人事評価制度の歴史とは?評価制度の種類・特徴・問題点も解説
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- 日本では高度経済成長期に終身雇用が広まり、能力主義・成果主義へと移り変わっている
- アメリカから持ち込まれたMBOやコンピテンシー評価などの新たな制度が広まっている
- 人事評価を公平かつ効率的に行うためには、人事評価システムの導入がおすすめである
日本では戦後の高度経済成長期に終身雇用が広まり、1990年代のバブル崩壊をきっかけに成果主義が浸透し始めました。しかし、適切な人事評価は難しく、現在も多くの課題があります。本記事では、日本の人事評価の歴史や現在活用されている評価制度の種類などを解説します。
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日本の人事評価制度の歴史
日本の人事評価制度は戦後から始まり、時代の経過に合わせてさまざまな形に変化してきました。ここでは、日本の人事評価制度の歴史について詳しく解説します。
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日本の人事評価制度の歴史
戦後〜高度経済成長期|終身雇用の広まり
戦後から高度経済成長期の日本では、終身雇用と年功序列が強く根付いていました。終身雇用とは従業員を定年まで雇用することであり、企業と従業員の間に強い信頼関係を築きます。そして、年功序列は勤続年数や年齢に応じて評価を行う考え方です。
終身雇用や年功序列による評価では、長く雇用することで信頼関係が築けるものの、実力に見合った評価が得られない従業員が発生してしまいます。また、年齢を重ねるごとに評価が上がるにも関わらず、加齢で生産性が低下する可能性が高い点もデメリットです。
さらに、実力があるにも関わらず、年齢が若いことを理由に正当な評価が得られなければ、従業員のモチベーション低下にもつながります。この時代の評価制度は、従業員の質が下がりやすかったり、実力に見合う評価が得られなかったりする点が大きな問題点でした。
1960年後半〜|能力主義の評価制度の導入
1960年代後半になると、能力主義の評価制度が導入されるようになりました。能力主義の評価制度は、役職や年齢に関係なく個人の能力を重視して評価される制度です。「職能給」と呼ばれるものも導入され、従業員の職務遂行能力を基準に給与が決定されていました。
しかし、職業を超えた人事異動が多く発生し、明確な評価基準が設けられていなかったことにより、正しく運用できていない企業も多かったのが特徴です。
日本では、能力主義の評価制度に関する明確な決まりが定まっておらず、職業ごとの能力を評価するのが難しいこと、職業を超えた人事異動が多かったことなどが問題点となっていました。
1990年代〜|バブル崩壊から成果主義へ
1990年代以降、バブルが崩壊すると成果主義の人事評価が行われるようになりました。成果主義とは、仕事の成果を基準にして評価を行う制度です。成果主義の評価制度は能力主義の評価制度とは異なり、仕事で出た結果や売上などを基に評価を行います。
仕事の成果を重視して評価を行うことにより、従業員間の競争力が高まりました。競争力の向上により、従業員の成長やモチベーションの向上にも貢献するのが特徴です。
ただし、社内で過度な競争が起こると環境が悪くなり、従業員のストレスが増えやすいといった側面もあります。
2000年代〜|アメリカから新たな評価制度が持ち込まれる
2000年代以降になると、アメリカから新たな評価制度が持ち込まれました。アメリカから導入された新たな評価制度とは、「MBO(目標管理制度)」「コンピテンシー評価」「360度評価」といったものです。
また、IT技術が発展したことにより、人事評価に伴う作業を自動化できる人事評価システムといったものも、開発・導入されるようになりました。担当者だけの目線で評価を行うのではなく、客観的な目線で正当な評価が行えるようになったのも、この時代の特徴です。
人事評価制度の種類
2000年代以降、日本にアメリカの人事評価制度が持ち込まれました。ここでは、MBO(目標管理制度)・コンピテンシー評価(行動評価)・360度評価(他面評価)の3つの評価制度について詳しく解説します。
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人事評価制度の種類
MBO(目標管理制度)
MBOは各従業員に目標を設定させ、設定した目標の達成度合いで評価を行う方法を指します。1954年に経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した概念であり、現在の日本でも幅広く導入されている目標管理制度の1つです。
従業員が自ら具体的で達成可能な目標を設定し、その目標の達成具合で評価を行います。自分で目標を設定するためモチベーションを維持しやすく、能力開発や成長を促しやすいのが特徴です。一方、目標設定が難しいケースがある点には注意しなければなりません。
コンピテンシー評価(行動評価)
コンピテンシー評価とは、仕事で成果を上げる人に共通する行動特性(コンピテンシー)を評価の「ものさし」として定め、従業員の人事評価や採用活動に用いる評価方法です。コンピテンシーとは、仕事で成果を上げる際に必要な行動特性・スキル・知識を指します。
具体的には、コミュニケーション能力・リーダーシップ・チームワーク・問題解決力・学習意欲などがコンピテンシーです。企業の目標や戦略を踏まえて必要なコンピテンシーを特定し、その後に具体的な行動やスキルを定義します。
評価は従業員の観察を行ったり、面談を行ったりしながら評価項目を基に行うのが基本です。コンピテンシー評価は客観的に評価できることから、人材育成がしやすいといったメリットが得られます。ただし、コンピテンシーの特定や定義が難しいことも挙げられます。
360度評価(他面評価)
360度評価とは、上司・部下・同僚・顧客など、立場や関係性において異なる複数の評価者が従業員を評価する手法です。従来の評価制度では、上司が部下を評価するのが一般的でしたが、近年では360度評価のような制度も広まってきています。
例えば、部下から見た上司の評価も参考にすることで、より客観的な評価が行えるでしょう。ただし、360度評価は評価者の偏見や思い込みの影響を受けやすい点に注意が必要であり、評価者の選定は慎重に行い、明確な基準を設けた上で評価を行うことが求められます。
人事評価に関する問題点
現代の人事評価には、さまざまな問題点があります。例えば、低評価を受けた従業員のモチベーション低下、多様な働き方への対応、評価基準の可視化などです。ここでは、人事評価に関するいくつかの問題点について解説します。
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人事評価に関する問題点
低評価が離職や生産性の低下につながる
人事評価において、低評価を受けた従業員はモチベーションが下がりやすく、離職を考える可能性があります。そして、低評価が不当だと感じた場合には、会社に対して不信感を抱いてしまうケースも少なくありません。
特に、人事評価は部署内の上司が行うことが多く、部下から見た正当性の判断が難しいことも挙げられます。また、人事評価の結果を伝える管理職に対する不満が増えることで、企業全体の生産性が低下してしまうことも大きな問題点です。
多様化する働き方では評価がしづらい
近年では、テレワークやフレックスタイム制といった多様な働き方が増えています。基本的に人事評価はオフィスワークを前提としており、テレワークを含めた在宅ワークでは日頃の業務態度が把握できず、正当な人事評価を行いにくいといった点も大きな課題です。
新型感染症への対策を含め、働き方改革にも対応した職場環境の構築として、企業の多様化への対策が求められています。しかし、従業員一人ひとりに関する人事評価が困難になりやすい点も附随してきます。
評価項目の内容や基準が可視化できない
人事評価は評価者の主観が影響しやすく、正当な評価を受けられない従業員が出やすい懸念点もあります。このような事態を防ぐためには、明確な評価基準や項目を設けた上で、客観的な視点からの評価を行うことが大切です。
しかし、評価項目に関する内容や基準についての可視化は非常に難しく、従業員の自己評価や同僚などから得られる評価とは差が生じることも考えられます。
よって、人事評価における十分な可視化ができないことで、不当な評価だと感じる従業員がいることも考慮しなければなりません。
人事評価システムを活用して適切な評価を
適切な評価を行いたい場合は、人事評価システムを導入するのがおすすめです。人事評価システムとは、人事評価に関わるデータを管理し、効率よく管理するために使用するシステムを指します。システムを導入すれば、公平かつ効率的な評価が行えます。
担当者が評価を行う場合では、どうしても個人的な感情や視点に評価が左右されてしまいます。一方、人事評価システムを活用した場合は、自動でデータを集計・分析してくれるため、客観的な目線で公平かつ効率の良い評価ができるのが特徴です。
人事評価システムとは?機能やメリット・デメリット、選び方を解説
人事評価システムとは、人事評価業務に関するデータ管理や評価シートの作成を自動化できるシステムです。本記事では、人事評価システムをよく知らない方や導入を検討している方のために、人事評価システムの機能や選び方、メリット・デメリットを解説しています。
まとめ
日本の人事評価制度は時代を追うごとに変化しており、さまざまな歴史を辿ってきました。時代に応じた人事評価制度が導入されているものの、近年においても評価者の主観が入ってしまったり、多様な働き方に対応できなかったりといった課題があります。
そこで、効率よく人事評価を行いたい場合には、人事評価システムの導入がおすすめです。人事評価システムを導入すれば、データの入力や分析が自動化でき、より正当な評価ができるようになります。本記事の内容を参考に、システムの導入を検討しましょう。
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