発注書と注文書の違いとは|発行の流れや作成方法、関連制度を解説
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- 発注書と注文書は、業界によって使い分けられることがあるが、法的には同じもの
- 発注書は基本的に発行義務はないが、発行によりトラブルを防げる
- 発注書の保管期間は、法人の場合は7年、個人の場合は5年である
発注書と注文書は法的な違いはありませんが、業界によって使い分けられることがあります。本記事では、発注書(注文書)の役割や、発行の流れ・作成方法などを解説し、発注書(注文書)に関する制度や印紙の必要性についても紹介します。
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目次
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発注書と注文書に法的な違いはない
発注書と注文書は法的には同じものです。ただし、業界や業種によっては、慣例として以下のように使い分ける場合があります。
- 発注書:形がないものの取引・サービスに用いる
- 注文書:形があるもの(商品)の取引に用いる
発注書・注文書は、どちらも商品・サービスの取引を注文する際に発行する文書です。受注・請負は「契約」であるため、発注書も契約書としてみなされ、消費者契約法や商法の一環として扱われることがあります。
しかし、発注書はあくまで注文の意思表示を一方的に行うための文書であり、単体では法的効力はありません。また、消費者契約法や商法において、発注書に関連する法律は存在しません。
つまり、消費者契約法や商法に関するトラブルで、発注書に言及されるケースは少ないです。例えば、クーリングオフの可否に発注書の有無はあまり関係ありません。
参考:消費者契約法|消費者庁
参考:商法|e-Gov法令検索
発注書と契約書の違い
発注書と契約書の違いは、法的効力の有無です。ビジネス文書において法的効力が発生するのは、契約が成立した場合です。契約とは、依頼する側(発注者)と依頼される側(受注者)の両方が依頼内容について合意することを指します。
前述の通り、発注書とは注文の意思表示のための文書です。依頼する側の一方的な意思表示に過ぎないため、発注書には法的効力はありません。
一方、契約書とは、依頼する側・依頼される側の双方が合意した証として発行される文書です。よって、契約書には法的効力があります。
なお、発注書が法的効力を持つこともあります。例えば、事前の基本契約で、「注文書・発注書の交付で契約が成立する」と両者が合意している場合です。
また、発注書が「発注請書」や「注文請書」とセットになった場合も法的効力が発生することがあります。発注請書と注文請書については、次項で解説します。
参考:契約書の意義|国税庁
発注書と発注請書の違い
発注請書(うけしょ)または注文請書とは、受注者が作成するもので、依頼内容を引き受ける際に発行する書類です。同意書・確認書などとも呼ばれます。
発注請書の目的は、受注の意思表示だけでなく、取引内容に齟齬がないかの確認や取引についての履歴を残すことなどがあります。発注請書単体では法的効力はありませんが、発注書とセットになった場合は、法的効力が発生することもあります。
発注書(注文書)の役割
発注書の主な役割は、3つあります。発注の意思を示すだけでなく、トラブルを防ぐという目的もあります。ここからは、発注書が担う3つの役割を詳しく解説します。
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発注書(注文書)の役割
注文の意思表示
発注書は、「注文します」という意思を受注側に示すために発行します。注文書なしで発注することも可能ですが、受注側にとって口注文は、本当に発注する気があるのかどうか判断できません。
口注文を受けて準備をしたにも関わらず「発注なんてしていない」となった場合、受注者は大きな損失を被ることになってしまいます。
発注書に法的効力はなくとも、発注の意思を確認するには十分な力を持っています。発注書があることによって確実な発注となるため、受注者は安心して納品に向けた準備に取り掛かれます。
注文内容の明確化
発注書には数量や金額などを記載するため、注文内容が明確になります。口注文では、聞き取り間違いやメモの書き取りミスなどで、数量や商品の種類に誤りが生じる可能性があります。
注文をした場合でも改めて発注書を発行することで、受注側の情報に誤りがあった場合でも、その誤りに気付いて正しい納品が行われます。
欠品や商品違いは受注側だけでなく発注側にとっても業務の進捗状況に大きく関わるため、発注書を発行し注文内容を明確にすることは双方にとって利点となります。
取引に関する認識の相違を防ぐ
事前の商談で気付けなかった認識のズレを、発注書を発行することで正せます。発注書を受け取った段階では正式な契約はまだ結ばれていないため、発注書に書かれた取引条件の修正依頼をすることで、双方の認識のズレをなくせます。
予定よりも早い納期が発注書に記載されていた、といったこともあるため、事前の打ち合わせ通りの内容かどうか入念な確認が必要です。
発注書(注文書)発行とその後の流れ
発注書の発行に支障を来すと、その後のビジネスにも悪影響が出る恐れがあります。円滑なビジネスのためにも、発注書の発行とその後の流れを理解しておきましょう。
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発注書(注文書)の発行の流れ
見積もりを依頼する
発注の前段階として、発注者は受注者に見積もりを依頼するのが一般的です。このステップでは、以下の4つについて見積もりを行います。
- 取引の内容
- 数量
- 金額
- 納品日
上記について双方で合意が得られた場合、その証拠として、発注者は受注者に見積書を送付します。これ以降は取引内容を変更できないこともあるため、見積もりの段階で双方が認識のすりあわせを行うことが大切です。
発注書を作成して発注する
発注者が見積書の内容に従って発注書を作成し、受注者に発注を行います。なお、発注の際は発注書を送付するのが一般的ですが、省略されることもあります。
原則として、発注書の内容と見積書の内容は同じでなければなりません。記載ミスがないように、送付前に入念に確認しましょう。
発注請書を受け取る
受注者が発注書を受け取ったら、その発注を受ける意思を表示するために発注請書(注文請書)を発行します。この発注請書が発行されることで、受注が成立します。
発注請書には注文内容を改めて確認する役割があるので、受け取ったら内容をよく確認し、双方の認識に齟齬がないことを確かめましょう。
納品されたら検品をする
発注した商品が納品されたら、検品を行います。検品とは、納品された商品に破損・不良・漏れがないかを確認するための作業です。問題があった場合は、受注者に連絡しましょう。
連絡が遅れた場合、返品や交換が不可能になることがあります。こういった事態を避けるためにも、納品後の検品は迅速に行いましょう。
請求書に従って支払いをする
検品で問題がなければ、受け取った商品の代金を支払います。支払の際は、受注者から発注者に請求書が送付されることが一般的です。
支払方法は取引先や事業内容によって異なります。トラブルが起こらないよう、支払方法については事前に確認しておく必要があります。
発注書(注文書)の書き方
発注書には法律で決められた形式はありません。ただし、スムーズな取引を実現するために、記載するべき事項がある程度決まっています。
押さえるべき項目は次の5つです。これらを踏まえたうえで、一般的な発注書を作成するためのポイントをご紹介します。
- 書類作成者の氏名又は名称
- 取引年月日
- 取引内容
- 税込対価の額(税込みの取引金額)
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
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発注書(注文書)の作成方法
基本情報の記載
まずは、次のような基本情報を記載しましょう。ビジネス文書の作成において基本的な事項です。間違いのないように入力しましょう。
基本事項 | 概要 |
---|---|
タイトル | 「発注書」のように、書類の内容が一目でわかるようにする |
発注先の宛名 | 個人名には「様」会社名には「御中」をつける |
発注日 | 発注書を作成する年月日を記す |
発注番号 | 他の見積書・請求書などの書類がある場合、番号を統一する |
発注内容の件名 | 略称や通称は使用しない |
発注元の情報 | 発注する会社名・住所・担当者の氏名・連絡先など |
発注内容の詳細な記載
続いて、発注内容を詳細に記載します。次のようなポイントを押さえましょう。合計金額は、見積書の金額と同じ金額でなくてはなりません。
記載内容 | 概要 |
---|---|
発注内容 | 商品名・色・サイズ・数量・単価など |
納期 | 納品希望日の年月日を記載 |
発注金額 | 発注の合計金額(税抜)を記す |
小計・消費税・合計 | 税抜の合計金額・消費税額・税込の合計金額を記す |
支払い方法・条件 | わかりやすく具体的に記す |
備考 | 必要に応じて記す |
最終確認と署名
作成した発注書に間違いがないか、送付前に最終確認しましょう。確認済みの証拠として、作成者が署名することが一般的です。
発注書への押印は必須ではありません。ただし、書類の信頼性を高めるために押印するケースもよくあります。この点は企業や取引先によってルールが異なるため、事前に確認しましょう。
発注書(注文書)の作成・送付における注意点
上記以外の発注書の作成・送付における基本的なルールには、次のようなものがあります。
- インクの色:一般的には黒
- 封筒:サイズの決まりはない
- 送付方法:普通郵便が一般的(メール便は利用しない)
発注書はWordなどを利用して、一から作成してもかまいません。発行枚数が多い場合は、その都度一から作成するのは手間がかかるため、テンプレートを用意しておくのがおすすめです。
発注書(注文書)に関する制度
発注書は、税制関連の法律や下請法を守って適切に管理する必要があります。具体的なポイントをご紹介します。
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発注書(注文書)に関する制度
保管期間は法人7年・個人5年
発注書は納税に必要な帳票書類であるため、一定期間の保存が義務付けられています。保存期限は、法人と個人事業主によって異なります。
法人の保存期間は、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間です。なお、欠損金の発生する事業年度においては10年間の保存が必要です。
一方、個人事業主の保存期間は5年間です。法人・個人にかかわらず、発注書の保存を怠った場合、税務調査が入った際にペナルティを受ける恐れがあります。また、個人事業主の場合は、青色申告の控除が受けられないなどのデメリットを招くこともあります。
無用なトラブルを回避するためにも、注文書は保存期間を守って保存しましょう。
下請法が適用される会社は発注書の交付が必須
下請法が適用される取引では、発注書の交付が義務付けられています。下請法が適用されるのは、次の4つのようなケースです。
【物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合】
- 資本金3億円超の発注者から、資本金3億円以下の下請事業者へ発注
- 資本金1千万円超3億円未満の発注者から、資本金1千万円以下の下請事業者へ発注
【情報成果物作成・役務提供委託を行う場合】
- 資本金5千万円超の発注者から、資本金5千万以下の下請事業者へ発注
- 資本金1千万円超5千万円未満の発注者から、資本金1千万円以下の下請事業者へ発注
下請法が適用される取引で発注書の交付が義務付けられている理由は、親事業者に次の4つの義務があるためです。違反した場合は罰金などのペナルティがあります。
- 書面の交付義務:口頭での発注に伴うトラブルを回避する
- 支払期日を定める義務:納品から60日以内に支払を実行する
- 書類の作成・保存義務:取引の内容を記載した書類を作成し、2年間保存する
- 遅延利息の支払義務:支払が遅れた場合の利息の支払を担保する
発注書(注文書)に収入印紙は原則必要ない
原則として、発注書に収入印紙の貼付は必要ありません。ただし、場合によっては、注文書は契約書と同じものとみなされるケースがあります。
そういった場合は印税の支払いが発生するため、それに伴って収入印紙の貼付も必要となります。収入印紙が必要な具体例は次のような場合です。
- 発注書の交付で契約が成立する場合
- 注文書に、発注者・受注者の署名または捺印がある場合
- 見積書の承諾として注文書を発行する場合
なお、上記に該当する場合でも、売上代金が5万円未満の取引では収入印紙は不要です。
発注のやり取りをシステム化することも可能
従来のやり方では、紙の発注書を作成してそれを郵便やFAXで送付するのが一般的でした。あるいは、発注書データをメールで送っているケースもあるでしょう。しかし、近年では発注書の作成・送付も含めた一連のやり取りをシステム化する企業も増えています。
システム化に有効なのが、受発注管理システムの導入です。受発注管理システムでは受注のやり取りをWeb上で処理できるため、作業が効率化します。発注書も、システムで必要な情報を入力すれば自動的に作成されます。
発注書をはじめとする書類の管理が楽になることも、システム化の大きなメリットです。データで保管されるため物理的な保管スペースが必要なく、検索性も向上します。企業に遵守が求められる電子帳簿保存法についても、受発注管理システムなら適切に対応できます。
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受発注管理システムとは、受注システムと発注システムの機能を併せ持ったもので、受発注に関する一連の業務・管理をデジタルで行えるシステムです。本記事では、受発注管理システムの主な機能一覧とメリット・デメリット、導入が推奨される企業や選び方についても解説します。
まとめ
発注書と注文書は、ともに発注の意思を示すための書類であり、法的な違いはありません。ただし、業界などによっては、取引内容によって発注書と注文書を使い分ける慣例があります。
発注書には、発注者・受注者の基本情報や取引内容の詳細の記載が必要です。作成後は内容に誤りがないか念入りにチェックし、その証拠として署名するのが一般的です。
発注書は、法人は7年・個人事業主は5年の保存が義務付けられています。また、下請法が適用される取引については、発注書の発行が法律で義務付けられている点にも留意しましょう。
発注書を効率よく作成・交付するには、発注書の自動作成が可能な受発注管理システムを導入するのもおすすめです。正しい発注書を効率的に作成し、スムーズなビジネスにつなげましょう。
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