共同作業しやすい点もメリットです。複数の人が同時に原価管理を実施できるため、チームでの管理にも向いています。さらに、セキュリティ対策が施されており、データの改ざんや情報漏洩といったリスクを防げるのも魅力です。

原価管理システムとは?主な機能やメリット・選ぶポイントを解説

原価管理システムとは、原価計算や損益分析、原価シミュレーションなどの複雑な計算を効率的に行えるシステムです。この記事では、原価管理システムの基本的な機能やシステム導入によるメリット、導入前・導入時にそれぞれ考えるべきポイントについて詳しく解説します。

原価管理システムを導入するメリット

原価管理システムの導入には、業務効率化や労務コストの削減といった多くのメリットがあります。ここでは、原価管理システムを導入するメリットを解説します。

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原価管理業務の効率化で他業務に注力可能

原価管理システムには自動計算機能が搭載されており、原価管理に関する業務を効率化できます。原価計算や差異分析などの原価管理業務を自動化することで、業務の効率化を図れるでしょう。

これにより担当者の負担を軽減できれば、他の業務に注力できるようになります。原価管理業務を効率化できるだけでなく、他の業務にも良い影響が与えられるのがメリットです。

企業経営に必要な情報を迅速に入手できる

原価管理システムでは、原価データをリアルタイムで収集・分析できます。経営判断に必要な情報を迅速に入手できれば、迅速な経営判断が可能です。

原価管理システムの自動計算機能を使えば、「原価差異分析」や「損益分岐点」などといった企業に必要な情報が簡単かつ手早く得られるため、経営判断がしやすくなります。したがって、システムを導入しない場合には、計算に大きな時間がかかってしまうでしょう。

人材育成や配置転換などの労務コストの削減

原価管理システムの導入によって原価管理業務を自動化できれば、人件費の削減にもつながります。また、業務の効率化によって担当者のスキルアップや他の業務への配置転換が可能となり、人材育成や配置転換にかかるコストを削減することも可能です。

労務コストは企業において大きな負担となるケースも多いため、システムの導入によって削減できるのは嬉しいポイントでしょう。

ERPとの連携で迅速な経営判断が実現する

原価管理システムの中には、ERPとの連携が可能なものも存在します。ERPとは、企業のヒト・モノ・カネ・情報といった、経営資源を一元管理する総合基幹業務システムを指します。

原価管理システムをERPと連携することにより、自社で既に利用している他のシステムにも原価情報を共有することが可能です。そのため、部署内ではもちろんのこと、経営陣からしても迅速な経営判断の実現に役立ちます。

原価変動による影響をシミュレーションできる

原価管理システムでは、原価変動による影響をシミュレーションできます。影響のシミュレーションで将来の原価変動を予測できれば、経営計画の策定やリスク対策に役立てることが可能です。

また、事前にリスクを把握できることにより、早い段階で対策を検討できます。その結果、原価変動による損失を最小限に抑えられるでしょう。

原価管理システムを導入するデメリット

原価管理システムの利用で得られることには多くのメリットがありますが、同時にデメリットがあることも忘れてはなりません。しかし、メリットと比べるとそこまで大きなものではないため、参考程度に覚えておきましょう。

一番にデメリットとして挙げられるのは、自社に適したシステムを選ばないと返って非効率化してしまうことです。そのような事態が発生する特徴としては、導入前にしっかりと自社の状況把握やシステム選びを行っていないことなどが考えられます。

そのため、企業の重要な資金を投資して原価管理システムを導入する場合には、現状の原価管理においてどのような課題を抱えているのか、どのような機能が必要であるかといったことを入念に分析・把握しておく必要があります。

なお、自社に最適なシステム選びを行ったとしても、実際に使用する現場の人間が利用しないことには導入の意味がなくなってしまいます。したがって、システムの導入・運用における教育や周知も重要なポイントです。

原価管理システムを選ぶ際のポイント

原価管理システムを選ぶ際には、「自社の業務に合っているか」「他システムと連携できるか」などのポイントに注目しましょう。詳しいポイントについては、以下で解説します。

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自社の業種に合っているか

原価管理システムには、さまざまな機能や特徴があります。そのため、自社の業務内容やニーズに合ったシステムを選ぶことが重要です。仮に、自社の業種に合っていないシステムを選んだ場合は機能を持て余したり、機能が不足したりする可能性があります。

したがって、自社の業種に合っているかどうかを判断するためには、機能・実績を確認するのもおすすめです。例えば、同業種の企業が導入している実績があれば、自社にとっても使いやすいシステムだと判断できるでしょう。

他システムと連携できるか

原価管理システムを選ぶ際には、他システムとの連携性にも注目しましょう。会計システムや生産管理システムといった他のシステムと連携することで、より効率的に業務を進められます。そのため、他システムとの連携が可能なシステムを選ぶのがおすすめです。

その際、連携性を確認する場合には、自社で既に使用しているシステムと連携できるかどうかを忘れずに確認しましょう。

モバイル端末に対応しているか

原価管理システムを外出先でも利用する場合は、モバイル端末に対応しているシステムを選ぶのがおすすめです。モバイル端末に対応していない場合はPCでしか作業ができず、出先などでは操作できません。よって、どの端末に対応しているかもあわせて確認しましょう。

自社に合った原価の配賦方法が設定できるか

原価管理システムでは、原価を配賦する必要があります。そのため、自社に合った原価の配賦方法が設定できるシステムを選びましょう。原価の配賦方法とは、複数の製品やサービスに共通して発生した間接費を、各製品やサービスに按分する方法です。

仮に、自社に合った原価の配賦方法が設定できないと原価管理がしにくくなってしまうため、必ず確認しましょう。

まとめ

Excelでの原価管理は、教育時間や導入コスト削減などのメリットが多数あるものの、業務の属人化やセキュリティリスクといったデメリットも多くあります。多くの企業がExcelを既に導入していて使いやすい一方、情報漏洩や改ざんに注意しなければなりません。

効率よく原価管理を行いたい場合には、原価管理システムの導入がおすすめです。原価管理システムは情報の共有もしやすく、情報漏洩といったリスクも軽減できます。本記事の内容を参考にしながら、自社に合った原価管理システムの導入を検討しましょう。

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