インシデント管理と問題管理の違いとは?それぞれのフローも解説

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  • インシデント管理は、インシデントの発生から復旧までを一貫して管理すること
  • 問題管理は、インシデントの原因を突き止めて、再発防止を行うプロセスのこと
  • インシデント管理はインシデントを解決し、問題管理はインシデントの原因を解決する

「インシデント管理」と「問題管理」は言葉が似ていることもあり、両者の概要や目的を混同してしまう方もいるでしょう。本記事では、インシデント管理と問題管理の違いを解説した上で、それぞれの概要や実施フローなどを詳しく解説します。

目次

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  1. インシデント管理と問題管理の違いとは
  2. インシデント管理とは
  3. インシデント管理の実施フロー
  4. 問題管理とは
  5. 問題管理の実施フロー
  6. インシデント管理と問題管理の違い
  7. まとめ

インシデント管理と問題管理の違いとは

現在、ITやプロジェクト管理などの分野でよく使われる「インシデント管理」と「問題管理」という2つのプロセスがありますが、両者はよく混同されることがあります。「インシデント管理」は、起こったインシデントをできるだけ早く解決し対処する行動を指します。

一方、「問題管理」はインシデントの原因を究明し、再発防止を行うプロセスを指します。例えば、「コピー機が故障してコピーできない」というトラブルの「コピーできない」という現象がインシデントで、別のコピー機を使うという対処が「インシデント管理」に当たります。

また、コピー機の故障の原因を究明し、二度と同じ問題が起きないように修理をするなどの対処が「問題管理」に当たります。本記事では、インシデント管理と問題管理の概要や実施フロー、インシデント管理と問題管理の違いなどを詳しく解説します。

インシデント管理とは

「インシデント(incident)」とは、一般的には「事件」や「できごと」という意味を持つ言葉です。ITサービスの分野では、予期せぬ問題や障害・サービスの中断・システムのクラッシュなど、ユーザーや組織に対する突発的な影響を持つ「できごと」を指します。

インシデントは、通常ユーザーまたは顧客からの報告、モニタリングシステムからのアラート、監視ツールからの通知などを通じて識別されます。インシデントの具体例は、ハードウェアの障害やネットワークの問題、アプリの利用不能、データの損失などです。

「インシデント管理」はこれらのインシデントに対処し、サービスの正常な状態に迅速に戻すことを目的としています。主な目標はサービスの中断時間を最小限に抑え、ユーザーや顧客への影響を軽減することです。

インシデント管理の課題

インシデント管理は企業の運営にも影響を及ぼす可能性があるため、情報システム部門の担当者にとって重要な業務です。ここでは、インシデント管理におけるよくある課題を解説します。

同じインシデントが繰り返し発生する

インシデント管理においてよくある課題の一つが同じインシデントの再発です。インシデントが発生した際は、過去の事例や社員が持つ技術を活用して素早くインシデント管理を行い、情報共有して再発防止に努める必要があります。

しかし、過去の事例や解決策が蓄積・共有されていないと、適切なインシデント管理を行えず、同じインシデントが繰り返し発生してしまうでしょう。このような課題に対応するためには、組織で情報共有がなされるように、担当者やワークフローを定める必要があります。

インシデント管理に必要なリソースがない

インシデントが発生した際、インシデント管理を行うために必要なスキルを持った人材が不足しているケースもあります。インシデント管理には専門知識や高度な技術が必要であるため、特定の担当者にインシデント管理業務を依存して属人化している企業も多いです。

このような課題に対応するためには、長期的に専門知識や技術を身につけるための人材育成を行い、情報共有やワークフローなどの社内体制を整える必要があります。

インシデント管理の実施フロー

インシデント管理は、システムの運用中に予期せぬ問題やできごとが発生した場合に、それに対して迅速かつ効果的な対応を行うための重要なプロセスです。組織が適切なインシデント管理のフローを持つことは、サービスの継続性や信頼性の維持に不可欠と言えます。

ここでは、インシデント管理のフローとしてインシデントの検出や分析、エスカレーションによるインシデント管理、インシデントの解決などの項目の詳細について解説します。

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インシデントの検出

インシデント管理の実施フローにおける最初のステップは、インシデントの発生を検知し確認することです。検知や確認の手がかりはいくつかあり、システムアラートやユーザーからの報告、問い合わせなどによってインシデントが認識されます。

この時点で重要なことは、インシデントが発生した時刻や影響の範囲などの詳細をできるだけ把握し、記録することです。これにより、インシデントの重要度や影響度を分析・評価することが可能となり、適切に対応することができるようになります。

また、今後のインシデント発生時にも記録した内容と同じ現象かどうかの比較ができ、的確な対処が可能です。もし発生の検知が遅れたり、影響度の評価や分析が充分でなかったりする場合には、誤った対応をすることになりインシデントの影響の増大などにつながります。

インシデントの分析

インシデント分析のために、インシデント発生時に収集された情報やログなどの証拠を集めます。これにはログファイルやネットワークデータ、セキュリティカメラの映像、報告、証言などが含まれます。この情報は後の分析プロセスの基盤となります。

次に、インシデントの原因を特定するために、現象の根本的な要因の追求を行う「ルートコーズ分析」手法や、デジタル証拠の収集と解析を行う「フォレンジック調査」などの手法を用いて分析します。

そして、インシデントの分析から得られた情報をもとに対策を提案します。これにはセキュリティポリシーの改訂やセキュリティ設定の変更、教育の強化などが含まれます。また、調査結果や分析結果を詳細に文書化し、将来の分析や対策の迅速化や強化に備えます。

エスカレーションによるインシデント管理

インシデントの初期評価を行い、インシデントの重要度や影響度、複雑さなどを判断します。次にインシデントの解決策を作成して、サービスを復旧します。サポートの担当者からユーザーに解決策を連絡し、ユーザー自身が復旧作業を行う場合もあります。

インシデントを分析した内容が複雑であったり、初級対応で解決できない場合は、エスカレーションにより段階的に対応レベルの程度を上げて、解決策の検討や対応を依頼します。

エスカレーションにより、上位の技術者グループや専門家チームがインシデントに対する解決策を見つけ出し、復旧作業や対処を行い、インシデント管理を実施するケースもあります。

インシデントの解決・終了

インシデントの解決・終了に向けて原因や影響を分析し、解決策を作成します。これにはシステム修復やデータの回復、セキュリティ対策の強化などが含まれます。また、解決策の実行に際して適切なリソースや時間枠を確保します。

解決策の実行は、チームが協力して計画に従って作業を行い、システムの修復やデータの復旧、脆弱性の修正、セキュリティの強化などの対処を行います。解決策の実行後しばらくはシステムの監視とテストを行い、正常稼働の確認をします。

インシデントの解決が確認された場合は、解決状況を関係者に通知します。終了フェーズとして、インシデント解決に関する調査報告書や対策の実行結果などの詳細情報を文書化します。この文書は後のインシデント発生への有効な対策資料となります。

問題管理とは

問題管理とは情報技術やサービス管理に関連しており、ITサービスに関する問題が発生した場合に、問題を特定し、分析・評価して、解決するためのプロセスです。問題管理は、ITサービスの持続的な改善と安定性の向上を実現することを目的としています。

問題管理は、システムやサービスに関連する問題を特定するプロセスにもなります。これらの問題は通常、一連のインシデントや障害のパターンとして浮かび上がり、継続的な調査と監視を通じて検出されます。

特定された問題は、分析されて根本原因の詳細が特定され、その影響を最小限に抑えるための解決策が作成されます。問題管理チームは解決策を立案・実行し、システムを早期に復旧させ、問題発生による影響を極力抑えます。

問題管理を行うタイミング

ITサービスを提供する組織にとって、スムーズな運用と高い品質の提供は至上の目標です。しかし、システムの障害やサービスの中断、セキュリティ侵害などの問題発生は避けられないのが現実です。

こうしたインシデントが発生した場合には、問題管理によるタイムリーかつ適切な対処が不可欠です。ここでは、問題管理を行うタイミングとして以下の3点について、詳細を解説します。

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未経験のインシデント発生時

未経験のインシデントが発生した場合に、問題管理はその根本原因を追求し、将来、同様の問題が起こった際に瞬時に対応可能な対策を講じる重要なプロセスとなります。インシデントへの単なる一時的な対応だけで終わらず、持続的な改善につながります。

未経験のインシデントに対して、問題管理のプロセスを実施することで迅速かつ効果的な対応策を策定し、インシデントの影響を最小限に抑えることが可能となります。これにより顧客やユーザーへの影響を低減することができます。

未経験のインシデント発生に際して、問題管理を実施することは将来を見越した長期的な視野に立って再発防止などの対処が可能となります。これにより、サービスの品質向上やリスクの低減につながります。

解決済みのインシデント発生時

解決済みのインシデントに対して問題管理を行うことにより、そのインシデントの発生を改めて分析し、インシデントの根本原因を特定し、解決策を策定します。これにより類似の問題を未然に防ぐための具体的な改善策が導き出されます。

解決済みのインシデント再発の原因としては、このインシデントへの解決策を講じた後に発生した、他のインシデントへの解決策が影響している可能性があります。そのため最初の解決策の後に行われた解決策を時系列で洗い出して相互の影響度を確認する必要があります。

解決済みのインシデント再発の原因が判明したら、新たな解決策によりシステムが復旧し正常稼動に戻ったことを確認します。そして再発の原因や解決策を文書化して、組織内で共有します。これにより同様のインシデントの再発が防止でき、将来への備えとなります。

過去の分析結果から問題管理発生の傾向が分かった場合

過去の分析により、問題が特定された傾向を把握することで、同じ問題が再発しないように対策を講じる機会となります。これにより、同じ問題によるインシデントを減少させ、サービスの信頼性やユーザーの満足度を向上させることができます。

過去のデータを元に、問題の傾向を把握することで、新たな問題が発生する前に警告し予防することが可能となります。また、問題管理は、防止するためのアクションを実施して未然にインシデントを防ぐことを支援します。

過去の分析結果から得られる情報は、問題管理プロセスの中で活用され、組織が効果的に問題を特定して将来のインシデントを防止する戦略を策定する際に重要な役割を果たします。問題の傾向を把握し対処した解決策により、運用とサービスの品質向上につながります。

問題管理の実施フロー

問題管理の実施フローは、ITサービスの品質向上とインシデントの再発防止に取り組むための重要なプロセスとなります。ここでは、実施フローとして以下の3点について詳しく解説します。

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問題の記録・分類

問題の記録と分類プロセスは、まず問題が検出された時点から始まります。問題は通常、インシデントのパターンやトレンド、異常な動作、顧客からの報告など、さまざまな方法で特定されます。

問題を検出した後には、それに関する詳細な情報が記録されます。これには問題の説明や発生日時・影響度・関連するシステムやプロセス・関係者の情報などが含まれて文書化されます。

問題が記録された後に種類・重要度・影響度に応じて分類され、優先度が付けられます。これにより、組織としてどの問題に最初に取り組むべきかを決定できます。

調査・診断

問題が特定された後の調査として、詳細な分析や評価が行われます。これには、問題の説明や特性、問題が発生したタイミングと頻度、影響を受けるシステムやサービス、類似の過去の問題のレビュー、インパクトと影響の評価などの要素が含まれます。

また、問題を調査するために必要なデータや証拠を収集します。これには、ログファイルやエラーメッセージ、トラブルシューティングの履歴、ユーザーの報告、およびその他の関連情報が含まれます。

問題の診断の流れとして、必要なデータや証拠が収集され、問題の根本原因を特定するための材料が揃えられます。収集されたデータと情報を基に根本原因の分析が行われ、問題の根本原因が特定された後に解決策が策定されます。

エラーコントロール

問題管理の実施フローにおいて、エラーコントロールは重要なプロセスとなります。エラーコントロールは、問題が解決されて対策が実行された後にその結果を監視し、再発を防ぐために大事です。

ここでは、その中のプロセスとして、以下のエラーの識別・管理やエラー評価、エラー解決の記録などの3点について詳細を解説します。

エラーの識別・管理

エラーは異常な状態や問題が発生した際に検出されます。これはユーザーからの報告や自動監視、ログファイルの分析、または他の監視手段によって行われます。検出されたエラーは、その性質やシステム障害の大きさなどに応じて分類されます。

また、エラーの影響度合いに基づいて優先度が設定されます。これにより対処の緊急性と重要性が明確になります。エラーに関する詳細な情報としては、発生日時や発生場所、関連するデータ、エラーメッセージなどが記録され、後に詳細な分析に使用されます。

これらの情報を元にエラーの根本原因を特定するために分析が行われます。根本原因が特定された後には、それに対する解決策が計画され優先順位付けられます。さらに解決策の実行や監視が続き、エラーの再発を防ぐための措置が取られます。

エラー評価

エラー評価は問題が解決された後に、問題の影響や解決策の効果を評価し、将来の改善のための情報を収集するために行われます。エラーの原因を解決するための手順に沿って、根本原因の分析に基づいて計画された解決策が実施されます。

エラーが解決された後に、その影響がどの程度軽減されたかを評価します。これにはインシデントの頻度、影響度合い、および対応時間の削減などが含まれます。また、実施された解決策がエラーの再発をどの程度防いでいるかを評価します。

効果の評価には、定期的な監視、テスト、およびユーザーのフィードバックが使用されます。評価の結果を元にサービスやシステムの改善に向けた提案が行われます。これにはプロセスの改善や新たなセキュリティ対策、システムのアップグレードなどが含まれます。

エラー解決の記録

エラー解決の記録は、問題がどのように解決されたかを記録したり、問題の履歴を文書化したりするために行われます。解決策の詳細として、問題が解決されるまでのステップや手順、および使用された解決策の詳細を文書化します。

解決策の実行日時が正確に記録され、問題解決の所要時間とタイミングが文書化されます。また、解決策の実行に関与した関係者やチームの情報が記録され、責任の所在などが明確になります。

解決策が実行された後、その効果をテストし検証するための手順と結果が文書化されます。エラー解決の記録は、問題管理プロセスの透明性と効果的なコミュニケーションを確保するために不可欠です。また、将来の調査や改善のための貴重な情報源にもなります。

インシデント管理と問題管理の違い

インシデント管理は、突発的な問題や障害やトラブルなど、緊急かつ予期せぬ出来事に対処するためのプロセスです。主な目的はサービスの遮断や障害を最小限に抑え、通常の運用を早期に回復することです。

問題管理は、継続的または頻繁に発生するインシデントの根本原因を特定し、それらを解決するためのプロセスです。再発を防ぎ、サービス品質を改善することを目的としています。通常、綿密な分析と根本原因の特定が行われ解決策の策定が行われます。

インシデント管理はサービスの回復を主な目的とし、緊急かつ迅速な対応が求められます。一方、問題管理は解決策を講じて再発を防ぎ、サービス品質を向上させるための長期的なアプローチを取ります。

まとめ

インシデント管理と問題管理は、ITサービスおよびシステムの安定性と品質を向上させるための重要なプロセスですが、それぞれ異なる目的やタイミング、およびアプローチを持っています。

インシデント管理では、主に緊急かつ即座の対応が求められ、問題の根本原因の分析は二次的です。一方、問題管理では根本原因の特定と改善策の設計が中心であり、継続的な改善活動が行われます。

インシデント管理や問題管理の業務に携わる場合には、この記事を参考にされて的確なプロセスを実施しましょう。

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