世界と日本の人事評価システムの違い|ノーレイティング制度も解説

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  • 日本と海外では人事評価制度が違い、日本では年功序列、欧米では成果主義の傾向が強い
  • 世界的には、社員のランク付けを廃止する「ノーレイティング」制度が広まりつつある
  • 公平かつ効率的な人事評価を行うためには、人事評価システムの導入もおすすめである

日本と海外では人事評価システムが異なります。欧米では成果主義が強い傾向にあり、近年は「ノーレイティング」が採用され始めているのも特徴です。本記事では、日本と海外の人事評価制度の違いや近年の動向、日本が海外の制度から学べることなどを解説します。

目次

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  1. 世界と日本の人事評価制度の違い
  2. 欧米の人事評価制度の動向
  3. 世界的に広まりつつあるノーレイティング制度とは
  4. 日本が世界の人事評価制度から学べること
  5. まとめ

世界と日本の人事評価制度の違い

世界の多くの国において、人事評価制度は組織や文化に応じてそれぞれ異なっています。日本にも独自の人事評価制度があり、欧米諸国の制度とは違っています。

日本は資本主義であることから、年功序列や集団主義を重視し、勤務年数やチームとの協力・全体の一体感が重要視されます。

一方、海外の企業では、従業員の「成果」を重要視する傾向があり、上司と部下の間で定期的な目標設定や成果の評価に対する対話が持たれます。また、報酬の面でも成果に応じた額が重要視され、それをベースに支給されることが多いです。

以下では、日本と海外の人事評価の違いについて、3項目に分けて詳細を解説します。

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海外は成果主義の考えが強い傾向にある

海外の人事評価制度では、成果主義の考え方がメインであり、従業員の業績や実績が評価の中心となっています。これは、個々の従業員が組織に対してどれだけ成果を上げ、価値を提供するかといった点が重要視される企業風土や文化に起因しています。

一方、日本では年功序列が根強く残っており、長期勤務と組織への貢献度が評価されるため、高い地位や報酬を得やすい傾向があります。また、チームとの協力や一体感が重視され、個人の業績よりもチーム全体の成功が重要視されることが多いです。

このように、海外と日本の人事評価制度は大きく異なります。海外では個人の成果と能力が重要視され、給与や昇進に大きな影響を与えますが、日本では組織内での忠誠心や長期的なキャリアの積み重ねが評価される傾向にあるのが特徴です。

海外は新卒一括採用より中途採用が一般的

日本の企業や官公庁は、毎年大規模な新卒採用制度を実施し、数千人規模の新卒学生を一括で採用します。これに対して、他国における採用は個別のニーズやポジションに応じて行われることから、中途採用が一般的となり、新卒一括採用は非常に稀です。

日本の新卒一括採用は終身雇用制度とも関連しており、新卒社員は一生涯同じ企業に勤務することが期待されます。この採用制度が、その後の評価制度や昇進のプロセスに影響を与え、深く結びついています。

また、日本では従業員が異なる職種や業務に就く際には、経験や年功を重視することが一般的です。一方、海外の多くの企業では、成果や能力に基づいた評価が行われ、昇進や報酬に影響を与えます。そのため、日本で欧米と同じ人事制度の適用は難しくなっています。

日本は転職市場が広く浸透していない

日本の企業風土や労働市場において、安定志向と終身雇用が非常に重要視されています。多くの日本人は、一度入社した企業に長期間勤務し、その企業でのキャリアを築くことを大事にします。そのため、転職市場が発達せず、転職の文化が浸透していません。

また、従業員の長期的な忠誠心や組織への貢献が評価される傾向があり、それが終身雇用とも結びついています。したがって、人事評価は通常、長期間の勤務や経験を重視することが多く、転職市場における経歴や成果の評価は欧米と比べて弱くなっています。

海外の諸国では、転職することに抵抗が低く、キャリアを積むことや業務経験や実績の積み上げのために転職が重要視されます。

このような環境下で転職市場が発展・拡大し、多くの転職情報が普及したことから、海外の職場においては転職者の数が多くなっています。

欧米の人事評価制度の動向

海外における人事評価制度では、実績やキャリアの積み上げのために転職が重要視されます。近年では新たな人事制度が普及する動向もあり、伝統的な評価手法を超えて新しい評価基準などが採用されています。ここでは、以下の動向について分かりやすく解説します。

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マネージャークラスと一般社員で評価制度が違う

近年、欧米の多くの企業で見られる人事評価制度の動向は、管理職などのマネージャークラスと一般社員に対する評価制度の差別化です。このアプローチは、従業員の役割や責任に応じて評価基準を調整し、組織の戦略的目標に合わせることを目的としています。

マネージャークラスに対しては、個々の業績やリーダーシップ能力に基づいた成果主義的な評価がより強く行われます。このクラスは組織の中で重要な意思決定や戦略の実行を担当し、その成果が企業全体の成功に大きく影響するため、高い達成度が求められます。

一方、一般社員に対しては、スキル向上やキャリアの成長に焦点を当てた評価が行われます。また、訓練プログラムや自己啓発の機会、フィードバックの頻度などが増加し、彼らのスキルセットを向上させ、将来のリーダーになるための機会を与えています。

従来までのランク付けを廃止する動きがある

欧米の人事評価制度において、従業員をランキングやグレーディングなどで順位付けをする制度を廃止する動きが増えています。ランク付けは従業員間の無意味な競争を助長し、作業面での協力やチームワークを阻害する可能性があります。

企業としては、従業員が協力して情報共有を行い、共同で問題を解決することがビジネスの発展につながると考え、ランク付けはこの方針に合わないとされています。また、ランク付けは評価する人の感情やバイアスが組み込まれる可能性があります。

そして、特定の人種・性別・背景および特徴を持つ従業員の評価に不平等をもたらす可能性もあります。したがって、ランク付けを廃止することにより、従業員のスキルの多様性などが強化され、公平性を高める試みが行われるようになります。

エンゲージメントの向上に取り組んでいる

近年の欧米の人事評価制度の動向として、エンゲージメントの向上に焦点を当てる傾向があります。エンゲージメントとは、従業員が企業や組織に対して前向きな姿勢で関与したり、積極的に参加したりと、仕事に対する熱意や達成する意欲を持つ状態を指します。

これは、従業員が単に仕事をこなすだけでなく、組織の目標や価値観に共感し、自発的に貢献しようとする姿勢を表すものです。従業員が自身の仕事に満足し、モチベーションを高く持つようになることで、エンゲージメント・生産性向上が促進されます。

これらの理由から、欧米の企業ではエンゲージメントの向上を重要視し、人事評価制度やリーダーシップ育成方法を見直しながら、従業員のエンゲージメントを高める方法に取り組んでいます。その結果、会社全体が活性化されて長期的な成功にもつながっています。

世界的に広まりつつあるノーレイティング制度とは

ノーレイティング制度とは、組織における従業員やプロジェクトなどを評価するためのもので、伝統的なレイティングやランキングを使用しない評価制度です。

その代わりに、非数値的な指標や異なるアプローチの指標を用いて、公平性に重点を置いて評価する点が特徴となっています。

ノーレイティング制度では、人事評価の際に数値的なランキングや評価に伴う従業員の競争心やストレスが軽減されます。また、個人の背景や属性に基づくバイアスや差別のリスクを軽減し、人事評価への差別が低減されることで公平性がもたらされるのがメリットです。

反対にデメリットとしては、評価が非数値的であるため、報酬や昇進の基準が不透明になりがちであることです。その結果、従業員はどのような行動や成果が評価につながるのかを理解しづらくなります。

ノーレイティング制度が注目される理由

ノーレイティング制度は、主にアメリカの大手企業を中心に採用されています。その背景としては、従来までの完全評価制の人事評価では企業の業績が伸びずらくなり、GDPにも影響があると考えられたためです。

特に、現代では顧客ニーズや市場変化が激しく、社内での情報共有やコミュニケーションなどが重要視されるようになりました。そのため、ランク付けの人事評価では従業員同士のコミュニケーションが活発化せず、企業の利益にもつながらないと考えられています。

日本が世界の人事評価制度から学べること

近年、日本は世界の経済やビジネス環境が急速に変化する中で、人事評価制度において新たなアプローチを模索しています。日本はその独自の文化と価値観を保ちつつ、より効果的な人事評価制度を構築するため、以下のような人事評価の項目に取り組んでいます。

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評価方法を見直す

伝統的な評価制度では、従業員のモチベーションが低下するリスクが高まることがあります。例えば、数値的なレイティングの評価だけに焦点を当てると、従業員は単なる競争に巻き込まれ、仕事に対するやる気をなくすなど、情熱や意欲を失いかねません。

したがって、モチベーションを高めるためには、評価方法において成長やスキルの向上に焦点を当て、協力と共感を促進する要素を取り入れることが必要です。また、自己評価と会社評価の大きな乖離は、不満や不信感を招いて組織内の問題となることがあります。

そのため、従業員と上司が一貫性のあるフィードバックと対話を通じて評価基準を明確にし、透明性を高める努力を行うことが大切となります。そして、このような目標の達成に取り組みながら、人事評価を見直すことも求められます。

変化を受け入れる

経営環境は急速に変化し続けており、新しい技術の導入・市場の変動・競合状況の変化など、さまざまな要因が組織に影響を与えます。人事評価制度は、これらの変化に対応するために、従業員のスキルや行動の評価基準を変化に合わせて調整する必要があります。

また、従業員の価値観やニーズも変化しており、新世代の従業員は意義ある仕事やワークライフバランスを重視する傾向があります。よって、人事評価制度はこれらの変化に対応し、従業員の満足度や動機付けを維持し、優秀な人材を確保するための取り組みが必要です。

柔軟性のある人事評価制度の下では、頻繁なフィードバックと改善の機会が従業員に与えられます。その結果、従業員は定期的な対話を通じて自己成長し、課題を共有しながら目標を達成するための支援を受けることができます。

人事評価自体を廃止する

近年の欧米における人事評価制度の動向を参考に、日本でも人事評価自体を廃止した方が良いと考えることもあるでしょう。しかし、日本の企業では長年の間、年功序列といった考えが残っていたことから、簡単に人事評価自体を廃止することはできません

また、アメリカでノーレイティング制度を実現できる背景には、今まで成果制度を貫いてきたことが大きく関係しています。そのため、早期に人事評価自体を廃止することは叶わないかもしれませんが、世界的な動きと合わせて国が対策を講じる可能性は考えられます。

人事評価システムを導入する

人事評価システムはアメリカで発祥し、その後欧米諸国を中心に普及しました。アメリカではパフォーマンス評価・目標設定・フィードバックなどの文化が根付いており、これらのアプローチは世界中の企業に影響を与えて広まっています。

人事評価システムの導入により、従業員は公平な評価を受けることが可能になります。業務の成果に基づく報酬や昇進の決定において、バイアスや人間関係の影響が最小限に抑えられます。これにより、組織内での不公平感を軽減して離職防止にも役立ちます。

人事評価システムとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説

人事評価システムとは、人事評価業務に関するデータ管理や評価シートの作成を自動化できるシステムです。本記事では、人事評価システムをよく知らない方や導入を検討している方のために、人事評価システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説しています。

まとめ

日本と海外では、国として根付いた文化だけでなく、企業や組織における業務形態も異なることから、人事評価の面でも違いがあります。特に、欧米は能力主義で中途採用が多く、対して日本では年功序列がメインとなっており、新卒の一斉入社が主流となっています。

また、日本の人事評価制度が外国から学ぶことも多くなっており、近年ではそれらの取り組みも盛んに行われ、評価の公平性やモチベーションアップの点でも成果につながっています。さらに、人事評価システムも有効性が高いため、必要に応じて導入を検討しましょう。

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